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女魔王と旅館経営~世界樹の中に作った異世界温泉旅館で、濃い仲間たちと共にクセ強お客さんの悩みを解決する話~  作者: お餅ミトコンドリア


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45.「結婚パーティー」

 結婚パーティーは、高層にて行うこととした。


 理由は単純。


「やっぱり、トイレを我慢せずに飲み食いできるのは、最高なの!」


 天使の少女であるファティルを呼ぶためだ。


 地上では上手く呼吸が出来ない彼女のために、大空に臨む場所を選んだ。

 新たに男湯エリアを作り、客室も作った。

 

「っていうか、余程トラウマだったんだな、魔王との〝温泉耐久勝負〟……」


 ファティルに聞こえない程度の小さな声で、俺はボソッとつぶやく。


 以前、トイレをどれだけ我慢出来るかという勝負を俺がファティルと魔王に強制したのだが、両者とも温泉内で限界を迎えたことが、今でも尾を引いているようだ。


 そんなファティルが幸せそうに料理を食べ、酒を飲んでいるこの部屋は、いつもの和風な食堂ではない。


「こればっかりは、俺もつくづく日本人だな、と思う。結婚パーティーだけは、何故か〝西洋風〟が良いんだよな」


 世界樹ユドルに金貨を食べさせて新たに作った空間を見ながら、俺はつい苦笑した。


 白いテーブルクロスが掛けられた丸テーブルがいくつも並び、椅子まで白い。


 光るキノコではなく、巨大なシャンデリア形魔導具が代わりに照明の役目を果たしている。


 俺はずっと温泉旅館にしか興味が無い奴だったから、正直、結婚パーティーとかよく分からない。


 けど、取り敢えず、白タキシードに身を包み高砂メインテーブルについた新郎の俺のすぐ隣に、純白のウェディングドレスを身にまとったデレカがいる。


 それだけで十分だ。


「どうした? 我の顔に何かついてるか?」


 小首を傾げるデレカは、ウェーブ掛かった長い金髪をアップにしている。


 うなじを露わにした彼女が、その美しい碧眼で俺を見つめる。

 ただそれだけで、胸の奥から熱い何かが込み上げて来る。


「いや、見惚れていただけだ。めっちゃ綺麗だなって思って」


「なっ!? 貴様は、またそういうことを!」


 バッと目を逸らした彼女は、顔が真っ赤だった。


 みんなの前でさっきキスしたところなのだが、多少慣れたと思ったら、未だに褒め言葉一つで、この反応か。


 うん、すごく可愛いぞ。


 嫁の反応に幸せな気持ちで一杯になった俺は、食事をしつつ、会場内を見回す。


 取り敢えず最初に挨拶は軽くしたし、誓いのキスもしたし、あとはみんな好き勝手飲み食いしてくれればそれで良いかなと。


 もちろん、参加者から事前に費用はもらっている。


「そこは、ちゃんと商売だからな」

 

 ただ、本来ならば温泉も宿泊費も食事代も全て低層の三倍設定の料金を、今日だけは、通常料金と同じにしてある。


「今日来てくれたお客さんへの感謝の気持ちを込めて、って感じだな」


 ちなみに、誓いのキスの時には、ショプチーさんたち六ヶ国の大司教たちが、同時に神父役を申し出て、大変な目に遭った。


「ワタシが神父をやります」


「いえ、ワタシが神父をやります」


「いやいや、ワタシがやります」


「いやいやいや、ワタシが神父をやりますから」


「いえいえ、ワタシこそが神父をやるのに相応しいです」


「何をおっしゃる、ワタシこそが神父に適任です。ワタシがやります」


「「「「「どうぞどうぞ」」」」」


「コントか」


 その後も、「命のある限り、愛することを誓いますか?」「誓いますよね?」「そりゃもう誓いますよね?」と、よってたかってウザいことこの上なかったのだが、祝福しようとしてくれているのはギリ伝わって来たので、まぁ良しとした。


 本来ならば、一日に呼ぶお客さんは最大四組なのだが、今日は特別に九組呼んである。


 今まで来てくれた人たちに、世界樹の華の香による集客を行ったのだ。

 香りに、結婚パーティーを〝いつ〟やるか、〝参加費用〟はどうなるかなどの情報を載せた上で。


 その結果、今回の九組が集まった。


「俺っちの取り扱う薬草は、美容系のものがメインです。王族や貴族の奥様方からご好評でして」


「それは興味深い。僕の商会は、魔石発掘を柱としていてね。全く違う商売の話は面白いね。勇者さん、貴方の事業の噂も聞いていますよ」


「そうなんです! ありがたいことに、魚と肉の冷凍保存サービスが、既に評判となっていまして!」


 薬草ハンターである元隻腕のロスレフさんと、魔石発掘の大商人のマジェクさん、それと、新参ながら今最も勢いのあり話題性もある勇者が、同じテーブルで盛り上がっており、マジェクさんの奥さんのリーマさんは、旦那さんの隣でニコニコと話を聞いている。


 席次を決める際に、〝商人テーブル〟を作ろうと予め考えていたのだが、正解だった。


 ちなみに、以前はその言動含め、ならず者にしか見えなかった勇者は、小綺麗な服を着て、喋り方もまともになっている。


 〝男子、三日会わざれば刮目して見よ〟って奴だな。


「おいら、天使に会ったのは初めてだよ!」


「ハッ! あたいもさ! まさか天使に会えるだなんてねぇ! なんか御利益ありそうだねぇ!」


「ファティルは天使の中でも超絶美少女なの! あんたたちは、超ラッキーなの! 存分に拝むと良いの!」


 ドヤ顔で胸を張るファティルを、人魚のサクリラさんと漁師のライさんが拝む。


 二人は結婚して、今は幸せに暮らしているそうだ。


 ちなみに、このテーブルのテーマは、〝空と海〟だ。

 うん、自分でつけといて何だが、なんか壮大だな……


 「寿司ですが、まずはワタシが食べます」「いえ、まずはワタシが」「いえいえ、まずはワタシが」と、〝ワタシワタシ〟とうるさいのは、先述のショプチーさんたち六人の〝大司教テーブル〟だ。


 その隣は、〝デレカと仲良い者たちテーブル〟だ。


 モンスターアイドルグループ〝フェニーチェ〟でもある四天王と、元巨大な目玉のモンスターという魔王の幼馴染であるアイジェさんの席なのだが。


「ククスは、ウナギ(イール)の〝カバヤキ〟を持って来たです!」


「レレムから、〝世界樹サラダ〟のプレゼントなのだ!」


「スララは、〝世界樹の華〟の花酵母を使った日本酒を追加で持って来たのだわ!」


「うん。ガガオは、空いた皿を持って行くのら~」


 四天王たちは、今まで積み上げてきた知名度と、コミュニケーション能力で、お客さんに対する給仕を完璧にこなして。


「きゃぴるーん♪ アイジェ特製〝テンプラ〟をご賞味あれ~♪」


 ピンク色ツーサイドアップ美少女モンスターであるアイジェさんも、満面の笑みで、配膳を手伝ってくれている。


 まぁ、作っているのはクークだから、アイジェ特製ではないだろうとは思うが、あのくらいなら、特に問題にはならないだろう。


 五人とも、本来ならばお客さんなのに、忙しそうなのを見て、自主的に仕事を手伝ってくれているのだ。ちなみに、彼女たちにも、従業員専用の着物を着てもらっている。


「本当、ありがたいよな。頭が上がらないよ」


 俺とデレカは、申し訳ないけど、それぞれ新郎新婦としての役割に集中したいので、今日は働かない。そのため、どうしても普段よりも二人従業員の人数が減る。


 にもかかわらず、普段の四組四人――マックス十六人に比べて、今日は十九人もいる。


 だから、元々アイジェさんには、お願いしようと思っていた。


「まさか、四天王のみんなまで手伝ってくれるとは思わなかったな」


 おかげで、ちゃんと滞りなく給仕を行うことが出来ている。


 クークが超高速で料理するには、使い慣れた低層の厨房を使用するのが一番なので、出来上がった料理をリアと木娘ツリーガールズたちが、世界樹の幹の中を一瞬で移動して高層まで持って来てくれる。


 それを受け取った四天王たちとアイジェさんが、各テーブルへと配膳してくれるのだ。


「お礼……と言っちゃあ、ショボいけど、みんな、『気にしないで』って言ってくれて、ありがたい限りだ」


 そんな彼女たちに対しては、せめてものお礼にと、今日の夕食と明日の朝の食事代と宿泊費は無料、させてもらっている。


 それと、普段から働いてくれているリアたちには、俺たち二人が抜けた分も頑張ってくれていることに対する感謝の気持ちを示して、今月の給料は金貨三枚を追加して、金貨十三枚とさせてもらうと伝えてある。


「あ」


 そうそう。

 お客さんだけど、もう一人いるのを忘れていた。


 ポツンと一人、離れたテーブルで食事をしているのは。


「あれ~? なんか、僕の扱いだけ違わない? 気のせいかな?」


 青と赤のツートンカラー髪のダイーマだ。


「あ、そうかそうか。僕は、魔王さまにとって最も大切な最古参モンスターだからね。特別扱いってことだよね。そうだよねそうだよね。うん、分かってるさ」


 悲しい笑みを浮かべ、キラリと光る涙がその頬を伝った。


 これでお客さんは、合計九組、十九人だ。


※―※―※


 みんながほろ酔い気分になった頃。


「あともう少ししたら、お開きかな」


 そんな風に、俺が思っていると。


「ま、魔王さま! 僕、もう我慢出来ません!」


 突然バッと立ち上がったダイーマが、髪を掻きむしる。


「そんな、どこの馬の骨とも分からない奴に、大切な魔王さまが! 大切な魔王さまがあああ!」


「いや、ずっと見守ってたんだろ? しかも、もう出会ってから一年経ってるんだ。そろそろ俺のことも認めてくれよ」


 俺が「とにかく、落ち着け」と、立ち上がってなだめようとするも、ダイーマの興奮は収まらず。


「魔王さまあああ! 魔王さまああああああ!! 魔王さまああああああああ!!!」


 叫ぶダイーマが翳した両手に呼応して、俺とデレカの背後の壁が、眩く光り輝いた。


「デレカ!」


 慌てて俺が、デレカの身体の上に覆い被さるが。


「大丈夫だ。()()()()()()()()()()()


「!?」


 やけに落ち着いているデレカが、穏やかに笑みを浮かべると。


「がははははは! その結婚パーティー、待てーい! 俺たちも参加するぞ!」


「あらあら~。めぐるちゃ~ん、元気してる~?」


「と……()()()……!? ()()()……!?」


 スクリーンのように光り輝く壁に映し出されたのは、現代日本にいるはずの、俺の両親だった。

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