閑話 -子猫-
王都では聖獣様グッズが大ブームだ。
この聖獣様グッズは流石というかすべて効果付き(売り子さんの舌先三寸)だ。
『絵姿』これは毎日拝むといいことがあるかもしれないという効果が期待される。
責任感丸投げのざっくりと雑な信用に欠ける説明が実に残念だが、安価な上に量産品にも関わらず聖獣様の姿が意外と精緻に描かれていることから人気商品となっている。
『聖獣様饅頭』これは食べると痩せるらしい。
妙に具体的だが食べれば食べるほど深まるジレンマに悪意を感じないでもない。一番人気は一番カロリーが高いであろうカスタードクリーム饅頭だ。
『聖獣様フィギュア』これはいつでも聖獣様を思い出すことができるという、ここにきてまさかの思い出系だが、宝石や貴重な金属が惜しげもなく使われている贅沢品で金持ちに人気の商品となっている。
聖獣様見学ツアーに参加した者たちはまんまと旅行会社の導くままにそれらを大量に買い、国へ帰ると聖獣様グッズをお土産として知り合いや近所に配りまくる。
そんななか、ここ最近問題になりはじめたのが闇商人の存在である。
聖獣様使用済みタオル・使用済み歯ブラシ・使用済み綿棒、それはそれは多岐に渡る。特別料金を支払えば白っぽい毛なんかも手に入るのだが、これを家宝扱いする人間も多く、なんともぼろい儲けを生み出している。
さて、そんなある日、無法地帯となりつつあった闇の商売にとうとう摘発の嵐が吹き荒れた。
押収した商品を目の前に騎士達は頭を抱えた。
それは出荷寸前状態の綺麗にラッピングされた檻に入れられた真っ白な子猫。
大事にされていたであろう綺麗な毛並みの子猫は首につけられた宝石付きの首輪が似合う高貴な空気を纏っている。
これから大金持ちの商人か貴族の所へでも送られる所だったのだろう。
「こ、これはっ……よし、私が責任をもって世話しよう」
「え、ずるいですよ。この子は私が引き取らせていただきます」
「いやいや、その子さっき俺を見てたしっ」
「何を勝手なことを言っているんだ? ジョセフィーヌ(誰それ?)はもううちの子だっ」
その後、騎士たちの取っ組み合いの喧嘩に発展したそれは某将軍の耳に入り、子猫は某将軍の元へ引き取られていった。