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013 終戦(1)

遅くなりましたが、ようやくの更新です。

 空気が変わった。


 この戦場に居るならば誰もが胸中でそう呟いただろう。

 白夜がこの戦場に降り立つと同時に空気が変わった。それは先の単身突撃の時と白夜の姿に変化があったからとかではない。

 反抗勢力の大将であるはずの竜魅がいた廃城。そこに突入したはずの白夜がここにいると言う事はつまり、竜魅が討ち取られた、または捕獲されてしまった、はたまた白夜に下ったと言う事なのだ。

 先程まで行く末がどうなるのかが分からなかったこの戦場。しかし、白夜がここにやって来た事によってはっきりと未来は決まった。

 反抗勢力は白夜に下り、巨人は蹂躙し尽くされる。

「主殿。竜魅はどうなったであります?」

 和水が訊ねる。

「奴はもう大丈夫だ。俺の仲間になる事を誓ったよ」

「そうでありますか」

 たったそれだけの会話で、もう竜魅の事を気にする必要はなくなったと理解する4人。

「ああ。だから、さっさとこの用済み共を皆殺しにしてやろうぜ?」

 にんまりとした笑みを浮かべ、隊長格4人を振り返る白夜。それに応じるように、4人もこれから成すべき事がはっきりと決まったな、と言わんばかりに笑みを浮かべた。

「影鳶は俺が殺る。お前らは適当に暴れろ。OK?」

「了解であります!」

「オレに命令すんな! 言わなくても分かってるっつうの!」

「承知しました若様」

「おーけーだよん!」

 その返事を皮切りに、5人はそれぞれ獲物に向かって駆け出して行く。

 決戦の始まりである。


    ◇◆◇◆◇


『巨人肉鎧』に搭乗している影鳶は焦っていた。『巨人肉鎧』さえ使えば白夜の魔王軍くらい皆殺しに出来る。そう踏んでいたはずなのに、結果を見れば全くの逆。むしろ自分達の方が魔王軍に皆殺しにされそうになっている。

 更に隊長格4人のみならず白夜までやって来てしまった。このままでは本当に全滅してしまうだろう。

「何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だァッ!?」

 狂ったように、否、既に狂った影鳶は訳が分からないと言った感じに肉鎧の中で取り乱したように叫び散らす。

「何故だ! 肉鎧を使っているのに何故勝てない! 相手はたった5人だ! 奴らさえ倒せれば後は敵じゃねぇはずなのに! 俺の手下が無能だからか!? 肉鎧の力が完璧じゃねぇからか!? 一体何故だ!?」

 理解出来ないのも無理はない。影鳶は確かに自らの力を示し、浅はかではあるが知略を巡らして魔王になろうと画策していた。しかし、影鳶には決定的な物が欠けていた。白夜には有って影鳶には無い物。そう、全ての者を導く『器』だ。

 影鳶には魔王になるために必要な決定的な物である『器』が欠けていた。故に付いて来る部下も、誰に付いて行くのが最善かも分からない無能ばかり。

 それに比べて白夜は人間、魔族問わず全ての者を導いている。そしてその全ての者が平均以上の能力を有している。それは1人1人を白夜自らの手で育てたからではない。自ら白夜に付いて行きたいと思い、自らの意思で心身共に鍛え上げた。そんな者達が白夜の下に集っている。そしてそうさせたのは他でもない白夜自身だ。白夜の『器』が全ての者に白夜に付いて行きたいと思わせたのだ。

 よって、影鳶ではどう転んでも白夜の魔王軍には勝つ事は出来ない。

「こうなったらどうなったって構いやしねぇ! あのクソ勇者だけは絶対に殺してやる!」

 影鳶はそう叫ぶと、今まさにこちらへと向かって駆けて来る忌々しい『反逆勇者』の姿を視界に捉える。そして憎憎しげにその姿を睨み付けると、全ての計画を台無しにされた怨嗟の念を白夜へとぶつけるがため、肉鎧を発進させた。

 プツン、と影鳶の中で最後の正気の糸が千切れた……。


    ◇◆◇◆◇


 和水、蜘蛛丸、桃華、桜花の4人が3〜20メートル級の巨人との戦闘を開始する中、白夜は1人、全長50メートルを越える影鳶が搭乗している巨人を目指して駆けていた。その間にも別の巨人が白夜に襲い掛かる。

「あらよっと」

 そんな軽い調子の言葉とは裏腹に、放たれた拳は空気の壁さえ突き破って巨人の拳に激突する。圧倒的巨大な巨人の拳とぶつかり合った白夜の拳は、一切拮抗する事無く巨人の拳を破壊。それだけでは衝撃は逃し切れず、巨人の肉体に亀裂が発生。そのまま内側から破裂した。

 更に背後から襲い掛かる巨人。しかし白夜は拳が振り下ろされる前に一瞬の内に巨人の眼前まで跳び上がると、巨人の頭部に向けて一蹴。白夜の裂蹴より放たれた斬撃は巨人の頭部を切断。しかしそれだけは飽き足らず、頭部に残留した衝撃波は内側で破裂。巨人の頭部は肉片となって大地をどす黒い赤色で染め上げた。

 先程桃華と桜花が似たような方法で巨人を倒していたが、白夜のそれは次元が違う。

 桃華は背後からの攻撃を避け、そして攻撃を行っていた。それは魔術師であるため身体能力が低く、攻撃にワンテンポのタイムラグが発生してしまうからである。しかし白夜は、巨人が攻撃に移行する寸前に眼前まで跳び上がって隙を突いている。圧倒的。

 そして桜花は巨人の攻撃を逆に利用して肩まで駆け上り蹴りによって巨人の頭部を切り落としている。しかし、白夜の場合は巨人の頭部を切り落とすだけではなく、残った衝撃波で破裂させている。これはただ単純に膂力の違いだけではなく、残りの衝撃波も有効に使う事が出来ると言う技術の違いでもある。破裂させたのは無駄? 否、むしろ周囲の敵の戦意を奪う事が出来る。「次はお前らがこうなるんだ」と脅しになる。これを見ただけでも分かるように白夜は圧倒的な力をその身に宿しているだけではなく、桜花以上に体術の天才だ。まさに圧倒的。

 これが天災とまで言われた『反逆勇者』の力。その片鱗である。

 白夜はどことなく物足りなそうに鼻を鳴らすと、影鳶を睨み付ける。

「ちったぁ楽しめると思ったんだが、この程度か。こりゃあ完全に用済みだな。お前ら」

 顔は笑っているはずなのに、放たれた言葉には底冷えするような殺意が含まれている。

「んじゃ、最終決戦と行こうか?」

 白夜はぐっと握り締めた拳を影鳶に付き付けると、嬉しそうにニタァと笑みを浮かべた。


    ◇◆◇◆◇


「いやはや、ここまで一方的な戦になるとは……予想以上でござるな」

 感心したような呆れたような声音で竜魅が呟く。

 少人数で圧倒的なまでの力の差を誇示する魔王軍。その中でも一際目立った戦果を上げているのは、やはり魔王である白夜だった。誰よりも強く誰よりも目立つ。

 巨人を次々に屠って行くその姿は虐殺を繰り返す悪鬼の如き所業のようでもあり、人々を魅了するかのような華麗で大胆な舞いのようにも見えた。

 竜魅は思わずその姿に見入る。やはり白夜には魔王となる資格があるのだろうと感じた。

 魔王とは時には残酷無慈悲に人々を突き放し、時には自らの存在を誇示し人々を導いて行く、という二面性を持っている。

 白夜の戦いは残酷極まりなく、慈悲など全く込められていない。これを見ればまず、自分達とは全く別の次元に存在しているのだと突き放される。絶対に敵わない存在であると認識する。そして誰もが恐怖に駆られ、白夜の存在から視線を逸らす事が出来なくなる。こう考えるのならば恐怖もある種の魅了と言える。

 そして無慈悲にも突き放された者は、絶対に魔王の前を歩く事はない。故に人々は導かれて行く。恐怖はいつしか畏敬の念へと変化し、誰もが魔王の後を嬉々として付いて行くのだ。

 そんな二面性を完璧に我が物としていた魔王は、過去に先代魔王である月夜姫の父親しかいなかった。しかし、白夜はその先代すらも超える勢いで魔王としての完成へと近付いている。全ての魔族が白夜に平伏す日は遠くないのかもしれない。

 竜魅は新たな魔王の姿をその目に焼き付ける。そして月夜姫も真剣な眼差しで白夜の姿を見据えていた。この戦場で白夜が巻き起こす1つ1つの事が『月詠』、そしてこの世界の行く末に影響するのだ。

 一瞬たりとも見逃してはいけない。

遂に後ちょっとで終戦です! これで白夜と月夜姫のイチャラブが書ける!

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