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シカバネアソビ  作者: Mr.バナナ
Episode1~サマヨイアソビ~
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EP1-029:最終戦

飛鳥との再開を果たした建一と観崎は、互いの持つ情報を交換していた。


人との遭遇を避けていた飛鳥はあまり情報を握っていなかったが、建一達が新しく手に入れた情報が1つだけあった。


『Evil floor:B5F、B1Fの別名。この2つの階層には開錠条件が複数存在し、それぞれ倉庫の中に記されている。また、倉庫の扉が開くと他の倉庫の扉は全て施錠され使用不能になる。

通過条件という項目が選択された場合、フロア内に条件を満たしていない者が存在する限り開錠されない』


これによって次の階層…B1FがB5Fと同じ形式の階層なのだと知る事が出来た。


飛鳥「以前のイービルフロアでは、あんな事があったものね。油断できない要素だと思うわ」


観崎「みぎゅ、あんな事って…?」


その通過条件を満たしている筈なのに何も知らない観崎に、飛鳥が首を傾げる。


しかし建一に視線を向け、意味深な表情で頷く建一を見て深く追求はしないでおいた。


飛鳥「(成程、初川を傷つけないように赤羽が上手くやったようね…)」


情報交換の最初に『光弐については俺達が説明した以上の追求はしないでくれ』と赤羽に小声で提案されたので妙だとは思ったが、渡達の事を初川に知られたくなかったのが理由だったのだろう。


危うく渡達を殺害した事実を隠す目的なのかと疑ってしまう所だった。


本当に2人がグルなら、初川も私のイービルフロアへのコメントに賛同して違和感を抱かせないように振舞うでしょうし、ほぼシロ確定ね……。


すると渡達を殺害した可能性があるのは、天真と珠田……そして赤羽を誘拐したという神堂という男に絞られるが、そのうち2人は既に脱落済みで確かめるのは難しい。


ま、どうせ赤羽達に……特に初川に裏切られたその時には、私は先刻までの望み通り死を迎えられるわけだし。


……信じましょう、赤羽達を。


飛鳥「……いいえ、なんでもないわ」


観崎「??」


頭の上にクエスチョンマークを並べる観崎を尻目に、建一は現在自分達が持ち合わせているギミックの説明文を見ていた。


建一達の所持していた『不探知領域』、飛鳥の持っていた『射撃武器ロック』、そして……


『封鎖壁:発動地点から1番近くに存在する封鎖壁を下降、または上昇させる事が出来る。封鎖壁の種類は場所により異なる。

ステータス消費:30』


建一達を散々苦しめてきたギミックの詳細、まるが邦和から奪った携帯電話にその詳細が記載されていた。


建一「くっ…!」


…これさえ、これさえ無ければ光弐や可憐さん…そして由乃を死なせずに済んだのかもしれない。


今すぐギミックを叩き壊したくなる衝動を抑え、それを飛鳥に返そうとした。


飛鳥「あぁ、そのギミックは初川に持たせておきなさい」


観崎「みぎゅ、私に?」


飛鳥「聞いた限り結構な数のアジャスターを壊しているようだし、1度もステータスを使っていないんでしょう? 1人1つ、身を守るものを持つに越した事は無いわ」


建一「…確かにそうかもな、あと少しだからって気を抜いたせいでお陀仏だなんて勘弁だ」


こうして1通りの情報交換を終えた建一達は、B1Fに向けて歩き始めるのだった。



◆◆◆◆◆◆◆◆



イービルフロアへと足を進める中、廊下があまりにも静かすぎる事に不気味さを感じていた。


嵐の前の静けさ、或いはもうアジャスターなど必要ないという犯人の意図があるのか。


次の階層への扉に辿り着くまで、その静けさは続いた。


『開錠:6人以上の死者と、3人以上の成功が確認されている事。扉を開ける人物はステータスを20消費する』


B2Fの開錠条件には、異例のステータス消費が追加されていた。


飛鳥「…どうする? 多分、全員20以上のステータスは持っていると思うわ」


建一と観崎は大量のアジャスターを壊した上にギミックを1度も使っておらず、飛鳥はアジャスターの破壊数こそ少ないものの、まるを殺した際に20のステータスを確保している。


建一「使うギミックの事を考えたら観崎かもな、イービルフロアの広さがB5Fと同じなら封鎖壁なんてあるとは思えない」


飛鳥「妥当ね。初川もそれでいい?」


観崎「よ、よく分からないけど…いいよっ」


6人以上の死者は、

涼路さん、光弐、白鷺さん、白鷺さんを助けて死んだ少年、由乃、由乃が破壊したコマンドマン、邦和、まる、楓……と余裕で突破している。


相変わらず分からないのは"成功"という項目だが、B3Fの地点で2人が成功していたようだし案外知らないうちにクリアしてしまっているのかもしれない。


観崎がドアノブを捻ると、やはりというべきか何の造作もなく開いた。


建一「よし……行くぞ」


観崎「うん!」


飛鳥「気を抜くんじゃないわよ? 例の神堂って男が居る可能性だってあるわ」


常に周囲を警戒しながら階段を上りきると、そこには驚くことに選択できる倉庫が"1つしか残されていなかった"


…いや、元々2つしか無かったのだろうが、片方は巨大な爪跡のようなものでズタボロになっており原型を留めていない。


実はこの倉庫は、龍哉を処分する為に解き放たれた兵器によって壊されたものなのだが、建一達にそれを知る術は無かった。


建一「どうやったら、この厚い鉄の倉庫に爪跡なんて残せるんだ。それにこの大きさ……」


観崎「みぎゅ……これじゃあ、残った倉庫を使うしかないんだよ」


飛鳥「…そうね。この爪跡を作った"何か"が戻ってくる可能性も捨てきれないし、急ぎましょう」


飛鳥の言葉に建一達は頷き、急いで最後の倉庫に入っていった。


建一「……ッ!」


倉庫に入った瞬間、目の前に並んだ大量の重火器に思わずたじろぐ。


そこには色々な種類のハンドガンやライフル、サブマシンガンに、今まではあまり見ることの無かったショットガンやグレネードなどの兵器が並んでいた。


飛鳥「この武器は……これで何をしろっていうの?」


その言葉で思い出したかのように、建一は入り口の裏に書かれた条件を確認する。






『最終開錠:DeathAdjuster1機の破壊』



建一「なんだ、この"デスアジャスター"って……」


建一が呟いた次の瞬間―――





ドゴオォォォォォン!!


倉庫全体が大きく揺れ、耳が痛くなる程の轟音が響き渡る。


飛鳥「これは…ッ、倉庫の外から攻撃されてる!?」


その言葉に俺と観崎は息を飲む、それが本当なら袋の鼠状態のまま殺されかねないからだ。


建一「さっさと使えそうな武器を持って出るぞ!」


観崎「うんっ」

飛鳥「分かったわ」


それぞれが武器を漁り始める。


しかし建一は、数多く並んだ銃に手を伸ばせないでいた。


――これさえクリアできれば生きて帰れるんだ……何を躊躇う必要がある?


そう自分に言い聞かせ、心を落ち着かせてゆく。


…やれる、やらなきゃいけないんだ。


父さん、母さん……俺はきっと自分の日常(みらい)を取り戻してみせるよ。


だから…見ていてくれ!


建一「っ!」


俺は1丁のサブマシンガンを手に取る。



…ドクンッ!


瞬間、心臓が激しく脈を打つが…俺は敢えてそれを『拒んだ』。


―――異常だと感じた事には気をつけろ。それが例え好都合なものだったとしてもだ


敵か味方かも分からない龍哉の言葉に何故従ってしまったのかは分からないが、俺は『これでいいんだ』と心の何処かで確信していた。


すると今までとは違う…自分自身が世界に溶け込んでいくような不思議な感覚を味わう。


―――なんでだろうな。嫌いだった筈のものを、何処か懐かしく感じるのは


不思議と、銃の使い方に困る気はしなかった。





ドゴオォォォォォン!!



もう1度倉庫が大きく揺れて体勢を崩しそうになるが、なんとか踏みとどまる。


飛鳥「準備出来たわ」


観崎「みぎゅ、私も!」


二人が準備を終えたのを確認すると、建一達は一気に倉庫の外へと飛び出した。



キィッ……キィィ……


アジャスターの耳につく機械音とは違う、静かで気をつけなければ聞こえないような機械音。


建一「……上か!」


その兵器は今までのように無策に攻め込んで来るアジャスターとは違い、静かに空中を漂っていた。


漆黒のボディに翼を生やしたような姿、基礎はアジャスターと同じ人間の上半身のような形をしていた。


まさに、ゲームでいうラスボスといった所か。


飛鳥「…!? 赤羽、避けなさいっ!」


飛鳥の掛け声に、その言葉の意味を理解する前に慌てて前方に走り出す。





ドゴオォォォォォン!!



瞬間、建一の居た場所で爆発が起こり、その身体は爆風で体勢を崩して転倒する。


観崎「建一、大丈夫!?」


建一「なんとか……な」


幸運な事に、床に身体が打ち付けられただけで身体に怪我は無かった。


兵器に気を取られて油断していた、あの兵器は両腕に刃物を持ってはいるが先刻までの轟音を放つような武器が見当たらない。


周囲をよく観察すると、それは俺達の死角……倉庫の上で静かに佇んでいた。


厄介な事に、それはデスアジャスターと連動しているであろう浮遊するグレネードランチャーのようなものだった。


その銃口は現在も俺を狙い続けているが、再び射撃してくる様子は無い。


飛鳥「気をつけなさい! このオプションは恐らく、デスアジャスターから1番近い人物に照準を定める仕組みになっているわ!」


確かに倉庫の近くに居る観崎と飛鳥が狙われている様子は無く、その銃口は常に俺を狙っている。


建一「くっ……2人共、そこを離れてくれ!」


立ち上がってオプションを睨み、持っていたサブマシンガンをオプションに向けて構える。


それを見て観崎と飛鳥は左右に散り、建一はサブマシンガンの引き金を引いた。


建一の腕の中で銃が暴れ、無数の銃弾がオプションに向かって飛んでゆく。


しかし、それを避けるようにオプションが移動を始め、まだ銃を使い始めて間もない建一の腕では回避移動中のオプションにダメージを与えるには至らない。


観崎「よ…避けられちゃった!?」


飛鳥「少なくともアジャスターみたいな雑魚とは違うみたいね。……それなら、本体を狙うまでよ…!」


デスアジャスターに先刻手に入れたショットガンを向け、その引き金を引く飛鳥。


瞬間、デスアジャスターの機体が吹き飛んで天井に衝突する。


建一「やったか……?」


徐々に天井からデスアジャスターの機体が降下を始め、床付近で停滞する。


その機体には、表面が多少凹んだ程度で大したダメージは見られなかった。


飛鳥「冗談、きついわよ……」


観崎「…ぜ、全然駄目みたいだね」


そういえば、似たような話を何処かで聞いたような気がする。


それは……そう、由乃の言っていた"コマンドマン"という兵器。


攻撃も移動も満足に行えない兵器だったが、強度はショットガンの弾を何度も当ててようやく破壊できるレベルだったと聞いている。


こいつは浮遊している分、さらに衝撃が軽減されているだろう。


オプションという遠隔射撃武器と、コマンドマン並の装甲を持つ強化アジャスターといった所か……


建一「こんな奴、どうやって破壊すればいいんだよ……」


思考を巡らせる建一を嘲笑うように、その漆黒の機体が動き始めた。


鋼色の2刀を構え、建一に向かって真っ直ぐ特攻するデスアジャスター。


建一は反射的にサブマシンガンを構えるが、それでデスアジャスターの猛攻を防げる訳が無い事は理解していた。


観崎「建一!」


飛鳥「赤羽…!」


それを見ていた観崎と飛鳥も、動く標的を怯ませる策を持たない。


建一「(くそっ……俺は、どうすればいい!?)」


完全に主導権を握られたまま、建一に死の影が迫っていた。

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