表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
シカバネアソビ  作者: Mr.バナナ
Episode3~カゲフミアソビ~
79/150

EP3-002:Start now

とても懐かしい、昔の夢を見ていた気がする。


靄のかかった意識が覚醒していくが、"まだ寝ていたい"という欲求に逆らえず寝返りをうつ。


由乃「……?」


しばらくして、枕や布団の感触がいつもと違うように感じた。


まだ眠かったが、違和感の正体を確かめる為に身体を起こす。


由乃「あれ…?」


そこは、見慣れない真っ白な部屋だった。


白い部屋、白いベット、白い扉、その中では私のチェック柄の服だけが浮いてしまっています。


最初は病院かと思ったけれど、部屋の構造からして違うだろう。


由乃「ゆ、誘拐……?」


自分で言葉にしてみて、ゾッとする。


けれど誘拐にしては丁寧な扱いだし、私も特に拘束されている訳ではありません。


それでもやはり、見知らぬ場所で目覚めるという状況は事故か誘拐くらいしか考えられませんでした。


由乃「こういう時は……」


まずは、とにかくなんでもいいから情報が欲しい。


携帯電話があれば良いのだけれど………


辺りを見回していると、白い机の上に見知った鞄が置かれていました。


由乃「(鞄が取り上げられていないという事は、誘拐じゃないのかも……?)」


疑問に思いながら、鞄を手に取る。




―――カシャンッ



由乃「…?」


何処からか小さな音が聞こえたが、まずは鞄の中を確認する。


中身は私が帰り道に持ち歩いていた時と変わりなく、一番気になっていたエアーガンと携帯電話を見つけてひとまず安心する。


一呼吸置いてから携帯電話を取り出すと、ディスプレイには『圏外』という表示。


やっぱり、そう都合よくは行かないらしい。


これで携帯の電波があったなら、犯人は相当なお間抜けさんだ。


由乃「そういえば…」


先刻、何処からか物音が聞こえたような…?


振り返ると、音がしたと思われる方向には扉があった。


そこには小さな文字で

『開錠:部屋に用意した貴方の私物を所持する』

と綴られている。


由乃「(私が鞄を手にとったから、鍵の外れる音が聞こえたという事でしょうか)」


どういう仕組みかは分からないが、犯人は私に『その私物を持って扉を出ろ』と言いたいのだろう。


由乃「(今はまだ、進む以外の選択肢はありませんし……仕方ないですね)」


恐怖を抑えながら、私はその部屋を後にした。



◆◆◆◆◆◆◆◆



ゲーム開始から1時間と18分、たった今目覚めた峰沢由乃を含め、既に7人が施設の徘徊を始めている。


しかし、早くも想定外の事象が発生していた。





「おかしい……当初の予定では、参加者は『10人』だった筈です」


モニターを睨み付けながら、金髪の少女が顎に手を当てて考える仕草を見せる。


モニターに映るプレイヤーの姿は、何度数え直しても『12人』だったのだ。


「度の越えた干渉は許されていませんし、まずは様子を見るしか無さそうですね……」


事態が悪化した時の為の準備を整えながら、少女はモニターに映る想定外の2人を見据えて、ため息をついた。



◆◆◆◆◆◆◆◆



最初の部屋を出て、探索を初めてから30分近くが経過した。


せめて建物の外壁部分に辿り着ければと思っていたが、いつまで経っても見つからない。


扉は片っ端から調べているが、使われていない部屋が数えきれないほどあるだけだった。


由乃「物凄い広さですね……いったい、何の為に作られたものなんでしょう」


ぶつぶつと呟きながら歩いていると、初めて目にするプレート表示のある扉を見つけた。


由乃「『資料室』ですか。何か、この建物についての手掛かりがあるかも………」


最初の扉と同じように開錠する為の条件が提示されていたが、部屋の中に人が居ると外から開けられなくなるだけらしいので、気にせず調べる事にする。


ドアノブを捻り、私の視界に飛び込んで来たのは…………





由乃「こ、これは―――!」


人の上半身のようなロボットが展示されていて、なにより目を引かれたのは、その左手に握られたアサルトライフル。


由乃「き、綺麗に手入れされてますねっ、何処の会社がお作りになったのでしょう…! 見た事の無いロゴが刻まれてますが、特注でしょうか…!?」


気がつくと、私は夢中になってアサルトライフルを観察していた。


しかし『サンプルの為のモデルガンです』という注意書きを見つけて、すぐに落胆する。


由乃「やっぱり、日本にホンモノの銃なんてありませんよね……」


10年前の"あの日"以降、私は内気で弱気な自分を変える為に、エアーガンという一風変わった趣味を持つようになった。


そのお店の店長………もとい、私の師匠である魅鉤隆鉄(みかぎ りゅうてつ)さんは、本物の銃を扱っていた事もあるらしく、必要以上に本格的な指導を受けている。


だから、もし本物の銃を手に出来るのなら、一度でいいから使ってみたかった。


といっても、海外に行かなければ、そんな機会は無いと思っていたけど。


由乃「でも『サンプル』って事は、これの本物が何処かにあるという事ですよね」


そこでようやく、私はロボットの説明文らしきプレートを見る。


『Adjuster:頭部のカメラと温度センサーを使ってターゲットを特定する。ターゲットを確認した場合、一定の間隔で銃弾を発砲しながら接近し、ブレードで切り裂く。また、移動手段は磁気を利用した浮遊で、行動可能なのは施設内のみ』


由乃「……?」


私はその説明を見て直ぐに、頭の上にクエスチョンマークを浮かべた。


説明文には『ブレード』という単語がちらついているが、この見本にはそれが無かったからだ。


恐らく、誰かが持ち去ったのだろう。


もし私を誘拐した人物が居たとして、わざわざこんな場所で武器を手に入れる必要は無いはず。


由乃「犯人と私以外にも、人が居ると考え方が良いみたいですね……」


それが分かっただけでも大きな収穫だ。


このアジャスターという機械の本物があるのかは分からないけれど、頭に入れておいた方がいいだろう。


由乃「念のために、写真として保存しておきましょうか」


そうすれば、他の人に出会った時、同じ境遇の人だったなら情報交換の材料にできる。



由乃「――保存完了。これは、探せば他にも特別な部屋があるかもしれませんね」


この部屋の開錠条件を利用して、助けが来るまで待つのもいいかもしれないが、ここは自分の力でなんとかしてみたい。


だから、私にはさ迷い続けるしか選択肢が無いのだろう。



◆◆◆◆◆◆◆◆



同時刻、由乃と同じくB8Fを探索している男女の姿があった。


楓「たるー」


銀河「初めて聞く言葉だな。"たるー"とはどういう意味だ」


楓「………」


銀河「おい」


楓「イケメンだからって気安く話し掛けないでよね。さっきも言ったけど、私は基本男は嫌いだから」


銀河「"イケメン"とはどういう意味を持つ言葉なんだ。それと、お前が男が嫌いになった理由は………」


楓「ああああぁぁぁああああああもう!! 記憶喪失だかなんだか知らないけど、私以外の誰かに会うまで我慢しなさいよ!!」


銀河「(なんだ? 俺はコミュニケーションの取り方を間違えたのか?)」


楓「(誘拐されて記憶喪失のイケメンと2人きりとか、フィクションの世界だけにして欲しいわーもう)」


この二人が出会ったのは、今から1時間半ほど前。


楓が脅えながらも探索をしていた時、プレート表示が無いにも関わらず鍵のかかった扉を見つけた。


そのドアノブをガチャガチャと出鱈目に弄くりまわしているうち、その音で目覚めた銀河が中から現れたのだ。


楓「(腰を抜かした私に何もして来なかったって事は、ある程度は信用して良いんだろうけど……はぁ)」


仮に信用したとして、さっきのような質問攻めにいちいち真面目に返答するのは面倒だった。


銀河「おい」


楓「なによ! これ以上しょうもない事聞いて来たら刺すわよ!?」


誘拐された時から蓄積されたストレスが爆発して、楓は料理室で手に入れたナイフを手に威嚇していた。


銀河「しょうもない事かは分からないが、あれは何だ……?」


苛つきながらも銀河が指差した先を見ると、そこには明らかに異質な機械……アジャスターが浮遊していた。


楓「げっ……何あれ。ロボットみたいだけど、なんで浮いてるのよ」


銀河「質問に質問で返されてもな」


楓「ともかく、あれはヤバそうな気がするし、逃げた方が……って、何してんの!?」


逃げるどころか、逆にアジャスターに向かって歩いてゆく銀河。


銀河「お前もあれが何なのか知らないんだろう。調べて来る」


楓「か、勝手にすれば!? どうなっても知らないからね……!」


近くの扉を開けて、その陰から銀河を見守る楓。


銀河がアジャスターに近付くと、早くもターゲットとして補足され、ライフルの銃口が向けられる。


楓「ちょっ、危な……!」


銀河「………」


トリガーが引かれようとした瞬間、銀河は身体を反らせて銃弾を回避した。


楓「……うっそー」


その光景を目の当たりにした楓は、恐怖よりも脱力感が勝ってため息をついていた。


あまりにも現実とは思えない事が立て続けに起きて、考える事に疲れてしまったのである。


銀河「不愉快だな。俺は命を狙われているというのに、これを作った何者かは高みの見物か」


アジャスターの傍らに飛び込み、左の拳を強く握り締めると、銀河は何の躊躇いもなくアジャスターの頭部を殴り付ける。


頭部のガラスごとセンサーは破壊され、アジャスターの手はぶらんと力無く垂れ下がった。


銀河「案外脆く作られているな。わざとか……?」


楓「冷静に分析してる場合じゃないでしょ!」


ビシッと背後から頭を叩かれ、銀河は無言で楓を睨んだ。


楓「それ。放っておくとまずいと思うんだけど?」


楓が指差した銀河の左手は、ガラスの破片が無数に刺さって血まみれになっていた。


銀河「……そうか? 死ぬ事はないだろう」


楓「いやー、私もう突っ込むのも疲れたわー」


心底だるそうに深いため息をつく楓をよそに、銀河は顔色ひとつ変えずに右手でガラス片を引き抜き始めた。


楓「(……とりあえず、この物騒なものは誰かが拾う前に持って行った方がいいかもね)」


そう考えた楓がライフルに手を伸ばした瞬間――






「――おっと、そいつは譲れねぇなァ」


2人の前に、現段階で最も危険な人物……天真邦和が現れた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ