25話 両手で溢れる花
一ヶ月程の春休みが終わり、今日から学園が再開する。
俺は修了式の数日前に、ある教師の推薦もあって休学していた。
けど春休みを挟んだのもあって、実際に休んだのは数日程度。戦闘科でも数学とか勉強させられるけど、まあ……多分大丈夫だろ。
クロアは同じ戦闘科の2年生。そしてラティナ姉は魔法科の5年生。レシアはラティナ姉と同じ学年の筈だが、どの学科にいるのかは分からない。
魔法科、商業科、芸術科。国立のデカい学園ってこともあって、他にもレシアが選んでそうな学科は沢山ある。けど俺がいる戦闘科は絶対選べない。なんせ実践があるからな。
戦闘科の実践は最悪死人が出る。4年前にもあったらしい。
で、例えば俺が誰かを殺してしまった時、その状況次第にはなるが、過失が無いと判断されれば無罪になる。けどもし殺してしまったのが王族で、俺に過失は無かったとしても、果たして無罪で済むだろうか?
答えは済む。確かに無罪で済む。
ずっと前にそんな事件があって、留学してきた王子を殺してしまった人がいる。
他国の王族や貴族も見に来ていた大会があって、そこである男が王子との死闘の末、王子を殺してしまった。
男が王子を殺したが、男に過失が無かったのは周知の事実だったそうで、男は無罪と判決された。
だが王子はそれほど大規模な大会に出場できるぐらいに強く、そしてそれ以上に頭が無茶苦茶よかったらしい。もちろんその王子を、親の国王も大変気に入ってた。
だから戦争になったって話だ。
そんなことがあって、王族はトラブル防止で絶対に戦闘科を選ばない。
話を戻して、フレイアは俺と同じ16歳だが、昨日の件から、確実に学校に通える頭を持ち合わせていないだろう。
そしてシーナは何才だろうか? 長寿のエルフだし、100歳とか言われても疑いはしない。まあ10代の見た目では無かった。気になるし、今度聞いてみるか。女に年を聞くのは失礼なのは知ってるけど、あいつなら良いだろ。
俺はでかい正門をくぐった。それと同時に変装を解除した。
たちまち注目されるのが分かる。主に女子から。正直言って、とてもいい気分だ。俺はイケメンだから、今までも注目されていた。だからこれが日常だし、特になんとも思ってはいなかったが、夢を持ってからは、俺の中でのモテることに対する認識が変わった。
ちなみに男の注目は、右のクロアと左のラティナ姉がよく集めてる。学園の中でも一番の美女がこの二人らしい。
そして2人の距離は明らかに近い。幼馴染と姉って事は知られてるけど、それでも近い。そのせいで、恐らく男から嫉妬されている。
たとえ2人に相手がいなかったとしても、お前らにこんな美女が落とせる訳ないのに。……これヒドイな。
俺はさっきから女に見られている。俺がそれで鼻の下を伸ばしてるのを、クロアは気に入らなかったのか、急に右腕に抱き着いた。
辺りが騒がしくなる。男達は俺を見て妬むか納得して、なんらかの言葉を呟く。イケメンめとかそりゃそうかとか。
そして女はクロアを見て、むしろ応援しているようだ。クロアは見た目や性格もあって女子からもかなり人気のようで、しかも常に俺と行動していたのもあり、クロアを妬む女子は少ない。
まあ男も本気で俺に嫉妬はしてないと思うが。それにこれはいつもの光景だ。初めの頃は声を出して驚く奴も多かった。
クロアから離れようと、右腕をやんわりと引っ張ってみる。でもやっぱり離れそうに無い。なんてやってたら、ラティナ姉が俺の左手を掴んだ。
ラティナ姉が俺に外で甘えてくることは無い。だからこんなこと珍しいのに、更に右腕はクロアが抱き着いている。
つまり俺は学園最高の美女2人と手を繋いでいる?
俺がSランクのイケメンじゃ無ければ、確実にイジメにあってるところだ。俺が俺だからこそ、誰もがこの状況に納得してない。
辺りが騒然としている。特に男達なんて、クッソ羨ましい事だろう。
2人はおかしい。俺を異性として好きって言うのは知っている。だから2人が俺とスキンシップをとっても、俺は驚かない。
しかし2人は俺を挟んで殺気をぶつけ合っている。誰にもバレないように。
いくら俺が好きだとしても、そこまでするのか? その殺気が冗談じゃ無いのは経験でわかる。
始業式で学長がなんか長い話をしている。立場ってやつがあるんだろうけど、さっさと終わって欲しい。多数決したら絶対勝てる。みんな無表情だし、一部はダルいのを隠そうともしない。
みんな始業式をさっさと終わらせて、新しいクラスや教師が誰か知りたいだろうし、4年生からは今までとは違う、特殊な制度がある。確か授業を選べるってやつだ。
けど俺は既に、レシアがこっちに留学してくると知っている。だからさっさとその発表に移らないのか、気になってしょうがない。
そして遂に学長の話が終わり、司会が留学生の紹介を宣言した。少しざわついている。
留学生として前に出てきたのは、やっぱりレシアだ。クロアやラティナ姉と種類は違うが、同じく最高の美女。
男たちが見るからに騒ぎ、司会がやんわりと、静かにしろと注意する。しかしそれでも完全にはそれが収まらない程、レシアは衝撃的だった。
まさかこいつまで俺に惚れてるとは思うまい。イジメられないか心配になってくる。




