第二十八章:封域への作戦会議
魔王城の作戦室。
地図が広げられた机を囲み、透、リリス、セレナが静かに座っていた。
窓の外では、夜の帳が降り始めている。
だが、部屋の中には緊張感が漂っていた。
「……神の炎が、移送された正確な場所について、知っているか?」
透の問いに、セレナは小さく頷き、地図の一角を指差した。
「場所はミラさんという方が調べた通り。人間の街と、魔王城の中間にある山岳地帯――《ヴァルゼ峠》の奥にある、古い神殿跡地です。」
リリスが目を細める。
「……あそこは、かつて神々の祭祀が行われていた場所。今は使われてなかったと思ったけど……」
「はい。ですが、最近になって場所が整備され、軍の出入りが始まったと聞いています。
私も詳しい内部構造は知りません。」
透が地図を覗き込む。
「そこを守っているのは――《聖域警備隊》と呼ばれる、選抜されたエリート騎士たちです。
彼らは、聖騎将直属ではありませんが、王直属の命令で動く特別部隊。
正面からの侵入は、まず不可能でしょう」
セレナが静かに言った。
「……となると、潜入かと陽動が必要。準備が必要ね」
リリスは少しだけ視線を下げながら言った。
「……私自身、“神の炎”を見たことはありません。
ただ、それが“魔族の魂を燃料にする”という話が本当なら――私は、それを止めたい。
たとえ、それが人間側の“正義”に背くことになっても」
セレナは決意を胸に言葉を発し、
透は、彼女の言葉を静かに受け止め、頷いた。
「……ありがとう、セレナ。君の協力は、きっとこの世界を変える力になる」
その言葉に、セレナはわずかに微笑む
。
「じゃあ、次は――“どうやってそこに近づくか”を考えましょうか」
夜は、静かに更けていく。