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シカバネアソビ  作者: Mr.バナナ
Episode1~サマヨイアソビ~
10/150

EP1-009:出会いと別れ

飛鳥の言葉に場が静まり返る。

1分だったか、5分だったか…


長く感じられた時間は実際、ほんの10秒程度で、俺が勝手に長く感じていただけだ。






建一「抜ける……って、どういう事だよ」


当然の疑問だ。


短い時間だが今まで一緒に行動してきた飛鳥が「ここから抜ける」と言い出したのだから。


飛鳥「私は元々貴方達を信用していなかった。犯人に襲われるリスクと見知らぬ人と行動するリスクを天秤にかけただけ、それ位は気付いているんでしょう?」


建一「………」


なんとなく察してはいた、飛鳥の俺達に向ける視線には常に警戒心が付き纏っていたから。


自分達は信用されていないのではないか……と


飛鳥「もう簡単には殺されない程度の武器は手に入れた。それにさっきの人達を見る限り、今後は人を殺す事さえ必要になる可能性がある」


観崎「えっ、それってもしかして…」


飛鳥「そ、もしアンタ達を殺す必要が出来た時、情が移ってたら殺せないし。逆に貴方達が私を殺す可能性だってゼロじゃないわ」


いつも通りの冷静な表情で、必要なら俺達を殺害すると言い切る飛鳥。


光弐「ほ、本気か…!?」


飛鳥「勿論本気よ、じゃあ私は行くけれど…」



建一「ま、待っ…!」






ダンッ!


俺が飛鳥を追おうとした瞬間、飛鳥がライフル銃の引き金を引いて床を狙撃した。



飛鳥「…コレで撃たれたくなかったら追って来ない事ね。それに銃声でさっきの二人組を呼び寄せてしまう可能性もあるから、貴方達もさっさと逃げなさい」


建一「ま、待ってくれよ! 何でこうなるんだよ、俺達ってそんなに信用できないような存在なのか!?」


俺の言葉など聞こえていないかのように飛鳥は離れていく。






飛鳥「………私は、貴方達とは違うから」


悲しげな表情で飛鳥が呟いた最後の言葉は、よく聞こえなかった。


唐突に…


何の前触れもなく…


静山飛鳥という人物は、俺達の輪から外れてしまったのだった。



◆◆◆◆◆◆◆◆





光弐「建一、そこ資料室な」


建一「…あぁ」


あれからずっと薄暗い空気が晴れないでいる。


重要な情報元である資料室に辿り着いても、誰一人喜ぼうとはしない。


観崎「…あ、先にちょっと見て来るね?」


この空気に耐えられなくなったのか、観崎が一人で資料室に走ってゆく。





観崎「みぎゅ、地図だったよー」


パシャッ


資料室の中から、観崎の声と携帯電話のシャッター音が聞こえて来る。


……地図、それは俺達が最も重要視している情報。


それが見つかっても、まだ空気は暗いままだった。


いつまでも暗くなってる訳にもいかない…よな。


建一「そういや、飛鳥のやつに『妄想してたっていうのは誤解』って事を信じて貰えてないままなんだよなぁ」


咄嗟に建一が思いついたのは、悩みの種である飛鳥を無理矢理話題にする事だった。


観崎「えとっ……建一?」


光弐「そんな事どうでもいいじゃんか、それに今…飛鳥の話は…」


飛鳥について話そうとすると、2人の表情は更に暗くなる。


建一「どうでも良い訳ないだろ! もしかしたらあの妄想云々のせいで信用を失ったのかもしれないじゃないか! とにかく俺はもう一度"飛鳥に会って"、誤解を解くんだ、分かったか!?」


観崎「…!」


光弐「!?……ハハハハハッ!全く、お前って奴は……」


俺が飛鳥に会う為の出鱈目な口実が二人に否定される事はなかった。


結局、俺達は皆……飛鳥が居なくなって寂しかったのだ。





◆◆◆◆◆◆◆◆





ぐぅ~


ぎゅるる~


観崎「みぎゅ…お腹すいたよぅ」


観崎が空腹でダラダラモードに入る。


建一が携帯で時刻を確認すると、朝食の時間はとっくに過ぎていた。


光弐「おい建一、近くに飯食える所ないのかよ」


建一「そんな都合の良い場所、ある訳が……」


さっき偶然見つける事が出来たB7Fの地図を確認する。






『料理室』




建一「……冗談?」


誘拐しておきながら飯だの怪我治療だのをする為の設備が整っている。


いちいち犯人の狙いを考えながら行動していたせいか頭が痛くなってきた。


光弐「ん?……おお料理室か、いいねいいね!」


写真の『料理室』という単語を見た途端に表情が無駄に明るくなる光弐。


観崎「おなか……すい……すい……すいぃぃぃ……」


観崎がエネルギー切れ寸前だ、これはいけない。


建一「…行くのか? 罠か何かだったら…」


光弐「もち!!」


建一「お前には聞いてない」


光弐「(´・ω・`)」


あ、光弐がまた凹んじゃった……まぁいっか。


観崎「お腹すいたぁ……ごはんの為なら死ねるぅぅ~」


建一「…ふぅ」


このままだと観崎が冗談抜きで餓死しかねないので、今は食事を最優先にする事にした。



◆◆◆◆◆◆◆◆



料理室に辿り着いた俺達は、まず扉に綴られた開錠についての項目を見ていた。


『開錠:室内が無人である事、内側から出る際にはこれを適用しない』


光弐「ラッキー! 見張りとか気にしないで食事できんじゃん!」


建一「まぁ……そうだな」


基本的に、資料室のようなじっくりと落ち着いて行動したい場所にはこの条件が適用されている気がする。


やはり飛鳥のように単独で行動するのがここでは普通だという事なのだろうか?



……まぁ、どちらにせよ不確かなルールなんだし。あまり真に受けない方が良いのかもしれない。


建一「よし……」


扉のドアノブを捻る。



ガチャガチャ


ガチャガチャ



建一「………」


光弐「………」


観崎「おなかすいた~」





ガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャ!!





あ、開かねぇっ!



建一「うぉぉ……」


ガチャガチャ…


光弐「……建一」


気付くと俺の手を光弐が掴み、首を左右に振っていた。



光弐「諦めろ…グフッ!?」


建一「なんて事だ…」


親指を立ててウインクする光弐を殴って冷静になる。


扉の条件を真に受けるなら…


建一「…先約、か」


観崎「そんなぁ、折角建一の料理でお腹いっぱいになるつもりだったのに~」


観崎が床に膝を付く。


最初に会った時の情報交換で聞いた話だが、観崎は昨日の夕食を食べていないらしい。


…というか、作るの俺だったのかよ。



建一「ホント、どうしたもんか…」


俺達が思い悩んでいると……




ガチャ




光弐「お、おや?」


扉が開いた。


どうやら内側の人間が開けたらしい。


しかしその人物はあろう事か、俺達に向けてハンドガンを構えていた。


綺麗な深青色のストレートヘアとその武器は明らかに不釣り合いで、建一達は危機感を抱くのが少し遅れた。


その僅かな隙に、ハンドガンの銃口は建一の眉間へと向けられる。





――しまった、奇襲か!



建一はそう理解するが、自分達がアジャスターから回収したライフル銃は飛鳥が持ち去ってしまった事を思い出して唇を噛み締めた。


建一「くそっ…!」


場が凍りつき、誰もが動けずに沈黙したまま時間だけが流れていく。


「………」


…だが、いつまで経ってもハンドガンの引き金が引かれる事はなかった。


建一「撃たない……のか?」


建一が恐る恐る尋ねると、無表情のまま女性が口を開く。


「……料理ができるって、本当?」


どうやら建一の質問に答えるつもりは無いらしい。


彼女の質問の内容から察するに、どうやら扉の外での会話は全て聞かれてしまっていたようだ。


観崎「あのっ! そのっ…建一は、料理できるよっ! お婆ちゃんの分まで作ったげてるんだから!!」


アジャスター戦の時のように建一の命が危機に曝されて焦っているのか、建一を庇うように質問に答える観崎。


「そう………なら作って欲しいんだけど、料理」


銃口はこちらに向けられたまま、室内に入れと言わんばかりのジェスチャーをしている。


もし断ったら……俺達は殺されてしまうのか?


建一「は……はい」


それを考えると、俺に承諾以外の選択肢は残されていなかったのだ。

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