3話 彼は巣立ちする
最初はただ過保護になっただけかと思った。
あらゆる家事をしてくれるし、ありがたいから適当に流していたが、だんだん行動がおかしくなった。
常に俺に付きまとい、ご飯の時はあーんをしようとする。
そして特に注目すべきことが、あいつら明らかに強くなっていた。
その成長速度は俺ほどではない。だが一瞬でBランクになって、それ以降の成長は比較的緩やかな俺とは違い、あいつらは着実にランクを上げていった。
D、C、Bときても、そのペースを落とすことは無い。
そしてそろそろ学年が上がりそうな時、俺がAになってしばらくした時に、俺達はSランクになった。だたし書類上でのみ。
書類上は3人共同時だが、実際は違う。少なくともあの時はまだ、俺にはSランクと言えるほどの実力がなかった。Aの上の方だったんだけどな。
あの日、忘れもしない。
いつも通り受けた覚えのない依頼を、組んだ覚えもない、クロアとラティナ姉と俺の3人のパーティーで受けに行った時だ。
依頼の内容はわからないが、大体俺の実力に丁度いい難易度の依頼を取ってきてくれる。更に依頼内容も偏りがない。
頭を使うのは面倒だったから、俺は依頼内容を簡単にしか聞かずに、ただ魔物を倒すことだけに集中していた。
クロアによれば、今日はドラゴンを倒しに行くらしい。
辺りにマグマの池があったり、強い魔物がたくさん出てくる、やけに険しい火山を登っていたらドラゴンが現れた
ドラゴン討伐は何度も経験した。その経験から言うと、そのドラゴンは確実にヤバそうな見た目をしていた。
俺が見たことあるやつに比べて、体は小さめだったが、今までの地味でくすんだ色の鱗とは違い、派手とまではいかないが、今までにない赤黒い鱗。そしてその隙間から漏れ出る、蒸気とオレンジの光。なんとなく雰囲気が、そこらのドラゴンだとは思えなかった。
俺は戦闘態勢を整え、依頼内容をもう一度、今度は詳しく聞こうとした。
しかしそれを聞く前に隣にいた2人が消え、激戦が始まった。
ドラゴンが体を濃い蒸気と溢れるマグマで包み込み、口からブレスと言うより、ビームのような物を吐き散らかした。
もちろん俺にもそのビームが飛んでくる。だが避ける前に、ビームが見えない壁に遮られ、大きな目にヒビのようなものが入った。
ラティナ姉とクロアのしわざだ。
ラティナ姉が魔法でバリアを貼り、クロアの片刃の双剣が、ガラスのような膜に傷を入れた。
俺が予想するに、3人……いや、2人と1匹の強さはSランクだ。
今までAランクの依頼を受けていた時は、これほど速く動いていなかった。そして、そういえば俺達は、1回も大きな怪我をしていない。
難しい依頼を受けて、何時間も戦い続けた程のギリギリの戦いをしたことがあった。なのにその時でさえ、俺は無傷だった。
今まではその事に違和感を感じていなかったが、いまさら違和感に気がついた。
だがランクが違うとは言えど、俺はAの中では強い方で、2人はSの中でも、たぶん弱い方。だからまだそこまで差が開いているわけでは無かった。
俺はしっかりと魔力を溜め、Sランクの2人に加勢した。
そして、俺達はそのドラゴンを持ち帰り、Sランクに昇格した。ちなみにドラゴンの名前は、マグマドラゴンだったらしい。やっぱり強さはSで、更にその中でもフィジカルが相当高かいそうだ。
いままでは2人を、過保護な奴らだと思っていた。けどその時評価が変わった。
2人は俺のライバルだ。2人は俺よりも強いが、大きな差は無い。だからかその時はそう思っていた。
俺はSランクにはなったが、さっきも言った通りそれは書類上の話。実際には微妙なところだ。
確かに、Aランクの元最強貴族に負けることは無くなったが、あいつは平均的なAランク。強めのAランク相手だと負ける可能性がある。
俺の目的を考えれば、もう既に十分なんだが、ここまでいったら考え方は変わる。冒険者のプライドだって生まれる。だからどうせなら書類上だけでなく、実力でもちゃんとSランクになりたい。
だから俺は、その事を2人に話し、そして1人で行動すると言った。もちろん目的は伏せて。
過保護な2人の事だ。心配そうだったし、少し寂しそうだったが、それでも俺についてこないと約束させた。
そして俺は学園を一時的に休学し、更に春休みも使った旅を初めた。
それでリルムンド王国って大国にいた時、俺はそこの国王に急に呼び出された。
なんでも王女が暗殺者に襲撃されたらしく、そして恐らく今晩もまた起こるらしい。
その王女の名前は、レシア・リルムンド。銀髪で、身長は女性にしては高い。一目見た瞬間にわかったが、間違いなく絶世の美女ってやつだ。
どこかの貴族の家で見た、ガラスケースに入った等身大の精巧な人形を思い出す。
あれを見た時、これこそ最高なんだろうと思ったが、レシアを見れば、あの人形はレシアのパクリだと思えてくる。やっぱ本物は違うってことか。
だがその王女は、怯えるようにこちらを見ている。




