32話 フレイアの家
クロアとラティナ姉の戦いを放棄し、俺達はガイラントへ軽く走りながら帰った。
クロアが相当遠い場所に連れて行ったから、結局一時間もかかってしまった。もう8時だ。
道中はさっきの特殊な魔力とやらは無い。だから他に見つけられる可能性もあるけど、どうやら見つけてくれなかったらしい。
今更になって食べられるのが怖くなってくる。できれば見つけられて、それどころでは無くなって、フレイアにはこのことを忘れてほしかった。
しかしそれは叶いそうにない。もうすぐフレイアの家につくらしい。逃げても実力行使確定。
だから俺に残ってるのはフレイアをどうにか説得する。もうそれしか無かった。
フレイアの家に到着した。ちなみに靴は適当なのを既に買ってる。
目の前の家は、1人暮らしにしては広い、どこにでもあるような普通の家だった。それも状態からして新築の。1000万で足りたのかコレ?
インテリアは見た目で買ったのか、ピンクや水色のポップな物が多い。だがこのダイニングテーブルとかはそう言うのが無かったのか、よくあるブラウンの物だった。しかし周りが相当ポップなせいで、シンプルなこれが相当浮いている。
それらもあってデザイン面は、はっきりと言ってクソみたいな出来栄えだった。
まあ互いにそういうのをあまり気にしないらしい。俺はこの不自然さに気づきはしたけど、どうでもよかった。
「もう遅いから、簡単に済ませるよ?」
「おう、頼む」
部屋がこんなのでも調理器具は多分かなり揃ってる。名前も知らない、よく分からない器具が並んでいる。しかしそれらも統一感が無かった。
ステーキを食べ終わった。コショウとかの味付けが美味しかった。
俺がステーキを食べている間、フレイアはずっとニコニコしながら俺を見ていた。つまりそういうことだろう。
「今日はありがとな、また来るぜ!」
「待って。まだレイバーンを食べてない」
ノリで帰ろうとしてみるが、やっぱりダメだった。
「来て」
ここは一階だ。しかし案内された場所には下りの階段がある。つまりこの家には地下室があるってことなんだけど、その階段は廊下のように壁紙が貼られてなく、コンクリート剥き出しだった。
一般住宅に地下室は無いし、多分後付けなんだろう。
地下にある部屋の一つに、俺達は入った。ドアはただの薄い木の板らしく、俺なら障子のようにぶっ壊せる。これならいざという時にも逃げれそうだ。
部屋の中には鉄の棒が、ハートを模して曲げられている、普通より大き目のメルヘンなベッドが一つだけ置かれていた。布団は案の定適当に置かれている。
変に殺風景な部屋で、フレイアがここを日常的に使ってるのかは知らない。だが少なくとも、床にはパッと見ホコリは無く、恐らく掃除されているようだ。
フレイアはそのベットに近づき、ピョンと軽やかに飛び乗る。
「ここに寝て?」
そして俺を手招きする。まあ……少しの辛抱だ。それにこれを乗り切れば、俺へのご褒美がある可能性もある。そう考えればいいさ。
俺はベットに寝転がった。その上にフレイアが馬乗りになる。
食べる前に何か行動を挟むと思っていた。しかしその予想に反して、早速左の二の腕に食いつきやがった。
想定外の激痛だったけど、思ったよりかは大したことなかった。
さっきクロアに足を切られるのと比べれば、腕を食われる程度大した事じゃ無い。それでも痛い事に変わりはないけど、こんな事考えれる程度に俺は落ち着いていた。
フレイアの歯は俺の肉を裂き、遂に腕を食いちぎられた。
「痛ってえ……」
左腕から血が噴き出ている。さっさとポーションで止血しなければ。
そう思ってポーションを取り出そうとするが、フレイアが俺の左腕になんかかけた。するとあっという間に、食われた肉までもが再生していく。
部位欠損程ではないが、これも結構な大ケガだ。しかしそれをこの再生速度で治すなんて、こんなの市販品のレベルではない。この速度だと、俺が食われる原因になったあのポーションでも無いと。
でもあれが貴重なのはマジだろうし。そんなに効果の高いポーションを作るやつは存在しない。確か薬草と魔法の技術が必要らしいけど。
フレイアは口の周りの茶色い毛を真っ赤に汚している。毛の汚れとか落ちにくいだろうに。
「終わってもいいよな?」
「うん。もう十分だから」
フレイアは一回噛んだだけで夕食を終了した。獣人は大食いってイメージがあるけど、フレイアはありがたいことに小食らしい。
ベッドも俺も、血で濡れている。そして寝るにはまだ早い時間だった。それに今日は激しい運動をしたから、髪がベトつく。だから風呂を借りようとフレイアを見ると、何か悩んでいるようだった。
特に理由は無いけど、聞いてみることにした。
「何かあった? なんかあるみたいな顔してるけどさ」
「……誰と結婚したい?」
「まず誰とも結婚する気は無い」
ハーレム作りに影響が出るからな。浮気で訴えられちゃ評判が悪くなる。けどフレイアは俺と結婚したいのか? それらしきことを言ってたのは覚えているけど。
「私と交尾したいんじゃないの?」
何か地雷を踏んだらしい。フレイアの雰囲気が変わり、不安がっている。
他のせいでこいつまでって気分になるけど。まさか、な?
「それはしたい」
「私以外とも?」
「したい」
「…………」
アウトだった?




