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レベル1のおっさん、ダンジョン配信を始めたら世界最強だった  作者: tama


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12/61

世界の外側から来た“本体”

 空が割れた。


 それは比喩ではない。


 物理的に、空という概念が“裂けた”。


 黒い裂け目の向こう側。


 そこには――


 “宇宙”ではない何かがあった。


 光でも闇でもない。


 ただ、意味のない空間。


 そこから、声が落ちてくる。


『――観測完了』


 その瞬間。


 地球全土のダンジョンが一斉に沈黙した。


⸻


■本体降臨


 裂け目から“それ”が現れる。


 形はない。


 だが、確かに“存在している”。


 見る者によって姿が変わる。


 美月には“巨大な剣”。


 恒一には“黒い研究装置”。


 天音には“かつての神”。


 そして直人には――


「……ただの、もや?」


 直人は首を傾げた。


「これ、何です?」


 天音の顔が強張る。


「直人、それは見え方が違うだけ」


「え?」


「“本体”は、認識できない存在」


 裂け目の向こうから声が響く。


『対象確認』


『佐伯直人』


『回収対象』


 直人はため息をつく。


「また回収ですか」


「人気者みたいで嫌ですね」


 美月が叫ぶ。


「ふざけてる場合じゃない!」


 恒一が剣を構える。


「全員、下がれ!」


 天音だけが動かない。


 ただ、直人を見ている。


⸻


■天音の真実


「天音」


 直人が呼ぶ。


「はい」


「これ、勝てるんですか?」


 天音は少し黙る。


 そして――


「普通なら、無理」


「普通なら?」


「うん」


 天音は一歩前に出る。


「でも、直人なら違う」


「どう違うんです?」


 天音は静かに言った。


「あなたは“この世界の外側から来た可能性がある”」


 直人の動きが止まる。


「……は?」


「20年前の事故」


「ダンジョン初出現の日」


「あなたは“巻き込まれた”んじゃない」


 天音は直人を見る。


「落ちてきた側」


 沈黙。


 美月が息を呑む。


「そんな……」


 恒一が呟く。


「やはりか……」


 直人は頭をかく。


「いやいやいや」


「俺、普通の大学生でしたけど」


 天音は首を振る。


「違う」


「あなたは“記録に存在しない”」


「この世界のどの歴史にも、あなたの起源はない」


 裂け目の向こうの存在が動く。


『矛盾個体』


『修正対象』


⸻


■本体の攻撃


 空間が“消える”。


 直人の右腕が一瞬で消失した。


「……え?」


 痛みはない。


 ただ“そこにあったという事実”だけが消えた。


 美月が叫ぶ。


「佐伯さん!!」


 恒一が動く。


「再生阻害か……!」


 天音が叫ぶ。


「違う!これは“存在削除”!」


 直人は自分の腕を見る。


「なるほど」


「消えるんですね」


 普通ならパニックになる状況。


 だが直人は――


 少し考えていた。


「じゃあ」


 左手を見て。


「これも消えるんですかね」


 天音が叫ぶ。


「やめて!」


 しかし遅い。


 直人は自分の左腕を“殴った”。


 ――ドン。


 その瞬間。


 消えたはずの右腕が“戻った”。


 世界が一瞬止まる。


⸻


■世界のバグ


『……何?』


 本体の声が揺れる。


『自己修復?』


『いや違う』


『“結果の再定義”だ』


 天音が息を呑む。


「やっぱり……」


 美月が聞く。


「何が起きてるの?」


 天音は答える。


「直人は“壊れた世界を元に戻す”んじゃない」


「え?」


「壊れたことにすることで、世界を上書きしてる」


 恒一が呟く。


「……概念干渉の逆か」


 天音は頷く。


「そう」


「だから本体の攻撃は意味がない」


⸻


■直人の理解


 直人は自分の手を見ている。


「つまり」


「殴ればいいってことですか?」


 天音は少し黙る。


「……だいたい合ってる」


「分かりやすいですね」


 直人は拳を握る。


 裂け目の向こうの存在が動く。


『危険度上昇』


『即時排除』


 空間が崩れる。


 無数の“消去線”が直人へ向かう。


 だが――


 直人は一歩踏み出した。


⸻


■世界の外側へ


 その一歩で。


 空間のルールが変わる。


 消去線が“止まる”。


 天音が息を呑む。


「……入った」


 美月が叫ぶ。


「どこに!?」


 天音は答える。


「世界の外側の領域に。」


 直人はそこに立っていた。


 本体の“目の前”。


 そして言う。


「これ、殴っていいやつですか?」


 沈黙。


 やがて本体が答える。


『……理解不能』


『存在定義が揺らぐ』


 直人は軽く頷く。


「じゃあ、殴りますね」


⸻


■一撃


 拳を振る。


 ただそれだけ。


 だが――


 世界が“止まった”。


 音が消える。


 光が消える。


 時間が消える。


 そして。


 ――ドン。


 たった一撃。


 本体の“形”が崩れた。


『……なぜだ』


『なぜ“殴れる”』


 直人は答える。


「殴れるからですけど」


『意味がない』


「そうですか?」


 直人はもう一度拳を握る。


「じゃあ、もう一回いきますね」


⸻


■崩壊


 二撃目。


 三撃目。


 四撃目。


 殴るたびに“世界の定義”が壊れていく。


 本体が叫ぶ。


『やめろ!!』


『それ以上は“世界そのものの崩壊”だ!!』


 直人は止まらない。


「じゃあ、止め方教えてくださいよ」


『お前が止まれ!!』


「無理ですね」


 そして――


 最後の一撃。


 ――ドン。


 世界の外側が、完全に崩れた。


⸻


■帰還


 気づくと、直人は地上に戻っていた。


 空は元に戻っている。


 裂け目は消えている。


 ダンジョンも静かだ。


 美月が膝をつく。


「……終わったの?」


 恒一が空を見上げる。


「いや……」


 天音だけが、静かに言う。


「終わってない」


 直人は拳を見ている。


「まだ何かあるんですか?」


 天音は空を指す。


「今のは“本体の一部”」


 沈黙。


「本物はまだ外側にいる」


 直人はため息をつく。


「……マジですか」


 天音は頷く。


「うん」


「でも」


 少し笑う。


「今のあなたなら、たぶん勝てる」


 直人は空を見上げる。


「じゃあ」


 拳を握る。


「そのうち行きますか」


⸻


■ラスト


 宇宙の外側。


 崩れた本体の中心。


 そこに“声”が残る。


『……理解した』


『あれは“人間”ではない』


『あれは――』


 沈黙。


『“世界そのものの例外”だ』


 そして。


『再構築を開始する』


⸻


 地球の空に、再びひびが入る。


 だが今度は小さい。


 まるで――


 “準備運動”のように。

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