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シカバネアソビ  作者: Mr.バナナ
Episode1~サマヨイアソビ~
16/150

EP1-015:卑劣なる狂者

何処で失敗した?


何故こうなった?


後悔と焦りに遮られて冷静に物事が考えられない。


観崎に……大切な人に危機が迫っているというのに、俺にはどうする事も出来ない。




建一「…っ!?」


俺は今、観崎を「大切な人」と思ったのか?


アイツはそんなんじゃない、もっと別の……



……もっと別の、何だ?





邦和「意外だったな、珠田」


まる「…うん、流石は悪魔さんって事なのかなぁ」


充分な戦績を上げたものの、邦和達2人にとってこの結果は予想外だった。


光弐「…どういう事だよ」


普段は明るい光弐も、邦和に対しては威嚇するような低い声で問い掛ける。


まる「まる達の予定ではね? 建一さんと可憐さんは死じゃってる筈だったんですよ~」


無邪気な笑顔はそのまま、遊んでいるような楽しそうな声でまるは呟く。


建一「俺と、白鷺さんが…?」


邦和「そうだ……まずは珠田に意識を集中させ、俺が最も戦力が高いであろう白鷺を狙撃する」


まる「……で、それを合図にまるが建一さんをナイフでズブッ……ってね?」


それが邦和達の計画だった。


もし本当に彼等の言葉通りに事が進んでしまっていたらと想像して建一は身震いする。


邦和「しかし、白鷺は咄嗟に銃を盾にして銃弾を防ぎ……まぁ、肝心の銃は弾き飛ばせたようだが」


まる「まるも、足には自信があったのに建一さんに避けられてしまいました……」


2人は優勢だというに、この結果は残念だといった表情をしている。


――こいつ等、ここからの脱出を楽しんでいるのか…!?


彼等は何も言わないが…実状、観崎は俺達の行動を抑制する為の人質。


ただ"怒り"の感情が蓄積されていくだけで、観崎を助ける事は叶わない。


建一「馬鹿にしやがって…!」


邦和「フン、なんとでも言え。珠田、こいつ等は動けない……今のうちにトドメを刺せ」


まる「わかりました~!」


買い物を楽しむかのように建一達を順番に物色するまる。


建一、光弐、可憐……


観崎を見ないのは、彼女を人質にして俺達の行動を抑制している事を理解しているからであろう。


まる「じゃあ貴方ですね!」


まるが1人の人物にナイフの矛先を向けた。


光弐「…俺か」


まる「んふふ~、パパとママがくれた私の名前を笑った恨みです。 だから、最初に殺しちゃってみますね?」


満面の笑みで冷酷な宣告をするまる。


実際、彼女は光弐の事をそこまで恨んでいる訳ではない。


なんとなく、殺す理由があった方が楽しいと思っただけなのだ。


光弐「……」


光弐は思案する、何か良い策は無いのか……と


まる「それじゃあ、さよなら……だよっ!」




建一「光弐っ!」

観崎「光弐君…!」

可憐「渡…!」



それでもこの短い時間で理想的な解決策が見つかる筈もなく、無情にもまるのナイフは光弐に向けて振りかざされる。




光弐「…………影……斗…」



ふと、俺が死んだ事を知ったらアイツはどんな顔をするのかを考えてしまう。


渡影斗(わたりえいと)


世界で一人だけの、唯一無二の弟という存在。


こんな馬鹿丸出しの俺でも、居なくなったらアイツは悲しむだろう。


涙を流し、思い出に縋り付き、一生をかけても埋める事の出来ない心の溝を作ってしまうだろう。


……馬鹿だな、お前の兄貴はそんなに立派な人間じゃないっていうのによ。



光弐「それ…でも……」




…ドクンッ!


アジャスターと敵対した時にしか感じなかった時間の流れが目茶苦茶になるような感覚が全身を支配してゆく。


俺のソレは建一達のと比べて明らかに劣っていたが、今はそれで充分。




俺は無我夢中になって、目の前に迫っているナイフを叩き落とした。


光弐「……それでも弟の悲しみが対価だっていうのなら、いくら幼女に殺されるご褒美だからって貰ってる訳にはいかねぇんだよ!!」


その行動は、この場に居る全員にとって想定外の行為だった。


まる「…きゃふ!?」


突進する勢いを今更緩める事は出来ず、まるの身体は光弐に衝突する。


光弐「こういうご褒美は大歓迎です、はい」


邦和「このッ…!」


焦った邦和が銃の照準を観崎から光弐へと変更する。


しかし…





パスンッ!


次の瞬間、誰かが意図して起こしたようなタイミングで邦和の手から銃が弾き飛ばされるのが見えた。


建一「これなら……!」


可憐が落とした銃を拾いに向かおうと走り出す建一。


しかし――


邦和「……そうはいかねぇぞ、珠田ッ!」


まる「ひゃわわっ、はいっ!」


邦和が声を上げるのと同時に、まるが慌てて光弐から離れる。


その直後、鼓膜に響く強烈な音と共に目の前の通路が鉄製の壁に塞がれてしまった。


咄嗟に手を引っ込めていたから良かったものの、あと少し遅かったら右手がプレスされてしまっていた所だ。


その壁のデザインは普通の廊下と代わらないので、何も知らない人なら行き止まりと勘違いしてしまうだろう。


建一「…!」


これは、建一が銃を拾い損ねたかそうでないかというような小さな問題ではない。


壁を挟んで"光弐、可憐"の2人と、"建一、観崎、邦和、まる"の4人に分断されてしまったのだ。


建一「なんだよ、これ…!」


まるは天真の声とほぼ同時に、光弐から離れて「こちら側へ」移動していた。


恐らく、これは天真の意思で落とされた壁。


建一「天真…何をした!?」


邦和「それを素直に俺が答えるとでも思ってるのか………よ!!」


動揺して無防備になっている建一の腹部に、邦和の蹴りが入った。


建一「う……ぉ…っ!?」


あまりの痛さに腹部を押さえてうずくまる建一。


観崎「建一っ!!」


まる「駄目駄目! 観崎さんの相手はまるですよ!」


邦和の銃から開放された観崎が建一の元へと駆け寄ろうとするが、ナイフを拾って戻って来たまるがその前に立ち塞がる。


観崎「私は、まるちゃんと戦いたくないよっ!」


まる「なんでですか? こんなに楽しいのに……もっといっぱい殺し合いましょ、観崎さん?」


まるに攻撃する事を躊躇している観崎は、完全に策を失ってしまっていた。


建一「み、観崎……」


邦和「赤羽、お前は他人の心配をしている場合じゃないだろう」


天真に髪の毛をわしづかみにされ、無理矢理正面を向かされる。


邦和「質問がある。お前達…どうやって俺の銃を弾き飛ばした。 銃声は聞こえなかったが、あれはお前達のうちの誰かがやったのだろう?」


建一「そんなの、知らな……ガハッ!?」


知らないと言おうとした途端に、先刻と同じ場所に蹴りを入れられる。


邦和「そんな筈はない、お前達も"ギミック"を使ったんだろうが…!」


建一「ギミックだって…?」


聞き慣れない単語だった。


名称からして何かの小道具なのだろうが、見当もつかない。


邦和「質問してんのはこっちなんだよ!!」


質問を返したのが天真の気に障ったのか、再び腹部を蹴られる。


建一「う……ぐ!」


まずい、意識が朦朧としてきた……


邦和「チッ、寝るんじゃねぇよ!」


ところが天真に頬を叩かれて無理矢理意識を覚醒させられた。


邦和「尋問は始まったばかりだ、早く答えた方が身の為だぞ?」


建一と邦和、観崎とまる。


それぞれが対立し、分断された建一側の廊下は戦場と化していた。



◆◆◆◆◆◆◆◆



光弐「くそッ、なんだよこれ!? 建一! 観崎ちゃん!」


光弐は通路を分断した壁を何度も叩くが、それはかなりの厚みを持っているようでびくともしない。


可憐「渡、落ち着いて。 天真と私の銃は幸運にもここにある。 赤羽達も簡単には殺されない筈…」


可憐の言う通り、光弐達側の廊下には可憐と邦和の所持していた2丁のハンドガンがあった。


光弐「そう…だよな」


可憐の言葉に光弐は冷静さを取り戻す。


可憐「壁の事は後、今は回り道をしてでも合流するべき」


光弐「……そうは、させてくれないみたいだけどな」


光弐の視線が鋭くなる、その視線は可憐の後ろを睨んでいるようだ。


可憐「…!」


それに気付いて可憐も振り返ると、そこには頭に何かの機具が取り付けられている1匹の黒い犬が牙を剥いて光弐達を威嚇していた。


可憐「あれは、確か…」


可憐はそれに見覚えがあった。


B7Fで白い髪の少年に助けて貰った時の、あの獣と同じだった。


光弐「もしかして、アジャスターを呼び寄せる厄介な獣ってのはコイツの事か?」


可憐「…そう、間違いなく同じ獣」


光弐は落ちている銃を拾い上げて、それを獣に向ける。


光弐「逃げ場は無い訳だし、ここにある銃で応戦するしかないよな……っ!」



バンッ!


獣「ガウ…ッ!?」


光弐が練習がてらに放った銃弾が命中し、獣は呆気なく絶命した。


しかしそれはあまり意味の無い行為、既に廊下の先から数機のアジャスターがこちらに向かっているのが見える。


可憐「私の時と同じなら、これからもっと増える」


光弐「全く……面倒な事になって来たな」



……そして、光弐達のいる廊下も戦場と化した。

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