17話 脱衣攻防
俺は脱衣所で服を脱ごうとしていた。
「なあ、クロア」
「どうしたの?」
「俺シャワー浴びたいからさ、ここから出てくれよ。別に用事は無いだろ?」
ここは脱衣所だが、一旦浴室ということにする。
普通の家の浴室は、洗面台とか洗濯機や、風呂への入り口とかがあったりするけど、この豪邸はそれらの場所が別にある。さすがだな。
そして改めて、ここは脱衣所。鏡やドライヤーとかも設置されている。少し狭いが、まあ銭湯のやつとだいたい同じだ。むしろあんなにいらねえ。
更にもっと言えば、そもそも風呂は男性用と女性用に分けられている。すごいな。
「邪魔だった? ごめんね」
クロアは俺のすぐ隣で、腕が当たるほど近くに立っていたのが、1メートルほど離れた場所に移動した。
「まあその意味でも邪魔だったけどさ。そうじゃない。ここから出るんだ」
「なんで? 着替えないの?」
「何のためにここが男と女で分けられてると思ってるんだ」
「何もしないから大丈夫だよ?」
「けど見てるだろ。良いからさっさとここから出ろ。恥ずかしいから」
「見ちゃダメ?」
「ふざけんな。駄目に決まってんだろ」
俺はクロアをここから追い出そうと、クロアにとっての右肩、そして俺にとっては左の肩を持って押した。しかしびくともしない。
クロアはただ立っているだけだ。なら本気で押してみると、今度は片足を後ろに引いて、抵抗した。
「抵抗すんじゃねえよ、さっさと出やがれ!」
「やだ。レイの生着替えを観察するまでここから出ないもん!」
「ハァ?」
『生着替え見たい』
確かに、正直俺も美女の生着替えには興味がある。しかしこれの男と女が逆だった場合、あり得るのか? あり得てもそれを幼馴染でやるのか? 俺はクロアの裸に興味は無い。
別に顔は可愛いけど、なんでだろ。ラティナ姉も同じだ。身内じゃ興奮しない。
「冗談か? だとしたらそれはキツイぜ? 女がそれはキモいっていうか」
男が女に対してそれを言うのは、まあ笑える冗談だし、本気でも共感できる。言う人次第じゃ女も笑ってくれるだろう。俺とか。
そしてクロアがそれを、一対一で俺に言うのは。しかも生って……。ちょっと個人的に受け付けない。
「私は気持ち悪いの?」
いつも通りの雰囲気が変わり、さっきの緊迫した雰囲気に戻った。
「まああの冗談はやめといた方が良いぜ? 流石にクロアがアレはキモいだろ」
「冗談じゃない、本気!」
「だとしたら、……なおのことじゃね?」
そんなのもっとキモくないか?
「私が気持ち悪いっていうの!?」
初めて見る。クロアが声を荒げてキレるなんて。
クロアが怒っても、精々俺を叱る時ぐらいだ。全く怖くないし、怒ってるの範囲に入らないまである。
普段怒らない奴がキレるっていうのは、その様子の不慣れさもあって怖いよな。けどコイツは片刃の双剣を取り出した。そんなの誰がやったって怖いよな。
「ああいやごめん、俺が間違ってた! アレはとても面白い冗談だ!」
「冗談じゃ無い。生着替え見たい」
「あー、えっとー…………今からだとご飯に間に合わない。だからもう入らねえ」
「手伝うよ?」
「いや、遠慮する」
何があったんだろうか。
俺がいない間に、あの小動物のクロアが、何故か変態にジョブチェンジしてしまった。まさか俺の部屋にある本を見られたのか?
なにかあった時の為に、そういう本の隠し場所は相当変な場所にあった上、そこにはこの家に使われているのと同じ、最も強固な鍵をつけておいた。
見つける自体困難な上に、見つけても中を見ることは出来ない。鍵も俺しか持っていない。まあ、制限アリのそこらの本にも、そういう表現はザラにある。もしくは純情なのを面白がって、誰かが教えたってのもあるか。
まあ朝食が出来るまでは、もう少しあるだろう。俺はタオルを水で濡らし、魔法で沸騰するくらい温めた。それで体を拭く。更に優しい匂いの香水を使った。これで臭くは無くなったはずだ。
そういえば俺の部屋どうなってるんだろうか。2人が俺のベッドで寝てた辺り、掃除はされてると思うけど。
そして俺の部屋は、予想に違わず、むしろ旅立った時よりキレイだった。
だが流石に、布団は蹴り飛ばされたように乱れてる。そこは仕方がない、か?
そして本の隠し場所、重いタンスの下にある金庫は、キレイな真円を描いてくり抜かれていた。
…………あれ?
中身は高さからして、ちゃんと全部あるようだ、が。
「見られたのか、あいつのエロ本…………」
あいつとは、協力者の事だ。
詳しくは省くが、あいつは浮気して他の女を奪う状況が好きだ。つまりエロ本もほとんどそんな感じだ。
異常だって言ったら、あいつは別に異常と言うほどでは無いと言っていたが、俺みたいな一般人からすれば充分異常だ。そしてそれは、あの2人も同じだろう。
誤解を解かなければ。いや待てよ? いま言ったら、俺が帰ってすぐにそれを確認したと気づかれる。つまり帰ってすぐにそのエロ本を見たと勘違いされる可能性がある。
つまりしばらくしてから言えば、『別にアレ興味ないよ~』の説得力が増すはずだ。
そんな訳で、コレは見なかったことにしよう。




