第一章森での目覚め5
「じゃあ──いよいよね」
ルビーが目を輝かせ、光の玉をルミナへ向けた。
その瞳は期待で満ちていて、まるで宝物を見つけた子どものようだった。
ルミナの手のひらは汗でじっとりと湿り、額からも汗が一筋流れ落ちる。
胸の奥がぎゅっと締めつけられ、呼吸が浅くなる。
「だ、大丈夫……? これ、痛くない……?」
震える声で尋ねると、ルビーはふっと優しく笑った。
「大丈夫。触れるだけよ。怖くないわ」
その笑顔に少しだけ勇気をもらい、ルミナは生唾を飲み込んで──
そっと玉に触れた。
……沈黙。
玉は、まったく反応しなかった。
色も光も、何ひとつ変わらない。
まるで、そこに“何も存在しない”かのように。
「……え?」
ルビーの表情が固まる。
驚きというより、理解できないという顔だった。
「なんで……? おかしいわ……誰でも一つはあるのに……!」
ルビーが思わず叫ぶ。
その声が、ルミナの胸を冷たく刺した。
「わ、わたし……」
何か言おうとした瞬間──
「ルミナ、属性ないから……魔法、使えない……」
アリスがぽつりと呟いた。
悪気はない。ただ、事実をそのまま言っただけ。
だからこそ、残酷だった。
ルミナの視界が揺れ、喉がきゅっと締まる。
胸の奥がスッと冷え、足元が崩れるような感覚が広がる。
──私、何者でもないの?
言葉が出ず、ルミナは黙って下を向いた。
その沈黙は、痛いほど重かった。
その空気を破ったのは、ルビーだった。
「アリス」
低い声。
次の瞬間、ルビーはアリスの頭をコツンと軽く叩いた。
「言い方ってものがあるでしょ」
アリスは「ご、ごめん……」と小さく縮こまる。
ルビーはルミナの手をそっと包み込んだ。
その手は温かく、震えるルミナの指を優しく包む。
「大丈夫。魔力はちゃんとあるわ」
ルミナは顔を上げる。
ルビーの瞳は真剣で、優しくて、どこか嬉しそうでもあった。




