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シカバネアソビ  作者: Mr.バナナ
Episode1~サマヨイアソビ~
19/150

EP1-018:Cord Series

目覚めて最初に目に入ったのは、心配そうな表情で俺を見つめる澄んだ2つの瞳。


また、こいつを悲しませてしまった……そんな感情を抱きながら俺は身体を起こそうとした。


…直後、身体を持ち上げようと後ろに力を込めた左腕が激痛に襲われる。


建一「痛ッ…!」


観崎「建一っ、無理しちゃ駄目だよ!」


観崎に背中を支えて貰ってようやく寝そべっていたベットに腰掛ける事が出来た。


建一「悪いな、観崎……っと、これは?」


俺の身体に被せられていたチェック柄の上着らしきものを手に取る、どう考えても観崎のものではないだろうし……


由乃「私の…です」


観崎の後ろからひょっこりと翡翠色の髪の少女が顔だけ覗かせて呟く。


建一「えぇと、確か俺達を助けてくれた……」


由乃「はい、峰沢由乃です」


緊張が解けたのか観崎の隣に並んでペコリとお辞儀をする由乃。


建一「俺は赤羽建一。本当にありがとな、あのままじゃ俺も観崎も殺されて…」




観崎「建一…!!」


観崎が俺の言葉を遮るように大声を出す。






観崎「お願いだから、そういう事…言わないでよ……ね?」


建一「あ、あぁ……悪かった」


今にも泣き出しそうな観崎を見て少し反省した。


事実とはいえ……いや、事実だからこそ想像したくない最悪の結末。


言わなくても良い事まで軽々しく口にするべきではなかった。


建一「…悪いな、みっともない所見せちゃって」


由乃に上着を返しながら、俺はゆっくりと立ち上がった。


由乃「…いえ、私にはそうやって本音をぶつけ合える相手、居ないので…」


温かく見守るような、それでいて少し悲しそうな表情で由乃は呟く。


建一「それで観崎、情報交換はどれくらいしたんだ?」


観崎「みぎゅ? わ、忘れてたよ…」


建一「忘れてたって……じゃあ俺が起きるまで何をしてたんだよ」


観崎「…あ、あわ、あわわ」


なんだか良く分からないが観崎が顔を紅潮させて慌て始める。


由乃「…えと、ただのガールズトークですよ」


観崎「そ、そそそそうそうガールズトークっ!」


建一「…成る程、ね」


観崎の反応を見る限り、あいつにも好きな奴が居るって事なんだろう。


少し寂しいような、そうでもないような…


建一「じゃ、とりあえず情報交換といくか」


由乃「それなんですけど、別の部屋にした方が…」


建一「ん、なんで?」


俺が問い掛けると、観崎と由乃は二人して床を指差した。





…そこには、明らかに俺のものであろう血痕が一定間隔で零れ落ちている。


それを辿ってゆくと、いずれ天真達が戻って来るであろう階段の前に……




建一「じゃ、離れるか…
















…今直ぐにィッ!!」


その声と同時に建一達は超特急で治療室から駆け出した。


建一は足を負傷していたのだが、その痛みも忘れて死に物狂いで走っていた。



◆◆◆◆◆◆◆◆



建一達が治療室を離れて4、5分も経過しないうちに、その人物達は現れた。


邦和「……ま、流石にそう簡単に尻尾を見せる訳ねぇか」


治療室の中で途切れた血痕を見てやれやれと首を振る邦和。


まる「む~っ、あの"がんなー"さん。次に合ったらメッタメタにしてあげます!」


観崎との戦闘を妨害されたのが余程悔しかったのか、頬を膨らませてプリプリと怒るまる。


邦和「…クク、頼もしい限りだな」


口ではそう言うが、邦和はまるが由乃に勝てるとは思っていなかった。



あの女……いくらサプレッサーで音を軽減していたとはいえ、俺に存在を悟らせなかった。


実際に射撃する様子を見た訳では無いが、銃の腕前も相当なものだ。


思い返してみると、白鷺や赤羽も見た目以上の戦力を持っていた。


そしてなにより、圧倒的戦力差でこの俺を軽くあしらってみせた化け物野郎……



邦和「……珠田、手当てに使えそうなもんを回収してさっさと行くぞ」


まる「は~いっ」


……クク、想像以上に楽しませてくれるじゃないか。


この建物で誰かを殺す事は、俺の更なる強さの証明となるのだからな。


邦和「何処の誰だから知らねぇが………感謝するぜ、心の底からな」


姿無き誘拐犯に向けて殺したくなる程の感謝を抱き、俺達は治療室を後にした。





◆◆◆◆◆◆◆◆



建一「へぇ~、結構な数の資料室に行ってるんだな」


由乃の携帯電話を見ながら関心の声を上げる。


ちなみに足はずきずき痛む、そりゃもう切り落としてしまいたいくらいに痛む、でも切り落としたら多分もっと痛い。


由乃の携帯にはB8F~B6Fの地図は勿論、俺達が撮り損ねたアジャスターの資料室の写真、そして…



『Beast:発達した嗅覚や聴覚でターゲットを追跡する。ターゲットを確認した場合、頭部の装置からAdjusterを呼び寄せる電波信号を発する。この電波信号を受信したAdjusterはいかなる場合もその電波の発信元に移動する』



『Commandman:赤外線センサーを使ってターゲットを特定する。ターゲットを確認した場合、下部のコードに電流を流してターゲットに接触させる。Commandmanの破壊は1人分の死者として扱い、死体回収システムも作動する』


新たな2つの情報を見て俺は言葉を失っていた。


―――俺はすっかり犯人の作った"ルール"というものに惑わされていたようだ。


このコマンドマンという物の存在を知っているか否かで俺達の取るべき行動は大きく変わってくる。


だってこれは、もしかしたら全員の生存を可能にする希望のような物なのかもしれないのだから。


観崎「みぎゅ、凄いね由乃ちゃん……私達なんか地図が2つあるだけなんだよっ」


由乃「そ、そんな事ないですよ…」


顔を紅潮させて俯く由乃、どうやら褒められて満更でもないといった風だ。


観崎が由乃と雑談をする中、俺はもうひとつ写真に収められた情報がある事に気付く。


建一「……ん、これも何かの資料か?」




『ステータス:特定のターゲットを停止させる事によって1人づつ個別にカウントされる数値。中にはこの数値を消費しなければ行えない動作もある。

情報室にて現在のステータス値を確認する事が可能。

-数値対応表-

0A:5

0B:3

0C:-10

0H:20』


もしかしたら天真の言っていたギミックというものの情報かもしれないと思ったのだが、どうやら違うようだ。


0Aはアジャスター、0Bはビースト、0Cはコマンドマンをそれぞれ示しているのだろう。


0Hは明らかにローマ字の順序的には不自然だが、やはり何かの頭文字だろうか。


少し思案すると、直ぐに結論は導き出された。






建一「…Human(人間)、か。 ふざけやがって……」


ここにも誰かを殺害する事のメリットが用意されている。


犯人達が俺達に殺し合いを求めている事がいよいよ明確化されて来た。


建一「……」





……目の前には、他人の携帯電話。


止められない止まらない、「電源」ボタン操作2、3回で済む簡単行為。


建一「……さて、待ち受け画面の確認でも――」









由乃「……今、なんて言ったんですか!?」


観崎と雑談していた由乃が珍しく声を上げて観崎を問い詰めている。


まさか、俺の好奇心という名の癖が見破られたとでも…?


そんな筈は……いざ確認するまではポーカーフェイスを崩さないように観崎の携帯で特訓したんだがな。



観崎「…えと、だからB7Fの扉が開いたのは白い髪の男の子と涼路晶人さんって人が……その…」


由乃「……っ!」


由乃の身体が硬直する、気のせいかもしれないが思いつめた表情で身体を奮えさせているように見えた。


…そして、どうやら俺の待ち受け画面チェックとは無関係らしい。



建一「…ゆ、由乃? どうしたんだよ」


俺がそう問い掛けても、その様子に変わりは無い。


そのまましばらく沈黙が続き、ようやく由乃が口を開いた。


由乃「――……なん、です」


観崎「…えっ?」


近くに居た観崎には聞こえたのだろうが、俺には由乃の呟きはよく聞き取れなかった。









由乃「……私のせいなんですっ、涼路さんが死んでしまったのは!!」


建一「へ…?」


両手で顔を隠して由乃は歎くが、俺達にはその言葉の意味がよく理解出来なかった。


涼路さんはアジャスターに殺されたのであって、そこに由乃という要素が関係しているとは考えにくい。


由乃「アジャスターから…2人で逃げる時に、転んでしまって……私の為に……アジャスターを引き付けてくれました……っ」



観崎「…っ! ごめんっ…私、その、知らなくて…!」


震える由乃の身体を抱きしめて観崎が謝罪をする。


由乃「……初川さんは、悪くないです。 悪いのは足手まといになって涼路さんを死に追いやってしまった、私…っ」


建一「………」


俺には、由乃にどんな言葉をかけてやれば良いのか分からなかった。


きっとどんな言葉も由乃の傷をえぐってしまうだけ、そんな気がしたから。



―――俺が…



俺がもっと早く涼路さんの所に駆け付けて、助ける事が出来ていたならどんなに良かったか…。


建一「…ごめん、な」


由乃には聞こえないように、小さな声でポツリと謝罪の言葉を述べた。


気がつくと、いつもは反射的に押してしまう電源ボタンから俺の指は離れていた。




◆◆◆◆◆◆◆◆




それから時間を置いて、由乃はようやく落ち着いたのか涙を拭って立ち上がる。


建一「もう、大丈夫なのか?」


由乃「…はい。気持ちの整理は、つきました」


目を閉じたまま髪を持ち上げて涙を拭く由乃の仕種に、何か懐かしいものを感じた気がした。


観崎「みぎゅ……もし辛くなったら抱え込まないで建一に相談するんだよ?」


由乃「…えぇっ!?」


建一「いや、そこは自ら名乗り出る所だろ!?」


ニヤニヤしながら俺と由乃とを交互に見る観崎、無理矢理俺と自分が気に入った女の子とをくっつけようとしているに違いない。


観崎「あーあー聞こえなーい。それよか、由乃ちゃんの携帯を見てたみたいだけど何か分かった?」


建一「はぁ…。とりあえずはこの破壊すれば死んだ人数としてカウントされる"コマンドマン"っていうのを捜してみようと思う」


由乃の携帯でコマンドマンの写真を表示させて観崎に見せる。


観崎「タコさん?」


建一「食えるもんなら食ってみろ」


呆れながら観崎の天然っぷりをスルーして、質問の相手を変えてみる。


建一「由乃は、どう思う?」


由乃「え、ええっと…」


モジモジしながら何かを言うべきか悩んでいる仕種を見せる由乃。











由乃「―――私、それ…赤羽君達と出会う前に壊して来ているんですけど……」



―――沈黙



その空気に気まずくなったのか、無理矢理に「テヘッ」と笑ってみたり「あの~」と声をかけてみたり色々と試行錯誤している由乃。


由乃「……もしかして、壊しては駄目な物だったんでしょうか…?」


縮こまりながら問い掛けて来る様は年齢がマイナス10される程度の弱々しさを誇っていた。


建一「―――御免、ちょっと冷静になる為の時間をくれ」



……俺達はいつの間にか、とんでもない少女を味方にしていたようだ。

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