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シカバネアソビ  作者: Mr.バナナ
Episode2~トリカゴアソビ~
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EP2-011:裏切りの啖呵

銀河が黙々とコマンドマンの破壊作業を始めた頃、建一と飛鳥は、ある目的で物影でこそこそと活動していた。


建一「なぁ、流石にこれはまずいんじゃないのか……道徳的に」


飛鳥「最も安全な手よ。異論があるなら、これよりもマシだと思える手段を思い付いてから言いなさい」


小声でヒソヒソ会話しながら隠れるように行動している建一と飛鳥は、傍から見れば不審者以外の何者でもない。


それもその筈、何故なら2人が現在行っているのは……


建一「やっぱり話し掛けて協力して貰ったほうが…」


飛鳥「シッ、角を曲がったわ。急ぐわよ」



…ストーカー行為という、後ろ指を指されても仕方のない事だったからだ。


飛鳥「(携帯画面を見ながら移動していたわね、地図持ちは確定。階段にせよそれ以外にせよメリットしか無いのは明白……私は間違ってなんか無いわ)」


建一「(飛鳥にはもっと人を信用して欲しいけど、場合によっては殺される可能性があるだけに、今は無理なんだろうか…)」


建一と飛鳥はひとまず口論する事を止め、追跡対象の2人に意識を集中していた。



◆◆◆◆◆◆◆◆



追跡されている2人は、背後に居る建一達に気付いている様子はなく、雑談をしているようだ。


光弐「物騒な所に来てしまったねぇ、邦和にーたま♪」


邦和「殺されたいか…」


光弐「ただの悪ふざけじゃないか、そうカッカするなって。何か話でもしてなきゃ退屈で仕方ない」


邦和「んで、さっきのアレは結局何が言いたかったんだ」


光弐「資料室で色んな情報見て、何か感じた事があるか聞きたかった。俺は物騒だと思った。そして真面目な発言とか苦手だから、ちょっと天真のオッサンを弄ってみたんです、ハイ」


こいつは真面目なのかふざけているのか判断し辛い、頻繁にふざけ半分で話題を振ってくるのは不愉快だが、芯はそこまでひねくれていないのかもしれない。


邦和「そうだな。誰かの掌の上で転がされているという点以外は、概ね満足といったところだ」


光弐「満足ねぇ……薄々気付いてはいたけど、だいぶ悪趣味なんだな」


邦和「お前こそ変態だろうが……と返せばいいのか?」


光弐「ハハッ、そんな本当の事言うなって。照れるじゃないか」


邦和「(……ん?)」


この渡の振る舞い……何か違和感を感じる。


何が引っかかるのかは分からない、が…少し揺さぶってみるか。


邦和「…何に突き動かされてそうしてるのかは知らんが、自分は高く見せた方が見返りは多いぞ」


光弐「……ふん、見返りなんていらないやい」


俺の言葉の真意を問う事なく、渡はそっぽを向いて黙り込む。


やはり必要にコミュニケーションを取ろうとするのには理由があるらしい、今の今まで気付かなかったのは渡から"敵意"は感じられなかったからだろう。


ここで問題なのは、渡が何を抱えているのか全く検討がつかない事。


邦和「(……ただの馬鹿でいてくれれば良かったものを)」


不安要素のある駒は思うように使えない、残念だが渡を利用する事は諦めるしかないだろう。


邦和「…もうすぐだな」


光弐「え? ……あぁ、階段の事か、もう見えてくると思うけど」


普段の光弐なら、邦和の雰囲気の変化に気付けただろう。


しかし、見かけ以上に動揺している今の彼では、気付けるものも気付けなかった。


光弐「(参ったな、上手くやってるつもりだったのに。やっぱり天真のオッサンは只者じゃないって事なのかな……うぅ、気まずい)」


それでも、俺は悪い事をしているとは思わない。


俺の身勝手で苦しめてしまったあいつの為に、こうやって生きていくって決めたんだ。


見抜かれたからって曲げるつもりは無い、これが渡光弐って奴なんだって認めさせてやる。


光弐「んじゃ、またお先に俺が条件を見てくるとするぜ!」


邦和「待て、俺が行く」


光弐「やーだね! 一番乗りは譲ら……」


邦和「―――」


その眼光を見た時、背筋が凍り付くような感覚に襲われる。


自分が天真邦和という男に恐怖しているんだと気付いた時には、既に天真のオッサンは扉の条件を読み終えていた。



『開錠:1人以上の死者と、この階で5機以上のAdjusterの破壊が確認されている事』



邦和「…ほう、こいつは丁度良い。そうは思わないか、渡よォ」


光弐「丁度いいって、何が……」


今まで無愛想だった天真のオッサンが上機嫌に話をしている、それはとても不気味な光景に見えた。


邦和「いやいや、分からないとは言わせないぜ。お前も"仮面"が見破られて気まずいんだろ……なぁ?」


光弐「それは違う、断じて仮面なんかじゃ…!」


邦和「そんな事はどうでもいいんだよ! 渡……俺はどちらにせよ、お前を切り捨てるつもりだった。ついでに殺して開錠の為の礎になって貰えりゃ、不必要な駒としては有意義な使い道なのさ」


最悪の展開だった。


公言してくれるだけマシだが、これはつまり天真のオッサンに裏切りられたという事だろう。


光弐「じゃあお別れ会気取りで、殺し合いでもするつもりなのか」


邦和「まぁ、そういう事だ。お前もご存知の通り、俺は悪趣味なもんでな」


当然だ、と言わんばかりにハンドガンを取り出す。


光弐「…俺は、オッサンのそんな所も嫌いじゃなかった。どんなに狂っていても、正々堂々と『これが自分だ』って胸を張ってる」


邦和「それは、お前が偽っているからそう見えるだけだ。あの世に行ったら、せいぜい欲に忠実に生きる事だ」


光弐に戦おうという気は全く見られない。


銃を向けられた地点で負けは確定したようなものだが、それ以前に先刻まで協力関係だった邦和を傷つけるような決断は、光弐にはできなかった。


光弐「(何が悪かったんだろうな、天真のオッサンと一緒にやっていく道は……本当に無かったのかな)」


もし邦和が"仮面"と表現したものが原因なら、それは光弐にとっては生き方を否定されるようなものだった。


光弐「(これが正しいって、誰も傷付けずに済む"最善"だって信じてたのに。これじゃ、もう影斗の側に居てやれない)」


最も気掛かりだったのは、少し自己主張が苦手で、まだ自分の道を見出だしていない弟の事。


邦和「……あばよ」


だから、最後の瞬間は悔いの残らないように。


弟に『そんな顔は見たくない』と言われないように。


光弐は、瞼を閉じて笑みを浮かべていた。



邦和「――」


反撃される可能性を考えて注意深く光弐を観察していた邦和がそれに気付かない訳もなく、一瞬の躊躇が生まれる。


その一瞬に、救いは舞い降りた。






カシュッ


邦和「……?」


扉から聞こえて来た物音に、銃口はそのまま扉を調べ出す邦和。


物音を聞きそびれていた光弐は、邦和の行動を黙って見ていた。


邦和「……命拾いしたな、渡。お前を殺す必要が無くなったようだ」


光弐「は…?」


邦和がドアノブを捻ると、先刻までは閉まっていた筈の扉が開いてゆく。


それは『1人以上の死者と、この階で5機以上のAdjusterの破壊が確認されている事』という条件が満たされた事を意味し、同時に銀河がコマンドマンの破壊を終えた事の証明でもあった。



邦和「とはいえ、どちらにせよ渡と行動するのは仕舞いだ。…そんじゃ、生きてたらまた会おうぜ」


まるで帰り道の友人同士がする挨拶のようなノリで、邦和の姿は扉の中に消えていった。


光弐「……生きてるのか、俺」


床に膝をつき、ただ邦和が立ち去った扉を見つめる。


何故か、あんな奴でも先刻まで隣にいた人が居なくなるのは悲しかった。



◆◆◆◆◆◆◆◆



光弐が膝をついて扉を見つめている中、全てを監視し続けていた建一達も冷静ではいられなかった。


建一「…よ、良かった。彼、殺されずに済んだみたいだな」


飛鳥「結果論ね。それで貴方の"しようとした事"が無かった事にはならないわよ、赤羽!」


安堵する建一に対して、飛鳥は怒っていた。


建一「なんで怒られなきゃいけないのか、分からないぞ。俺はむしろ、なんで飛鳥に静止されたのか分からない」


飛鳥「よくそんな事が言えるわね……あの状況に首を突っ込もうとするなんてどうかしてるわ!」


邦和が銃を構えた瞬間に、建一は光弐を救おうとその身を文字通り投げ出そうとしていた。


飛鳥が必死に食い止めてそうはさせなかったが、二人の意見は完璧に平行線を辿っている。


飛鳥「そろそろ、あの赤髪の裏切った側の男は階段を登りきって姿をくらましたかしら」


建一「かもな。それがどうしたんだ?」


飛鳥「…一度は助けられた身とはいえ、今の貴方を見て確信した事があるの」


建一「確信した事?」


飛鳥は建一に背を向け、少しだけ振り返って呟いた。






飛鳥「貴方との共闘はここでお仕舞い。さよならよ、赤羽」


建一「……!?」


建一がその言葉に驚いている間に、飛鳥は階段の元へと走っていく。


光弐「っ! だ…誰だ!?」


飛鳥「――」


走って来る飛鳥の姿に身構える光弐だが、飛鳥はその隣を素通りして階段を駆け上がっていった。


建一「これって、どういう事だよ……なんで?」


あまりに一瞬の出来事で、今起きた事が信じられなかった。


ただ、自分も『飛鳥に捨てられた』という事実だけは理解する。


分からないものは分からない、飛鳥の行動の理由は追いかけて本人に聞くしかない。


しかし、今から飛鳥を追っても直ぐには見つけられないだろう。


建一「……とりあえず、彼に声をかけてみるかな」


自分と同じ境遇である金髪の男子を見て、建一はため息をついた。


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