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シカバネアソビ  作者: Mr.バナナ
Episode1~サマヨイアソビ~
9/150

EP1-008:危険人物

建一の少し後ろを歩いていた飛鳥は、その背中を強く睨みつけた。


飛鳥「"赤羽"…か。 話を聞く限り、彼にアジャスターが壊せたとは思えないけれど…」


光弐「なんだ、疑ってるのか?」


飛鳥「疑っている?……違うわ、赤羽達を信用する要素が無いだけよ。勿論、貴方もね」


光弐「はぁ、厳しいねぇ…」


飛鳥は最初から、誰の事も信用してなどいなかった。



◆◆◆◆◆◆◆◆



飛鳥「……着いたわ」


携帯で撮った地図と扉を見比べて、飛鳥はそう口にした。


上の階に通じている筈の扉は、これまで見て来たものと大差なく、資料室のように「階段」と分かりやすいプレートが付いている訳でもない。


光弐「地図が無かったら素通りしてたかもな、この階の部屋全部をチェックしてたら日が暮れちまう」


建一「だな」


飛鳥から貰った地図の写真データが正しければ、ここは小さな町ならスッポリと入ってしまいそうなの広さの建造物だ。


飛鳥「プレートは無いけれど、何かが小さな文字で書いてあるわ」


観崎「あ、ほんとだっ。えーっと…?」




『開錠:この階に1機だけ存在するAdjusterが破壊されている事』




それはB7Fへと進む為の条件だったが、その条件は建一の手によって既に満たされていた。


飛鳥「あら……案外あっさり通れたわね?」


そう言って飛鳥は何の躊躇いも無く扉を開けた。


その先には階段が続いており、階段を登りきった後にも扉があるようだ。


観崎「へぇ~、あの機械ってこの階には1つしかいなかったんだ~」


光弐「その考え方は違うぞ、観崎ちゃん」


観崎「みぎゅ?」


光弐「上の階には1機じゃなくてもっと沢山いるって事だ。それこそ数え切れない位に」


光弐の言葉に観崎も少し表情を強張らせる。


皆が無言になるが、飛鳥が階段を登り始めると、それに続いて光弐と観崎も続いて階段を登り始める。


建一「沢山……」


涼路さんの最後の姿を思い返す。


あんな兵器が大量にいるなんて、俺達はここから生きて脱出する事ができるのか?



飛鳥「…赤羽? 置いていかれたいなら止めないわよ」


目の前には開かれた扉と、その向こうにある階段からこちらを振り返っている皆の姿があった。


建一「お、おう……ッ!?」


気付いた事がある。



………この角度はマズい、色々と見える。



建一「………」


観崎「みぎゅ? どうして建一は下向きながら上がって来るの?」


光弐「…上を向く勇気がないのさ、チキンめ」


建一「うるさいぞ光弐」


もし頭を上げて、飛鳥がその状況に気が付いたとしたら……




…俺は、まだ死にたくなかった。




◆◆◆◆◆◆◆◆




B7Fのとある一室、そこで携帯電話の写真に納めた情報を見直している人物が居た。


「……ったく、面倒な事になっちまったな」


ため息をついて立ち上がる。


この状況そのものはそこまで危機的ではないが……


「……まぁ、それらしい奴が居れば不意打ちでもなんでもしてあの世行きにしてやりゃ良い問題か」


思わず緩んでしまった口元を直すと、俺は部屋から出ようと扉を開けた。






ゴツンッ!

「きゃふっ!」


扉の外に誰かが居たらしい。


その人物が開いた扉にぶつかって倒れた事を理解すると、俺は「料理室」という場所で手に入れた果物ナイフを右手に持った。


そして一気に、扉から跳び出し……!






「……あぁ?」


そこに居た人物を見て、俺は首をかしげた。


「……うぅ、痛いです」


そこに居たのはピンク色の髪の幼い少女。



「……チ」



―――脱力感



こんな小娘を殺した所で何の損得も無い、快感はあるかもしれないが今は必要ないしな。


「おい、お前の名前は?」


「え、えっとですね…知らない人に名前教えちゃいけないってママが言ってました!」


小娘の意見は正論だ。


正論だが……


「……はん、どうせ知らない奴に誘拐されて来た癖に今更何を言ってんだ。手遅れだっつーの」


「…え、これって"ゆーかい"なんですか?」


「………」


呆れて物が言えない、年齢相応の反応と言えばそうなんだろうが……


「…あっ、そういえば名前を聞くときは自分が先に言えってパパが言ってました! 名前を知ってれば知らない人じゃないし、とにかくおしえてくださ~いっ!」


邦和「…フン、俺は天真邦和(てんまくにかず)だ」


……そういや、こう面と向かって名乗るのは久しぶりだな。


その手の人間とはこのやり取りだけで殺し合いに発展するし、なにより『名乗る前に俺が相手を殺してしまっている』のが大半だ。


ま、こんな小娘に知られたところでなんの驚異でも無いだろうが。



まる「邦和さんですね、私の名前は珠田(たまた)まるっていいますー!」


邦和「ぶっ」


まずは自己紹介…といった空気だったのだが、小娘……珠田の口から問題発言としか思えない単語が飛び出す。


流石の俺もこれは予想外で、思わず吹いてしまう。


まる「吹くなんて酷いですよー、せっかくパパとママがつけてくれた名前なのに~!」


慣れているのか、珠田は少しむくれるだけでそこまで怒っていないようだ。


邦和「悪いな。それより珠田、"ゲーム"に興味はないか?」


まる「ゲーム…ですか? 興味あるですー!!」


子供である珠田がゲームに興味を示すのは当然の事だった。


いきなり話題を変えた事に疑問を持たない辺り、子供は扱いやすいな。


邦和「あぁそうだ、お前も目が覚めたらここに居たんだろう?」


まる「は、はい…」


邦和「俺も同じだ、だから二人でここを脱出するゲームをしよう。 こんな機会、滅多に無いだろう? 逆に楽しんでやればいいんだよ」


自分でも吐き気がする程の笑みを浮かべる。


一見子供である珠田の事を思って、あまり恐がらせずにここから脱出する為の提案にしか見えないだろう。


まる「わぁわぁ、やりたいです~!!」




……だが、それは違う。




邦和「とりあえず基本的にこの建物にいる奴等は悪魔だ、中には人の姿をした"悪魔"がいる。 そいつを倒さなければ先に進めない事もあるが…大丈夫か?」


まる「悪魔さんが雑魚で人間悪魔さんがボスですね!? まるは全然平気ですー!!」


邦和「…フ、よく言った」


弱者だが、純粋で裏切る事を知らない駒は手に入れた。


珠田には見えないように、俺は笑みを浮かべる。


邦和「さて、これからどうするかな………ククッ!」


……これは、珠田を利用する為の口車に過ぎなかったのだ。




◆◆◆◆◆◆◆◆




光弐「ふぅ、『登った』って実感沸かないな」


観崎「ねー」


光弐の言った事は、階段を登り終えてから皆が感じていた。


階段を登って扉を開けると、また似たような景色が広がっている。


ここが何階かを示す物もなく、階段を登ったのは確かなのに実感が沸かなかいのだ。


建一「でも、間違い無くここは地下7階だ。それに変わりは無いと思…」



飛鳥「ちょっと黙ってて」


1番前を歩いていた飛鳥に制止させられた。



建一「俺、うるさかったか?」


小さな声で、恐る恐る飛鳥に尋ねる。


飛鳥「違う、誰かが居るわ…」


建一「…!」


飛鳥が覗いている曲がり角の先、そこに誰かが居るらしい。


俺達は会話を中断し、角の先の様子を伺う事にした。



◆◆◆◆◆◆◆◆






ダンッ!


建一達の視線の先、そこでまだ人物反応を確認していない無防備なアジャスターの頭部が打ち抜かれる。


まる「うわぁ、凄い凄い! またまた頭を打ち抜きましたー!」


邦和「…ま、あんな鉄屑なら余裕だな。それにコイツは使い慣れている、出来ない方が可笑しいってモンよ」


そこには銃の試し撃ちをする天真邦和と、それを少し離れた位置で眺めながらはしゃぐ珠田まるの二人が居た。


まる「でも残念ですねぇ、まる達が打ち抜きたいのは機械悪魔さんじゃなくて人間悪魔さんなのに~」


邦和「別に時間制限は無いんだ、地道に捜してきゃあ良いんだよ。それにこれだけ広けりゃ、30人程度はいないとポンポン出会う事はないだろうしな」


まる「あ~あ、そう簡単にはいきませんねぇ…」


邦和「そう急ぐな、た●た●…






……る、ククッ」


まる「へっ、変な所で区切らないで下さいっ! 私はた●た●じゃないです~!」


まるは名前を弄られたのが嫌だったのか、真っ赤になって文句を言う。


邦和「子供とはいえ女が卑猥な単語を口にするもんじゃないぞ? 使い時を学ぶまでは遠慮しとくんだな」


まる「む、む~ッ…!」


ただの自爆なので何も言い返せないまるは、更に顔を紅潮させて唸る。


邦和「冗談はさておき、わざわざ俺達が誰かを殺さなくとも、勝手にアジャスターに殺されてくれる奴も居るだろう」


まる「ですねー! そろそろまるも何か活躍したいです、できればソレを使って!」


まるは邦和が持っているライフル銃を指差す。


邦和「そのうち必ず出番が来るから心配するな、お前の容姿は敵の油断を誘うには打ってつけだからな」


まる「まる、頑張りますよー! まるのだましうち! バーン!バーン!」


調子に乗って発砲の真似事をやり始めるまる、どうやらまるは、ここらの脱出を本当にゲーム感覚で楽しんでいるようだった。





邦和「……?」



まる「あれっ、どうかしたんですか?」



遥か先の曲がり角を睨んでいた邦和だったが、すぐに視線をまるに戻した。



邦和「いや、気配を感じた気がしたんだが……どうやら気のせいだったらしい」




◆◆◆◆◆◆◆◆




飛鳥「―――」


飛鳥に押し込まれるような形で、俺達は無理矢理曲がり角から頭を引っ込めさせられていた。


しばらくその体制を維持していた飛鳥だったが、二人組が立ち去るのを確認すると安堵の息を漏らして俺達を解放した。


飛鳥「危なかったわ……貴方達、食い入って見すぎよ」


光弐「無茶言うなよ……まだ自分が見たものが現実だなんて信じられないぜ」


建一「あ、あぁ……こんな事…あっていいのか…」


立ち去る彼等の足音を聞きながら「信じられない」と言わんばかりの表情を浮かべる俺達。


観崎「みぎゅ、もしあんな子供に騙し討ちをされたら……」


観崎はその光景を思い浮かべてしまったのか、それ以降は何も言わなかった。


飛鳥「……覚悟はしていたけど、実際に見てみるとショックね」


―――もしかしたら、誰かが人殺しを始めるかもしれない。


その昔、"ある事件"に巻き込まれた事がある飛鳥は、それを予想していたが、実際に目の当たりにするのはショックだったようだ。


そして……


観崎「…飛鳥ちゃん? 恐い顔してどうしたの?」


飛鳥「……」


沈黙を続ける飛鳥、彼女はあの二人組を見て何を感じ、何を考えているのだろう?


…冷静な飛鳥の事だ、なにか策を練っているのかもしれないな。




建一の予想通り、確かに飛鳥は冷静に今後の事について思案していた。


飛鳥「赤羽、初川、渡……







……私、ここから抜けるわ」


しかし飛鳥の出した結論は、冷静だからこそ辿り着いてしまった"孤立"の選択だった。

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