第一章 森での目覚め
第一章
目を覚ますと、辺りは真っ暗だった。
木々が高く生い茂り、月明かりすら届かない深い森の中。
「……へ?」
思わず間抜けな声が漏れる。
ぼーっとした頭で周囲を見渡すが、見覚えのある景色ではない。
まだ夢を見ているのかな、と昨日のことを思い出す。
昨日は徹夜でオンラインファンタジーをネット仲間と遊んでいた。
途中で寝落ちしてしまい、
「あいつらに悪いことしたなー……」
と呟いたその時――
胸が、重い。
「……え?」
視線を落とすと、そこには
私のものじゃない大きな膨らみが二つ。
しかも肌は黒く、
まるでゲームで使っていたダークエルフの装備そのもの。
「え、ちょ……ちょっと待って……」
恐る恐る胸を触ると、
柔らかい感触が手のひらに広がった。
「リアルすぎ……夢じゃないの……?」
混乱していると、背後でガサガサと音がした。
振り返ると――
緑色の小さな人影が、斧を持って立っていた。
その姿は、どう見てもゲームで見慣れた ゴブリン。
「……嘘でしょ」
ゴブリンはニヤッと口を歪め、
次の瞬間、飛びかかってきた。
「きゃっ!」
押し倒され、馬乗りにされる。
衝撃で背中が痛む。
息が詰まる。
夢じゃない。
痛みが、恐怖が、あまりにもリアルすぎる。
頬に、ぬるりとした感触。
見ると、ゴブリンが私の頬を舐めていた。
「や、やめっ……!」
恐怖で体が震える。
でも――
ゴブリンの右手の力が一瞬だけ緩んだ。
その隙に、近くに落ちていた石を掴む。
「うあああああっ!!」
渾身の力で、ゴブリンの顔面を殴りつけた。
ゴブリンは苦しそうに横へ倒れ込む。
私はすぐに立ち上がり、
ゴブリンが落とした斧を握りしめた。
「……来ないで……!」
震える手で、斧を振り下ろす。
ブシュッ。
生暖かいものが手にまとわりつく。
ゴブリンは動かなくなった。
私はその場にへたり込み、
震える息を必死に整えた。
「……なにこれ……ほんとに……なに……?」
暗い森の中で、
自分の鼓動だけがやけに大きく響いていた。




