表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
聖女はとっくに召喚されている。日本に。【コミカライズ】  作者: 守雨
第一章 魔法使い、日本に放り込まれる

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

39/91

39 来客

 夏川レイはこの世界に来てからは検索三昧だ。

 何か新しいことをする時は必ず検索するのを習慣にしてきた。今、スターマインのような花火を再現しようとする直前に(ん? 待って。音がしない花火でも、法律に違反する?)と思いついた。

 急いで検索する。そして冷や汗をかいた。


 とある煙火(えんか)店のブログから【煙火消費許可申請について】というサイトにたどり着き、花火を打ち上げるための『申請の流れ』を読んで(うわ!)と驚いた。


 なんと、スターマインのような花火を打ち上げるには、煙火店は都知事、公安、消防庁に申請をしなくてはならないのだった。おそらく警察も無関係ではないだろう。……花火と公安……知らなかった。公安がどんな組織か全く知らないが、映画やドラマだと怖そうな組織に描かれているあの公安だろうか。


「たとえ音無しでも火薬を使わなくても、大きな花火なんて打ち上げてる場合じゃなかった。青色申告の勉強までして法に触れないようにしてるのに、花火で注目されてる場合じゃなかったわ。魔力の放出で花火はダメね。大人しく帰ろう」


 辺りにうごめく黒いアレが少しずつ集まって来たので帰ることにした。レイの心情としてはアレたちを全部消し去りたいが、アレらにはアレらの世界があって、この世界の人間ではない自分が片っ端から消すわけにはいかない、と思っている。もっとも、消す方法も知らないが。


 彼らは遥か昔から人間とこの世界を棲み分けているのだ。この世界では自分の方が異端なのだ。お札やお守り、杉玉に守られているのだから、知らん顔するのが礼儀だろうと思う。


「帰ろうかな」


 歩き出したところでポコリンとスマホが鳴る。見ると美穂からのメッセージだった。

『お久しぶり。今度の日曜日、会える?』

『会えますよ。お休みです』

『話題のカフェに行きたいけど、一人でテーブルを使うのは気が引けるんだ』

『行きたいです。それを気にするほど人気のお店なんですね』

『じゃ、錦糸町駅の南口で十時に待ち合わせで』

『はい。楽しみにしています』


 今日は水曜。四日後が楽しみだった。楽しい気分で道祖神のところを経由して帰ろうと思った。だが今日もアキラは出てこない。


「どうしちゃったんですか。具合悪いってことはありませんよね。道祖神様ですもんね」


 答えはない。道祖神の頭を撫でてアパートに向かった。ドアの鍵を開けようとバッグをごそごそしている時に突然背後から声を掛けられた。


「こんばんは」

「ひっ」

「ああ、すみません、驚かせましたね。私、錦糸町北警察署の近藤といいます。夏川レイさんですよね? お話を聞きたいことがありまして。ちょっとだけお時間よろしいでしょうか」

「……」

「夏川さん?」

「あの、失礼かとは思いますが身分証を拝見してもよろしいでしょうか」

「はい。どうぞ」


 見せてもらった身分証を手にレイが困惑する。これが本物かよくできた偽物かなんて自分には判別がつかないことに気づいたからだ。本心では今すぐスマホで検索して錦糸町北警察署に電話し、本当に近藤哲也なる刑事がいるか確かめたい。だが、それは普通のことなのか。そこまでやるのは普通じゃないのか。まるでわからない。


「私に聞きたいことって、どのような事でしょうか」

「夏川さん、この日のこの時間、あそこのコーヒー店でホットコーヒーを飲んでましたよね?」


 近藤が差し出した手帳には、すっかり忘れていたが、強盗事件があったあの日の日付と時刻が書いてあった。

(記憶阻害魔法をかけたはず。防犯カメラにも魔法はぶつけておいた。自分の姿は写っていないはず)と素早く思い出し、なんと答えるのが最良か考えて沈黙してしまう。


「強盗を倒したの、あなたなんでしょう?」

「強盗を倒した? すみません、なんのことかさっぱり」

「防犯カメラに写ってましたよ」


 近藤はあえて「近所の防犯カメラに」という言葉を省いた。レイが「店内の防犯カメラに自分が写っていた」と誤解してくれたらありがたい、と賭けに出た。


「どうぞ、入ってください。ここで立ち話も失礼でしょうから」


 レイの目がわずかに泳いだのを見て、近藤は(よしっ)と自分の賭けが当たりを引いたことを確信した。


「女性の一人暮らしに上がるのは申し訳ないので、ドアは開けておいてもいいですよ」

「いえ、大丈夫です。その代わりに会話を録音させていただいてもいいでしょうか」

「ええ、どうぞ」


 近藤はレイがお茶を淹れようとすると「それはいただけませんので」と断った。レイはそのままワンルームの中に近藤を招き入れた。そして少し近藤を見た後で、笑顔で話しかけた。


「近藤さん、以前、スナック由紀子で私の占いを受けましたよね。それも一度ではなく。その件でしょうか。私、占いの収入はちゃんと申告するつもりですよ」

「ああ、覚えていたんですね。髪型も服装も変えていたのに。すごいな」


 レイはやんわりと微笑んだ。

 近藤の顔で確信したのではない。毎回作動中の録音録画機器を左胸ポケットに入れていたこと、レイの占い客にしては珍しく身体に悪いところがないこと、もっと言えば左下の奥歯がちょっとだけ虫歯になっていることで覚えていたのだ。もっとも今夜は機械は作動させてないようだが。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『コミック 聖女はとっくに召喚されている。日本に。』
8l6054538bqe5tefg3kdln7pcoww_1b2_13v_sh_bk3y.jpg.580.jpg
 
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ