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28

ルデンSide


 『ブー』


 決勝戦。試合開始の合図が鳴り響いているが、静かにマリアンローナの隙を探す。

 いや、今動けば、勝利は危うくなると思う。

 僕がアヴィルに頼んでまで強くなろうと日々練習してきた。それは、マリアンローナも同じ様に努力してきている筈。

 さあ、どうやって仕掛けようかな。

 飛べば、撃ち落とされる可能性がある。

 このまま魔法を放つしかないか…。


 「光の精霊よ、我に力を《避雷針》!」

 「!」


 マリアンローナは、上手く避けた。


 「水の精霊よ、我に力を《水の槍》」


 僕も避ける。


 「初めてだよね、こう向き合って魔法を撃ち合うのは――風の精霊よ、我に力を《ストーム》」

 「ええ、殿下とは何度か模擬戦をしてみたいと思ってました――光の精霊よ、我に力を《雷撃》」


 魔法を放っては避ける事を繰り返していた。


 「殿下、悪くは言いません」

 「何を?」

 「何故、最近殿下は、あの極悪犯罪者と一緒に居られるのですか?」


 極悪犯罪者って…アヴィルの事だろうか。いや、絶対にアヴィルの事を言ってる。他に近くに居る人で、そんなこと言われる様な人なんて居ない。

 アヴィルと一緒に居るのではない。アヴィルが一緒に居る。

 アヴィルは僕の護衛として一緒に居てくれている。それが理由だけれど、護衛だなんて言える筈がない。


 「駄目かな?一緒に居るのは」

 「殿下はこの王国の何れ王となるお方。駄目とは言いませんが、縁を早めに切っておくべきかと」


 もう、駄目って言ってるようなもの…。

 アヴィルと僕との縁は祖父である現国王陛下が結んだ様なもの。切るとなれば、僕は国家反逆じゃすまないだろう。多分。


 「縁を切れと言われても、僕は聞かないよ」

 「何故ですか」

 「理由?理由なんてものは無いさ」


 アヴィルが僕の事を只の護衛対象にしか思っていなくても良い。だけど、僕は友であり師でもあると思ってるから。

 そんな人と縁を切る訳がないでしょう。


 「…聞いておいて申し訳ありませんが、この試合、勝たせていただきます」

 「優勝は譲らないよ」


 また、魔法の撃ち合いになった。

 互いに魔法を撃ち合って、その魔法を避ける。

 人から見れば、凄絶な戦いに見えているかも知れない。が、アヴィルからは「早く決着が付かないのか」とか思ってそうだけど…。

 出来るだけ決着を早めに付けよう。


 「風の精霊よ、我に力を《風神》!」

 「なっ…!?」


 魔力を振り絞る。今残っている魔力がすっからかんになったとしても。

 《風神》は、まるで神様が起こしたように強い風。神様が舞い降りたとでも言う人もいるらしい。

 風属性魔法の最上位に位置する魔法である。

 この魔法、アヴィルに教えて貰った。アヴィルとメルヴェル殿以外には見せたことは無いと思う。


 マリアンローナは避けきれず、身体が宙に浮き、目に見えない位速いスピードで、ぐるぐると回っている。


 「このまま…はあはあ」


 身体が重く、怠い。息も切れた。魔力はもうない。

 マリアンローナが目を回し、そのまま戦闘不能となってくれれば…。


 「か、彼の者を護りたまえ《障壁》!…あああっっっ!!??」


 《障壁》で自身を護ろうとしていたけど、《風神》の強風に負け、更により速いスピードで回転している。縦にも横にも。

 そう言えば、この魔法、どうやって止めよう?僕にあともう少し魔力が残っていれば、止められたかも知れない。徐々にスピードが増し、次第に大きくなっていく《風神》。


 「はあはあ…」

 「―――消え去れ《魔法削除》」


 誰かが僕の《風神》を消し去った。

 マリアンローナは、気絶していた。《風神》が消えた事により、そのまま落ちた。


 「決勝戦の邪魔をする様で悪いが、消させて貰った」

 「め、メルヴェル殿!?何故、ここに!?」


 審判をしていた先生が言った。

 僕の魔法を消したのは、メルヴェル殿だ。

 でも、どうしてここに?


 「もう既に決着が付いているのにも関わらず、試合が終わらないものでな、気になってここへ来てみたのだ」

 「そ、それは…」

 「教師ともあろう者が、生徒の暴走すら止められないのか?」

 「あ、いえ…」


 暴走?僕、暴走してたの?


 「この憔悴しきった審判役に代わり、私が試合の結果を決め、選考大会一年の部優勝者を決めるとしよう」


 ギャラリーが一斉に盛り上がった。

 多分、この大会が始まる前よりも。


 「鎮まれ」


 メルヴェル殿の少し低い声で、ギャラリーが静まり返る。

 そして、息を吸い、このギャラリー全員に届くように喋る。


 「選考大会一年の部優勝者は、ヴィールデンタータ殿下だ!!」

 「勝った…」

 「ああ、よく頑張った、殿下」

 「勝ったよ、アヴィル…――――




***


 「選考大会一年の部優勝者は、ヴィールデンタータ殿下だ!!」


 メルヴェルが決勝戦の勝敗を宣言した。

 その直後、力が抜けたのか、ルデンはその場で気を失った。

 ルデンとマリアンローナは、教師共によって治癒室に連れていかれた。

 五十年前には治癒室なんて部屋無かったのだが。

 選考大会の表彰式は明日行われる事になった。





 「アヴィル…?」


 治癒室でルデンが目覚めるのを待った。

 最初は、立ち入るな、と教師に言われたが、メルヴェルの説得と言う名の脅しにより、傍で待っていられたのだ。


 「起きたか」

 「ん…」

 「お前は魔力が枯渇して、ぶっ倒れた」

 「そっか」


 自棄に冷静だが、怠そうにも見える。


 「まだ、魔力は完全に戻っていないらしいな。俺の魔力を分けようか?少しは身体が楽になるぞ」

 「そんなことより、マリアンローナ嬢は…?」

 (気絶の上、そのまま上空から落下したんだ。軽くて骨折、最悪、死は避けられないだろうから)

 「自分の事より、マリアンローナの事か?」

 「別に良いでしょ」

 「マリアンローナは、頭蓋骨、肋骨にヒビが入っていたらしい。まあ、それらは比較的簡単な治癒系統魔法で完治可能だ。今は軽い脳震盪で寝てる状態だな」


 全てメルヴェルに聞いたことだが。


 「良かった…」

 「それで、どうする?」

 「どうする?って?」

 「俺の魔力をルデンに分けようか?って話」

 「…何か、優しい。アヴィルが怖いぐらいに優しい」


 失礼だな。何が怖いぐらいに優しいだ。


 「まあ、選考大会、優勝した労いにと…おめでとう。頑張ったな、ルデン」

 「…あ、ありがとう?」

 「そろそろか」

 「えっ、何?そろそろって」


 治癒室の引き戸が開かれた。

 入ってくるのは、ヴァールデンとリダルンディ、フェージンの三人。


 「こ、国王陛下に校長先生!?爺まで…どうしてこちらへ?」

 「俺が呼んでおいた」

 「呼んで直ぐ来るようなものなの?」


 俺は頷く。


 「ルデン、倒れたと聞いて心配したぞ」

 「只の魔力枯渇だ」

 「お前に聞いてないが…そうか、無事で何よりだ。それよりも優勝、おめでとう」

 「…あ、ありがとうございます」


 ヴァールデンはルデンの頭の上に手を、ぽんっと優しく置いた。


 「我は高等科で学年主席を取った事がなくてな、アヴィルと言う者のせいで」

 「「「あー、成る程」」」

 「は?俺のせいなのか?」


 確かに、ヴァールデンはずっと次席で卒業を向かえたが…。

 俺の方を向き、何故か四人変な目をして見ている。


 「まあ、喜ばしい事だ。祝杯を挙げようではないか」

 「えっ、何処でですか?」

 「寮の部屋でだが?」

 「アヴィルに聞いてないんだけど…陛下、爺に校長先生までも来られるんですか?」

 「あ、いや私には用事が…」

 「そうか、残念だな」


 ヴァールデンは少し寂しそうな顔をした。


 「フェージン」

 「はい、何でしょう?先輩」

 「ここで先輩はよせ」

 「嫌です。尊敬するアヴィル先輩ですから」


 ヴァールデンや、リダルンディは?まあ、いっか。


 「先に部屋に行ってろ」

 「せ、先輩はわ、私を…」

 「何を勘違いしているか解らんが、既にメルヴェルが居る筈だ。ルデンの祝勝会を開くと伝えておいてくれ」

 「分かりました!」


 フェージンは嬉しそうに治癒室を出ていった。


 「我が頼み事をフェージンにしても、そんなに嬉しそうにはしないのだが…」

 「気のせいだろ」





 会話をしているといつの間にか外は夕暮れになっていた。

 会話途中に、リダルンディも治癒室から出ていった。


 「体調の方はどうだ?」


 俺はルデンに聞いた。


 「大分、楽になったよ。魔力の方も結構戻ってきたから」

 「じゃあ、寮に帰るか」


 俺はルデンとヴァールデンに手を差し出し、繋がした。


 《瞬間移動》


 寮の部屋に来た。

 メルヴェルとフェージンが料理を並べている最中だった。


 「あら、帰ってきてたのね、アヴィルくん達」


 出迎えたのは、メルヴェルでもなく、フェージンでもない。召喚の女神カロサモンティス――カロサだった。

ここまで読んでくださり有り難うございます。

誤字脱字の指摘、感想、ブックマーク、評価、レビューをくれると幸いです。


***


次の更新は3月16日の予定です。

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