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 「申し訳ございませんでした!!もう、既に話が団長殿の御耳に入っているとばかり…!」

 「(いや)、言ってない理由を聞いてないんだぞ?」

 「そ、そうでありますか…?」

 「普通に話てくれ…と言うか、楽にしてくれて良いんだぞ?」


 そうしてくれないと此方が困る。


 「分かりました…では。定期試験の後、長期休暇に入るのは団長殿も御存知ですよね?」

 「ああ」


 そりゃ、一回、ここを出てるしな。変わってなければ。


 「長期休暇初日から二週間、魔法師団本部にて泊まり掛けで毎年、合同特別魔法強化訓練を行っております」

 「成る程…いや、待て。二週間もか。長期休暇の半分も費やす事になるじゃないか」


 定期試験は毎年三回行われ、その後、一ヶ月の長期休暇を生徒達に与えられる。俺が一回、ここを出た五十年前もそうだった。多分、変わってなければ、今も。


 「はい。ですが、その二週間の短期間の強化訓練により、力をより高める事が可能となります」


 五十年前に有ったのなら、俺は辞退してたのだろう。俺は片道二週間ゆっくりと使い、帰省したいからである。


 「前々から言ってた、俺に指導教官として見てやってほしいと」

 「丁度、王太子殿下も参加が決定しましたので…」


 ルデンの護衛の事を指しているのだろう。

 付きっきりになるには、魔法師団団長として、指導教官として、その場に居合わせた方が、何かと好都合だしな。うん。


 「判った。ただ、団長として既に言ってしまっているんだろう?ルデンだけでなく、他の者にも、公平にせねばならないからな」

 「あっ…」


 魔法師団団長殿(=俺)が来る事を知り、例年以上の競争倍率だったんだから…きっと。


 「二週間()って言うのが、ちょっと長過ぎるが、何も無ければ良いんだが…」


 アイツ等、魔族共が現れなければ―――。

 本当にやれやれだな。


***


 日は跨ぎ、翌日。

 試験結果が直ぐに出て、教室に貼り出されている。

 俺は試験の結果を初めて確認した。


 「うむ。ちゃんと、筆記三十一点、実技三十一点、合計六十二点。ギリギリ赤点回避ラインだ」


 筆記は兎も角、実技は点数が試験監督にもよるから不安定要素だったのだが、一応、一安心と言ったところか。


 「ん?俺の下にもう一人居る?」


 この試験結果、クラス順位順に書かれている。

 だが、このクラスは入試時点でトップクラスの生徒が集まっている。その中、赤点回避ラインの俺を下回る、つまり、赤点の生徒がこのクラスに出るとは。


 「貴殿も思われたでござろう、この拙者が…学年トップクラスの唯一の赤点保持者で、泥を塗った、と」


 俺の下の生徒の成績を見てたら、隣から声を掛けられた。

 殆んど同じ目線の男子生徒だった。


 「いや、別に泥を塗ったとかは思ってないけど」

 「そうでござるか…ああ、名乗りを忘れておったな。拙者は、クルーフ・ランドゥルフでござる」


 「…ランドゥルフ、って」

 「早速気付いたでござるか…拙者の従姉ぎみが、あのナシェリア・ランドゥルフでござる。赤点を取る拙者は、見ての通り、ランドゥルフ家の落ちこぼれでござろう?」

 「そこまで言ってない」


 ふーん…ナシェリアの従弟なのか。魔法の力量差が激しいな。多分、ナシェリアのクルーフ位の年だったとしても、流石に赤点を取る程ではないだろう。むしろ、ナシェリアは赤点を取った事は無いだろう…。


 「貴殿は血が滲む程の努力を短期間で積んだのでござろう…拙者にも、是非、その方法を教えを請いたいのだが」


 クルーフよ、俺はその血の滲む努力と言うものを積んでない。


 「俺に頼むのは良いけどさ、この俺で良いのか?生徒の大半が俺の事を極悪人とか言ってるぞ?」


 「拙者は貴殿の事をそこまで気にしてないでござるよ。拙者は団長殿をお慕いすると申すより、武士…剣士の誉れ剣姫殿をお慕いしているでござるよ。拙者は、別に貴殿が団長殿の魔法書に落書きをしていたとしても何も思わないでござる」


 あら、珍しい。この学校の生徒としては珍しい魔法師団団長を目指してない人だった。

 てか、この世界に武士なんて居たっけ?まあ、それだけ俺の知らない世界があり、それだけ世界は広かったと言う事で…。

 と言うか、剣姫(母親)かぁ…。


 「クルーフは魔法師じゃなくて、剣士・騎士だったりするのか?」

 「拙者は魔法師で合ってるでござるが、騎士よりの魔法師でござる。父上は純粋な魔法師でござるが、母上は騎士でござる」


 これは、ややこしいのが来たな。


 「だったら、俺よりも適任者が居るだろう」

 「誰でござるか?」


 「三年のレイニアータ・ジュワライルだ。彼処の家は剣姫を生家だったな」

 「…貴殿の紹介するその殿方は確かに拙者と境遇が似て非なるが、流石に三年のそれも主席に…か。やはり、貴殿に教えを請いたいでござる。頼む!」


 「何話してるの?アヴィル」


 会話にルデン参戦。面倒くさくなり…。


 「アヴィル殿に赤点を回避する程までに魔法を磨く方法とは一体何をしたのか、教えを請いたいと頭を垂れていたまででござる。きっと、血が滲む様な努力をしたのでござろう…」

 「…?」


 ルデンが何を言って良いのか判らなくなったのだろうか、混乱している様に見える。


 「是非、貴殿の方法を拙者に!」

 「…渋らず、魔法を軽く見る位なら良いんじゃない?」

 「はぁ、分かった。俺の方の都合が合う時だけ見てやる」

 「本当でござるか!?殿下、(かたじけな)い」

 「僕は何もしてないよ」


 本当にルデンは何もしてない。と言うか、俺がクルーフに教えると言う流れを作った、所だろうか。余計なことを…。


 「アヴィル殿、放課後暇であれば、拙者の部屋に来れぬか?」

 「暇、ねぇ…」


 俺はルデンの顔をチラッと見る。


 「僕は暇だから、着いてっこかな~?」

 「仕方無い。放課後、行くとするか。クルーフ、お前の部屋は何番だ」

 「せ、拙者の部屋は206番でござる」

 「分かった。覚えてたら、向かわせて貰う」

 「え」

 「アヴィル…?あ、クルーフ?アヴィルを無理矢理でも、何がなんでも、連れてくから大丈夫!」


 無理矢理って…おい。


 「…忘れてても向かわせて貰おう」

 「アヴィル殿と殿下は本当に同室でござるのか?」

 「ああ」

 「そうだよ。編入して来た前日…つまり、入寮した時なんだけど、いきなり、アヴィルが乗り込んで来た?って言うか…まあ、そんな感じだったよ」


 やれやれと手を額に当てて、そう言った。


 「警備態勢は大丈夫でござろうか…」

 「あはは…」

 「俺は知らん」


 実際に俺でも思ってた位だからな。王族が、それもたった一人で過ごす何て、普通じゃ有り得ない話だろう。


 「話は逸れるが、ルデン。お前は結果、どうだったんだ?」


 放課後、クルーフの部屋に連れ込…行くのは良いとして、ルデンの定期試験結果を聞くとした。


 「急に逸らすよね、本当…。ああ、そうそう。でね、筆記は九十八点、実技は百二十五(?)点。合計二百二十三点で、学年主席だったよ!」

 「おお」


 「流石は殿下でござる――して、試験の満点は百点の筈…」

 「そうなんだよね…僕も何でだろう?って、思ってたんだよね」

 「素直に貰っとけよ、その加点」


 ()何て毎回、筆記と実技両方に加点付いてた様な気がする…。そのお陰か、そのせいで、当時学年二位のヴァールデンとの点数差が、激しかったと言う記憶だけはある。


 「そうしておくよ」

 「そうすると良いでござるよ――では、また放課後に」

 「「ああ/うん」」


 試験結果が貼り出される為だけに、始業時刻が後ろ倒しになる。クルーフは、丁度、チャイムが鳴る頃に別れを切り出したのだ。

 俺達は席に着席し、授業開始を待った。


***


 放課後。

 

 今日は午前中で授業が終わった。否、授業と言う、授業はしてない。

 筆記試験の返しと、その問題の説明のみだったからだ。

 



 何気無く、放課後を過ごそう…。


 「うん、無理矢理連れてくしか、なくなったね」


 え。


 「忘れてました、とか言わせないよ?だって、スクロールさせてすぐ上だからね」


 何言ってんの、ルデンさん。


 「場合によっては、しなくても見える…ほら。クルーフの所、行くよ」


 ルデンは俺の腕を離さない様に掴み、無理矢理連行されて行きました。



―――――――――


 

 「来たでござるか、殿下…アヴィル殿?これは、一体?」

 「あはは…気にしないでね」


 クルーフが見た俺達の姿は、俺を引き摺るルデンの姿だった。


 「クルーフ?客か?」


 同室の者だろうか、部屋の奥からもう一人の男子生徒が顔を出した。


 「そうでござるよ。殿下にも、アヴィル殿にも紹介するでござる。拙者のルームメイトであり、隣のクラスのガイアス・リーグスでござる。ガイアス殿、殿下とアヴィル殿でござる」


 ルデンと選考大会の時に戦った相手でもある、ガイアスが同室だったのか。


 「で、殿下!?何故…クルーフ、一体どうした?」

 「どうもこうもしてないでござるよ、ガイアス殿。客人は殿下だけではない、アヴィル殿も()るでござる」

 「ああ、こりゃどうも、初めまして…」

 「こちらこそ」


 俺はガイアスの出してきた手に応えるようにした。


 「殿下もアヴィル殿も入ると良いでござるよ、狭い部屋でござるが」

 「躊躇なく、そうさせて貰う」

 「「は」」

 「だから、その前置き何?もう…気にしなくても良いから、クルーフ、ガイアス」


 気にするな、と言われたんだから、別に躊躇なく入っても構わないだろう?何が可笑しい。

 俺とルデンは、クルーフとガイアスの部屋に入った。









 ――――数分後。


 「アヴィル殿、何を言って…」

 「授業で習う内容と全くの真逆じゃないのか、それ…」


 俺は先ず、クルーフとガイアスに魔法の根底を教えた。あの、ルデンに教えた魔法の根底とは何かを、そっくりそのまま。だが、そこから、全然二人は理解を示さず、時間が過ぎ去るのみだ。


 「やはり、こうなったか…」

 「こうなったか、って何をだ?」

 「自覚してなかったんだ?」


 自覚?自覚って何の?


 「兎に角、他の方法は無いの?イメージする事オンリーじゃなくてさ」


 他か…他ねぇ…?


 「メルV「他!」えぇ…」


 何か今日のルデン、強くない?


 「じゃあ…はい、これ、何か分かるか?」

 「「何となく分かるが、何処から出した(でござるか)!?」」


 あ、知ってるのね。何故?

 仕方なーく、俺の素晴らしく、久しい水晶を《支払》と言う名の無属性魔法で取り出した。

 これさえ有れば、どんな人の実力も役職も隠し事無しに視れる優れものだ。

 ついでに、ルデンの今の実力も視認しておこうではないか。はっはっは。


 「…いいの?これ」

 「Wow…」


 ルデンの良い放った言葉を理解するのに察する時間は要らなかった。

 つまり、俺が手本として触れた場合、隠していた魔法師団団長である事など全て水の泡である。


 「でもまぁ、やり方として。先ず、ルデン。この水晶に触れてみろ」

 「成る程ねぇ?この方法なら、バレないね…はい、こんな感じ?」


ーーー

 Name:ヴィールデンタータ・ティナラータ Age:12

 Lv:153 Mr:火、風、光

 HP:2533/3762 MP:135332/136742

 Job:第四階級魔法師、ティナラータ王国王太子、国立高等魔法学校生

 Title:ティナラータ王国王太子

ーーー


 ルデンの今の実力が顕となった。


 「おおー」

 「…入学する前に、王城(実家)に有った水晶で測った時と表示が異なるけど…取り敢えず、そこは置いておいて、入学前は僕、第五階級魔法師だったんだけど…二、三ヶ月でこんなにレベルアップするものなのかな?」

 「流石は殿下でござる!殿下も血の滲む様な努力を!」


 ああ、それは本当だと思うよ、クルーフ。自信を持って肯定の意を示せるよ、俺。


 「じゃあ、次はクルーフ達だね」

 「では…」


 次にクルーフが水晶に触れてみた。

ここまで読んでくださり有り難うございます。

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