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食後のデザートはいかがですか?

 翌日、学校から帰ったおれがログインするとセアズはファンと交流を深めるために鍛冶師の仕事をしていた。

 おれがゲームに参加した事に気付くとそんな視聴者サービスも終えて合流してくれた。別におれとしてはその様子を見ててもいいんだけど、せっかく二人きりになれるチャンスだからねと言って無理矢理終わらせたのだ。

 そういえばおれに対して性欲を持っている相手に対して気を許しすぎだと思うかもしれない。けど、これはゲームであり実際に会わなければ別に何が起こるって訳じゃないと分かっているからである。接するだけなら好かれてるってだけだしな。

 セアズさんは遊んでいる間。ちゃんとゲームに関する話をする。個人情報を探って来たりしないので、信用出来る。一回メールアドレス聞かれたけど、あれだってゲームに関する事だと思うのだ。

 という訳で、引き際をわきまえてる人という印象。

 だからデートしようよといって、海底街に誘われても普通についていくのだ。今回は外れ気味だったが、このデートというのもお題目に過ぎず、情報収集がメインだ。

 海底城には女王が住んでいて海底を治めている。この人間でも息の出来る不思議な海底エリアから離れるとモンスターが襲ってくるぞ、という事くらいしか新しい情報は得られなかった。

 前回得られてもおかしくなかった基本的な情報だけ。とはいえ、知らないよりはいいのかな。


 という訳で社会人メンバーのログインしてくる時間になった。いつもの通りランサーとマリーが参加。少し遅れてミナトが登場。という訳で今回の目的地は。


「このフォウス王国の首都フォウスに行く!」


 首都の名前が王国の名前と一緒なんだねえ、とはミナトの弁だ。よくある設定じゃないかな。

 おれ達はサアトの町までセーフスフィアで飛ぼうと思って北出入口に向かってみると、何もなかったアストの街の空白地帯の壁沿いに、一つの宿屋が出来ているのを見かけた。


「結局木材戦争に勝ったのは宿屋か」

「いや、単純にそうという訳じゃなさそうだ」

「どういうことなのです?」


 マリーが問うと、セアズは宿屋の窓を指差した。


「あそこ。料理を作っているのが見える。どうにも宿屋とレストランで共同出資したみたいだ」

「なるほど。その二つは相性がいいもんな。どれせっかくだ、食べていこうや」


 ランサーの提案に反対するものは誰もいなかった。なんせ料理にはバフ効果が付く。今から新しいマップに向かうのに強化をつけておいて損する事は無いだろう。

 店内に入ってみれば、おれのマイホームと同じく外から見るより中の方が広い。

 店番用のNPCが話しかけてくる。


「いらっしゃいませ。ご宿泊ですか?」

「料理だけって食べられる?」

「可能ですよ。こちらにどうぞ」


 案内された席でおれは料理のリストを見た。すると。


「おお、ラーメンなんてあるじゃん。しかも味噌も醤油もどっちもさ」

「へえ凄いね。たまにはラーメンってのも悪くないか。あっちと違ってカロリーとか気にする必要も無いし」

「だな。ラーメン喰うか」


 すいません、と重なるランサーとセアズの声。


「醤油ラーメン一つ」

「味噌ラーメン一丁」


 なんか嫌な予感がしてくる。


「は? ラーメンは味噌だろうが」

「いや、醤油だけど」


 この二人、そんなところでも相性が悪いのか……


「なあ、マリー。ラーメンは味噌だよなあ?」

「なのです。ミナトも味噌なのですよね?」

「いやあ、こればっかりはねえ。マリーの言う事でも聞けないよお。醤油が一番なんだねえ」

「分かってるね、ミナト」


 図らずも二対二。となれば次にお鉢が周ってくるのはこっちだ。


「ダイア、味噌だよな」

「ダイア、醤油だと信じてるよ」


 これはちょっと危機的な状況だ。おれの発言がチームを割る。とすれば取るべき選択肢は。


「お、おれ豚骨って食べた事ないんだよ。今回は豚骨にしようかな」


 繰り出されるのは分かりやすいまでの溜息。そして。


「お前が本当は味噌派なのは分かってる。あのレズビッチを傷つけない為に言ってやってるんだよな」

「普通に考えて醤油派だとは思うけれど。あのリーダー気取りに配慮してるわけだよね。優しい子だ」


 ばっちばちにやりあってるよ、これ。

 今度こっそりつぶあんとこしあんどっち派なのかに関しても聞いてみよう。絶対意見分かれるから。あくまでこっそりね。


 食事も終えてお金を払うと外へ出て、セーフスフィアからサアトの町に飛ぶ。そこからフォウスに続く大橋に向かったのだ。


「この橋、ベータテストの時は崩れてたんだよな」

「なのです」

「空を飛んでいこうにも見えない壁があって通れなかったね」

「実装されてないマップにはどうやってもいけないんだねえ」


 そんな話をしながら橋の上を見ると、大きな果物みたいなものが見える。あれは一体。


「へんなのあるから先行して様子見てくる」


 皆に告げて橋を渡る。その最中にある変な果物。その正体は。


「キシャーッ!」


『魔物だー!』


 おれはそうチャットを送りながら、全速力で後退していった。敵は目と口のあるみかん、りんご、バナナ、さくらんぼだ。


 頬を弾丸が掠める。セアズの援護射撃だ。

 さくらんぼのモンスター、ンボンボの顔にその一撃が命中する。一つの茎に二つの実の生っていたその身体に命中し、その二つで一つの実が破裂する。名前がンボンボからンボに変わり、攻撃を食らってなかった方の実だけが活動を続けている。

 ンボンボは一体のモンスターでありながら別のHPを持ち、片方が倒されてもンボという名前で行動を再開するようだ。

 ランサーがこちらに走り寄ってくれる。後退するおれと合流し、前線が組まれた。

 反撃開始だ。


「【ヘイトアクション】!」

「【フレイムランス】!」


 混戦になる中おれは確実にヘイトを稼ぎ、あっちにもこっちにも攻撃を仕掛けていた。

 すると、みかんのモンスターであるカンカンミカンが必殺技の予兆を見せていた。その技の名前は『オレンジミスト』だ。

 おれはその攻撃がランサーの方に向かわないようにランサーとおれでカンカンミカンを挟み込むようなポジションに位置取りをした。

 しかしこれが良くなかった。この攻撃、口からオレンジ色の霧を噴き出して周囲に撒き散らすというもの。

 立ち位置どうこうではなく、単純にもっと距離を取らなければならなかったのだ。

 おれとランサーはこの攻撃をまともに食らってしまい、ダメージこそ無いもののデバフを掛けられてしまった。


「ATK低下ぁ!? 致命的じゃねえか!」

「効果時間50秒! これは後衛のみんなにしばらく任せるしかない! ヘイトは稼いでおく!」


 そう言っておれは再びヘイトアクションをかけた。突進を仕掛けてくる皮に入ったバナナであるトツゲキバナナを躱しながら、おれは遠距離からの援護を待った。


「【ウォーターウィップ】!」


 魔法陣が完成し、魔法が発動する。鋭い牙を持つ一つ目リンゴのバッドアップルにその水の鞭が叩きつけられるが、それだけで倒れる気配はない。

 ランサーに齧り付こうとするその瞬間。弾丸が放たれた。それらの攻撃でバッドアップルのヘイトが後衛に向かう。

 おれはワイヤーアクションでバッドアップルにしがみつくと、下げられた攻撃力で必死に攻撃を叩き込み続け、ヘイトをこちらに向け直す事に成功する。


 続いての射撃が先程身体の半分を削ったンボに命中。今度こそ倒す事が出来た。残りの敵は三体。

 さらに追加の魔法と銃弾がバッドアップルに叩きこまれ撃破。残り二体。


 おれとランサーはトツゲキバナナの繰り返しの突進をなんとか避けながらデバフの終了時間を待つ。するとカンカンミカンが再びの『オレンジミスト』発動を知らせる表示が出てきた。

 前衛のおれ達は顔を見合わせると急いで距離を取った。


 吐き出されるオレンジ色の霧に今度は巻き込まれる事は無かったが、しかしバナナが突撃してくる。おれとランサーの間を行ったり来たりだ。

 ついにランサーにその雑な突撃が命中してしまう。


「くそっ、いや、大丈夫だ。あたしにはそこまでダメージになってねえな!」


 それでもマリーは念の為にランサーを回復する。

 さんきゅ、と一声かけると、ランサーは槍を構え直した。


「50秒、待ちに待ったぞこんちくしょう!」


 おれ達前衛組のデバフが解除される。突撃してくるバナナに、真正面から槍を突き刺す。

 その間に、おれはカンカンミカンへの対処法を考えていたが、結局は単純なヒット&アウェイに落ち着いた。

 一撃を繰り出し、距離を取る。必殺技を使ってこないのを確認して、また刺す。繰り返しだ。時々トツゲキバナナの方の様子も見る。ちょっと忙しい。

 だがタンク職とはそういうものなのだ。特に攻撃を食らっても平気な顔をしていられる重タンクではない回避タンクのおれはその道を選んだ時に覚悟していたはずだ。

 トツゲキバナナがランサーによって倒される。残りはカンカンミカンだけ。総攻撃を仕掛ける時だ。

 あとは数の暴力で撃破して終了。さすがに四つ目の町へ向かうともなれば敵が強い。


「で、みんなは何ドロップした?」


 ちなみにおれは果物のバナナとさくらんぼ。

 他の皆も似たような感じで、敵のモチーフになった果物を落としたようだ。

 料理人ってこんな大変な思いして手に入れた素材で料理作るんだな……と思うとクリエイター職も結構大変なのかも、と思うところである。


 さて、この果物モンスターだが。

 橋を越えてもまだ出てくる。どうやらフォウス周辺はこのモンスターが基本のようであるのだ。

 敵の体力こそ増えているのを実感するが、それでも初見ほどの苦戦はしなかった。おれは必殺技の予兆が見えた時点で離れれば『オレンジミスト』を躱せるし、ランサーはちょっとカンカンミカンを意識して他のモンスターの相手をしていればいい。

 唯一困った事があるとすれば、ンボンボで。こいつを倒した時の破裂にダメージ判定があるのだ。つまり接近戦だと二回ほどダメージを受ける危険があるので、銃弾を消費させるのも申し訳ないのだがセアズに片付けて貰った。


 そうして道なりに歩いて行って辿り着いたのが、首都フォウス。

 広くなったアストの街より更に広い。情報集めにも一苦労といったところか。

 しかしおれ達は運が良かったのか、面白い情報に行き当たったのだ。


「サアトの町には遊覧用の飛行船が隠されているらしいよ」


 との事だ。

 おれ達はフォウスのセーフスフィアを解放して、相談。

 隠されているというサアトの飛行船を探しに戻る事にしたのだ。

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