6話 殺すべき美女
「いや、お前にはもうちょっと働いてもらう。お前の雇い主の場所を教えろ」
「どうする気だ?」
「倒しに行く」
俺は騎士団長に水魔法で冷水をぶっかけて、無理やり起こした。
「ハッ!? レイバーン様! あの暗殺者は、…………倒されたのですか」
「ああ。だから王女様の護衛は頼んだ。俺はコイツの雇い主を倒しに行ってくる。なあシーナ。お前らの組織に、お前より強い奴は流石に居ないよな?」
「ああ。一番強い奴でも、そこの騎士団長には勝てない」
「お待ちください! 敵の言う事をむやみに信用してはなりませんぞ!」
「まあ任せとけ。どうせ放っておいたらまた来る。それに俺達以外が被害にあう可能性だって、あるだろ?」
「確かにそうですが。……そうですな、では頼みますぞ」
渋々といった感じではあるが、納得してくれた。
「じゃあシーナ、道案内は任せたぞ」
俺はシーナをお姫様抱っこした。背中におぶるのは危ないからな。前に抱えるこれが、一番いいだろう。
「レイバーン様!?」
「任せときな、お姫様。全部俺が片付けてくるから。じゃあ団長、しっかり頼んだぞ!」
暗殺者たちを倒しに行く。これは嘘じゃない。どうせまた来るし、他の美女が被害にあっている可能性だってあるんだ。
だが俺がやろうとしている事は、それだけじゃない。シーナを俺に惚れさせようとしている
役目が終わったら、さっさと始末するべきだとは思うが、そんなことできない。魔物なら沢山殺した。けど人は、そもそも殺し合ったことすら、これで初めてだった。
だが目的地に到着すれば、シーナほどではないが、強い暗殺者に襲われる。そんな時に、殺さないように戦う余裕はあるのか?
そう葛藤してる間に、シーナの案内が終わり、組織とやらについた。最終的に地下の奥深くに潜って来たし、それまでの道のりも色々な仕掛けがあり、初見殺しも満載で長かった。
しかもたまに初見殺しの存在を教えてくれなかった。忘れてたなんて言ってたが、絶対わざと教えなかったに違いない。
「ボスはどこにいる?」
「地下3階にいるだろうが、お前に殺せるのか?」
「それは……」
「殺せないんだろう? お前はさっきの戦いで成長した。何か事情があったようだが、今のお前はSランクだ。だから、もう私には負けない」
他の暗殺者に囲まれ始めた。
だが俺はここ最強であろうシーナを、なんとお姫様抱っこしている。暗殺者たちはこの状況を飲み込めてないようだ。全く攻めてこない。
「私を倒せはしても、殺せないんだろう? やはり人を殺すのは怖いか」
シーナが俺の腕から、勝手に抜け出した。そして服の中からナイフと銃を取り出す。
どちらも地味に嵩張る物だ。服に入れてたとして、俺が見逃す訳がない。一体どうやって?
暗殺者たちは少し動揺しながらも身構えたが、シーナはさっきよりも明らかに速いスピードで、返り血を浴びながら暗殺者たちを殺していく。
俺より身軽だからか攻撃と防御、どちらも俺より低い。
しかし防御面は、当たらなければ良いのスタンスをとっているようで、そのスピードであらゆる攻撃を避けている。
だが、シーナの素早さはそこまで圧倒的でもない。相手の暗殺者も、全員身軽でかなり早い。そこをシーナは技術力で解決している。
微細な体の動きから、事前に攻撃を察知。多人数相手でも常に動き続け、多方向からの一斉攻撃を避けるように、上手く攻撃のタイミングをコントロールしている。
攻撃面も、どうやらナイフにはさっきと別の毒が盛られているようで、切られた奴は悲鳴を上げながらもがき、意識を失う。
あまりにも刺激の強い光景に、俺は何も言えなかったし、出来なかった。
何人もの人が、血濡れの女によって、毒に侵されている。ナイフに毒を塗っただけでは、多分刺してる内に毒が無くなる。
恐らくナイフ自体に何か仕掛けが施されてるんだろう。
シーナは全員残さず殺し、更に奥へ入っていった。
そして数秒後に、オッサンの生首を持ってきた。その首からは、まだ血が垂れている。
「そ、それは!?」
「組織のボスだ。こいつが持っている情報は、この書類に全てあるだろう」
そう言って、ヒモでまとめられた紙束を投げ付けられる。依頼内容とかが書いてあるし、麻薬の字も何個もあった。
「中にいた奴も全員殺した。疑うなら確認しに行けばいい」
「俺が人殺しを躊躇っているのは、見抜いていたはずだ。なのになぜ?」
ここからだ。上手くやればシーナとセフレにでもなれるかもしれない。
そしてこいつは真っ当な人間では無い。だから浮気やハーレムも、許してくれる可能性が高い。
「さあな。さっさと殺したらどうだ?」
もう諦めているらしい。無表情でそう言われた。だが殺す訳にはいかない。だから俺がこいつを殺さないための、理由がいる。
「そんなこと出来ると思ったか? 俺には恐ろしくて出来ないぜ」
「ああ、そうだったな」
急に襲い掛かってきた。本気の殺気も感じる。
シーナが銃を撃ってくるが、それを見てから剣で弾いた。
その直後に毒が塗られたナイフで切りかかってくるが、そのすべてを正面から剣で受け止める。
数秒守った後、俺はナイフを受け止めたタイミングで、剣を思いっきり振り、シーナを弾き飛ばした。




