25.「大勢を同時に精神操作する方法」
「魔王さまはご存知ではないと思うですが、ククスたちは、〝フェニーチェ〟というアイドルグループをやってるです。最近、やっと知名度が上がって、人気が出てきたです! 魔王さまが新リーダーとして加入して下されば、大人気になること間違いなしです!」
熱弁するククスさん。
先程、四天王たちが『人間がたくさんいる場所を攻める』『小さな村を落とす』『小さい子どもたちを標的にする』と言ったのは全て、〝アイドル活動〟をすることにより、人間たちをメロメロにさせて落とす、という意味だったらしい。
「そのアイドル……とは何だ?」
怪訝な表情を浮かべる魔王に、「よくぞ聞いて下さいましたです!」と、ククスさんが胸を張って答える。
「アイドルとは、〝聴衆を強制的に熱狂させることで精神操作する歌手〟のことです! 観客の精神状態を無理矢理高揚させ、
民衆は、気付けば多幸感を味わわさせられて、無意識にまたライブ――演奏会へと足を運んでしまうです!
あの歌手に会いたい。あの歌を聞きたい。その果てしない欲求は、市民の生活を侵食し、人生すらも大きく左右するです!」
「そんな恐ろしい力を持った歌手がいるのか! まるで精神操作系の最上級魔法ではないか!」
「はいです! アイドルは、正に世界征服をするに打ってつけの存在です!」
魔王が驚愕すると、ククスさんはドヤ顔になった。
うん。まぁ、なんだその。
〝言い方〟だよな。
確かに、カリスマアイドルともなると、大袈裟じゃなく「推しのために生きてるんだ!」という大勢のファンたちが存在するからな。
あれは、異世界の住人たちからすると、〝精神操作〟に見えなくもない、か。
ちなみに、四天王たちは皆、ちゃんとアイドルらしく、お揃いの衣装に身を包んでいる。
オレンジ色、黄色、そして赤を基調とした、恐らくは不死鳥を意識したと思われる色合いの、丈の短いスカートの衣装に。
「争う訳ではなく、密かに精神操作して世界を牛耳る……なるほど、誰も傷つけることない世界征服となるわけだ。悪くない案だな」
うつむき、顎に手を当てて思案する魔王だったが、「ただ……」と、顔を上げた。
「様々な魔法を操る我だが、正直精神操作系の魔法は苦手なのだが」
「大丈夫です! 魔法を使えるかどうかは関係ないです!」
「何だと!?」
「そうなんです! 魔法を用いずに、魔法のような効果を発動する。そこが、アイドルのすごいところです!」
「ふむ。なかなか奥深いな。で、我にもそれが出来ると?」
「もちろんです! だって、魔王さまはすごく良い声をしてるです! あと、魔王さまは、歌は得意ですか?」
「まぁ、それなりに歌えると思うぞ」
「それなら、完璧です! それに、魔王さまはお美しいですし!」
「よ、容姿が関係あるのか!?」
「はいです!」
戸惑う魔王とは対照的に、ククスさんは太鼓判を押すと、他の四天王たち――レレムさん、スララさん、ガガオさんも賛同する。
「魔王さまは綺麗なのだ!」
「それに、素晴らしいお声をしていらっしゃるのだわ!」
「うん。魔王さまは至高の存在なのら~」
ぴょんぴょんと飛び跳ねるゴーレム娘、うっとりと魔王を見詰めるスライム娘、眠そうな目だがしっかり陶酔しているらしいオーガ娘、そして彼女らの言葉にうんうんとうなずくフェニックス娘を見る彼女たちの主君。
「そうか……うーん……」
突然の誘いとそれに伴う賛辞に、どうしたものかと思案する魔王は、「そう言えば」と、ククスさんたちに訊ねる。
「『最近知名度が上がり、人気が出てきた』と言ったが、アイドルを始めたのも最近なのか?」
その問いに、ククスさんは、「芽が出て来たのは最近ですが」と言うと、平然と続けた。
「アイドル活動を始めたのは、二千年前です」
「!?」




