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シカバネアソビ  作者: Mr.バナナ
Episode1~サマヨイアソビ~
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EP1-017:私の望む未来

私と由乃ちゃんは、さっきの場所から1番近い治療室に来ていた。


建一をここまで運ぶのに結構体力を使ってしまったが、だからといって長居はできそうにない。


建一の血痕が廊下に残っているから、それを目印に追って来たまるちゃん達に見つかってしまうかもしれないのだ。


出来れば光弐君と可憐さんも捜したいけれど、今はそれどころではない。


観崎「これで、よしっ!」


建一の止血を終えて、まずは一安心。


包帯を巻く際に服を捲る必要があってドキドキしてしまったのは内緒の話だ。


前までは服を捲くるくらいなんて事なかったのに、私ったらどうしちゃったんだろう…。


由乃「あ、あの…」


相変わらずおどおどしながら話し掛けてくる由乃ちゃん。


観崎「みぎゅ、なぁに?」


由乃「初川さんと赤羽君は…その、仲が良いんですか?」


自分の上着を建一に被せてあげながらそんな事を尋ねて来る由乃ちゃん、ちょっとだけ嫉妬かも。


観崎「仲が良いというか、私と建一は幼馴染だから……」


由乃「そう…ですか」


少し残念そうな表情をする由乃ちゃん、これはもしかして…


観崎「あれれぇ……もしかして由乃ちゃん、建一に一目惚れしちゃったのかな?」


少し大袈裟に煽ってみる。


由乃「え、えと…あの、どうしてそんな事を聞くんですか?」


質問を質問で返されてしまった。


あまり動揺もしていないみたいだし、やっぱりいきなりすぎたかな?


観崎「みぎゅ……初対面なのにこんな事を言っていいのか分からないけど、建一って生きる楽しみのような物がないから、彼女さんでも作れば楽しくなるかなーって思って……」


本当の事を言ってしまうと心配されるだろうから、建一の両親の事については伏せておく事にした。


正確には、建一には"生きる理由"を見失って、その為に"大切なもの"を見つけてあげたいという私の望み。


建一と私とを繋ぐ約束。


由乃「そう…ですか。 容姿は…その、格好良い類に入ると思いますけど、私は彼の事をよく知らないので…」


恥ずかしがり屋だと思っていたけど、「格好良い」って言うのは躊躇しないみたい。


どういう基準で恥ずかしがってるんだろう、やっぱり本人の前じゃないからかな?


由乃「初川さんは、どうなんですか?」


観崎「みぎゅ、私? 私なんかじゃ駄目だよ。ずっと幼馴染やってるけど、全~然異性として見られてないんだよ?」


建一と会ってから、もう10年くらいだっけ?


それだけの間ずっと建一を見て来たんだから、私に興味が無い事くらいは分かってるつもり。


由乃「あのっ、そうじゃなくって…」


観崎「みぎゅ?」


由乃ちゃんが何か言い辛そうにしてる。


会った時からずっとそうだけど、今のは言おうかどうかを悩んでいるような…


由乃「1番大事なのは、初川さんが赤羽君を好きなのかどうかだと思います。 …どうなんですか?」


さっきまでのおどおどした感じは何処へいったのか、はっきりと言い切る由乃ちゃん。


観崎「え…?」


その言葉が、ゆっくりと頭に入ってくる。



建一の気持ちの問題ではない


私が建一を好きなのかどうかの問題



……建一は、私に興味なんか無いのかもしれない。


私は、建一の事をどう思っている?


友達?


幼馴染?


それとも……





観崎「わ、わわわわわ私は別にっ、別にぃっ…!!」


分からない。


そんな考え方、した事ない。


いつも建一の事を気にして、彼の事をなんとかしてあげたいと考えていた。


建一に好きな人ができたら、うまくくっつけさせてあげたいなぁって……そんな感じに。


私の気持ちって、何?


私は建一をどう思ってるの?






由乃「………」


初川さんが、顔を真っ赤にして必死に考えている。


もしかしたら初川さんは、自分でも気付いていなかったのかもしれない。


私と会ってからずっと、彼女は赤羽君の事ばかり気にしていた。


赤羽君を心配して…


赤羽君を大事にして…


赤羽君の事をまるで自分の事のように考えている。



由乃「…ふふっ」


思わず笑みが零れる。


観崎「あわ、あわわわ…え?」


由乃ちゃんは私に優しく笑っていてくれた。


まるで私と建一の事を見守ってくれているような、そんな瞳で。



由乃「ごめんなさい、こんな話をしてる場合じゃないですよね…」


観崎「え、えっと…うん」




……そっか。


これは考えるべき事ではあるけど、今直ぐに急いで結論を出す必要はないんだ。


例え建一の"大切なもの"を見つけてあげられたとしても、ここで死んでしまっては意味がない。


優先すべきは気持ちよりも何よりも、ここからの脱出だった。


観崎「…まずは、ここから生きて帰らないとね」


由乃「はいっ」


…実は、迷った末に2人を助けたのはいいものの「初川さん達が犯人だったらどうしよう」と思っていた。


…けれど、初川さん達なら信用できる。


こんなにも誰かの為に頑張っている人が、そんな一生懸命な人に大切に思われている人が、悪い人の筈がない。


―――私は、この人達の力になってあげたい…!



一見、年頃の女子がする普通の会話にしか見えないそれは、由乃の警戒心を消す役割にもなっていた。



観崎「ありがとう由乃ちゃん。 私、ちゃんと考えてみる」


由乃ちゃんがいなかったら、私は生涯自分の気持ちなんて考えなかったかもしれない。


私は"大切なもの"の視野に、自分自身というピースを嵌め込んでいなかった。


もう、誰かを好きになる事なんてないだろうと思っていたから。


きちんと建一に向き合えていなかったから。



―――建一の気持ちではなく、自分の気持ちを……



その一言は、観崎の考え方を大きく変化させていた。



由乃「あの、その…私は思った事をそのまま言っただけなんで…」


再びおどおどし始める由乃ちゃん、あの強い意識を持った態度が見れるのは真剣な時だけなのかもしれない。



建一「うぅ…ん」


由乃「赤羽君、起きたみたいですね?」


観崎「うんっ…」


建一の側に歩いてゆき、その顔を見下ろす。


先刻の話の影響か、ずっと顔を眺めていると無性に恥ずかしくなって来た。



―――私は絶対に、建一と生きてここから脱出してみせる…!



そして観崎の決意は、より強固なものとなった。

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