34話 別視点
いっぱい飲んだから、このくらいにしよっか。
レイバーンは……やっぱり貧血で気絶してる。
けどどうしよう。もやもやするから思わずしちゃったけど……。
魔力抑制剤もしっかり効いてたみたいだし、全体的に体制が落ちた今のレイバーンなら、多分朝まで寝てるかな。
確か学園に通ってるんだったっけ。遅刻したらいけないから、家まで送って行った方がいいのかな? けどレイバーンが学園に行ったら、他の女の人と…………それに3人へんな人がいるし。
やっぱりヤダ。だから今日は一緒に寝ようかな。もう眠たいもん。ここを外から見つけるのは私でも難しいから、警戒しなくて大丈夫かな。
どうやら特殊な魔力障壁があるようだ。この家にいるはずなのに、庭から本気を出しても全く気配を感じない。前に奴を尾行しておいて、本当に良かった。
だが恐らくフレイアはレイバーンを食べるだけで、殺害や監禁はしないはずだ。だからわざわざこの家に入る理由はないが……しかし万が一の事もある。
ちょうどいい、近くにクロアがいる。あいつならフレイアとの室内戦闘でも問題ないだろう
私は空を飛んでいたクロアに向かって、高速で水を飛ばして挑発した。
気が立っているんだろう。すぐに私がいる庭まで来てくれた。
「なんのつもり?」
こいつは本当によく怒っているな。学園ではそんな気配を感じないが、レイバーンが関わるとすぐに冷静では無くなっている。だからこそ扱いやすい。。
「この家の地下にレイバーンがいるぞ。恐らくフレイアと寝てるんじゃ無いのか?」
クロアは私の話を最後まで聞かずに、ドアを蹴飛ばして中へ入って行った。
頃合いを見て、どちらか有利な一方に加勢するか。そうすれば確実に1人殺せる。できればフレイアに死んでほしいんだが。
そろそろ寝たか? あれから10分は経ったけど。
気絶したフリをして良かった。いや、正確には俺は気絶しかけて倒れた。
倒れた時に、貧血で気絶したのかと思ったけど、意識を失うことは無かった。それどころか少しずつ思考がクリアになるのを感じた。
そして黙ってたらフレイアが俺をベッドに運んで寝始めた。更に俺の魔力も数分で、だんだん正常になってきた。シーナが前に使ったから、耐性でも出来たのか?
フレイアは俺を抱き枕のように抱きついている。すごいのが押し付けられてるから、正直興奮してる。けど明日学園だし、何されるかわからないし、さっさと帰りてえ。
「来た」
「へ? 起きてたの!?」
急にフレイアが起き上がって、ゴツい爪付きガントレットを装着した。
「レイ!」
ドアがこっちに吹き飛んでくる。それをフレイアが払いのけ、ドアは壁にぶつかって粉々になった。障害物が消え、そこにいたのはクロアだった。
そしてクロアはフレイアに襲いかかり、また別次元の戦闘を始めた。
「一旦止まれ!」
思いの外簡単に止まってくれた。
「いきなり襲うこと無いだろ?」
「なんで? 誘拐されたんじゃ無いの?」
「違う、フレイアは俺を助けてくれたんだよ。お前がさっき俺の足切ったじゃん。あれ治してくれたんだよ。つまり恩人なんだって」
「……あのままで良かったのに」
小声で言ったみたいだけど、ちゃんと聞こえたぞ。
「まあとにかく喧嘩すんなよ? さっさと帰ろうぜ」
「うん! じゃあ帰ったら一緒に寝ようね?」
「自分のベッドで寝てくれよ、俺は1人で寝たいんだって……まあフレイア、今日はありがとな?」
俺が帰ろうというと、クロアは急にいつもの笑顔に戻って、俺の左手を引っ張る。
クロアは子供の時によく一緒に寝たから、いくら美女だとしても緊張なんてしない。一緒に寝るとしてもフレイアよりかは気楽でいい。
「やだ、レイバーンは私の」
急にフレイアが俺の所有者を自称し、空いていた右手を引っ張った。一体何言ってるんだ? いくら子供でもそんな事言わないだろう。
「何言ってるの? レイは私のものだよ?」
そしてクロアまで所有者だと言い始めた。2人が俺を結構強く引っ張るから、俺はTの字になっている。2人はこのままじゃ埒が明かないと判断したのか、再び喧嘩を始めた。
もう良いや、こいつらほっといてさっさと帰ろう。
1階に上がって玄関に行くと、ドアがぶっ壊されてた。クロアが壊したんだろうな。けどクロアが来たってことは他のやつもいる可能性がある。だから本気で魔力察知を使った。しかしあいつらの気配は何も感じない。
「ここにいたんだ」
ラティナ姉だ。いつもニコニコしてるんだけど、今は無表情だった。
「見てたよ、フレイアと一緒にどこかへ行くの。クロアってとても強くてさ、何回も切られちゃったよ」
「あーゴメン。けど俺役に立つか?」
助けろってことか? なんか面倒くさくなってない? …………!
「危ない!」
ラティナ姉の後ろにシーナが見えた。しかも銃を持ってる。不意打ちするつもりだな。俺はラティナ姉を突き飛ばして、弾を避けさせようとした。しかし、シーナの銃が急に爆散する。
俺はビックリしたけど、シーナはいつものように無表情だった。ラティナ姉は俺に突き飛ばされて、少し耐性を崩していた。
「なあ、むしろ邪魔になってない?」
「そんな事無いよ。ありがとうね、レイ」
えらいえらいと頭を撫でようとしたのか、ラティナ姉が俺の頭に手を伸ばす。
しかしシーナがわざわざそのタイミングで再び行動を始め、それを妨害した。
……今日も寝るのが遅くなりそうだ。




