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シカバネアソビ  作者: Mr.バナナ
Episode1~サマヨイアソビ~
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EP1-012:First dream

茜色に染まる空。夕日に照らされて、土手に1人の少年の影が描かれる。


―――また……か


いつもの夢、両親が死んだ時の夢。


あの頃、俺は周囲から軽蔑されて孤立していたし、俺もそれを誰かに話したりする事はなかった。


だから、あの時は両親が全てだった。


両親の姿を垣間見れる嬉しさと、それを失った悲しさが混ざり合って言葉にできない感情が渦巻く。


死んでいく姿を見たいって訳じゃないけど、生きている姿を少しでも眺めていたい。


それが俺の本心だった。


これは文字通り、全てを失った時の夢だ。








◆EP1-012:First dream


"彼"はいつも通りに、帰り道を進んで行く。



何か、違和感を感じるな…。



そもそも昔の夢を第三者の視点で見る事そのものが初めてだった。


疑問に思ってその風景をよく見てみるが、彼はいつも通りに進んでゆくだけ。



いや、なんだか辺りが明るすぎるような…?



その違和感の正体は、周囲の景色の明るさが自分の知っている物ではない事から来ていた。








空が"明るい青"に染まり始める。



これは……朝焼けか?



そんな筈がない、いつも夢に見る10年前の景色は夕方。


つまり茜色の空は、夕焼けを意味する筈だったのだ。



これは何だ、俺の脳が勝手に作り出した空想の景色なのか?



空が青く染まり始めると、さっきまで朝焼けの赤に包まれていた風景が、本来の色を取り戻してゆく。


だが、それでもなお赤い色を失わない場所があった。



……ザッ、ザザッ!



風景がノイズに包まれ始めるが、これだけは確認できた。





…彼は、血にまみれていた。



血まみれの彼が何かを呟く。






「足りない…■■■、足りない…」


彼の声の一部は、ノイズに掻き消されてよく聞き取れなかった。



◆◆◆◆◆◆◆◆



風景が切り替わる。


そこはアパートの一室


それもまた建一の知っている夕方ではなく、時刻は夜中だった。


彼は布団に身体を横たえていて、服は血にまみれていない。




…どういう事だ?


彼は俺なのか、それとも全くの別人……空想の中の人物なのか。




扉の隙間から光が漏れている、彼の母親か、それとも父親かがまだ起きているのだろう。


「…トイレ」


そう言って彼は立ち上がり、扉に向かう。


だが、彼の足は部屋から出る直前に止まった。


「………」


彼の視線の先、ドアの隙間の先。


そこには1人の女性がいた、恐らく彼の母親。


誰かと電話をしているらしく、受話器に向かって迷惑そうに顔を歪ませている。


「だから、これ以上アイツの■■を■■す必要は無いって言ってるでしょう?」


時々入るノイズのせいで声を聞き取り辛いが、恐らく彼には全てが聞こえているのだろう。


「そう、アイツは■まったわ。クククッ、後は■を可能な限り持ち出すだけね」


彼の母親が邪悪な笑みを浮かべる。


「え…?」


今まで無表情だった彼の目が見開かれる、まるで信じられないものを見るかのように。


「■■? そんなのどうでもいいわ、放っておけば勝手に■■でしょう」



「そん…なっ」


彼の表情が、驚きから絶望へと変わる。


顔は青ざめて、首を左右に振って現実を否定する。


「そうね…今日はもう■て、■■の朝にでも■■するとするわ」


女性が電話を切った時……



「―――」


少年の瞳から光が欠落した。





◆◆◆◆◆◆◆◆



激しいノイズで視界が遮られ、再び風景が切り替わる。


深夜、彼は誰も居ない台所で机に一人腰掛けていた。


光の欠落した瞳には涙を流した跡があり、その背中は酷く小さいような錯覚がした。


「ア■■が…父■■■…」


彼が何かを呟くが、その殆どがノイズに遮られて聞こえる事は無い。



…カチャリ



そんな中、彼の手元から小さな音だけがはっきりと聞こえるが、視界は真っ暗で何が起きているのかまでは確認できなかった。


彼は台所から離れ、寝室へと足を運ぶ。


そこにいたのは、先刻電話をしていた彼の母親。


どうやら彼女は眠っているようだ。


「■し■や■…!」


彼は枕元に立ち、自らの母親を虚ろな瞳で見下ろした。




嫌な予感がする。


彼の魂の抜けたような表情。


台所での物音。


眠っている母親。


そして1番最初に見た、朝焼けを歩く彼の姿は……?









……まさか!?



ザザッ、ザザザザッ…!



ついに音だけではなく、視界にまでノイズが混ざって来る。



…ザザザザッ、ザザッ!




「母■■…」



憎しみを隠そうともせずに手に持った"何か"を母親に振り下ろす。



ザザザッ、ザッ…!



「■■■し■■■ッ!!」



彼と彼の母親が接触する。


ズッ…!


その声、その音と共に全ての感覚が遮断されてゆく。


ノイズで全てが見えなくなる前に微かに見えたもの。










…ピシャッ!



それは、恐ろしい程鮮やかな"赤"が飛び散る光景だった。





………


……






建一「うあああぁぁああっ!?」


意識が覚醒して、ベットらしきものから跳ね上がるように起き上がる。


建一「はぁっ、はぁっ…!」


なんだったんだ、今の夢は。


夢というのは、脳内の情報整理の過程で見る物だと聞いた事がある。


するとやはり、父さんや母さんの事を考えているうちに俺の脳が勝手に作り出してしまった産物なのだろうか?


建一「はぁ、ふぅっ……」


……落ち着けよ俺、所詮は夢なんだ。



この時、建一はこれを脳内の情報整理の過程で生まれた夢だと判断した。


建一「そうだ、ただの夢…」


それは"間違い"なのだが、建一にそれを知る術はなかった。





建一「……ん、なんか妙に暖かいような?」


誰かが被せてくれたのであろう布団をめくってみる。





観崎「すー…すー…」


するとそこには、建一の腕にがっしりとしがみついて眠る観崎の姿があった。


建一「こ…こいつ……離せっ!!」


ぎゅっ


無理矢理引きはがそうとすると、観崎はより強く俺の腕にしがみついて来た。


もにゅっ


建一「うん、思ったより大きくて柔らかい。ちゃんと成長してるようで何より……じゃなくてっ!?」


いや落ち着け落ち着け超落ち着けよ俺、相手は観崎だぞ!?


観崎「けん……い…ちぃ…」


建一「…!」


恐らく寝言だろう、観崎が建一の名前を呟く。


観崎「私が……守って…」


建一「………はぁ」


どうせ引きはがせないんだし、もう少しだけこのままにしておいてやるか。


建一が諦めて再び寝付こうとした、その時…。



ガチャ



光弐「おい建一っ、起きたなら交代………」


建一「…あ」


光弐の視線の先、観崎と俺の腕の接触部分。


光弐「…お、お楽しみの所失礼しやした師匠ッ!!」


勢い良く扉が………閉まる一歩手前で光弐の荷物が間に挟まれる。


恐らく扉の開錠条件の関係でそうしなければ外から扉を開ける事が出来ないのだろう。


……これは、間違いなく寝ている観崎に悪戯していると思われたな。


光弐は気を使ってくれたんだろうが……











建一「勘ッ違いだぁぁぁあああああああああああああ!!」


俺は、今も昔も観崎に振り回されっぱなしだった。

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