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「カロサ、いつの間に帰ってたんだ?」
「ついさっきよ。帰った途端、手伝えーってメルヴェルさんに鬼の形相で言われて…」
「のう、アヴィルよ。この者は?」
そう言えばヴァールデンは初対面だったのか。
「ああ、こいつは自称召喚の女神カロサモンティス」
「自称ではなくて本物ですけど?そう、私が召喚の女神カロサモンティスよ!言っておくけどね、私、神様なの。神の中でも上位の方に君臨している方なの」
「我が王家に伝わる召喚の女神…!カロサモンティス様であらせましたか」
ヴァールデンの腰が低くなった。
「アヴィルくん、普通はこの態度で敬うべき存在なのよ」
「へー、あっそう」
「興味無さそうね…」
「無い。カロサと模擬戦したとしても、瞬殺してしまいそうだし」
「アヴィル、カロサモンティス様に対してそれは言い過ぎじゃないのか?」
「カロサだ。それに、神はそこまで敬うとかどうでも良いと思ってる」
「カロサモンティス様は良いんですか…?」
「今に終わった事では無いし、呆れて何も言わないわよ。ヴァールデンくんも私の事をカロサって呼んでも良いわよ…。どうせ、アヴィルくんがそう呼べと、強要するだろうしね」
「…そうします」
「カロサには敬語はいらないぞ」
「流石にそこまでは無理だ」
そう言うものなのだろうか?メルヴェルも敬語を使って話していないし。
もっと言うと、神だから何?って言う感じだ。
「先輩、陛下、殿下。いつまでそこに居られるおつもりですか?」
フェージンがやって来た。
俺達は馬鹿に広い部屋のドアの前でずっと立ち話をしていた。その間に準備が終わったらしい。フェージンは俺達を呼びに来たのだ。
豪華な料理が並べられている。
「主にメルヴェル殿が作られました。私とカロサ様はほんのお手伝い程度」
既にフェージンはカロサと呼んでいた。
「冷めない内に始めましょうよ、祝勝会」
「ああ、そうだな」
ルデンの選考大会の祝勝会は時を忘れ、日を跨いでいた。
ルデンが寝静まった頃。リダルンディを連れてきて、俺、メルヴェル、ヴァールデン、フェージンそして、カロサで机を囲んでいる。
今日の出来事――魔族襲撃について報告する為に。
「この学校にまだ隠れている可能性はあるが、今日、ルデンと同学年の生徒に二人紛れていた」
「今年、一年生の編入はアヴィルだけと聞いていたが…?」
「はい…この学校に編入は結構、異様と言いますか…滅多に現れる事はないので、記憶には残りますし」
俺、そんな学校に飛び級して入学し、一度は卒業した身でありながら、滅多に現れる事はない編入で、またこの学校に通っているんだが?
今、そんなことは重要ではない。
「なら、入学の時点で魔族が潜んでいた事になるな、それは」
ヴァールデンは腕を組み、頷きながら言った。
「事前に判らないものなのでしょうか?」
メルヴェルが問う。
「羽や尾、耳が隠されている又は仕舞われている場合、姿格好は人間と変わらない。だから、気付かなかったんだろう」
実際、エルム、エルモは耳を髪の毛で完全に隠していた。
「…それ程に魔王が力を付けていたと言う事か」
「今存在する魔族の殆んどは魔神自身が創り出したものよ」
ヴァールデンの呟きにカロサが応える様に言った。
「魔王だけでなく、魔神も魔族を創り出す事が出来るのか?」
「魔神と契約した人間が魔王になるのだけれど、新しく誕生した魔神は、新たな魔王にその力を貸していないようね。どちらかと言うと、新しい魔王は魔神の操り人形ってとこかしら」
「じゃあ、前の…アイツは」
俺はカロサに聞く。何故か解らないが、今までに出したことの無い位に震えた声が出た。
「魔神を逆に使役した。死に際に魔神を取り込み、自身が魔神になった」
「つまり、アイツは生きてると」
「確かにアヴィルくんは彼を殺した。生き返ったと言うのも変だけどね。魔族達は魔王よりも、魔神の方の言うことを聞くみたいだし」
「じゃあ、魔神になったアイツを倒せば良いのか」
「駄目よ」
カロサは俺を真剣な眼差しで見詰める。
「何故だ」
「魔神と言えど、神は神。人間が神に手を出すと、神罰が降るわ」
「神罰?どう言った罰だ?」
「良くて今生の死。最悪、魂ごと消えるわ。魔神の対処は神である私達が行うわ。絶対に手出ししないで」
良くても死ぬのか。
最悪、魂ごと消える、か。
カロサが冗談を言っている様には見えなかった。
だが、アイツが魔神なら、俺が魔神を…。
「団長殿。カロサが言ったとしても、倒そうと思われていると思います。私には冗談に聞こえません。良くて死。私は団長殿に死んで欲しくはありません」
「我もアヴィルに死んで欲しくはない」
「先輩、我もです」
「私も死んで欲しくはない」
「ほら、皆だって言っているでしょ。家族が居ず、一人になったと思ったら大間違いよ、アヴィルくん」
メルヴェルの目は涙を流していた。ヴァールデンや、リダルンディ、フェージン、そして、カロサまで。
皆、泣いている。
「分かった。今のところは、魔神に手を出さない」
「絶対であってほしいんだけど」
「流石に絶対は無理だ。言ったか分からないが、魔神となったあの時の魔王の正体は、俺の弟だったアイツだ。だから…」
あんな奴を弟と言いたくは無かった。
「アヴィルの弟と言えば、双子の弟ルヴィル・リヴァーフォールズ。凡そ五十三年前に行方不明と聞いていたが、まさか…」
「他の奴に出来れば、始末して欲しくはない。もとはと言えば、家の、兄弟の事。他人が介入するのは避けるべきだ」
「解っていないではないか、アヴィル。我らは既に巻き込まれている。事の大きさに気付け、大馬鹿者。以前、お前は一人ではないと言ったろう?忘れたのか」
「忘れてはない。だが、良いのか?」
俺はもう、誰も死んで欲しくないと思った。
「ああ」
「団長殿のお力になれるのであれば」
「勿論、先輩の頼みであれば!」
「私も…」
「取り敢えず、戦力の確保はこのカロサモンティスに任せなさい!」
カロサは胸を張っているが、戦力の確保って…。
「勿論、勇者と言う名の転移者と、転生者よ!」
「カロサ、軟弱者共を用意しなくて良い。私達よりも団長殿の足を引っ張るのみだろうが」
「…すみませんでした」
カロサ、メルヴェルに弱くないか?仮にも神何だろうに…。
とは言え、転移者と転生者か。其処らに居る一般市民よりかは、ほんの少しだけ強く、何せ、向こう世界での知識がある。まあ、その程度。
多分、あの頃のクラスメイトの二人とルデンで決闘したら、今のルデンが勝てるだろう。
「取り敢えず、進展でもあれば、直ぐに情報共有をしよう。今日の所は、解散だな」
俺達は解散した。ヴァールデン、フェージン、リダルンディは部屋を出ていった。
「アヴィルくん、新しい魔王はティナラータ王国の次期国王の座を狙っているの」
「…何故、今言う」
「ルデンくんの父親ヴィリアルンくんは新しい魔王に直接殺されたのね」
「知ってたのなら、皆が居るときに言え」
「ごめんなさい…特にヴァールデンくんが居る前で言いづらかったの」
「あ、そう。じゃあ、新しい魔王って誰だ?」
「そこまでは解らない」
ルデンの父親であるヴィリアルンは魔族と繋がりがある人間ではなかった。魔王自身である。取り敢えず、それだけ解っただけでも良いか。
…お前の狙いは何だ。
***
朝。
選考大会の表彰式の為に、俺達は大講堂に向かった。
大講堂は、三学年全員と教職員とそれ以上の人数を収容出来る。主に集会とかに利用される。戦闘には向かない場所でもある。
『選考大会表彰式を始めます。先ず始めに校長先生からお話です』
『えー、今年も何事も無く無事、選考大会が終わり――』
何事も無く…?アレだけの事が起きてか?
『――選ばれた者達を安心して合同特別魔法強化訓練へと送り出せます』
『それでは、呼ばれた生徒は壇上に上がってください。一学年の部、優勝ヴィールデンタータ殿下、二位マリアンローナ・アユハリローズ、三位ログレィン・フェーンリィ』
「じゃあ、行ってくるね」
ルデンは壇上へと向かった。
『二学年の部、優勝ルフィン・スフィラート、二位アリアナランデ・ワーデルグラサー、三位アヴァーレージ・プーマライスナス。三学年の部、優勝レイニアータ・ジュワライル、二位リドル・グローン、三位アシュナー・メルスフィ』
選考大会の各学年上位三名計九名が壇上に上がった。
遠くからは見えづらいが、全員が胸を張っているのがわかる。とても嬉しそうに。
一人一人に表彰状をリダルンディが手渡しで贈り、各学年優勝者にはトロフィーが贈られた。
***
ルデンSide
表彰式。
名前が呼ばれ、僕は壇上に上がった。
次々に、先輩達も上がってきた。
僕を含めて九人の生徒が揃い、校長先生が其々に表彰状を贈った。
僕やルフィン先輩、レイニアータ先輩の優勝した者にトロフィーが贈られた。
とても嬉しかった。
泣いても良いのかな?嬉し泣きって言うやつ。
目元が少し暖かい。今にも出そう。少しこらえた。
校長先生は、皆に贈る時、其々に「おめでとう」と言っていた。
僕はお礼の返事をしなかった。するのが礼儀であるけれど、先ず先に「ありがとう」の言葉を贈るのは、アヴィルと決めていたから。
アヴィルが居なきゃ、多分、優勝はしてなかったと思うし、それと、また、アヴィルに助けられたから。全ての意味を込めてのお礼を最初に、アヴィルにする。
僕は胸を張ってトロフィーと表彰状を掲げた。
ここまで読んでくださり有り難うございます。
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今回から次回投稿予定日を載せるのは止めます。
次回投稿が予定日に間に合わなくなってきているので。すみません……。
ですが、投稿は止めませんので、これからも引き続き読んでくださると幸いです。




