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シカバネアソビ  作者: Mr.バナナ
Episode1~サマヨイアソビ~
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EP1-027:Second Dream

全ての事象には理由があり、真実がある。


だが、いくら努力しても見えてこない真実も存在する。


――本当の事が知りたい。


その思い故か、赤羽建一は今まで見た事の無い夢を見ていた。




◆EP1-027:Second Dream




場所は空港のロビー、携帯電話に似た機械を操作しながらその人物は焦っていた。


理由は分からない、ただひとつ分かる事は……俺はこの空港を知っている。


何故ならここは、母さんの勤めていた売店のある空港だからだ。


「裏切っ■か、■■叶」


その人物が何かを呟くが、前回の夢と同じく所々にノイズが混ざっていて聞き取り辛い。


風景が流れ出す、その人物が早歩きをしているようだ。


その人物が向かった先は、男子トイレ。


昔からそうなのだが、この空港のトイレはかなり大きく作られていて、奥は殆ど使われていないらしい。


その一番奥の個室の前に、携帯電話を片手に何かを話している…………母さんがいた。


足音に気付いたのか、母さんは振り返って驚いたような表情をする。


「裏切■者は■■■る。お前も共■■も生か■て■かない」


叶「っ!」


母さんは慌てて持っていた携帯電話をへし折り、更にヒールのかかとで踏み潰した。


「■身に得の無い■■をするか……■の人間と交■って、余計な■■が身に■■■し■った■■■な」


叶「元々■の人間■った■方なら、■かる筈よ」


2人は数秒の間睨み合い、男が先に動いた。


母さんはその人物から逃れようとしたが、避けきれず腹部に拳が叩き込まれる。


間髪を入れず、母さんの口に無理矢理何かが流し込まれる。



その時、俺は思い出していた。


母さんの死因が"毒物"である事を―――





◆◆◆◆◆◆◆◆



建一「ッ!」


目を覚ますと、身体の節々が痛み始めた。


視線を泳がせながら周囲を確認していると、誰かが倒れている俺を見下ろしている事に気付いた。


龍哉「……ようやく目覚めたか」


建一「お前は……」


記憶を辿ってゆき、まると戦おうとした直後に起きた出来事を思い出した。


神堂龍哉、意識を失う前に聞いたその名前ははっきりと覚えている。


建一「(……どうにかしてこの龍哉って奴を振り切って、観崎達の所へ行かないと)」


龍哉が観崎達と戦った可能性もあるが、この得体の知れない男に質問をする気にはなれなかった。


しかし、ここが何処なのかも分からない以上、例え龍哉を振り切れたとしても観崎達との合流は難しい。


龍哉「名前はなんと言う」


建一「…は?」


俺を探していた癖に、名前も知らないらしい。


建一「…建一、赤羽建一」


龍哉「――馬鹿な」


表情は変えずに呟く龍哉、実は人違いだったとかそういう事だろうか。


龍哉「…俺は、鍵ではなかったというのか」


建一「鍵って何の事だよ、俺は観崎の所に行かなきゃならないんだ! 用が無いならどいてくれ!」


自分でも異常だと理解出来る程に俺は焦っていた。


最初は、観崎は俺にとって生きる意味を見つける為の道具程度にしか思っていなかった。


勿論大切だなんて思わなかったし、むしろ鬱陶しいくらいだった。


けれど、けれど今は…


あいつは、俺の大切な…


大切な……なんだ?


情けない事に、俺はまだその結論には辿り着けていない。


龍哉「そうか……俺の目的は、失敗に終わったという事か…」


建一「目的…?」


龍哉「――君には関係のない事だ。行きたい場所があるのだろう、隣に地図の資料室がある……後は好きにするといい」


無表情のままそう告げる龍哉だが、俺はその無表情という仮面の奥に悲しみが潜んでいるような気がした。


だからだろうか、俺がそれを話す気になったのは。


建一「夢を見たんだ。あんたの言う、母親を殺す少年の夢」


龍哉「……」


建一「それともうひとつ、『俺の』母さんが殺される夢」


龍哉「…そうか」


静かに瞳を閉じて、建一に背を向ける龍哉。


建一「あんたは何者なんだ、何を知ってるんだ?」


龍哉「……」


黙ったままの龍哉、話す気は無いという事なのだろう。


仕方なく、ドアノブに手を伸ばす。


龍哉「―――異常だと感じた事には気をつけろ。それが例え好都合なものだったとしてもだ」


建一「…え?」


立ち止まって振り返るが、龍哉はそれ以上何かを語ろうとはしない。


こいつが信用できる人物だとは思えないが、その言葉が嘘のようには感じなかった。


建一「分かった……頭の片隅に置いておく」


そして建一は、急いで部屋から立ち去っていった。





龍哉「"何者なのか?"…か」


誰も居なくなった部屋で1人呟く、あの少年が戻って来る気配もない。


龍哉「ただの餓鬼だ、俺は……あの時から何一つ成長していない」


顔を片手で覆い隠し、その隙間から天井の電灯の光を見つめる。


龍哉「君と同じだ、赤羽建一……」


1人では決して生きられない癖に常に孤独の中にいる、命あって死を内包しているような人種。


だから、だからこそ…



その赤羽建一が強固な意思で歩もうとしている道の、その先に何があるのか……確かめてみたくなった。


龍哉「……行こうか」


目的を失った俺に価値はないが、何もせずに朽ち果てるくらいなら何かを成し遂げる為の歯車となろう。


恐らく、生物兵器Cord-0D又は0Eが既にこの階層に放たれている頃だろう。


俺という"イレギュラー"を簡単に見つけ出せない奴など、あいつ達の中には居ないだろうからな……。


龍哉「赤羽建一。お前は進め、その強固な意思がある限り…君は死なない」



◆◆◆◆◆◆◆◆



その場所は第一階層。


開錠条件の関係で今は誰もが立ち入る事を許されない筈の場所に、何者かの姿があった。


電子画面を前に黙々と作業を続けていたその人物は、あるファイルのデータを見て動きを止めた。


「…蒼槻峻(あおつきしゅん)? この人物は……」


何かを察知したのか再びキーボードを叩き、今度は施設内の映像が画面に映し出される。


そこには、無人の部屋で独り天井の光を見つめている龍哉の姿があった。


「……成程、貴方でしたか。1度に2度のイレギュラーを許すとは、こちらに余裕が無かった証拠ですね」


その人物は席を立ち、背後に設置された大きな機械に語り掛ける。


「イレギュラー、神堂龍哉の処分を」


バチッと大きな火花を散らしながら、機械が作動する。


『ビビッ――神堂龍哉、対象ヲ確認。Evil floorニテ待機中ノCord-0Eヲ解放、処分プログラム起動――Cord-0Eの行動開始を確認。自動冷却、クールダウン完了』


電子音声を発した後、その機械は静かに動作を停止させた。


それを確認すると、その人物は満足そうに席に戻った。



◆◆◆◆◆◆◆◆



この障害物の無い地下施設において、『音』という情報は反響し、より広範囲に伝わる。


「……ォォォン」


だから、直ぐに"それ"が解放された事を理解した。


龍哉「…解放されたのは0Eか」


現在持ち合わせている武器で始末出来るかは怪しいところだが、元より目的を無くした俺に命は不要。


この戦いは、イレギュラー処分に赤羽建一を巻き込ませない為のものだ。


この位置からでも感じる地鳴りに、対象が俺を目指して走っている事を理解する。


龍哉「―――来る」






「ウオオォォォォォォン!!」


凄まじい威圧感を放つ巨大な"それ"が、龍哉の前に姿を現した。


彼にとってこの戦いは、勝とうが負けようが意味を成さない。


目的を無くし命ありながらも死を内包した龍哉は、勝敗に関係なく"死んでいる"ようなものなのだ。


その意味の無い戦いの結末など、誰が知る必要も無かった……。



◆◆◆◆◆◆◆◆



走る。


息を切らしながらも走り続ける、観崎の元へと。



通路の角を曲がった瞬間、目の前にアジャスターの姿が飛び込んで来て慌ててブレードの刃をその首に叩き付ける。


建一「はぁっ、はぁっ……くそっ、観崎――!」


もはや現在のステータス値の合計を考えている余裕も無かった。


そんな中、建一は1つの結論に辿り着こうとしていた。


建一「(なんで俺は、こんなに必死になっている!? 俺にとって観崎は、一体何なんだ……!?)」


友達と言われれば、確かにそうかもしれないとは思う。


けれど、それとは別の感情を抱いているような気がしてならない。


今の仮初め日常は観崎の存在と、約束があってこそだ。


大切な日常のパーツ、だから失いたくない。


――いや、観崎は"パーツ"なんて小さなものじゃなく、もっと大きな……もし失ってしまったら俺が俺でなくなってしまうような。


建一「(まさか、俺は…)」


いや、今はこんな事を考えている場合じゃない。


一刻も早く、観崎達の所へ…!



走る事に限界を訴える身体を無理矢理奮い立たせ、最悪の結末が訪れない事を願いながら、建一は観崎達の元へと走り続けた。

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