36話 SSランクの気配
2年生初めての休みを超えて、今日は学園がある日。
社会、魔法、現文。昼休憩を挟んで今週から戦闘訓練がある。
戦闘訓練はいつもなら力を制限する道具とかを装着して、どうにかみんなと一緒にやってた。けど今年から俺とクロアはフレッドとやることになった。
一応クロアはSランクって事になってるからな。ちなみにラティナ姉は魔法科だからそんなの無いし、レシアは実力を隠しているらしく、Aランクって事になっている。
そしてこの3人は、ヒマがあればいっつも俺の所に来る。そのせいで男の俺に対するヘイトが高まってる気がする。
けどそれよりも、クロアがどうやら孤立してるらしい。
人はたくさん寄ってくるけど、それを冷たくあしらってるって聞いた。そう言えばクロアから友達の話を聞かない。ラティナ姉は何人かいるらしいけど。
俺とクロアは前のときとは別の、観戦席がある闘技場に向かっている。
見た目は石で作られているように見えるけど、ここもただの石では無い。とにかく硬いそうで、更に魔道具で観客席を保護する巨大バリアもはれるらしい。
俺達は通路を抜けて門を開け、観客席の下の戦う場所に来た。
そこにフレッドがいたけど、少し離れた場所にもう1人、無表情で俺を見るシーナがいた。
クロアが双剣を装備し、雰囲気が戦闘時のそれに変わる。
「待て待てクロア! まだ何もしてないだろ?」
「……レイが言うなら」
不服そうではあるけど、とりあえず戦闘態勢は解いてくれた。まだ双剣は手に持ってるけど。
「知り合いでしたか?」
「その前に、その人は?」
「彼女はアンジェリカさんです。偶然知り合ったSランクのシーフで、私から頼んでここに来てもらいましたが……」
クロアはシーナを睨んでいる。だからシーナも俺を見ている余裕が無いんだろうか、面倒くさそうにクロアを見ていた。
「御二方の間に、一体何が?」
「その人はアンジェリカじゃない、シーナだ」
「ああ、騙して悪かったな」
「……! そうでしたか。まあ一般には知られていないSランクですから、偽名を名乗るのも仕方がないでしょう」
確かシーナの事は、SSランクのヤンデレ拷問狂エルフとだけ伝えていた。けどそれだけでも十分ヤバさは伝わっているらしい。フレッドは穏便な返答しか返さなかった。
「じゃあ俺はフレッドとやるから。2人でやっててくれ」
「たまには相手を変えたほうが良いと思うぞ」
「じゃあ私としよ!」
「人に物を教えたことはあるのか? 私はあるぞ」
「剣使ったことある? 私はいつも使ってるよ?」
「剣と双剣を一緒にするな。それに私もナイフを使っている」
「「…………」」
俺とフレッドは、2人の口喧嘩を少し離れて無言で見守っていた。
SSランクの狂人の口喧嘩に、わざわざ口を突っ込む度胸は無い。
「フレッド先生」
「……どうされましたか?」
数秒沈黙していたが、クロアが口を開いた。
「剣を貸してください」
「私も頼む」
「分かりました。この剣は壊しても構いませんが、この場所は壊さないでくださいね?」
フレッド先生が地味な剣を2つ取り出した。そして2人は手の平をこちらに向けながら腕を伸ばす。投げろってことだ。
さっさと投げれば良いものを、フレッドはしっかりと手渡そうと二人に向かって歩く。
しかし、フレッドが両足を地面にしっかりと付ける。歩きの動作に含まれない、不自然な動きだ。
それとほぼ同時に、2人が2つの剣を奪っていった。そしてまたいつものように、別次元の戦闘が始まった…………。
「危ないし離れようぜ」
「そうですね、仕方がありません。今回はいつものようにしましょうか」
俺達はクラスメイトがいるグラウンドに来た。戦闘科は全6学年。そして1学年に30人のクラスが4つある。今日は2年生がここを使う番だから、周りには同じクラスのやつしかいない。
みんなそれぞれの武器で戦っている。しかしまだGほどの戦闘力しか無い。
Sランクの俺をそのレベルまで抑えれるんだから、この魔道具ってほんと凄いよな。しかし、俺が本気で魔力を流せば爆発して壊れる。流石にSの魔力量には耐えられないらしい。
辺りは戦いの音で騒がしい。若干サボって話してるやつもいる。だがその騒がしさが急に消えた。
ここだけじゃない。学園にいる他の生徒も。そして街も。
恐らくすべての人が、このあまりにも重厚な気配を知覚した。
そしてソレが意味することは、この気配に相応する魔物がいるってことだ。
Sランクの俺すら気圧される気配、SSランクだ。




