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月と二人の勇者  作者: あると


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プロローグ

私の名前は佐藤月――

月と書いてルナと読む。

どこにでもいる女子高生で、趣味はオンラインゲーム。

昨夜も徹夜で遊んでいたはずなのに……気づいたら寝落ちしていた。

そして目を覚ましたら、

私はゲームで使っていた“ダークエルフの少女”になっていた。

理由なんてわからない。

でも、気づけば仲間ができて、気づけば戦っていて、

気づけば“勇者の相棒”なんて呼ばれていた。

――そして今、私は敵の幹部と戦闘中だ。

名前は知らない。

ただ、奴が腕を振るたびに空気が震え、

衝撃波が地面を黒焦げにし、木々を粉々に砕く。

“めっちゃ強くて、めっちゃやな奴”

……なんて軽口を叩けるのは、まだ生きてるからだ。

「っ……!」

足元で衝撃波が爆ぜ、地面が抉れた。

耳がキーンと鳴り、視界が揺れる。

私は悲鳴を上げ、体勢を崩す。

「おい、集中しろ!」

近くから怒鳴り声。

この声の主――私の相棒。

戦闘中は口が悪いけど、普段は優しくて、そして……勇者だ。

勇者の方を見た瞬間、また怒鳴られる。

「バカ、前を見ろ!」

はっとして前を向くと、

巨大な衝撃波が一直線に私へ迫っていた。

――死ぬ。

本能がそう叫んだ。

反射的に目を固く閉じる。

次の瞬間。

バコンッ、と鈍い衝撃音。

風圧が頬を撫で、砂埃が舞う。

恐る恐る目を開けると、

勇者が私の前に立ち、衝撃波を弾き飛ばしていた。

その背中は頼もしくて、

何度も助けられてきた“相棒”そのものだった。

「……ありがとう」

震える声でそう言うと、勇者はゆっくりとこちらを振り返った。

その顔は――

いつもと違った。

怒ってもいない。

笑ってもいない。

ただ、何かを決意したような、静かな無表情。

胸がざわつく。

「え……?」

勇者の手が、わずかに震えていた。

何かを言いかけて、唇が動いて――

でも、言葉にはならなかった。

その無表情のまま、

勇者の剣が、私の胸を切り裂いた。

「――っ!」

生暖かいものが飛び散り、視界が赤く染まる。

痛みよりも、理解できないという感情が先に来た。

なんで。

どうして。

私、何かした?

「……やだ……やだよ……」

声にならない声が喉で震える。

呼吸が苦しい。

胸の奥が冷たくなっていく。

勇者の顔がぼやける。

その目が――揺れているように見えた。

悲しそうに。

「……なんで……?」

手を伸ばそうとしたけれど、力が入らない。

指先が震え、空を掴むように宙を彷徨う。

世界の音が遠ざかる。

衝撃波の轟音も、敵の笑い声も、勇者の息遣いも。

全部、薄い膜の向こう側に消えていく。

心臓の鼓動がゆっくりになる。

ドクン……

……ドクン……

…………ドクン。

視界の端が白く滲む。

その瞬間。

光が弾けた。

走馬灯のように、

この世界で起きたすべてが、最初から頭の中を駆け巡り始めた。

森で目覚めた日のこと。

出会い。

戦い。

笑った日々。

そして――勇者と共に歩いた時間。

光の粒となって流れていく記憶の中で、

私はもう一度、物語の始まりへと戻っていった。


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