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シカバネアソビ  作者: Mr.バナナ
Episode1~サマヨイアソビ~
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EP1-020:Evil floor

光弐達の衣服を再び機械の下に戻しながら、光弐のカードだけは預かっておく事にした。


いつか光弐の弟と出会う事があった時、俺が光弐の……友であったと信じて貰う為に。


せめて二人の衣服くらいはきちんと畳んでおいてやろうとも考えたのだが、いくら血が付着しているとはいえ白鷺さんという女性の衣服をベタベタと必要以上に触るのは気が引けた。




ドンドンドンッ!


観崎「建一っ、どうかしたの!? ここに居るんだよねっ!?」


倉庫の外から扉を叩く観崎の声が聞こえる、先刻俺が叫んだのを聞き付けて来たのだろう。


直接扉から入ってこない辺り、この倉庫には例の資料室のような『開錠』の項目が設けられているのかもしれない。


建一「……」


ここで光弐達が死んだ事、観崎達には知らないでおいて欲しい…


涼路さんの時のように、観崎は俺が隠し事をするのを快く思わないだろう。


それでも観崎達の心に溝を作ってしまうのが嫌だから、俺はこの事実を隠し通すしかないんだ。


建一「……?」


倉庫の扉に手を延ばそうとした時、入る時には気付かなかったが、その扉に『B5F通過条件』という項目が記載されているのを見つけた。



『B5F通過条件:この条件での通過は満たした人物のみに適用される。

自動人体調理機械によって生成された肉片を―――』


建一「―――!!」




◆◆◆◆◆◆◆◆



建一の叫びが聞こえた倉庫、その扉に向かって一直線に続く血の跡。


何かを見つけたら集合するって約束だったし、建一はこの血を追って倉庫に入ったに違いない。


観崎「建一っ、返事してよ…!」


鍵のかかった倉庫の扉を力いっぱい叩く、手にじわじわと痛みを感じるが構わずに叩き続ける。


由乃「初川さんっ、それ以上は…」


観崎「……っ」


由乃ちゃんに扉を叩く手を止められて、これ以上は無意味だと悟る。




……と、同時。

建一が内側から扉を開けて出て来た。


由乃「赤羽君…」


観崎「建一っ、大丈夫なの!?」


建一「……あぁ」


建一は笑みを浮かべて何事もなかったように振る舞っているけど、無理をしているのは一目瞭然。


観崎「……私、その中見て来るっ」


建一を押し退けて行く覚悟で私は足を踏み出した、はずだった。








建一「観崎ィ!!」


突然の怒鳴り声に心臓が跳ね上がる。


観崎「え……ぁ…ぅ」


なんで…?


建一だって稀に怒る事はあった、今まで何度も見てきた。


なのに、どうして…?



建一「―――」


私、建一が恐い……


あの目が、建一であって建一でないようなあの眼光が恐ろしい。



由乃「……赤羽君。その…どうしてもその中を見せたくないんですか? 何があったかの説明も…?」


建一「…あぁ、駄目だ」


建一の態度から、二人は直ぐにこの倉庫で誰かが死んだ痕跡を発見したのだと理解した。


観崎「建一、私は……」



苦しいのも悲しいのも、一緒に背負うって……



建一「……悪い」


観崎「…っ」


けれど建一は観崎のその気持ちを理解して尚、首を縦に振る事はしなかった。


観崎は一度大きく目を見開き、その後顔を俯かせた。


由乃「初川さん…」


観崎「みぎゅ、大丈夫……建一が間違ってるとは、思わないから」


心配させたくなかったのか、観崎は無理矢理に笑顔を浮かべる。


建一は何か言葉をかけようとしていたが、それが自分のせいである以上何も言う事が出来なかった。


由乃「……その、これから、どうしましょう?」


話題を変えようと切り出したのは、内気で自主的に話すのが苦手だった筈の由乃。


彼女が作った助け舟に、建一は乗っかる事にした。


建一「それなんだけど、この階の開錠について分かった事がある」


由乃「そ、そうなんですか…?」


明らかに建一の背後にある倉庫の中で知った事だと由乃は理解し、しまったというような表情をする。


建一「それが、"妙"な条件で…」


そこで建一は一度間を置く。



これで、いいのだろうか。


観崎と由乃に本当の事を隠したまま、こんな事を言って。




いや、それでも――








建一「……これを、食べれば良いらしい」


その手の平には、ビー玉程のサイズの火の通った肉が3つ乗っていた。



――"この条件"がある限り、二人に本当の事は話せない、話す訳にはいかない。



観崎「みぎゅ、なんか簡単すぎるような…」


由乃「えっと、それだけ…ですか?」


流石に信じられないのか、二人は眉をひそめている。


俺は、条件に関して嘘はついていない。


建一「あぁ…











……"それだけ"…だ」







『B5F通過条件:この条件での通過は満たした人物のみに適用される。

自動人体調理機械によって生成された肉片を"食す"』


それが、B5Fを通過する為の条件だった。




◆◆◆◆◆◆◆◆




建一達が立ち去ったB5Fに、ひとつの人影が現れた。


「………」


それはB7Fにて圧倒的戦力を見せつけ、邦和に「化け物」と表現させた男その人で、建一と同じように一直線に続く血の跡を見つけるとその後を辿って行った。


そして男は例の機械に辿り着き、その中で波打つ液体を見て眉を寄せる。


「…悪趣味な、もう少しマシなものを選んで欲しいものだな」


携帯電話とはまた違うモニターつきの器具を取り出して、男はその画面を凝視する。


『Evil floor:B5F、B1Fの別名。この2つの階層には開錠条件が複数存在し、それぞれ倉庫の中に記されている。また、倉庫の扉を開くと他の倉庫の扉は全て施錠され使用不能になる。

通過条件という項目が選択された場合、フロア内に条件を満たしていない者が存在する限り開錠されない』


それは建一達が寄る事の無かった階層の隅に位置する資料室の情報だった。


「これより先に出会うは人食いのみ、か。……そう思わせる意味合いもあるのだろうな、これは」


男はそう呟くと機械から肉片を少しだけつまみ取り、口内へと放り込んだ。



◆◆◆◆◆◆◆◆





ガシャンッ!



目の前で銃口をこちらに向けていたアジャスターの首が観崎によって切り飛ばされる。


建一「くそっ、なんなんだよこれは!」


建一の言った事は、私達も感じていた。


B4Fに到達するなり、頻繁にアジャスターに遭遇するようになったのだ。


これではゆっくりと地道に階層を捜索するのにも一苦労、油断すればあっという間にやられてしまうだろう。


由乃「やっぱり、赤羽君と初川さんも銃を持つべきかと…」


建一「……銃、か」


建一が表情を曇らせる。


普通は建一くらいの歳の男の子は銃に興味を持つものだと思うんだけど、建一は興味がなく……なんてレベルではなく、極端に嫌っているような感じだ。


観崎「……」


私はそれを知っていたから、何か声をかけて話題を変えてあげようと思ったんだけれど、いつものように建一に話し掛ける事が出来ない。





建一「………」


観崎がそわそわと何かを言いたげな表情で、けれど決してその口を開く事はしないでいた。


それは恐らく、俺が観崎に隠し事をしているからこそ生まれてしまった溝。




俺は―――


私は―――









―――身近な存在だった筈の幼馴染との間に、距離を感じていた。

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