第七章:交渉なき戦場、黒き剣の咆哮
城門の前、灰色の空の下に、白銀の軍勢が整列していた。
聖教連盟――神の名のもとに魔族を滅ぼすことを正義とする者たち。
透はリリスと共に、城壁の上に立ち、声を張り上げた。
「聞こえているはずだ! 俺はこの世界の外から来た者、神谷透! 話し合いの余地があるなら、今ここで応じてくれ!」
だが、返ってきたのは――沈黙。
次の瞬間、軍勢が一斉に動き出した。
白銀の兵士たちが、無言のまま突撃を開始する。
「……交渉の余地は、最初からなかったってことか」
透は静かに右手を掲げた。大剣に魔力が集まってくるのを感じる。
漆黒の大剣が――魔力を帯て先ほどの倍程度の大きさへとなっていた。
「リリス、後ろに」
「……ええ。あなたの力、見せて」
透は剣を構え、魔力を刃にまとわせ横なぎに大剣を振るった。
黒い光が剣先を包み、空間が軋むような音を立てる。
「――吹き飛べ」
振り抜いた瞬間、黒い衝撃波が地を裂き、突撃してきた兵士たちの手前に着弾しを数十人単位の兵を吹き飛ばした。
地面がえぐれ、土煙が舞い上がる。
兵士たちは一瞬、動きを止めた。
その中を、ひとりの男がゆっくりと前に出てくる。
白銀の鎧に、紅のマント。
その瞳は冷たく、剣を抜く動作に一切の迷いがなかった。
「……やはり、“契約者”が現れたか」
リリスが小さく息を呑む。
「……あれは、“聖騎将”の一人――ユリウス・ヴァルハイト。聖教連盟の英雄よ」
ユリウスは透を見据え、静かに言った。
「異界の者よ。貴様の存在は、この世界の理に反する。神の名のもとに、ここで斬る」
透は剣を構え直し、静かに応じた。
「なら、俺は――この世界の“理”そのものを、たたき切る!」
両者信じる者、守るべき者のために前に踏み出すのだった...