夏のせせらぎ ~ルミナス・サマー~
やっと出来ました…。去年からのリレー小説…。長かった…。
はい、これはミスターさんとの共同制作もといリレー小説です。逸話ばかり書いていた私には、辛すぎる小説でした(笑)
この絵は五円玉さまから頂いた劉の挿絵です。挿絵に関しては他力本願です。この小説のイメージ作りに協力できたら幸いです。
ではご覧あれ~。
「丸竹夷二押御池~、姉三六角蛸錦…」
赤い立派な鳥居の先の、六十段にもなる階段を上りきった先にある、小さな神社。
境内を巫女服姿の少女が京都の通りの暗記歌を唄いながら箒をかけていた。
「よしっ!今日もカンペキ!」
少女は箒を社の隅に立てかけ、社の縁側に腰掛けた。
季節は夏。
昨日から始まった夏休み。
扇風機が首を振っている。
プロペラを覆う安全カバーに結ばれた青いセロハンが風になびく。
風鈴が微かな風を感じてチリンと音を立てる。
ぶたの香取線香は絶え間なく煙を吐いている。
青い空。
白く大きな入道雲。
裏山から響くセミの声。
車なんてめったに通らないような田舎町。
照りつける太陽。
「暑いなぁ…。小学生のころはこんなの何ともなかった気がするのに…。温暖化進んでるのねぇ」
そうつぶやいたこの紅白少女の名は城山 劉。
氷雲神社の神主兼巫女である。
境内の箒掛けは毎日の日課。
それを終えてから彼女の一日は始まる。
「暑い!川行こう!川!」
そう思い立ってチャチャっと川に行く装備になった。
裏には山、近くに小川。さらにちょっと足を延ばせば海。
自然がいっぱいのこの町は遊び場も限られる。
劉は階段の下に止めてある自分の自転車のペダルに足を乗せ、一気に体重をかけて漕ぎ出した。
家を出て少しした頃、目の前に綺麗な水がキラキラと流れる景色か広がった。川辺に立ててある看板には氷雲川と書かれていた。
「う~ん、やっぱり川はいいねぇ~。」
劉は自転車を降り、うんと背伸びをした。この川は劉が小さい頃から夏によく来ていたため、夏にこの川に行くことがもはや習慣になっていた。
ぽちゃん!
「うん?」
不意に水の音が聞こえたような気がした。
「なんだろう…。まさか河童?あっはは!ないない!」
笑いながら音のなった方にゆっくりと近づいていった。すると、そこには小学生くらいの少年が座っていた。
「きゅうり…?」
そう、少年はきゅうりを食べながら石を投げていた。
「あ、よく来るお姉ちゃんだ。…きゅうり食べる?」
「あ、うん。ありがとう…。」
劉は少年と一緒にポリポリと軽い音を立てていた。
(この子、何者…?)
劉は横目で見ながら考えていると、少年は言った。
「僕ね、河童なんだ。」
「へぇ、河童…。…河童!!」
「うん、河童。それにしても暑いねぇ、昔はそれほどじゃなかったのになぁ。」
「あ、うん、そうねぇ。」
(普通すぎる!しかも河童!?いやいや、いやでも、え?)
劉は内心パニックになっていた。この時代に河童?それはない。…と思う。
少年の言うことはにわかには信じられない。
だからついつい聞いてしまう。
「ねぇ…。河童って…?」
別に疑っている訳ではない。
劉はただただ信じがたいことを言われて戸惑っていた。
「うん…。信じてもらえないよね…」
肩を落とす少年。
劉から見ると目の前の少年は明らかに人の形。
頭に皿があるわけでもなければ、肌が緑色だったりもしない。
ましてや甲羅なんてあるわけない。
見た目は10歳くらいの、人間の男子。
「いや、私、信じるよ。ちょっと待ってね。覚りを開いた巫女の力、侮っちゃいけないわよ」
そういうと、劉は少年の額に右手の人差し指をあてがった。
「…うん。確かに妖ね。脳の波動が人とは違うわ。でも、河童は百年前にニホンカワウソと一緒に絶滅したって…。教科書に書いてあったわよ?」
「待って!ニホンカワウソは発見例がないだけであって絶滅判定まだ出てないよ!しかも世間一般でオカルト扱いされてる僕らが教科書に載ってるのはおかしいよね!」
「盛大に突っ込んできたわね。で、私の前に出てきたってことは何か相談?」
「あれ?絶滅した件に関してはノータッチ!?まぁ、相談があるのは事実だよ。昔からここに来てくれる巫女さんなら…って思ったんだ」
ちょっと俯き加減でゆっくりと話す河童。
「まさかほんとに相談とは…」
「適当に言ったの!?てっきり覚りを開いたから相手の考えが分かるのかと…」
「そんな能力はないわよ。人間だし。で、相談内容は?」
さっきから相手が年下に見えるせいか態度の悪い巫女さんである。
「えっと…。僕と契約してお友達になってよ!」
右手の親指を立て、劉に向かって突き出した。
「…は?」
「ごめん。契約は適当に言った。でも友達になって欲しいのはホントだよ!だから名前で呼んで!」
「それはいいけど…。相談ってそれだけ?それにあなたの名前は何?」
「ううん…。本当の相談は…。そして僕の名前は…」
真剣な顔になって河童は一瞬言葉を切った。
そして意を決したように言った。
河童の名と、もう一つの相談は…。
「妖はね?妖の存在を心から信じている人じゃないと見えないんだ。だから、最初に話しかけられた時は本当にびっくりしたんだ。それでね?冬眠している間にここ辺りに居たはずの河童が何故かいなくなっちゃたんだ…。だから一緒に河童を探して欲しいんだ。」
少年は一回そこで一旦言葉と切り、一呼吸してから言った。
「それで、僕の名前はね?瑞希って言うんだ。」
「あら、一緒の名前!」
「えっ?」
「私の名前は城山劉って言うの。」
「本当だ。」
そう言って少年、瑞希はけらけらと笑った。
「でも、昔は河童なんて見なかったよ?っていうか河童って冬眠するんだね。」
劉はよくここに来ているから分かる。昔はここに河童らしい河童なんていなかった。
「最近の河童は僕みたいに人の姿をしてるんだ。妖怪だって生きてるからさ、冬眠くらいするよ。」
「へぇ…。」
その時に、河童のイメージが音を立てて崩れていった。
「よし!じゃあ探すか!どうせ夏休みだし、暇だからね!」
「本当に!?ありがとう!」
こうして「ミズキ」二人の奇妙な旅?が始まった。
「これからどうする?河童のことは全く知らないから作戦を考えようもないんだけど…。」
「劉お姉ちゃん、とりあえず遠出の準備をしてきたら?」
「…。」
劉は自分の服装を見た。短パン、半袖にサンダル。確かにこれは遠出の服装ではない。それに着替えなんて遠出にもっとも必要ない。
「それもそうね。じゃあここで待ってて。すぐに戻ってくるから!」
「うん、分かった!」
そう言って劉は自転車のある場所まで戻った。
でも、遠出って言っても…。
どこに行けばいいんだろ。
第一、近所は探したのだろうか…。
ぐるぐる回る疑問たちはいったん仕舞い、寄り道せずに神社へと戻る。
自転車を飛ばして約十分。
60段の階段を駆け上がり、社へと入る。
「とりあえず貯金通帳…?あとは携帯と…着替え…。巫女服?」
あーでもない、こーでもない。
ぶつぶつ言いながら即席遠出装備を揃え、再び川へ出陣。
瑞希は、さっきと同じ場所にいた。
大きな岩の影に座っていた。その岩は昔からあったようで、コケがびっしり付いていた。
「おまたせ!」
そう声をかけながら、劉はかすかな違和感を感じた。
(今、なんか凄く寂しそうな顔してた…?)
そう感じたのも束の間、すぐに明るい笑顔を向けてくれる。
「あ、お姉ちゃん!早かったね!」
「そう?一応急いだからね~」
そう言いながら、仲間を探すための手がかりを聞き出そうとする劉。
「最後に仲間たちを見たのはいつ?」
「えっとね…。え~っと…。この前だよ。100年くらい前かな?」
「えっ!?」
劉が驚くのも無理はない数字だった。
「人間でいう100年。長寿の河童にとってはこの前だよ」
劉が驚くであろうことは予想済みだったのか、すぐに言葉を付け足した瑞希。
100年前。
今はコンクリートで固められた部分が目立つ川岸も、100年前なら今瑞希の横に転がるような岩がそこらじゅうに転がっていたであろうことは容易に想像できる。
コンクリートで固める。
学校で習ったから、劉にも少しは分かる。
…生き物の生態系が変わり、住処を無くしたものの行く末は…。
絶滅。
大きく首を横に振り、最悪のシナリオをかき消した。
でも、それ以外に瑞希の仲間たちがいなくなった理由が見当たらない。
かといって、自分が勝手に想像した憶測を瑞希に話せる訳もない。
「とりあえず、どこに行けばいい?」
無理につくったのかと聞かれれば否定しきることのできない笑顔を作り、瑞希に質問したのだった。
「隣町にこの川の上流があるんだ。この前と同じならそこに僕の親戚が居るはずなんだ。」
「じゃあ、そこに行ってみよう!」
この前と言っても100年前。上流もその時の環境のままとはいかないだろう。瑞希の親戚も居るとは限らない。そのことを瑞希には言わなかった。言えなかった。
「じゃあ瑞希は自転車の後ろに乗って!」
「分かった!」
こうして一人と一匹(?)の奇妙な旅が始まった。
……………………
…………………
………………
今私たちは隣町の高日出町に来ていた。
「あとどれくらい?」
「あと15分くらいかなぁ。」
劉はじっとりと汗をかきながら自転車を走らせていた。
(暑い!それに後ろが重いから足がキッツい!)
そんなことを思いながら氷雲川の上流にあたる玉川に向かった。そして…。
「はぁ、はぁ。」
ようやく劉たちは玉川に到着した。
「あんまり変わってないなぁ…。居るかなぁ、叔父さんたち…。」
劉はちょうどいい石を見つけ、腰をかけ考えていた。もし、この子以外の河童が居なかったらこの子はどうなるか。もし、この子以外の河童が見つかったらどこに行ってしまうのか。しかし、劉は小さく首を振った。
(そんなことよりもこの子の親戚さんを探さなきゃ!)
「瑞希、一緒に行ってみようか。」
「うん!」
川の方に下っていくと、子供や大人の姿がちらほら見えた。やはり夏休み、いつもより人が多い。そんな中、劉は少し違和感を覚えた。
(これは…?妖気…?)
まさか河童?いやでも…。瑞希より大きいし…。
劉が考えに耽っていると、瑞希が声をあげた。
「あぁ!」
劉はいきなりの大きい音に身をすくめてしまった。
「どうしたの…?」
「叔父さんだぁ!」
「え!」
「この前探したときはいなかったのになぁ。」
瑞希はそんなことをぼやきながら歩き出した。
瑞希の叔父さんは声を聴いてダブルミズキに気付いた。
しかし、すぐに顔を反対へと向けて走り去ってしまった。
「あ…」
寂しそうに俯いて走り始めた足を止めた瑞希。
その後ろからゆっくりと近づき、肩に手を置いた劉。
「急に来たからビックリしたんだよ。今日は帰ろうか」
そう言いながらも劉はかすかに感じていた。
あの河童、明らかにわざと瑞希を避けていた。
一体なぜ…?
でもとりあえずそれが現状ならば退くしかない。
もし相手に敵意があったら…。
御札は全て巫女服のポケットの中。
「じゃあ、行こうか」
舗装すらされているか微妙な道を通る。
途中は完全に未舗装路だった。
帰り道は二人とも無言だった。
ただもくもくと自転車を進める劉。
ただしがみ付く瑞希。
2人が氷雲川に到着したときには、すでに夕日が半分沈んでいた。
帰ってくる途中の2人は、それを見ることができる、海を見渡せる長い下り坂も通ってきたのだがそれにすら気づかなかった。
「…ごめんね」
瑞希が静かに謝った。
「いいよ。別に瑞希が悪いんじゃない。また明日、来るから」
それだけ言って、自転車から瑞希を降ろした。
ちょっと心配ながらも、劉は自転車を神社に走らせた。
「はぁ~。疲れた。遠出って隣町だったのね~…」
そういってテレビをつけた。
夕食はカップ麺。
今から料理をするのは気が引けた。
「でも焦ったなぁ~。まさかあの時河童に囲まれるなんて…」
劉はちゃんと気づいていた。
瑞希を玉川まで連れて行ったあの時、そこら中から妖気を感じた。
妖怪から見たら人は餌。
巫女は敵。
河童とはいえ、襲われたら尻子玉とかじゃ済まなかったかも知れない。
「でも瑞希は河童だよね。見に来たのかな…」
瑞希の頭は疑問でいっぱいだった。
家に戻った劉はソファに座り少し考えてみた。何故あそこに河童が集まっていたのか、そして瑞希を何故避けたのか。
(瑞希を恐れた…?)
いや、まさか…。あの子は至って普通の河童のはず。瑞希の住んでいた川から逃げる必要もないし、敵意を持つ理由がない。
(じゃあ、何故…?)
(じゃあ、巫女である自分が居たから…?)
だったら逃げるようなことはしないはず。そう考えながら、劉の意識は徐々に薄れていった。
チュンチュン…
「うん…?」
「あぁ~!」
劉はものすごい勢いでソファを飛び起きた。
(いつの間にか寝てた…!)
「さて、今日はどうするかなぁ。」
→・寝る
・川に行く
「うん、寝よう!」
こうして劉は自分の部屋にのそのそと戻っていった。
部屋に戻った劉はまた思案に耽っていた。
(う~ん…。)
うん、やっぱり川に行こう。そうした方がいろいろ早い!
劉は隣町に行けるような服装で、自転車に乗った。
(あ、朝ご飯…。途中で買おう!)
そして川。劉はおにぎりのラベルを剥がしながら瑞希に聞いた。
「あのさ、叔父さん以外に知ってる人居た?」
「ううん、居なかった…。知らない人たちだった。」
「そっか。」
劉はかける言葉が見つからなかった。家族にも等しい親戚に逃げられる絶望は計り知れない。それに今は最も頼るべき家族が居ないのだ。瑞希の心が曇っていくのを、劉は表情でわかっていた。
「ねぇ、お姉ちゃん。今日も玉川に行かない?」
「え!?」
まさか瑞希から言い出すとは思わなかった。
「いいの?」
「うん、僕は何かの間違いと思ってるんだ。」
私だってそう思いたい。でも…。
「うん、分かった。」
劉にはそう答えるしかなかった。
行くならばそれ相応の装備は必要だろう。
「ちょっとだけ待ってて!」
そう言って、自転車にまたがり神社を目指す。
階段を駆け上がり、さっさと巫女服に着替え、懐にはお札を3枚。
妖相手なら十分通用する守りのお札。
使わないのが一番いいのは分かっているが、念のため。
紅白は再び階段を駆け下り、自転車に跨った。
いい加減ママチャリだとシンドイものがあるが、今は弱音は吐かない。
ペダルに足を乗せ体重をかけ、瑞希のもとへと向かった。
「お待たせ!」
「おー!着替えてきたんだね」
劉の姿を見て呟く瑞希。
「じゃあ、さっそく行こうか」
時刻は10時半。
2人は玉川へと漕ぎ出した。
天気は晴れ。
暑ささえなければ心地よいだろう。
時より潮の香りがするこの町。
遠くに漁から帰ってきたイカ釣り漁船が見える。
そんな中を自転車で移動した。
玉川へ到着。
昨日とは打って変わり人出があまりない。
そんな中、昨日見た顔があった。
「叔父さん!叔父さんでしょ!」
そう言いながら走り寄る瑞希。
手を前に伸ばし、すがりつかんとしている。
しかし、今日も瑞希から逃げようとする河童。
顔を反対側へと向けて走り出した。
「今日は逃がさないわよ!」
劉はそう叫ぶと御札を一枚逃げる河童に向けて突き出した。
すると、河童は足を取られたかのように前に転んだ。
「ちっ…。足枷かよ…。こりゃ逃げられないわ」
河童はそうつまらなそうに言った。
「巫女なめないで欲しいわね。足枷術の御札持ってきてよかったわ」
そういう紅白の姿を、河童は尻もちをついた体勢で見ていた。
「あなた、瑞希の叔父さんのようね」
ゆっくりと、威圧的に河童へと語りかける劉。
「そうだよ…。だからなんだよ」
「どうして逃げたの?」
「どうでもいいだろ!」
「良くないわね。瑞希がどれだけ傷ついたか想像できないわけ?」
そう言われて、河童は暫く黙りこんだ。
「…早く、どっか行った方がいい。もうここには来るな…」
それだけ言って、立ち去ろうとする河童。
いつの間にか劉は術を解いていたらしい。
「どうして?来ちゃダメなの…?」
不安そうに瑞希が言った。
「ダメだ!早く行け!どうなっても知らないからな!」
そう叫んで河童はどこかへ行ってしまった。
瑞希が呆然と立ちつくしていた、まさにその時だった。
「他所もんが入ってくんじゃねーぞ!」
そう叫び声が聞こえたかと思ったら、知らない顔の河童が飛び掛かって来た。
(間に合わない…!)
劉は一撃食らうこと覚悟で、袖の下から御札を取ろうとした。
その時。
「そいつらには手を出すんじゃねーぞ!」
まさに河童の攻撃が瑞希にヒットしようとした刹那、敵は真横に吹っ飛んでいた。
ゆっくりと瑞希が目を開けると…。
「叔父さん…?」
知った顔の河童が立っていた。
「ったく。だから早く帰れと言ったのに…。そこの巫女、瑞希を連れて川から離れろよ。縄張りから出れば問題ねえ。…いや、俺が言った方が早いか」
そういうと、河童は大きく息を吸い叫んだ。
「この二人は敵じゃない。手出し厳禁だ」
「あてて…。リーダー本気出さんといてくださいよ…」
さっき吹っ飛ばされた河童がよろよろ歩きながら近寄ってきた。
「あっはっは!わりぃわりぃ」
瑞希の叔父はそう言って笑う。
「リーダー?」
瑞希が不思議そうな顔をして聞いた。
「おうよ!俺がこの群れのリーダーだ!いやぁ、久しぶりだな瑞希。まさか来るとは思わなかったからてっきり敵が来たのかと…」
右手で後頭部を掻きながら笑った。
「昨日はなんで逃げたのよ?」
劉が変わって質問した。
「仲間が早とちりして攻撃したら大変だからな。俺がいなけりゃここからすぐに撤退してくれるだろうと思って」
まさにその通りだった。
逃げられたショックからすぐに帰った。
計画通りの行動だったのか…。
「で、氷雲川の連中は元気か?」
瑞希の叔父は笑う。
しかし、瑞希の言葉を聞いて状況は変わった。
「…みんないなくなっちゃったんだ」
「えっ…」
寂しそうな瑞希の顔をただ見ているしかなかった劉だった。
「なんでなんだ!?ついこの間まであそこは河童のたくさんいる綺麗な川だったじゃないか…!」
瑞希の叔父さんとやらはこのことを知らなかったようだった。そしてこの事実に相当ショックを受けているようだった。
「うん…。」
「まさか、お前の親も居ないって事は無いだろうな…?」
「…。」
瑞希は黙ったまま下を向いていた。それは無言の肯定のようなものだった。
「クソ野郎が…!お前は…、巫女は何か知らねえのか!?俺たち河童は簡単に消えるような軟な生き物じゃねぇ!それに、河童は絆があるんだ!散り散りになるようなことはしないはずなんだ…!」
そういいながら劉に詰め寄った。
「すいません…。何も…。」
劉は素直に答えた。それにこの答えは自分も知りたかった。
「…。瑞希、今日からここに居ろ。お前にまで居なくなっちまえば俺はどうにかなっちまう。」
瑞希の叔父さんは落ち着きを取り戻し、瑞希に言った。そして…。
「巫女、あんたの名前を聞きたい。」
劉の方に向き直って聞いてきた。
「城山劉です。」
「ミズキ…、これもなにかの縁だな…。俺の名前は銀だ。」
そう言って、瑞希の叔父さん、銀は両膝を付いて頭を下げた。
「どうか俺の家族、瑞希の家族、そして仲間を探し出してくれ…!ここに居る奴らにも手伝わせる!俺も手伝う!頼む、力を貸してくれ…!」
劉は驚いていた。妖にとって敵である巫女に頭を下げるなんてことはありえなかった。しかしそれでこの人は頭を下げている。それほどまでに家族が、仲間が大切なのだと劉は確信した。
「断る理由なんて…、ある訳無いじゃないですか…。やりましょう!」
「ありがとう。恩に着る!」
「ありがとう、お姉ちゃん!」
「さて、とりあえず辛気臭い話は終わり!また明日からってことで!銀さん、川に入ってもいいですか?昨日の今日で川に入ってないのよ!」
銀は一瞬呆気に取られ、そして笑いながら答えた。
「別にいいぞ?」
「僕も行く~!」
靴を脱いで裸足になり、川に一歩踏み出した。
「…何よ?別に女の子が川に入ったからって読者サービス的な描写は無いわよ?」
「子供な紅白さんには何にも期待してねーよ」
「んなっ!子供じゃないわよ!巫女服は締め付けるから細く見えるだけ!」
「はいはい。分かった分かった」
「信じないと退治するわよ?」
この言葉で「河童が消えた犯人あいつなんじゃねーの?」とどこかで思った銀だった。
「んじゃそろそろ帰るわ。じゃね~、瑞希」
「じゃあね、お姉ちゃん!」
瑞希に手を振って自転車に跨り帰宅する劉であった。
神社に着いてからも日が落ちるまではだいぶ時間がある。
「たいてい生物がいなくなるのって環境の変化か乱獲よね~。乱獲は無いか…。河童を狩れるのは巫女くらいだし」
第一狩るメリットがない。
だとすると…。
「環境の変化か…。百年の間に氷雲川に何があった?」
そう思い、やってきたのは海。
劉の知り合いの漁師。
漁師歴50年のベテランである。
そんなオッサンが漁港にいる。
「久しぶり。浮島丸のオッサン」
劉がそう声をかけたのは短髪の白髪頭が似合う初老のオッサン。
頭にねじりハチマキのようにまいた白いタオルが特徴的。
「よう巫女。いい加減名前覚えてほしいな。俺の名前は中じ…」
劉はいつも「浮島丸のオッサン」と呼ぶため、名前を覚えていない。
何回も聞いているがすぐに忘れるのである。
因みに、「浮島丸」とはこのオッサンの船の名前。
イカ釣り漁船である。
「中島だっけ?オッサンはオッサンよ。浮島丸のオッサンに変わりはないわ。そんなことより、一つ質問」
「お?なんだ?また魚たかりに来たか?」
「何?たかっていいわけ?」
時より、劉はこのオッサンから魚をもらう。
だからオッサンは今日も劉は魚をもらいに来たのかと思っていた。
「いいよ。ちと小さめの売れ残りがあるから持ってきな。どうせ捨てちまうならもらってくれる方がありがたい」
「じゃあありがたく。で、質問なんだけど、魚の漁獲量って増えてるの?」
「え?最近は減る一方よ。ほら、30年前に氷雲川の上流にダムできたでしょ。あれから一気に減っちゃって…」
「ありがとう!」
そう叫ぶと、劉は神社へと向かい自転車を飛ばした。
後にはあっけにとられたオッサンだけが残っていた。
それでも魚だけは忘れず持っていく辺りがこの巫女である。
「ダムだ!河童が消えた原因はダムに違いない!」
社に戻った劉は確信していた。
35年前、氷雲川の氾濫に悩まされた住民たちは上流にダムを造り、川岸をコンクリで固めた。
これで生態系は壊れ、住処を追われたものもいた。
それが河童…。
その結論を出したとき、劉の心はチクリと痛んだ。
「…結局、人間のせいじゃない…。瑞希に何て言えばいいか分からないよ…」
責任を感じられずにはいられない劉だった。
「とりあえずダムに行ってみよう…。そうすればヒントくらいはわかるはず…。」
一旦劉は家に帰り、濡れる前提の準備をして家を出た。ここからダムまで自転車で二時間程だ。普段なら行かない遠出だが、行かない訳には行かなかった。
「よし、気合入れていきましょう!」
現時刻は12時丁度。丁度いい時間だ。劉は地図を片手に自転車をゆっくりと漕ぎ出した。
一方、瑞希はというと…。
「叔父さん…、見つかるかな…。」
瑞希は暗い顔をしていた。知り合いがいない、仲間がいない、家族がいない。瑞希は今まで頼る存在が居なかった。今は居るかもしれない。しかしそれでも怖かった。もしかしたら見つからないかもしれない。今居る頼るべき存在が居なくなってしまうかもしれない。そんな恐怖が瑞希の頭にこびりついていた。
「大丈夫だろう。少なくとも、俺たちがここにいるんだ。それに、曲がりなりにもあの巫女が付いてるんだ。あの城山一族はやってくれるさ。」
銀はそう言った。銀は昔から楽天的だった。しかし何か面倒事が起きると常に矢面に立っていた。代々この地を守る氷雲神社の神主、城山一族とのいざこざが起こった時もそうだった。城山は確かに妖を退治しているかもしれない。しかし、それは悪しき妖を退治しているに過ぎない。もちろん河童も退治された。それでも城山を信頼しているのは理由があった。
(城山は善意のある妖には絶対に手を出さない。むしろ守ってくれる。助けてくれる。信頼する理由がこれ以上にあるか…!)
「おいてめぇら!集まれ!」
銀はこの川に居る河童を呼び寄せた。散らばっていた河童が集まりだし、銀を囲んだ。
「今、城山は消えた仲間を探している!けどな!俺たちはこのままでいいのか!俺たちも仲間を探しに行くぞ!」
どっ、と叫び声が上がった。それは生気に満ちた声だった。あの城山が仲間を探してくれている。それだけでも玉川の河童は嬉しかった。
「おうともよ!」
「もちろんだぜ、リーダー!」
こうして玉川の河童たちも行動を始めた。
………………………
……………………
…………………
「ふう、ふう…。」
劉は山道を自転車で駆けていた。自転車を漕ぎだして約一時間。ようやく折り返し地点だが、全然近づいているように感じなかった。
「もう無理…。これ絶対無理だって…。足パンパン…。」
劉は自転車から降り、椅子サイズの石に腰をかけた。一息つき、ふと考える。玉川にいる瑞希は家族と呼べる存在が銀しかいなかった。不安じゃないだろうか、寂しくないだろうか。瑞希を気にする劉にはちゃんとした理由があった。それは、氷雲神社の神主である父親から常日頃から聞かされている言葉にあった。
「河童は良い奴らだよ…。ここの河童に出会って考えが変わった。劉、もし河童に会える事があったなら、よく話を聞き友となれ。彼らは絆こそを信条とするからな。彼らは必ず答えてくれる。」
当時は甚だ信じちゃいなかった。河童は尻子玉を抜く悪い奴ら、と思っていたからだ。しかし、父の言った通りだった。でなければ河童が頭を下げるはずがない。
「さて、そろそろ行きますか!」
休憩も程々に劉はダムへと向かっていった。
徐々にキツくなる山道を立ち漕ぎを駆使して登っていく。
電動でもなければロードレーサーでもない。
ただのママチャリには重労働。
もう海は見えない。
見えたのは…。
「ダムだ!」
劉は反射的に叫んでいた。
水は予想以上に透き通っている。
水不足は心配いらないかな。
そんな風に思った劉だった。
「ダムって…。どうやって水に近づくのかしら?」
降りれる場所がない。
もう少し場所を移動しようと思い、自転車に跨った。
とりあえず、ダムを通り過ぎ川の上流を目指す。
上の川から伝って行けばいい。
そう考えた結果からの行動。
しかし、ちょっと進むと道が途切れた。
「仕方ないわね…。歩くしかないか…」
服装は半袖長ズボン。
服の下には水着。
半袖というところがミスチョイスだったかも知れない。
劉は自転車から降りて道の先…林の中へ入っていった。
目指すは川。
ジメジメする。
倒木が倒れていて歩きにくい。
蚊がうざったい。
無意識のうちに足早となる。
すぐにダムのちょっと上流に当たる川に出た。
水深は深くない。
まだ脛あたり。
いざとなればポケットの中の札を使う。
そう覚悟を決めて踏み出した一歩目。
「そこから先は深いぜ!人間!」
突然声をかけられ、劉は背中を震わせてから足を止めた。
「おっと、驚かせた?悪いねぇ。でも、ここから先は一気に深くなるからな。まぁ、行くなら止めないけどよ」
劉の目の前には、一人の20代と思われる男が立っていた。
「別に死にに来たわけじゃないから、忠告は聞くわ。ありがとね、河童」
「おう!…え?なんで俺が河童だと分かった!?」
「人間!って言ったし…。私巫女だから妖気で分かる」
「へぇ~。巫女が一体何しに…。まさか退治しに来たのか?相撲なら負けんぞ!」
「いややらないし…。退治もしないから…。そんなことより、ここにほかの河童はいないの?」
結論の核心に触れる部分を聞いた。
すると、河童はうんざりしたようなポーズをとった。
「もっと上の方なら、最近移動してきた連中がいるが…。ここにはいないな」
「じゃあ案内して」
冷たく劉が言った。
「俺も忙しいんだけどな…」
「いいから!退治するわよ?」
ポケットから札を取り出した劉を見て河童は大人しくなった。
「脅すのは無しだぜ…」
「私に仕事するなと?ニートになっちゃうじゃない…」
「いやそうじゃなくてだなぁ…」
不平不満を漏らしつつも河童は道案内を始めた。
周りは人間の手が入っていない山。
川の上流に来た所為か、辺りには大きな岩がゴロゴロ転がっている。
そんな川の中を、劉はズボンの裾をまくって歩いた。
「ねぇ、疲れた。まだなの?」
「ったく…。人間はやわだな。あとちょっとだ」
暫く歩き、足場の悪さも手伝って体力の減りは早い。
もう一休みしよう。
劉からそんな声が出そうになったとき、河童は足を止めた。
劉は付近にあった巨石に腰かけた。
「ちょっと待ってろ。今呼んできてやんよ」
そう言って身の前の河童は森林の奥地へと消えた。
劉は携帯を開いてはみたが、案の定圏外。
軽く振ってみたが繋がらない。
思い切り振っているところに河童が帰ってきた。
横にはまだ若い、けれど杖を突き、痛々しく頭に包帯を巻いた傷だらけの河童が立っていた。
「仲間、連れてきた」
それだけ言うと、道案内をしてくれた河童は森の奥へ消えた。
………。
暫くお互いに目を見ながら黙っていた。
…。
先に切り出したのは劉だった。
「名前は?」
すると、河童はすこし高い声で答えた。
「桜花」
「桜花…ね。その怪我は?多少なら治せるけど?」
「ダムの放水…」
怪我を治すための御札を取り出そうと、ポケットを漁っていた劉の手がぴたりと止まった。
「放水…?」
「放水で…、怪我した…。」
やはり!と劉は思っていた。ダムから放水すれば下流はとてつもない流量となる。その流れを危険に思った河童達が移動を開始したのでは…?しかし、それだったら上流も酷いことになる…。
「それで…、何が聞きたいの…?」
桜花はゆっくりと口を開き、喋りだした。
「あなたは、玉川に居たの?」
劉は気になっていたことを問いかけた。もし玉川に住んでいたなら、何かを知っているかもしれない。
「うん…。」
「じゃあ、玉川から河童が消えた理由、知ってる…?」
「みんなが移動するから、ついて行っていただけ…。」
桜花はそう言って俯いてしまった。どうやら理由までは知らないようだった。
「瑞希を置いて移動した…?なんで…?」
桜花は無言のままだった。分からない、ということだろう。ここにきて更に訳の分からないことになってしまった。ダムの所為ではないし、河童は自分達の意志で移動した…?いや、でも…。
「みんなの所に行く…?」
不意に桜花が話しかけてきた。そうだ、みんなの話を聞いてみよう。何か分かるかもしれない。
「うん。連れてって!」
そうして桜花と劉は森の奥に歩いて行った。
「鬱陶しいわねぇ、なんなの、これ?」
劉は足にまとわりつく草を手で払いながら進んでいた。桜花はというと、やはり河童。慣れた様子で進んでいた。しかし怪我人らしく、進むスピードは遅かった。
「大丈夫?」
「うん…。」
こうして、劉が情報を集めている時、銀さん率いる河童達も奮闘していた。
「アイツ、大丈夫か…?」
銀は今、情報を集めていた。何故玉川の仲間が居なくなったのか玉川の生態系がどう変化していったのか。しかし、いかんせん情報が集まらない。俺達ですらこうなんだから、ちゃんとやっていけるかどうか…。
「リーダー!」
銀の居た部屋に若い河童が飛び込んできた。
「なんだ!」
「ちょっと、漁師に聞いたんですがここ百年、川の漁獲高が少ないらしいです。」
「何かと思えば…。」
いや、待てよ…?俺達河童は遊牧民みたいなもんだ。食べるもんが無くなれば別のどこかに移動する。いや、いやいや…。まさか…。
「リーダー?」
移動するにしても何故瑞希を置いて行ったんだ…?もしかすると何か理由があったのかも…。
「リーダー!」
若い河童が叫ぶように銀を呼んだ。
「あ、あぁ。すまん。分かった。それ以外になんかあるか?」
「すみません、それ以外は…。」
「分かった…。」
こうして少しずつ着実に玉川の河童が消えた理由が解明されていった。
………………………
……………………
「そろそろ着くわ…。」
桜花は劉の方を見ながら言った。あれから30分程歩き続けてやっとである。
「本当!そろそろ休みたいと思ってたのよねぇ…。」
河童はタフな生き物である。今回の事件で劉は通関していた。
それから十分程で河童の集落にたどり着いた。
(やっと謎が分かる!)
そう思うと劉は小躍りしそうになった。
「結局ここまで来たのか?」
笑いながら話しかけてきたのは、川で話しかけてきた河童だった。
「間が持たなかったのよ…。」
劉は小声で答えた。
「…、まぁ。それは分かる…。」
やっぱり河童でも感じることは同じらしい。
「ねぇ河童、玉川から来た河童達の所まで案内して。」
「まぁ、そうだろうと思ってたけどよ…。さっきから俺の扱い酷くないか…?」
「気のせいよ。」
こうして、玉川組の河童に会いに行った。
少し歩いて、一つのグループの所まで来た。
「大樹か…、魚なら全部食っちまったぞ?」
グループの一人の男が私達に気づき、話しかけて来た。そういえばこいつ、こんな名前だったんだ…。
「今回はたかりに来た訳じゃねぇよ。ちょっと紹介したいヤツがいるんだ。」
「そこのお嬢ちゃんかい?」
「あぁ。人間、後は勝手にやんな。」
「言われなくても!」
こうして、河童こと大樹は離れていった。
「あんた、巫女か…?」
グループの男が話しかけてきた。少しヤの付く人っぽいが雰囲気がそうではなかった。この人に、ちゃんと玉川から消えた理由を聞かなければ!
「はい。今日は聞きたい事があってここまで来ました。」
「ご苦労なことだねぇ。人間ならここまで来るのに一苦労だというのに…。」
一呼吸おいて劉は本題を切り出した。
「二つ程聞きたいことがあります。まず一つは、何故玉川を離れたか、ということです。」
「それは単純に食い扶持がなくなったからだな。あそこはダムの影響で魚が少なくなっちまった。だから食べ物が多いここまで来たんだよ。」
「じゃあ!じゃあなんで瑞希を置いて行ったんですか!?」
「アイツの寝相が悪いからだ!」
…。はい?いや、いやいや…。確かに瑞希は冬眠してたって言ってたけどさ…。
「なんで意地にでも連れて行かなかったのよ!」
いくらなんでもそれはおかしいはず…。
「寝てる瑞希はもはや生物兵器だ…。父親である俺が保障しよう…。」
「父親?」
「あぁ、希助ってんだ。そういえば言ってなかったな。あんたの名前はなんだ?」
このオッサンが父親…。に、似てない…!
「城山劉です。巫女やってます。」
「瑞希と一緒か!あと、今失礼なこと考えなかったか?」
「トンデモナイ!」
…。話がずれた!元に戻そう…。
「置いていくにしても、どうして置手紙的なものを残さなかったんですか?」
「残したぞ…?結構でかい岩に…。」
「え!?」
まさか…、まさか全部の苦労が骨折り損!?そんなことって!
「…。とりあえず玉川に行ってみよう。」
そう希助が切り出した。やっぱり、玉川に行って確かめた方が早い、そう思ったのは劉も一緒だった。
「瑞乃も連れてくか…。」
「瑞乃?」
誰だろう…?
「俺の女房だ。つまり、瑞希の母さんだな。」
「へぇ。」
瑞希のお母さんに会えるのか…。どんな人なんだろう…。美人さんかなぁ…。
「少し待ってろ…。」
「はい…。」
その間、少し考えることにした。置手紙である大きな石は玉川のあの大きな石で間違いないだろう。しかし、文字なんて見なかった。う~ん…。
「この可愛く唸っているのがお巫女さんが劉さん?」
「まぁ、そうだな。」
その会話によって思考の洪水から脱出できた。希助の横に立っている女性が瑞乃さんのようだった。
(び、美人さん!しかもすごい瑞希と似てる!どっかのオッサンとは大違い!)
「おい、テメー…。」
「さぁ、行きましょうか!」
あえて言うけど、結果を早く知りたいだけだからね?スルーしたわけじゃないよ?
こうして、劉はまた玉川を目指すことになったのだが、現在の時刻は16時を回っている。玉川に着く頃には日がすっかり落ちているはずだ。
「ねぇ、二人とも。行くのは明日にしない?もう遅いことだし…。」
さすが瑞乃さん!分かってる!もう歩きたくないのよねぇ…。
「走ればまだ間に合うんじゃねぇか…?」
「女二人に何を求めてるのよ…。」
「そうだそうだ!」
「さっきから扱いひでぇ…。」
こうして劉はここに泊まることになった。河童の家に泊まるのは初めてだったが、それ以上に謎が分かる嬉しさがあった。
(あ、家に連絡しとこう。友達の所に泊まるってことで、間違ってないよね…?)
こうして夜は更けていった。
…………………
………………
次の日、劉ご一行は朝ご飯の魚を食べて、玉川上流を出発した。そして、なんやかんやで瑞希の居た玉川に到着した。するとそこには銀と瑞希が大きな岩の上で話していた。
「瑞希!」
希助と瑞乃が同時に叫んだ。銀と瑞希が驚いてこちらを向いた。
「父さん!母さん!」
瑞希は大きな岩から飛び降り、希助と瑞乃の下へ駆け寄った。瑞乃は瑞希を抱いて頭を撫でた後、鬼のような顔に変わった。それは希助も同じだった。
「今まで何していたの!?心配したのよ?」
瑞乃は瑞希の目線まで腰を屈め、そう言っていた。
「何をしていた…?」
希助は静かに瑞希に聞いた。瑞希は怒られる理由が分からなくて、しどろもどろになっていた。
「兄貴、義姉さん。俺達からも聞かせてほしい事がある。」
「なんだ…。」
瑞希を抱く瑞乃の代わりに希助が答えた。
「二人こそ、どこで何をしてたんだ?話はそれからだろ…。」
その言葉を聞いた希助は大きな岩に向かって歩き出した。
…そうか!岩!岩に置手紙があるんだった!
「コイツを見てみろ。」
希助は岩のコケを剥がし、指差した。なんとそこには…!
『お前が冬眠している間、ダムに移動する事にした。何せ食い扶持が無くなったからな。お前は寝相が悪いから先に行かせてもらった。』
と書いてあった。
「これは…。」
私は思わず笑いながら呟いた。だって、答えがそこにあるんだもん…。
銀は一瞬驚いた後、大笑いした。
「ハハ、ハッハッハッハ!まさに骨折り損だ!ハッハッハ!」
瑞希はただただ驚いていた。まさか、自分の近くに答えがあったなんて思いもしなかっただろう。
「瑞希!とりあえずそこに正座!」
希助は瑞希に怒鳴っていた。誰が見ても分かる。これは説教の構え…。
「説教は任せましょうか。」
瑞乃はケラケラ笑っていた。瑞希が見つかったことに安心しているようだった。っていうか止める気はないのね、ママン…。
「もうどうでもいいわ。」
銀は吹っ切れたようだった。さすがリーダー…。
「とりあえず、事件はこれで解決ね~。なんだったんだろうね、これ…。」
事件というか、お家騒動というか…。なにこれ?
「本当にな…。」
「全くね…。」
これで事件というべきか分からないが事件が解決した。ここに居る大人達は全員、瑞希に振り回された。しかし、ここに居る大人は全員楽しんでいたのかもしれない。
ふと、希助と瑞希が近づいてきた。
「瑞希、分かるな?」
そう言って希助は瑞希の背中を押した。
「ごめんなさい…。」
私達三人はその言葉を聞いて目を合わせた。そして全員一緒に口を開いた。
「よく言えました!!」
こうして激動の三日間が終わった。瑞希はその後、目を腫らしながら希助と瑞乃について帰っていった。銀は上流の河童に知らせてくると言って、上流に帰っていった。劉は結局の所、楽しかったからいいや、という結論を出していた。そして劉は、夏休み中の間ダム付近の河童の里にお邪魔しては、瑞希と川遊びをしていたのは言うまでもない。
少し間が空けば、筆者が変わった、ということですね。ミスターさん、私と交互に続いていますね。
はい、どう見ても作風が違います。本当にありがとうございました。判別の仕方は「~~」がミスターさんで「~~。」が私ですね。
しかしファンタジー書くのは辛かったです…。こういうのを本業にしてる人は本当にすごいですね…。想像力が半端ないんでしょうね~。
それでは、三国志列伝でお会いしましょう。では~。