22話 どっちが大切?
「クロアは変態だし、ラティナ姉はさっきから怖いし、レシアは言う事聞かないし、シーナは拷問狂だし、フレイアは俺を食べるし」
俺は、それぞれの欠点を並べてみる。だがサラッと言った衝撃発言に、もちろんレシアが食いついた。
「拷問狂? それに食べたとは?」
「それは……まあ、良いや。言った通り、シーナには俺に対する拷問未遂があるし、フレイアには食べられたんだよ」
クロア、ラティナ姉、レシア。この3人は俺に対して、相当過保護なところを見せた。おそらくシーナとフレイアに対して何かするんだとは思うが、問題は何をするのか? 話し合いなら平和なんだけど。
レシア以外が残像残して消えた。
まただ。無言で襲いかかるのは予想してなかったけどさ。けど話し合いをしても、どこか狂ってるこいつらでは話し合いが成立せず、結局武力で決まったに違いない。
あいつらどこに行ったんだろうか? まあこんな場所であいつらが本気で戦ったら、国が崩壊する。
ほら、遠くで何か聞こえる。一般人の聴力でも、国の外側にいる人なら、多分なにか聞こえるだろう。
しかしレシアはそこにいる。おそらくアンデットが強くても、本人の強さはそこまでなんだろう。
「まあ、良く分かんねえけどさ。そろそろ戻ったほうが良いんじゃないか? 馬車で来てたし、なんか国交とか、そんなのあるんじゃねえの?」
「違いますよ? 私はこの国の学園に、無期限で留学することにしました」
俺が通ってるのはガイラント学園だが、それ以外の学園も学校も沢山ある。だが他国の王族の留学となれば、行く場所は一つ。
「ガイラント学園?」
「もちろんです」
こいつは俺に惚れてる。だからもちろんと言われても、国立だからか俺がいるからか。一体どっちが当然なのか。まあ国立以外はダメなんだろうけど。
「そういえばお前、何人かに王族だと思われてるぞ。変装の魔道具使っとけよ? じゃあな、俺は用事あるから」
「待ってください!」
「どうした?」
惚れた男と二人っきり。なのに男がどこかへ行こうとする。女は止めるに決まってる。俺としても、レシアが見た目通りの美女なら、落とそうとしてみた。
しかし、振り返ってレシアが見えるようになる直前に、霧吹きでも使うような音が聞こえた。
俺は振り返るのをやめてしゃがむ。すると、髪が少し濡れたのがわかる。
「またかレシア、過保護なのか知らねえけど、俺は大丈夫だからさ?」
無表情のレシアは青いガラスで作られた、高そうなスプレーを持っている。何も書かれてはいないが、中身はなんとなく予想できた。
「睡眠薬か? どうせそうだろ。一体今度はなんなんだ?」
「あの狂人に振り回されて、お疲れでしょう?」
確かにそうだが、その狂人にレシアが含まれていることを、こいつは分かっているのか?
「ですから来てください。ずっとお守りしますから。心配しなくても、全て私がやりますから」
一歩、二歩。ゆっくりとこっちへ歩み寄ってくる。
「最初からそういえば良かったのに、お前は俺を気絶させようとした。だからお前が何をしようとしてるのかは、全く知らねえし想像もできないけど、お前はそれが悪いことだと理解してるんじゃないのか?」
「この方法を、レイバーン様は必ず反対するでしょう。しかし、数日過ごせばきっとわかります。これが最善の方法だったと」
笑顔なのか? そうとしか言えないが、これは確実に笑顔じゃ無い。なんだか怖くて、寒気を感じる。そんな笑顔なんて無いだろ。
「俺を気絶させることは、お前にはできない。だから教えろ、何だその方法って? 言わないとそれに乗るか乗らないか、考えもしないぞ」
レシアのなんだか怖くて変な笑顔が、普通に曇る。
「……なら、分かりました」
俺が反対すると確信していたこと。一体なんだろうか? 相当酷い方法なんだとは思うが。
「私が買った家は、いまアンデットに地下を作らせています。まだ狭いのですが、防犯対策は万全です。たとえあの狂人たちが襲ってきても、破ることはできません。だからそこで一生暮らしましょう。衣食住すべて揃っています。何か足りなければ何でも用意します。ですから」
「一生!? 嫌に決まってんだろ?」
「何故ですか?」
「そんな場所で一生暮らすとか、嫌に決まってんだろ。それに、俺には夢があるんだ。」
それとも俺に心酔してる美女を用意してくれるとでも?
「夢って、何ですか? それって私よりも大切な事なんですか?」
「もし夢を叶えるチャンスがあっても、お前が死ぬならそれの解決を優先する。だから夢より何倍も、お前のことが大切だ。けど別にお前何もピンチじゃないだろ?」
命よりハーレムが大切だなんて言わねえよ。それに思ってもない。




