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シカバネアソビ  作者: Mr.バナナ
Episode2~トリカゴアソビ~
74/150

EP2-040:戦女神ノ制裁

幾徒「……まさか、本当に、イオビーストを倒したというのか」


飛鳥「むしろ、あんな単純な手段でなんとかなるだなんて、飼育の仕方を間違えたんじゃないの?」


呆れたように語る飛鳥は、傷ひとつ負っていない。


彼女は、自分の身の回りにある物を最大限活用して、勝利を掴んだのだ。


飛鳥「私の最善は、どうやら貴方を上回っていたようね。閏坂幾徒!」


幾徒「………っ」


静山飛鳥は、先刻とはまるで違う雰囲気を纏っている。


彼女もまた、赤羽息子と同じような変化を遂げたというのか。


管理者権限がブロックされ、身体にはガタがきているこの状況。





幾徒「――認めよう。赤羽息子と静山飛鳥、お前達の勝利だと」


建一「……えらくあっさり認めるんだな」


飛鳥「往生際は良いじゃない。ようやく、この施設ともオサラバ………」


幾徒「…が、どのみち君達も私と共にゲームオーバーさ






……そうなる前に、私の手で引導を渡してくれよう。赤羽建一ィィィィイイイイ!!」


建一「!!」


柱から飛び出した幾徒は、両手にサブマシンガンを構えて建一の隠れている柱に向かって走り出す。


飛鳥「建一っ」


幾徒の降伏に半信半疑ながらも安堵していた飛鳥は、反応が遅れる。







―――タタタタタタタンッ!!



連続する銃声に貫かれて、"幾徒"は床に倒れ込んだ。


建一「なっ、い、幾徒!?」


飛鳥「どういう事!?」


困惑しながらも、建一達は幾徒へと駆け寄り、柱の影に運ぶ。


幾徒「……く、くく。もう………来ていた…のか」


飛鳥「"来ていたのか"って、貴方、誰に撃たれたのか検討がついてるの?」


幾徒「………お前達も、直ぐに、こうなる。せいぜい…………足掻け…………く…………くく……………………く」


建一「幾徒! おい、幾徒っ!」


死体回収システムが作動していないせいで、まだ生きているのではないかと考えていたが、幾徒は息をしていなかった。





―――カツン、カツン



飛鳥「!」


足音が近付いてくる。


俺達が通ってきた扉でも、ガラス張りの出口でもない扉。


何処に繋がっているのか分からない第三の扉は、いつの間にか開け放たれていた。







「イレイズ。さようなら、哀れな裏切りの使徒………閏坂幾徒」


建一「お前は……!」


現れたのは忘れもしない、光弐を殺した翡翠髪の少女だった。


光弐を殺して血まみれになった衣服を何処かで着替えてきたのか、ゴスロリチックな衣装に身を包んでいる。


そして、幾徒を撃ち殺したであろうサブマシンガンの銃口が、こちらを覗いていた。


「雷智はともかく、あの人もダメだったのね。私達には無い強い何かが、貴方達にあるというの?」


呟くような言葉で訪ねてくるが、質問の真意は分からない。


建一「(この子は幾徒以上に得体が知れない。隙を見て、出口から逃げたいところだけど………)」


飛鳥も同じ意見なのか、コクリと頷く。


「でも、私が連れ戻す。貴方達は永遠の眠りにつく」


一歩、また一歩と足音が近付いてくる。


柱を挟んで反対側にまで近付かれているというのに、サブマシンガンがある為、逃げる事は叶わない。


「諦めなさい。あの人の邪魔者は、全てイレイズする」


建一「くそ………隙なんてありゃしない」


飛鳥「……もう、駄目元でも応戦するしか」







まさに、柱から現れる相手に向かって飛び出そうとした、その時。









―――タタタタタタタンッ!!



突然、少女に向けて銃弾が乱射され、相手は素早い身のこなしで向かいの柱の影にまで撤退する。


幾徒「―――」


それは、死んだと思っていた幾徒が最後の力を振り絞って放った銃弾だった。


建一「……今だ!」


飛鳥「えぇ…!」


俺達は出口のガラス戸を押し開けて、建物の外へと駆け出した。



◆◆◆◆◆◆◆◆



建一達が逃げたのを確認して、少女は幾徒にトドメを刺すべく、横たわる身体に銃口を向ける。


「こんな事をして、貴方になんのメリットがあったの」


幾徒「―――」


「………………死んでる」


建一達を逃がした真意を語る事無く、幾徒は静かに息を引き取っていた。


しかし………





―――バンッ!



無情にも、少女は幾徒の遺体に更に銃弾を放った。



◆◆◆◆◆◆◆◆



建一「はぁ…はぁっ、なんだ此処は!?」


山に囲まれた、自然溢れる夕焼けの景色。


こんな状況で無ければ、その美しさに立ち尽くしていただろうが、どちらに逃げれば人里に向かえるのか分からずに、無我夢中で走る。


飛鳥「とにかく遠くへ行きましょう。あの女に見つかったら、終わりよ!」


飛鳥と共に走る。


生い茂る木々の中、道なき道を進む。


建一「…クソッ、ここは塞がれてる!」


並ぶ木々と同じ位の高さのフェンスが、俺達の行く手を阻んだ。


ご丁寧に有刺鉄線まで張ってある。


飛鳥「諦めるにはまだ早いわ。これに沿って進んで行けば、何処かに必ず出入口がある筈よ!」


飛鳥に手を引かれて、再び走り出す。



―――パシュンッ!



建一「うっ…!?」


突然、足首に強烈な痛みが走る。


繋がれた手から力が抜けて、その場に倒れ込む。


飛鳥「建一!?」


足元に視線を向けると、針のようなものが先端に付いた"何か"が靴を貫通して俺の足に刺さっていた。


飛鳥に心配をかける訳にはいかない、後少しで脱出できるんだ。


こんなところで、諦めてなるものか。


建一「あ…す……」



―――パシュンッ!



立ち上がろうとしたところで、今度は肩に同じ物が刺さる。


建一「……っ!」


全身が痺れて、上手く叫ぶ事すら出来ない。


飛鳥「建一っ、け…ん……ち……!」


俺を呼ぶ声が小さくなってゆき、視界が眩む。


そのまま建一は、睡魔に身を委ねるように意識を失った。





飛鳥「っ! これ、麻酔針……?」


建一に刺さったものを抜こうとして……




―――パシュンッ!



飛鳥「ひぁ…………!」


建一に伸ばした手に、麻酔針が命中する。


全身に痺れが回り、そのまま建一に覆い被さるように倒れる。


飛鳥「(駄目………このままじゃ…………終わっちゃう、何もかも)」


抵抗しようとするも、意識は薄れていく。


飛鳥「(だ………れ、か………)」



―――ブロロロロロ……



意識が途切れる刹那、私はなにか懐かしい音を聞いた気がした。



◆◆◆◆◆◆◆◆



ブロロロ…………ブロロロロロロロロロ!!



「もっとスピードを出せ、間に合わなくなるぞ!」


「るっセーな、これ以上無茶したら、事故るっつーの!!」


木々の生い茂る山の中を、一台のバイクが爆走していた。


「けど、テメェの話………デマだったらブッ殺すぞ、隆鉄(りゅうてつ)!?」


隆鉄「デマなものか! 双夜(そうや)君が流してくれた『シカバネアソビ』のプレイヤーリストには、私の愛弟子と、君の言う飛鳥とかいう娘が確かに載っていた!」


「チッ……ガンショップなんてやってっから、情報の仕入れが遅くなんだよ!」


隆鉄「あれでなかなか、純粋に銃が好きな子達が集まる。もう汚ならしい職には戻れんよ」


2人がその情報を手にしたのは、ゲームが始まって30時間が経過した頃。


とある事情からゲームの存在を知っていた2人だったが、自分の知人が巻き込まれていると知り、交通機関の行き届いていない山中を、バイクで移動していたのだ。


「なァ、隆鉄よ。テメェの愛弟子ちゃんが、もし………」


隆鉄「………む! 止まれ!」


「うおっ!?」


女性がブレーキをかけてバイクを止めると、目の前には2人の男女が倒れていた。


隆鉄「なんと! あの施設から脱出を果たした者がいたか………!」


「あ……飛鳥ッ!」


女性は飛鳥の姿を見つけると、駆け寄って脈を確かめる。


「よ、よォし。とりま死んじゃあいねぇ………が。この麻酔針、これを扱える奴といえば…」


隆鉄「………」


「………隆鉄」


隆鉄「あぁ、こちらは、駄目だったようだ」


遥か先にある施設の出口に見知った人影を見つけて、ため息をつく隆鉄。


「……アタシは、飛鳥と、ついでにこの小僧の件もある。多分、龍哉の野郎が近くに居んだろうから、面倒だが合流が一番手っ取り早いか」


隆鉄「その少年も助けるなんて、君にしては随分な気まぐれじゃないか」


「ふん、いいから早く行きやがれ」


隆鉄「恩に着る」


隆鉄は女性が使っていたバイクに乗り、施設の方に向かっていった。


「気まぐれっつーかなんつーか」


倒れている飛鳥と少年の方を見る。


「"あの飛鳥"が、心底大切そうにこのガキにしがみついてんじゃんよ………」



◆◆◆◆◆◆◆◆



施設の入口から歩いてくる愛弟子の前で、私はバイクを止めた。


愛弟子の姿は変わり果て、飛鳥という子を撃ったであろう長距離用の麻酔銃を担いでいた。


隆鉄「………」


「……貴方も、邪魔をしに来たの?」


隆鉄「私は邪魔をするつもりは無いよ。峰沢由乃の邪魔はね」


「……あの人の邪魔は、するんだね」


隆鉄「それが、可愛い愛弟子の為だからね」


互いに、構えたのは一丁のハンドガン。


隆鉄「君が初めて手にした銃は、使ってくれないんだな」


「あんな玩具、必要ない」


隆鉄「………それが聞ければ、充分だ」





―――2つの銃声が鳴り響き、ゲームは幕を下ろした。

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