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クルーフが先に、水晶に触れた。
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Name:クルーフ・ランドゥルフ Age:12
Lv:104 Mr:火、闇
HP:4036/4205 MP:243/7204
Job:第六階級魔法師、国立高等学校生
Title:
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「…魔力量の少なさに拙者の生家ランドゥルフ家を汚してると改めて思わされたでこざる…」
確かに魔法師としては、魔力量が少ない。HPが上回っている。騎士よりの魔法師ではなく、魔法師よりの騎士なのでは…?
そうしている内に、次のガイアスが水晶に触れた。
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Name:ガイアス・リーグス Age:12
Lv:113 Mr:地
HP:1978/2586 MP:61043/62477
Job:第六階級魔法師、国立高等学校生
Title:リーグス男爵家次期当主
ーーー
「まあ、こんなものか…。まあ、流石に殿下に構いませんが」
「ガイアス、それはクルーフの前で言わない方が…」
「良いでござるよ…元から解りきった事でござる」
つまり、既に腹を括った後、って事かよ。
「――じゃあ、次は…アヴィル、ったっけ?」
「短期間で飛躍的にレベルアップしてるに違いないでござろう!」
俺にターンして来た。何故、急に?
俺は無言でルデンにヘルプを要求したが、「ごめん」と言わんばかりに、手と手を合わせている。
はあ…、俺も腹を括るか。
「取り敢えず、俺も一応は確認はするが、俺のは見ないでくれ。つーか、見るな」
「何故でござるか?」
「そうだそうだ、俺等は見ただろうに」
一応、大丈夫だ。万が一、見た場合、クルーフとガイアスの二人の記憶を操作させて貰うからな。ふははは。
「見て欲しくなかったら、見るなと言えば良かっただけの話だろう。それでも理由が必要か?」
理由は、あるにはあるのだが。
俺が水晶に触れる手前、クルーフとガイアスには後ろを向いて貰った。
ーーー
Name:アヴィル・リヴァーフォールズ Age:18(65)
Lv:Max Mr:All
HP:∞/∞ MP:∞/∞
Job:第一階級魔法師、魔法師団団長、
国立高等学校生(二回目)、王太子殿下護衛
Title:転移(×2)、魔法師団高等団員及び団長、
リヴァーフォールズ辺境伯爵及び当代当主
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この水晶で触れるのは初めてだな。俺の年齢、変…。
転移後、魔法師団本部で測った時より、JobとTitleが増えている。
増えた原因は、今現在、国立高等学校に通っている事になっている(二回目)し、王太子殿下の護衛を務めさせられているからだろう。そして、リヴァーフォールズ辺境伯爵と家を、形ばかり引き継いでいるからでもあるだろう。
触れている手を水晶から離し、ステータスが見えなくなった頃、クルーフとガイアスに前を向いて良いと言った。
「して、どうだったでござるか?」
「全く以て変化なし」
Lvや、魔力量を指すMrは、な。
「まだ拙者等は学生の身。それも、一学年。時間は優に有るでござる」
クルーフは俺の肩に、そっと、手を置いて、そう言い放った。
一瞬、ムカつくガキだなと思った。のは、敢えて言わなかった。言いたかったな。
あっ、良いこと思い付いちゃった。
「何か、良くない事を思い付いてそうな顔をよくもまぁ…」
そんな顔をしてますかねぇ?ルデンさんよぉ?
そんな事を完全に無視して、気にもせずに、クルーフに話し続ける。
「…じゃあ、これはどうだ?」
「何でござるか?」
「実際、飛躍的に伸びたのはルデンだ。ルデンに教わるのはどうだ?」
「いや、ちょっと待って?何で、そうなった?」
何せ、めんどくさいと言うのもあるし、ルデン自身の為にもなると言うのもある。まあ、どっちかと言うと、前者か。
「殿下の方法を是非に参考にさせて貰いたいでござるが、アヴィル殿のやり方も参考にさせて欲しいでござるよ」
「対して変わらないと思うぞ?ああ、あれだな、うん。日々の努力の積み重ね、って奴だな、きっと。ルデンが以前に見た時よりも大幅に上回ってた理由は」
「…多分違うと思うよ?」
知ってた。
て、言うことで、ルデンが方法を教える事で話しが纏まった。
完全に空気になっていた、ガイアスもルデンに教わる気満々の様だった。
寮を出、学校の校舎へと向かった。
実技訓練場の一角を借り、俺達は早速、始める事にした。
「お」
「アヴィル?どうかしたの?」
「あれ、先客だよな」
指差した先には、先客――マリアンローナが一人で居た。
「邪魔しちゃ悪いし、僕達は僕達でやろうか?」
ルデンは気付かなかった振りをしたが、マリアンローナは、此方に気付いた様だ。
まあ…こっちが気付けば、あっちも気付くか。当然だ。
「殿下、以前も申しました通り、この者と何時まで一緒に居られる気ですか」
「それは、僕の勝手だよ?何が悪いのさ」
いや、ルデンくん。嘘は良くないと思うが…。
「殿下、そろそろ始め…何が起きてるでござるか?アヴィル殿」
クルーフは今、どんな状況なのか分からない様子で、ガイアスに至っては語るのも忘れる程、混乱しているのだろう。
「簡単に言えば、何故俺みたいな奴が、王族であるルデンと行動を共にしているのか。そんな話なんじゃないのか」
よく解んねぇ。
「クラス内の唯一の赤点保持者…!殿下
!だから、極悪犯罪者と縁を絶ち切らないから、このような者とまで関わってしまう様になるのです!終いには、殿下自身まで堕ちてしまいますよ?」
「あのなぁ?聞いてれば、コイツ…クルーフの努力を踏み躙る様に言いやがって…!」
突如として、ガイアスが怒鳴り出した。
ルームメイトとして、一番近い距離でクルーフの努力を見てきた者としては堪ったものじゃないのだろう。
「事実でしょう?トップクラスのクラスに赤点は要らないのよ。赤点保持者が居るだけで、恥。泥を塗ってるの。分からないの?まあ、貴方だけは、違うクラスですから分からないでしょうけど」
「あー、そうですか!地の精霊よ、我に力を《土人形》!」
「下のクラスは、皆、野蛮なのかしら!水の精霊よ、我に力を《スコール》!」
いきなり始まった、ガイアスとマリアンローナとの模擬戦。
マリアンローナの《スコール》の酸性雨が、多少、こっちにも降って来そうだ。
ルデンに手招きして呼び、クルーフにバレない様に《超レインコート》を発動させた。
「貴方だって、いえ、貴方の家は《土人形》だけしか出来ない、出来損ないの家だったわね」
「俺だけならまだしも、クルーフや家を侮辱する気かよ!?てか、地属性なら他の魔法も使えるし!」
徐々にヒートアップしていく。
「ガイアス殿、拙者の事に対しては事実のみ、アユハリローズ令嬢は言っているでござる」
「「クルーフ?」」
ガイアス達の戦いに、クルーフが自ら近付いて行く。驚いたルデンとガイアスの発した声が、偶然、重なった。
「だが、拙者以外の者を侮辱するのだけは、許し難いでござるよ。例え、異性でござろうが、家柄が格上でござろうが…はあ、この場に剣なりがござれば…かの者を傷物にして差し上げたでござるのに」
「「「「…!?」」」」
俺を含める、クルーフ以外の全員が言葉を失う程に驚いてしまった。
クルーフに剣を渡してはならない、そう思った瞬間だった。
ガイアスは気を取り戻して、クルーフに語り掛けた。
「き、傷物って…クルーフ、お前…何もそこまで言わなくても良いだろう」
いやいや、お前が言えた事じゃないだろうが。完全にブーメランだろう?先に魔法を放ったのは、ガイアスの方だったんだから。
「??ガイアス殿?殿下にアヴィル殿まで、どうしたでござる?当然の仕打ちでござろう?」
「勿論、《回復》を掛けて治すよね?」
「殿下の仰る事を当然する、よな?」
「ちゃんと残り目立つ様に、深めに斬るでござるよ」
清々しい顔でそう言った。
そして、こう続ける。
「治癒系統魔法を掛けるのでござれば、その上からまた、痕が残る様に然りと斬るでござれば良いだけの事」
「クルーフ。念の為に聞いておくが、剣が有ればの話であってるよな、斬りかかる話は」
俺はルデンの護衛の為にも、念の為に聞いた。
「そうでござるよ?あくまで、剣が手元に有ればの話でござる。剣でなくとも、例えば…長い得物であれば、何でも良いのでござるが…アヴィル殿はそう言った物を心当たり無いでござるか?」
「は?」
何故、そう言った質問を返されたのかは、俺には不思議で仕方無かった。と言うか、謎だ。
剣――【魔剣ヴィヴァロ】なら有りますけど。持てるか判らないし、持てたりしたら危険。
「…」
「アヴィル、まさかだけど、持ってるの?」
ルデン、俺に反応してくれるなよ…。
「心当たりが有ったとしても、渡すつもりはないな。クルーフやガイアスには悪いが、今までの話は正直、どうでも良いと思ってる。自分以外が侮辱されたとかどうだとかも、あまり感じてない」
マリアンローナは確かに言い過ぎた。相手が怒り狂うのも、仕方無い事なのかも知れない。
だが、俺は態々、魔法師団団長である事を隠し、本来、使える魔法の大半を使わない様にしている。その為、別にマリアンローナの発言に対して、一々、怒りを覚えれば、面倒な事になる。だから、この話に関して、どうでも良いと思う事にした。
辺りを見渡せると、ルデンが溜息を吐きながら、額に手を当てていた。クルーフとガイアスの二人は、お互いに少しの合間に話し合ってた。そして、マリアンローナは、より心底嫌そうな顔をしていった。
「本当にそれで良いでござるか?悔しくは無いでござるか?」
何の確認なのか、クルーフが俺に問う。
「全く以て悔しくは無いし、こんな事に魔法を使う事自体、馬鹿馬鹿しい」
「…そうでござるか。アヴィル殿は悔しくは無いと…。強いては、馬鹿馬鹿しいと考えるのでござるか…。アヴィル殿ならば、分かり合えると思えたでござるが…仕方無いでござる」
最初から、分かり合える等とは、一ミリも思ってないのだが?何故、分かり合えると思えたのだろうか。
「それに、お前」
「何よ、私?貴方の様な者が話し掛けないで、穢らわしい…」
俺はマリアンローナに話し掛けたのだ。
「クルーフ達に対して、少しは言い過ぎたとは感じなかったのか?」
「真実を言ってあげたまで」
つまり、何も感じなかった、と。
「コイツ…!」
「今すぐにでも、後生に送り届けるでござる!」
「アヴィル、二人を抑えるの大変なんだけどー?」
今にも暴れ出しそうな二人を、ルデンが抑えつけている状態だった。こんな状況にならない様にするつもりで、マリアンローナに意思を再度聞いてみたものの、それが裏目に出て、敢えてクルーフとガイアスに刺激を与えた様だ。
「言っとくが、俺はあくまで、中立だからな。お前らの味方でも何でも無いから」
「貴方なんかが味方でしたら、この私が汚されるじゃない!最初からお断りよ」
「拙者の信念を馬鹿にしたアヴィル殿を仲間に出来ぬでござるよ」
「クルーフに同感だ」
嫌われてんなぁー…俺。
別にそれで良いけど、中立宣言は戦う意志が無い事を宣言しただけだし。
つーか、面倒いな。あーもう、この際、メルヴェルがこの場に居、仲裁してくれれば良いんだが…。出来れば、喧嘩両成敗で。
「え?呼びました?」
「「「「「!!??」」」」」
この場に居てくれれば…と、心の中で思っていただけなのに、メルヴェルが何故か、この実技訓練場にやって来たのだ。
ここまで読んでくださり有り難うございます。
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余談(飛ばしても大丈夫です!)
クルーフとナシェリアが生れたランドゥルフ家は、多くの魔法師を輩出してきた、由緒ある伝統的な家です。特に、魔法の才に秀でなければ、ランドゥルフ家の人間とは認められません。
因みに、クルーフは野に放つと危険、と判断されているので、家を追放されてません。




