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第二章:選ばれた理由

 リリスの手が、静かに宙に浮かんでいた。


 だが、透はそれを取らなかった。

「……待ってくれ。君の言葉は、あまりにも唐突すぎる」


 リリスの瞳がわずかに揺れる。


「信じられないかしら?」


「信じたい。でも……わからないことが多すぎる。なぜ俺が選ばれた? 俺は人間だ。君は魔族だろ?

 そもそも“魔族”って何なんだ? この世界の敵なのか? 味方なのか? ――そんなことも知らずに、君の手を取るなんてできない、

 少なくとも、君を一目見て魔王や魔族と俺は答えられない、それくらい君の見た目は人間だ」

 


 沈黙の時間が流れた。


 やがて、リリスは小さく息を吐き、窓の外に目を向けた。黒い月が、静かに空を照らしている。

「……そうね。あなたには知る権利があるわ」


 彼女はゆっくりと語り始めた。


「この世界には、かつて“神々”が存在していた。彼らは人間に“加護”を与え、魔族に“力”を与えた。だが、神々はやがてこの世界を見放した。

 理由はわからない。ただ、ある日突然、神々は天を閉ざし、世界を見捨てたの。空が灰色なのはそのせい」


「そのあと、世界は二つに割れた。神の加護を失った人間たちは“聖教連盟”を築き、神の意志を模倣しようとした、そして再び神の加護を得ようとしていた。

 一方、魔族は……力を失い、呪われた存在として追われるようになった」


「魔族とは、神々が創った“もう一つの人類”。感情が強く、魔力に適応しやすい。けれどその力を恐れた人間たちは、魔族を“悪”と定義した。私たちは、ただ生き延びようとしただけなのに、

 魔族をこの世界から駆逐すれば、神はまた人間に加護を与えると本気で信じているのが、今の人間側の現状よ」

 リリスの声には、怒りも悲しみもなかった。ただ、静かな諦めがあった。


「あなたを呼んだ理由――それは、あなたが“この世界の理から外れた強い魂を持つ存在”だから。

 異界の魂は、神々の支配を受けない。だからこそ、あなたはこの世界の“理”に干渉できる」


「……つまり、俺は……この世界では人間でも魔族でもない“例外”ってことか」


「ええ。あなたは加護を与えられた人間でも、力を与えられた魔族でもない。だからこそ、あなたにしかできないことがある。

 私たち魔族を滅ぼすことも、聖教連盟を止めることも、あるいは……この世界そのものを終わらせることも」


 リリスは再び、手を差し出した。


「選んで、透。私と共に歩むか、それとも――何にもなさず輪廻する世界にもどりやり直すか、

あなたが望むなら、残念だけど元の世界にそのままというわけではないけど、輪廻転生の輪に戻すことができる。」


 その手は、あたたかくも冷たくもなかった。ただ、真実だけがそこにあった。

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