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翌日の放課後。
学校では、一段と生徒達が騒がしかった。
それは何故か。
そう。明日から一ヶ月の長期休暇に入るからである。
今日は長期休暇中の注意事項や、生活態度及び課題などについて、一応はクラスの担任であるラムソゥワンナから話されただけだった。
まあ、他に何が有ったかと言えば、成績を返された位か。
成績の評価は、S、A、B、C、Dと各教科毎に付けられる。Dは補習対象。
俺は座学の教科はC、実技はC+(BとCとの間ぐらいな所)だった。授業態度は余り良くない(自覚あり)とは言え、よく補習対象にならなかったものだ。
因みに、ルデンの成績はオールAらしい。
ルデンの授業態度、テストの結果から、Sは可怪しくは無いのだが、ルデン曰く、Aが評価の中で一番上らしい。
ルデンは今、明日の泊まり掛けの荷造り中の為、ルデンが評価Sを知っているか否かを聞くのは止めておこう。
評価Sの件は、メルヴェルに聞こう。
三時間後、日は傾き、夕暮れ。
「―――評価のSに届くような生徒が、最近では現れない為、無くなった、或いは単に知られなくなっただけ、の可能性がありますね」
「ルデンは十分、Sに届いていると思うが」
「いえ、団長殿の前回の学生時代と比べてちっぽけなものでしょう?相応の評価と思われます」
「お、おう…?」
「それに比べまして、団長殿に対しての評価は相応とは言い難い評価と言いますか、何と言いますか…」
どう反応したら良いのだろうか、解せないな。
「で、何故、成績について知りたがるのですか?」
「は?あ、いや…将来の職業選択の幅を広げる為?」
「団長殿は関係ないではありませんか!?」
「関係ないな」
「疑っている訳では御座いませんが、少し不安になりましたよ?既に魔法師団に入団して団長の座に就いておりながら、他の所に就職活動とかするのかと思いましたから…一瞬でしたけど」
「俺はしないぞ?」
「安心しました」
メルヴェルは、自身の胸を撫で下ろしていた。
「でもまあ、仮に進級するとなれば、話は変わってくるだろう」
「それは、当然、根回ししているでしょう。大丈夫ですよ」
思い出した。根回しによる編入であった事に。
そうなれば、自然に進級も、根回しするに違いない。
気にする必要無かった、無かった。
前にルデンに同じことを言った様な気がするが…。
「話は変わりますが、団長殿は明日の準備は…いえ、大丈夫ですね、しなくても」
「ああ。大抵の物は本部に揃ってる。いざという時には、自宅に取りに行く」
「団長殿だから帰宅は許しますよ」
俺だから帰宅を許されるのか?
「無論、その時はルデンも連れて行くが」
「心得ていますが、その逆は許可しませんよ。…団長殿の御命令とあれば別ですけど」
ああ、そうなの。
数分後。否、経ってはいないだろう。
ルデンの荷造りも大詰めだろうか、その頃になり、カロサが帰ってきた。両手に大荷物姿で。
中身は多分、いや、絶対食材だ。
「何で、カロサは荷物を沢山、持っているんだ?あれは全部…」
「夕食の材料を買ってくるよう、命じていましたので。案外、遅かったな、と」
「うぐっ…!?」
メルヴェルがピリ付いた事を勘付いたのだろうか、カロサは立ったまま、顔を真っ青にしている。否、俺から見ても、そう見える。
「別に怒るような時間でもないだろう」
「ま、まさか…!団長殿、カロサめを…?」
何を言っているんだ?
「違う違う。それに、命ずると頼むの間違いだろう?」
「そんな事は御座いませんが」
こら。
俺は溜息を吐いて言った。
「違ったとしても、俺は今回、カロサに対して叱るなり、処罰を与えるのは違うと思うが」
俺の言葉で勘付いたのか、メルヴェルは少しだけ気に喰わぬ顔をして言う。
「…判りました。それが、団長殿の御心であるのであれば、従いましょう」
メルヴェルは台所へと、向かった。
「はぁ~…。アヴィルくん、助かったよぉ…お礼に願い事を何でも叶えてあげるから」
「いらん」
「本当に命拾いしたんだから」
命拾いって…。
「まだ、叶えてない分もあるだろう?それで、埋め合わせって事で」
「あ、あと四回残ってるから?あれとは別によ?」
そう言ってカロサは、メルヴェルの居る台所に向かって行った。
その代わりと言っては何だが、ルデンが下にやって来た。
「あの空気でよく無事だよね…」
「あの空気って、何の空気だ」
「あのメルヴェル殿だよ…?(小声)」
だから、何?
あのメルヴェルって、何なんだ?
解せないな、本当に。
そう懐かせて…一体、何をしてきたのか。
「それよりも、アヴィルも一緒に行くんでしょ?明日」
「ん?あ、ああ」
「でも、良いの?」
「何が」
「アヴィル、という人物は本来、参加出来ない――居たらおかしいでしょ」
このルデンの言った事って、まさか。
「……現地集合じゃないのか」
「え?確か…翌朝、集まって行くとか何とか…?」
だろうな、そう言うと思ったよ。
さて、どうするか。考えは無くないのだが。
「あ、アヴィル?珍しく考え込んじゃってるって事は、難しいの?今回限りは」
考え込んでいる様に見えるのか。
確かに考えてはいるが、考え込む程では…まあ、いっか。
「いや、対して難しい問題ではない。その為に俺達に魔法がある。無ければ創れば良い、それだけだ」
「…名言っぽいね」
「何処が」
「…普通、オリジナル魔法なんて短期間で創れる筈が無いから」
そうだったかな。
死闘(?)中に新たな魔法を生み出す事をした俺が居るしな、ここに。
それに、ナシェリアは一晩で創り出した云々、言うてたし?
「目の前の問題に、『対して難しい問題ではない。その為に俺達に魔法がある。無ければ創れば良い、それだけだ』―――良い名言ですね、団長殿」
「メルヴェル!?」
「やっぱり、名言…」
何が何処が名言になるんだ。
「名言ですよ。私めには心に響きましたから、団長殿の先程の御言葉」
…。
「さあ、夕食が完成しましたので、頂きましょう」
***
マリアンローナSide
いよいよ明日。
この訓練で、私はまた一段と強くなれる筈。
そして、憧れの魔法師団団長殿を目にする事が出来ると思うと、内心、興奮し、緊張してたりしている。
「マリア様、楽しそうですね」
「んなっ…!?楽しくなどっ…」
「そうですか?楽しそうに、明日の荷造りしてる様に見えますけど」
合同特別魔法強化訓練は、明日から二週間行われ、泊まり掛けとなる。
その為の荷造り中に話し掛けてきたのは、私のルームメイトであり、幼少から親交があったレミリィア・ラランディー。
「マリア様、団長殿のサイン、貰ってきて下さいね」
「私が何をしに行くと思っているのよ、レミ」
「冗談です」
私には、レミが冗談を言っている様には見えなかった。
「手伝いましょうか?」
「一人で十分よ!?」
「冗談です」
何時も、そうやって「冗談です」と付け足す。けど、何時何時、冗談に聞こえた事すら無い。
私は明日に向けて荷造りを再開させた。
***
レイニアータSide
明日からの合同訓練参加者の内の三年生の俺達だけが、この学校の校長室に呼ばれている。
何故、一、二年生は呼ばないのかは不思議だった。
そして、校長先生の言った事も意味不明だった。
「今年は団長殿が指導教官として加わるのだろう。呉々も、自分自身と後輩の身に気を配るのだぞ」
一応、真剣に聞いていたつもりではあったものの、「何故?」と思い、考える方が強くなっていった。
この場に呼ばれていた、俺以外の二人はポカン顔していた。二人も、多分、校長先生の言葉の意味を理解出来ないのだろう。
団長殿が指導教官に加わるから、昨年、一昨年と何か変わるのか。
そう、俺は思っている。二人とも、そう思っているに違いない。
「…団長殿も守ってくれるとは思うが、アレも加減を知らないからな」
(強くするには、トコトン厳しくする質だからな…アヴィルは特に)
終始、校長先生の言った意味を理解する事が出来なかったのだった。
***
ルデンSide
張り詰めた空気の中、明日の荷造りを終わらせた。
程無くすると、緊張が解けてメルヴェル殿がカロサ様を台所へ連れて行った。その所を見計らい、アヴィルに声を掛けた。
「あの空気でよく無事だよね…」と。
「あの空気って、何の空気だ」と、返された。
関係の無い僕でさえ、変な汗が出てくる様な空気の中、アヴィルはずっと、いつもの様子を保っていた。
「あのメルヴェル殿だよ…?(小声)」
台所に居る、メルヴェル殿に聞かれない様に、小声で且つ、アヴィルに耳打ちした。
聞かれたら…ああ、もう、死を覚悟するしかないよね。
そう言えば、アヴィルも付いてくるんだっけ、明日からの、に。僕の護衛として、又、魔法師団の団長殿として。
アヴィルが、かの魔法師団団長殿と知った。だけど、未だに結び付かせる事が難しいかも。完全に別人として考えちゃうよ…。
それは兎も角。
どうやって、付いて行くのか聞いてみたら、オリジナル魔法を創り出すとか何とか言ってた。
明日だよね!?明日!
一晩で創り出すつもりなの?
…出来ちゃいそう何だけれどさ、どんなのが創り出されるのかは、分からないけれど。
「無ければ創れば良い」とか、世界を探してもアヴィルだけでしょ、絶対!
でも、後々残る名言っぽいかも…。
メルヴェル殿も、名言だ、と仰ってたし。
アヴィルは違うとか言ってたけど、やっぱ名言?
ああ、面白いなぁ。
出会った頃は…ふざけないで欲しいと思っていたのに、今では何か…。
「ふふっ」
「どうかしたのか」
「何でもないよ。唯…この時間が少しでも長く、ずっと続けば良いな、と思って」
「…そうか、そうだな」
アヴィルの表情が一瞬、強張った様な気がするけれど、杞憂に終わればそれで良い。
多分、明日から過k…あー、うん。待ちに待った、合同特別魔法強化訓練だー。
楽しみだよ。二週間後が。終わった後、強くなったであろう、自分が。
ここまで読んでくださり有り難うございます。
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