18.「大切な返事(※サクリラ視点)」
「どう……して!? あたいを食べるって、言ってたのに……?」
愕然とするあたいの前で、床に転がるライが、苦しそうにあたいを見上げる。
「……やっぱり……おいらたちの話……聞こえちゃって……たんだね……」
血溜まりの中、ライは震える声で言葉を紡いだ。
「……君への……サプライズ……だったんだ……サクリラ……」
「え?」
「……仲間たちが……君を……襲って……おいらが……君を……助ける……そんな……サプライズの……打ち合わせ……だったんだよ……。……君に……格好良いって……思って……もらい……たくてさ……」
ライが告げたのは、予想外の言葉だった。
「なんでそんなことを……? そんなことしなくたって、あんたは誰よりも格好良いのに!」
「……ありがとう……でも……その日……だけは……その瞬間……だけは……どうしても……格好……つけたかったんだ……だって……君に……こう……伝えたかった……から……」
ライが、震える手をあたいに伸ばす。
あたいが、その手を両手でつかむと。
「……サクリラ……おいらは……君のことを……世界一……愛している……おいらと……結婚……してくれ……!」
「!」
「……でも……こんなことに……なっちゃって……きっと……バチが……当たったんだろうね……サプライズでも……君に……自分の愛する……女性に……怖い思いを……させようと……したんだから……」
必死に声を絞り出すライ。
「……不安に……させて……ごめんね……サクリラ……」
あたいは、ブンブンと首を横に振る。
ライは、苦しそうに息を一つすると。
「……サクリラ……どうか……幸せに……なって……欲しい……」
「何言ってるんだい!?」
「……おいらは……もう……君と……一緒には……いられそうに……ないから……」
「! そんなこと言うんじゃないよ! ここは世界樹なんだよ! 温泉に入れば、そんな怪我、すぐに治っちまうさ!」
「……ハハ……でも……ちょっと……もう……遅い……かも……」
ライの瞳に宿る命の光が、徐々に消えて行く。
「諦めるんじゃないよ! 漁師たちに殺されそうになっていたあたいを助けて、つい今さっきもあたいを救ったあんたが、勝手に一人で死のうとしてんじゃないよ!」
泣き叫ぶあたいに、ライが申し訳なさそうに微笑んだ。
「……ごめんね……でも……最後に……一つ……お願いが……あるんだ……」
「……お願い?」
「……プロポーズの……返事を……聞かせて……くれない……かな……?」
あたいは、ライの手を握る両手に力を込める。
「そんなの、答えはイエスに決まってるじゃないか! あたいもあんたのことを愛しているよ! 世界一愛しているよ!」
ライは、満面の笑みを浮かべると。
「……良かった……おいらは……幸せだ……世界一……幸せな……男だよ……」
その手から、少しずつ力が抜けていき。
「……サクリラ……おいらと……出会って……くれて……あり……が……と……う……」
ライは、事切れた。
「ライ……? ライ……? 嘘……だよね……? 嘘だと言っておくれ……!」
どこか満足そうな笑みを浮かべたその顔に。
あたいは――
「いやああああああああああああああああああああああああ!!!」
ただ、彼の亡骸に縋りつくことしか出来なかった。
と、その時。
「!?」
ライの身体が、眩い光に包まれた。
そして。
「……あれ? おいら、生きてる……? なんで……?」
「ライ! ライ!! ライいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!」
光が消えると同時にライは目を開き、上体を起こした。
抱き着くあたいを、戸惑いながら彼が抱き留める。
「ライ! ライ!! 生きてるんだね! 大丈夫なんだね!」
「ああ、生きてるよ。なんでか知らないけど、傷も治ってるし」
少し身体を離して顔を覗き込むあたいに、自身の胸に手を当てたライがうなずく。
「一体何が……? これも、世界樹の力なのかな?」
当惑するライ。
すると。
「いや、それは世界樹の力なんかじゃないですよ」
シェフの後ろから、男性従業員が現れて。
「だって、ライさんは、怪我なんてしていなかったんですから」
「「!?」」
事も無げに、そう告げた。




