24話 血入り料理
左を見ると、ラティナ姉は俺の左腕を抱き、幸せそうに眠っていた。俺はそこから離れようと、強めに腕を引っ張るが、なかなか離れてくれない。けど少しずつズレてはいるから、しばらくこれを続ければ抜け出せるはずだった。
しかし、あと少しで手首に差し掛かると行ったところで、ラティナ姉が目をつぶったまま、俺の腕を掴んで強引にもとの場所に戻し、振り出しに戻った。
「おーい、絶対起きてるだろ。早く腕離してくれよ。いい加減にしないと、本気でやるぞ?」
ラティナ姉になんの反応もない。まるで眠っているようだ。
「レイバーン! ご飯作ったよ!」
なんでフレイアがいるのかは知らないが、そこにはステーキとハンバーグ。そしてライスなどの付け合せが、驚異的なバランス能力によって、頭の上とかに乗っている。そしてそれを俺に作ったと言っている。いい匂いもするし、空腹状態で食べ盛りの男子にはとんでも無く魅力的な献立だ。
「悪いな!」
俺は全力でラティナ姉の拘束を払い除けた。少し痛かったかもしれないが、離さない2人が悪いんだ。
何故かクロアは既に俺から離れ、フレイアに近づいていく。結構乱雑に。
よくわからないがそんなの気にせず、俺は全速力でクロアより早く、フレイアの下にたどり着いた。そして料理を受けとり、壁にくっつけてる机に置いた。
そしてがっつく。シンプルに胡椒とかで味付けされているようで、肉自体もドラゴンの肉なのか、非常にうまい。
そうして俺がフレイアの手料理に夢中なっていた時に、後ろからの急にでかい音がした。床から振動も伝わる。
後ろを見ると、フレイアが俺に背を向けて立っている。その向こうには、クロアが明らかな敵意を持って、フレイアを見ているようだ。2人は急停止したようで、足を前に出している。音の原因はこいつらだろう。
まあどうせよくわからない事を言うんだ。ほっといて冷めない内に食べよう。
「ジャマしたらダメ」
「料理に変なもの混ざってたらどうするの? レイの体を汚したら、責任取れるの?」
何様のつもりなんだろうか。
確かにフレイアは猫の獣人。人に動物の耳が生えただけでは無い。全身毛むくじゃらの方だ。もちろん手にも毛が生えているから、ハンバーグこねる時とかに毛が混ざってるかもしれない。
だがこのハンバーグを半分ほど食べても、毛は一切入ってなかった。革手袋でも使ったんだろう。
「変なもの? 変なものって何?」
「それは……血とか、髪とか」
なんて恐ろしい発想だ。たまに料理に髪が混ざってたとは聞くし、そのたびにその状況を想像して気持ち悪がる。けど血って何だ? しかもはじめに出てきたし。気持ち悪いことに変わりは無いけど。
「そんなの入れないよ。レイバーンの血なら食べたいけど」
「レイも、さっきからなんでその料理食べてるの?」
「いいじゃねえか、多分大丈夫だって。フレイアは食べる方だし」
俺はフレイアに食われたんだ。しかも美味しそうだからと言って。それにどちらかといえば、フレイアは食べさせるより食べる方がしっくり来る。
「それにさっきから腹減ってたんだよ」
「いいから!」
そして戦闘が始まったのが、音から分かる。
クロアは腕ぐらいの長さがある片刃の双剣を使う。
フレイアは素手だったと思うが、後ろからはずっと金属音が鳴り響く。多分腕にガントレットでも付けてるんだろう。
互いにSSランクだが、フレイアもクロアがやっていたように手加減するだろう。そう思って俺はコーンスープを飲んでいた。
だがそんな時に、急な大きな振動でスープが溢れた。
一体何だと後ろを見ると、床が抜けていた。
ラティナ姉がまだ寝てる俺のベッドや、ご飯食べてたこの机、そしてアレな本の隠し場所など。
それらはギリギリ巻き込まれていないが、もうこの部屋を修理なしで使えないほどの、大きな穴が空いていた。
下を覗くと、フレイアが通常の2倍弱の太さと長さはある、巨大なガントレットを付けて戦っていた。それを精神年齢が幼いやつが使っているんだ。家を壊さないって配慮なんて、しないと思ったほうが良かったか。
しかもそのガントレット。何か細工があるらしく、後ろから火のような物が吹き出ている。
その火力はあまりにも強く、どうやっても壁を焦がすほどの威力だ。下の部屋の壁を焦がしながら、相当な威力でその部屋まで破壊している。
この部屋の天井を見ると、真っ黒に焦げている。
そしてクロアがもっとキレたのか、段々と手加減が出来なくなっているようで、剣の風を切る音が一段と大きくなり、その衝撃もどんどん大きくなる。
大丈夫なのか、この家?




