28話 ナニする
酷いことはされたけどさ。
「まあ人殺しなんてならないのが一番でござるが、仕方がないのではなかろうか?」
「まあ、そうだけどさ……」
「まあこういうことは小生ではなく、もっと他の詳しい人に聞いたほうがいいでござるよ」
「そっか。あ、そう言えばコルト、お前の浮気するエロ本がクロアとラティナ姉に見られた! 隠し金庫に入れてたのに!」
「N○R物のエロ本でござるな。しかし、それはちょっとまずいでござるな……」
彼氏がいる女を奪うって内容だっけ。逆に彼女を取られるのもあった。こんな異常性癖を持ってる変なやつと思われるなんて嫌に決まってる。
「あの2人、勝手に人の部屋に入りやがって。しかもどうやら部屋漁ったみたいだし、人のベッドで勝手に寝てるし。あいつらキモいだろ」
「個人的にはあんな美女と暮らせるなら…………」
「どうした?」
「……後ろ、でござる」
「マジで?」
「キモいってどういう事!?」
後ろを見ると、クロアが双剣を持って立ってた。相当怒ってるけど、別に怖くはない。もう見慣れてる。
「ヤンデレのストーカー行為は常識、迂闊だったでござる」
そうだ、俺も忘れてた。まさか違和感すら感じないとは思ってなかったけど。
「ゴメンって。ジョークだよジョーク」
「本当に?」
「うん」
「そっか…………ならいいや。じゃあ行こ!」
一体どこに行くのか分からないが、俺に拒否権は無さそうだ。クロアと手を繋ぐと言うよりかは、クロアに手を掴まれた。
「あ、それとコルトさん。レイと一生関わらないでね? 気持ち悪いから」
そう言われるものの、コルトがそれを気にしている様子はない。それどころか視線は下へと動く。
コルトがどこを見てるのかは分かりやすかった。クロアがそれを見逃すわけも無く、剣を範囲外から振った。するとコルトの首に、一筋の切り傷ができた。
「わかった?」
「ハヒィ!」
そりゃ当たり前だけど、凄く怖いんだろう。情けない返事が返ってきた。むしろよく胸見れたなと思う。クロアは何事も無かったかのように、俺を引っ張っていく。
俺は引っ張られながらも、後ろで硬直してるコルトを見ていた。そんな俺に気がついて、コルトは首を横に振りながら、手の平を上に向ける。どうしようも無いってことらしい。
クロアが玄関を開け、大した騒音も無い静かな住宅街に出た。
多分強制でデートにでも連れていかれると予想を付けていたら、クロアに急に強く引っ張られ、腕の上に乗せられた。またお姫様抱っこされたな。
俺は女装しても割と映える種類のイケメンだけど、クロアはどう見ても王子様になれそうにない。他なら似合いそうなのもいるのに。
「ちょっと邪魔がいるから走るね?」
クロアは俺を抱えながら、道を走り始めた。と言っても、その速度は走るで済ませていい程ではない。
俺がガチで戦ってるときは、秒速340メートル。つまり音速並の速さで動いている。その証拠にソニックブームとかのせいでクソうるさい。
しかしクロアは俺を抱えながらも、間違いなく俺の倍以上の速さで動いている。一体何倍出てるのかは知らないけど、間違いなく住宅街で出しちゃ駄目なレベルの音がしてる。
SSランク全員がこんなに早く動けるとは思えない。ラティナ姉とかレシアとか。けどシーナやフレイア辺りなら追いつける。特にシーナなんてSSランク最速に違いない。
「なあ、どこ行くのー!?」
大声で聞いてみたけど、風を切る音のせいか何も返事が返ってこない。けど大丈夫だ。ヤンデレならきっとあらゆる事を無視して尾行してくれる筈だ。そして助けてくれ。
しかしクロアの邪魔は現れずに、俺は名前も知らない遠くの森に連れてこられた。
あれ、ガチであいつらヤンデレじゃ無かった? それだと俺やばいんじゃ? 少なくともクロアは確実にヤンデレなんだけど。
けどこんな場所に連れてきて何しようっていうんだろ?




