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 この場の誰も呼んでいない筈のメルヴェルが、「呼ばれたから来た」と言い、現れた。

 皆は驚きを隠せず、クルーフとガイアスに至っては、マリアンローナに襲い掛かる事も忘れる程だった。


 「アヴィル、呼んだの?」

 「呼んでない…と思う」


 ルデンが当然の事のように、俺に聞いてきた。それじゃ、不味いだろ。


 「殿下?何故、アヴィル殿がメルヴェル殿を呼んだ本人だと思われたのでござる?」

 「え、あ、あはは…」


 何も答えられずに、只々、苦笑いしながらやり過ごしている様に見えた。


 「それは勿論、あの御方と私は(チラッ)―――」


 ん?自棄にメルヴェルのチラチラーっと、こちらにとても熱い視線が、送り届けられている様な気がするんだが…何故だが、危険な方向へと行きそうな気がしてきた。ある意味で。


 「―――一方通行ですが、通じあっているからです!」


 通じあっているとは言わなくないか?一方通行って。

 俺はやれやれと、溜息を漏らしていた。

 メルヴェルは我に帰ったのか、表情が変わった。忙しいな、本当。


 「取り敢えず…ここで何をしていた?」


 突如、一から説明しろと言わんばかりに、圧力を掛けて睨み付けてきた。殺気は無いと思われるが、ルデンやマリアンローナ達は冷や汗を滴いてる。

 生徒であろうとも、関係ないらしい。

 俺は別にどうって事は無かったが、皆が萎縮してしまい、沈黙の数分間が続いた。

 俺が話せば良いんだが、面倒臭かったので黙っといた。


 「―――何故、誰も話さない?」


 メルヴェルが待てなかった。

 そして、ルデン達四人は更に萎縮してしまった。


 「誰も話さないのであれば代表して、王太子殿下に話させる」


 「!?」

 (何で、僕何ですか、メルヴェル殿!?)


 既に目が潤んでいる状態で、俺に助けを求めいた。


 「ま…待ってください」

 「何だ?」


 マリアンローナが口を挟む。怯え、震えた声で。


 「殿下は何一つ、過失はございません。過失は全て、この者共にございます」

 「…ほう?」


 マリアンローナは、ルデンが何も悪くは無いと言った。が、この場で悪いのは、俺、クルーフ、ガイアスを指した。

 俺まで入ってるのかよ。


 「私は只、現実と言うものを教えただけ。それに対し、この者は襲い掛かろうとした所を殿下が止めて下さっている所でした」


 「つまり、お前自身は身の潔白を証明された、と言いたいのか?」

 「勿論です」


 おいおい…。


 「そう言われているが、どういう理由で襲い掛かろうとした?」


 メルヴェルはクルーフとガイアス(+俺?)側の意見を聞いた。

 すると、マリアンローナが反応してしまった。


 「情けを掛けるおつもりですか」

 「私はお前に聞いていない。そこの男共に聞いている」


 「…っ!」


 「アユハリローズ令嬢は、確かに事実しか言っていないでござる。拙者の魔法の実力は、この学校で赤点を取り、拙者の生家であるランドゥルフに泥を塗っているのも又、事実でござる。しかし!この者は、拙者までならまだしも、他の者の見えぬ努力を侮辱し、陥れようとした…拙者の信念が此を許さなかったのでござる!」


 「俺だけを言うならまだしも、アイツ、俺の家族やクルーフまで侮辱しやがって…要は、自分もクルーフと同意見、って事です」


 メルヴェルは、深く溜息を吐ききってから喋り始めた。


 「…お前らの話を聞いても何も進まないな、食い違い過ぎて矛盾だらけだ。この時間も無駄だ。第三者の話も一応聞いて、私がこの話に決着を付ける。決定事項だ」


 「第三者…?殿下の事ですか?」

 「もう一人居るでござる。アヴィル殿が中立だと言ってたでござる」


 「その二人が第三者なのだな?これを見ていてどう思った」

 「ぼ、僕はアユハリローズ令嬢に過言があったと思いますし、クルーフとガイアスは少々、やり過ぎだと思いました」


 ルデンが意外にも、ちゃんと応えていた。あれだけ、クルーフとガイアスを抑え付けるのに必死だった筈なのだが。

 まあ、良い。


 「俺は別にどうでも良いと思った。決着は喧嘩両成敗で。だって、単なる喧嘩だろ?これ」


 「「「……」」」


 「あー、やっちゃったねー。これは…」


 マリアンローナとガイアス、クルーフの三人は、無言で何かに驚いた様子で俺を見ている。

 ルデンに限っては、何故か呆れられた。


 「…発言をお許し下さい、メルヴェル殿!」


 一番最初に動き出したのは、クルーフ。メルヴェルは、発言を許す、と首を軽く縦に振った。

 若干、メルヴェルの顔が綻んで来ている気がするのは気のせいか。


 「断固として、喧嘩などではないでござる!それに、アヴィル殿、死にたいのでござるか!?」


 「は?」


 「メルヴェル殿にタメ口など…」


 あ、ああ、そう言うことかぁ…。

 いつも、メルヴェルと話す言葉で話してた。うっかり、うっかり。

 だが、まあ、そこまで心配するほどでも無かろうに。


 「気にするな、ほら。メルヴェル…殿?は、気にしてないかも知れないだろう?」


 一応、心配されてましたので。

 ちゃんと、殿も付けといたぞ。


 「自己判断ではないでござるよ?完全に、メルヴェル殿は聞いていたでござるから…」


 「まあまあ、決着を聞いてから俺の処遇を聞こうとしようじゃあないか?」


 「本当にそれで良いんでござるか…?」

 「さあな」


 どうせ、無罪放免になるし?

 有罪判決が出たとしても、処刑までいかないと思う。


 「お前らよく聞け、決着を言い渡す」


 メルヴェルが全員に聞こえる様に言い始める。


 「―――喧嘩両成敗とし、双方に罰を与えるものとする」


 「「「喧嘩両成敗!?」」」


 「何か文句でもあるか?…罰は後日、教師から指示されるだろう。それと、タメ口の件も罰を与えるものとしよう」


 お?

 どんな罰が待っているんでしょうかねぇ?


 「()人は後日、教師から指示されたものを行うこと。以上」


 俺の罰は、皆が居ない所でメルヴェルから直接かな。


 「それと、王太子殿下には別に用がある。付いて来い」

 「え、僕ですか?」


 メルヴェルに連行されて行った、ルデン。

 多分、メルヴェルがルデンに用があるのではなく、俺に用があるのだろうしな。

 二人を追うとしますか。

 跡を追う為に、実技訓練場を出ようとした時に、クルーフに声を掛けられた。


 「何処に行くでござるか?」


 普通の質問だろう。

 追い掛けるなど、応えてはならない。

 適当な事を言ってしまって、この場を出、早く二人と合流をしたい。


 「あー、野暮用を思い出したからな。寮に戻らないと行けなくなった」


 どんな野暮用だよ。


 「そうなんでござるか!?ならば、今すぐに拙者達も一緒に…」

 「ほら、俺の部屋、ルデンと同室だから。無闇に人を勝手に入れちゃ、いけないから。気持ちだけ受け取っとく。それじゃあ、な」


 無闇に人を勝手に入れてるけど。ごめんねー。

 逃げるようにして、実技訓練場を後にした。

――――――――――

―――――――――――――

 直ぐに、メルヴェルとルデンは見つかった。


 「それで、メルヴェルは、ルデンじゃなくて、俺に用があるんだよな?何だ?」

 「そうだったんですか!?」


 「そうですよ、団長殿。今から、校長室にて明後日より行われます、合同特別魔法強化訓練についての最終確認が行われますので、団長殿を呼びに参りました」


 最終確認と当日だけ参加ですか。


 「それって、僕も参加して良いんですか?」

 「団長殿の護衛対象だから、構わないと言う判断だ」

 「まあ、ルデンの介入を認めないのであれば、俺は行かないしな」

 「団長殿が来て頂けないのは困ります」

 「と、言うわけ何じゃないのか?」

 「はあ…」


 話している内に、俺達は目的の場所に辿り着いた。

 そう、校長室だ。


 「ノックしますか?」

 「別にしなくても良いだろう」

 「えっ」


 ノックはせず、校長室の扉を開けて入った。

 部屋には、俺の元同級生であり、ここの学校の校長でもあるリダルンディ、唯一人だけが待っていた。


 「それでは、合同特別魔法強化訓練の最終確認を始めます」


 メルヴェルが仕切る。

 俺とリダルンディが頷いた。


 「先ず、日程と期間ですが、明後日には長期休暇に学校側が入られるとの事ですので、明後日より二週間で宜しいですね?」


 メルヴェルが聞く。

 俺とリダルンディに対してだとは思うのだが、何故か俺に対してのみに聞いている様に聞こえてならない。

 それは兎も角、明後日からか。本当に、急なんだな。

 ここは、一つ提案を。


 「メルヴェル、ちょっと良いか?」

 「はい、団長殿」

 「長期休暇の二日目からじゃ、駄目なのか?各自、準備とかあるだろう?」


 単に一日、遅らせただけ。

 て言うか、長期休暇一日目からって…。


 「例年通りの日程です。休む暇を与えては、訓練に参加する意味がありませんから!団長殿の意見を反映出来ず、申し訳ございません…」

 「…例年通りの日程でどうぞ」


 負けました。

 休む暇を与えないのかよ。

 生徒達に適度な休みを与えなさい、メルヴェル。と、心の中で言っても意味ないか。


 「わかりました。続きまして、場所についてです。訓練は魔法師団屋外演習場、寝泊まりは魔法師団本部で宜しいですね?」


 俺とリダルンディは肯定として、頷く。


 「指導教官と訓練参加者の全員の名がこちらです」


 メルヴェルが、机に置いた紙に書かれた文には、こう書いてあった。


ーーー

 合同特別魔法強化訓練指導教官及び参加者


 指導教官


 魔法師団団長殿

 メルヴェル・アディブルワ

 ガードラーレ・アフロシェルド

 ナシェリア・ランドゥルフ 筆頭宮廷魔法師

 アレドラント・ミレファーム副団長


 訓練参加者


 魔法師団員

 第三階級魔法師ムージェ・マラディ

 第三階級魔法師レナウン・スノーヴァ

 第三階級魔法師シェリフ・アードン

 第四階級魔法師フェーナ・スフィラート

 第四階級魔法師ユーグ・ヴルクラーディ


 国立高等魔法学校生

 一学年

 ヴィールデンタータ・ティナラータ

 マリアンローナ・アユハリローズ

 ログレィン・フェーンリィ

 二学年

 ルフィン・スフィラート

 アリアナランデ・ワーデルグラサー

 アヴァーレージ・プーマライスナス

 三学年

 レイニアータ・ジュワライル

 リドル・グローン

 アシュナー・メルスフィ

ーーー


 何か身に覚えのある名前があった様な気もしたが…まあ、いっか、取り敢えず。

 俺の名前は…うん、そう言う風に書かれるのね。


 「一応、最終確認は終わりですが、意見等ございますか?」

 「無いな、今のところは。リダルンディは?」

 「ありません…直ぐに、対象生徒に決定事項の通達をします」

 「では、無いようなので、お開きに致しましょう」


 この場は解散となった。


 「ちょいちょい、メルヴェル。少し、耳を」

 「どうされましたか?」

 「俺とルデンの泊まる部屋なんだが、―――――で、良いよな?」

 「ええ、勿論です!」


 メルヴェルの承諾も得た事だし、寮の部屋に帰るとするかな。時間も、時間だし。


 「じゃあな、リダルンディ」

 「あ、う、うん?うむ?え?あ、は、おお?」

 「…ふっ」


 俺は只、リダルンディに別れの挨拶をしただけなのだが、返答はどうしたものなのか…。

 ルデンは今の今まで、この空気にぽかーん、としていたのだが、鼻で笑った。

 そう、この場で()で笑ったのが、ルデンだ。

 まあ、戻ってきてくれて何より。


 「よし、帰るかー」

 「そうしましょう」

 「え、これで帰るの!?…校長先生、笑ってしまい、すみませんでした」

 「あ、気にしてないぞ、大丈夫…うん…大丈夫…大丈夫…」


 俺達三人は、《瞬間移動》で寮の部屋へ移動した。

ここまで読んでくださり有り難うございます。

誤字脱字の指摘、感想、ブックマーク、評価、レビューをくれると幸いです。

***

余談(飛ばしても大丈夫です!)


最終確認中にルデンくんが思ってたこと

  (ルデンSide Only)


 …僕がここに、居て良いんだろうかな?


 「―――休む暇を与えては、訓練に参加する意味がありませんから!団長殿の意見を反映出来ず、申し訳ございません…」


 休み無いの???


 「―――訓練は魔法師団屋外演習場、寝泊まりは魔法師団本部で宜しいですね?」


 屋外演習場かぁ…あそこ、《飛行》を練習する為に行ったよね。

 魔法師団本部って、どんな所だろう?少し気になる。先ず、泊まる所?


―――


 「じゃあな、リダルンディ」

 「あ、う、うん?うむ?え?あ、は、おお?」

 「…ふっ」


 わーー、ごめんなさーい~!校長せんせ~い!

 あと、『あ、う、うん?うむ?え?あ、は、おお?』って何ですか?

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