46.「繋がった世界」
「一体何が……!?」
戸惑う俺に、仲間たちの声が掛かる。
「私たち従業員一同からの、サプライズですわ!」
「あたしたちみんなでぇ、お給料を使わずにぃ、貯めましたぁ!」
「ロッカは、旦那さっまに喜んで欲しかったでっす」
「ニコは、旦那様に、驚いて欲しいという願望に、至りました」
「ネーモは、旦那さ~まに、幸せになって欲しいで~す」
「みんな……」
どうやら、以前『ウインドウ』の『メニュー』に追加された『元いた世界の家族との通信』を、金貨八百枚を貯めることで、実現してくれたらしい。
ダイーマが〝サプライズ開始の合図〟を行ったのは、〝そういうことを絶対にやりそうもない相手〟だったからだろう。だからこそ彼は頼まれて、しぶしぶ行ったのだ。もちろん、合図のみで、サプライズ用の金は一切払っていないだろうが。
「発案者は魔王じゃがのう。『映像でも何でも良い! どんな方法でも良いから、メグルを、両親と会わせてやりたいんだ! 頼む!』と、頭を下げて必死に頼むもんじゃから、余も首を縦に振らざるを得なかったのじゃ」
「!」
いつの間にか、クークまでやって来ている。
「みんな……ありがとう……!」
仲間たちに頭を下げる。
胸の奥から、温かい何かが込み上げてきた。
必死に堪えないと、涙が溢れてしまいそうだ。
「デレカ、ありがとう! 本当に、本当にありがとう!!」
「きゃっ! ……うむ。よ、喜んでもらえたなら良かった」
デレカを抱き締めると、頬を紅潮させた彼女は、はにかんだ。
スクリーンの向こうの両親に向き直ると、俺はデレカを紹介した。
「父さん、母さん、お久しぶり。彼女は、デレカ。俺の……奥さんだ」
デレカが立ち上がり、軽く会釈する。
「お初にお目に掛かる。我は、デレカだ」
「あらあら~。私は温泉月夜。宜しくね~。それにしても、すごく可愛くて綺麗な子ね~。しかも、とっても良い子そうじゃな~い。」
「がははははは! 俺は温泉猛だ! 宜しくな! 二人とも、お似合いだぞ!」
褒められたデレカは、気恥ずかしそうにしつつ、俺の両親に語り掛けた。
「父君、母君……実は、我は……その……」
が、途中で、何かを言い淀み、俯いた。
以前、デレカに、俺が元いた世界では、〝魔王〟に対して人々がどのようなイメージを持っていたのかを聞かれ、正直に答えた。
それが今、彼女の頭を過ぎっているのだろう。
「俺の両親なら、大丈夫だ」
俺が耳元でそう囁くと。
頷き、意を決した彼女は、顔を上げた。
「……我は……魔王だ……!」
一瞬の静寂の後。
「がははははは! なかなかロックな奥さんで良いじゃないか!」
「あらあら~。高貴な身分なのね~、デレカちゃ~ん。うちの子は平民だけど~、良い子だから~、仲良くしてあげてね~」
異世界において、〝人類の敵〟の代表格とも言える〝魔王〟の肩書があっさりと受け入れられたデレカは、拍子抜けし過ぎて、ふらついた。
「っと!」
俺が慌てて支えると、デレカは俺の腕にしがみ付きながら、感極まった様子でつぶやいた。
「父君、母君……感謝する……」
良かった。
まぁ、うちの両親だし、受け入れてもらえるだろうことは、最初から分かっていたけど。
俺は、心の底から安堵した。
「がははははは! それにしても、温泉旅館巡りにしか興味がなかったお前が、所帯を持つ日が来るだなんてなぁ!」
豪快に笑う父親のでかい声は、相変わらずだ。
と、その時。
「ん? あれは……」
よく見ると、父親が両手で掴んでいるスクリーンの端に、牙や赤い唇らしきものが映り込んでいる。
耳を澄ますと、「近いドル! そんなに近付かなくてもちゃんと映ってるドル! っていうか、ただの人間の癖になんでユドルのことを全然怖がらないドル!?」という、聞き慣れた声も聞こえる。
……え?
なんでユドルがそっちの世界にいるんだ?
「父さんと母さんの目の前にいるのって、世界樹――真っ赤な巨大な口の植物だよね?」
俺の問いに、両親は答えた。
「がははははは! コイツは、病死したお前の死体を喰ったんだ! 何度殴っても吐き出さなくてな!」
「あらあら~。そうだったわね~。それを見た私は~、巡ちゃんを助けるために~、チェンソーで切りかかったのよ~」
「!?」




