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 「《龍炎》」


 俺はムエルとモエル、一匹ずつ計二匹の《龍炎》を出し、絞めようとした。


 「なっ、何故その魔法を…!」

 「ぐっ…!?」


 ムエルは避け続けるが、モエルは直ぐに捕まえた。


 「なあ、良いか?」


 捕まったモエルに問う。


 「お前らは何故にルデンを狙う?」

 「…る、ルデン?ああ、邪魔者の事か。それは、勿論、全ては魔神様の為だ!」

 「魔神様?誰だソイツ」

 「知らないだと?まあ、それも仕方無いか。所詮は下賎な人間如きに知っている筈が無いもんな!」


 魔狼()のガブリアとかが言ってた様な言葉を。

 そう言えば、俺っていつの間にか魔神と言う奴に加護されてたんだっけ…その魔神とモエルの言う魔神と同じか?


 「それで、お前らは魔族?」

 「無論!魔神様がオレ達双子をお創りになられた!魔神様の為、理由を知らなくても命令は実行するのみだ」


 《龍炎》に縛られながらも、対抗するのか。

 一方、ムエルは避け続けていた。何故、捕まらん?


 「…ムエル!お前、何故、関係無い邪魔者にオレ等の正体を言った!?」

 「あっ…」

 「因みに、お前らが従っている奴の名って、ルヴィとか言ってたか?」

 「人間如きが、何故、その名を!?」


 ヒット。

 まさか、アイツ、生きてやがった。

 てか、魔神なの?魔王じゃなかったっけ?


 「はあ、倒したかと思ってたんだがな…」

 「倒した?」


 モエルが俺に聞いた。


 「魔剣でグサッと」

 「はははははは!!!魔神様が人間の持つ魔剣で倒せる筈が…」


 モエルは喋っている最中に固まった。


 「まさか、お前が…魔神様が心酔する…」

 「いや、心酔するって解らんが」

 「実に憎い…憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い!!」


 モエルは「ふんっ」と絞めていた筈の《龍炎》を引き千切った。

 ムエルは《龍炎》の体を絡ませ、動けなくしていた。ムエルの方は出しておいても無駄なので、消しておく。

 モエルの隠していた耳が現れた。今までにリアルで見た事の無い様な長い耳だった。


 「エルフ…?」


 日本のラノベに出てくるエルフの様な。そして、この世界に居る筈の無いエルフ。

 いや、もしかすると、魔王、魔神とやらなら創れるのか?


 「魔神様がオレ達を創られた時、オレ達双子はエルフと言う新たな種族なのだと仰有っていた!何故、貴様がエルフを知っている!」


 モエル激怒。

 魔王もとい魔神は、日本の文化を知っているのか?それとも、偶然なのか。


 「《血呪・愛しき我が主》」


 モエルは見たこともない様な魔法…いや、呪いだな。それを、使った。

 血呪、それは血の呪い。自身の血を媒体とし、《呪殺》なんか比にならない強い呪い。そして、術者のオリジナルがしやすい。だからこそ、効果は解りにくい。


 「モエル、オレも加わるぞ」

 「勿論、兄貴も加わればこの呪い、完成する!」

 「《血呪・愛しき我が主》」


 モエルの血呪にムエルが入り、効果などが目に見て解る位上がっていた。


 「うぐっ…!?」

 「!?」


  俺の後ろでルデンが急に苦しみだした。


 「大丈夫か!?」

 「…」


 応答しない。


 「この呪いに掛かれば、魂は抜け、魔神様の元へ行く。即ち、その邪魔者は魂が抜ける――死ぬ」


 ルデンの魂が抜ける…?

 魂が抜けるで脳に過る、魔族化。

 親友の子が殺され、託された親友の孫息子。頼まれ、嫌々引き受けたルデンの護衛。ここで殺される訳にはいかない。殺されては困る。


 「カハッ…!」


 ルデンは吐血してしまった。この場で一番苦しい筈のルデンは、出来るだけ長く、まるで俺の為に時間稼いでくれている、自身と魂を繋ぎ止めている様に見えた。


 俺がしなくてはならない事。それは、呪いの浄化――呪いを消し去ってやる事だ。

 ムエル達の《血呪・愛しき我が主》とは何の呪いか。血呪、それは血の呪い。とても、強力な呪いとなる。


 はっ、俺がそんな呪い如きに何を慌てている?血の呪い?だから、強力?

 俺は魔法師団の天下の最強団長殿だぞ…血呪だか何か知るか。普通に呪いを解くように解けば解けんだろ。多分。


 「《浄化》」


 見て判る。ルデンに掛けられた呪いが消えた事に。


 「な、何でこの呪いまで消すことが出来る!?」

 「血呪は強過ぎるが故に浄化する事までは不可能じゃなかったのか!?」

 「そりゃ、俺だから浄化出来たんだろう?まあ、次は俺のターンだな」

 「「なっ…?」」


 死合にターンなど存在しないが。

 ムエル、モエルにはここで死んで貰おうか。以前、俺がグレファやマドレアを殺さなかった為に迷惑を掛けた。その後悔から、二人を絶対に殺すしかない。護衛対象に手を掛けたのだから。


 「《魔束光環ディヴァファスシオリング》」


 ムエルとモエルを捕まえる。


 「一発で俺はお前らを殺すことが出来る。何か最後に言いたい事とかあるなら、言え」


 双子の兄ムエルが先に口を開いた。


 「オレ等が魔族だと見抜いたお前に教えてやる。魔神様に付けて貰った本来の名前がある。オレはエルム。弟はエルモだ。最期に偽名で通すのはオレとしては嫌でな。名乗らせて貰った」


 死に損ないが。

 次にモエル――エルモが喋りだした。


 「オレはお前を永遠に憎み続ける。魔神様の寵愛を今も受け続けているにも関わらず…ああ、憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い」


 今にも《魔束光環》が壊れそうだ。


 《物質強化》


 壊れないように。


 「死ね―――《雷撃》」


 エルムとエルモが一撃で死ぬ位の強さを狙って撃った。

 どっちがどっちだか判らない位にまで黒く焦げ、何時(いつ)になっても動かなくなった。


 《収納》


 エルム達の死体を回収した。

 はあ…永遠に憎み続ける、か。それはそれで、嫌だな。

 ルデンは寝ていた。血呪に掛かり、危うく魂が抜けてしまう所を自分自身で繋ぎ止めようと頑張ってた。浄化され、気が抜けて寝てしまったのだろう。

 そう言えばで、思い出す。ギャラリーはと言うと…静まり返っていた。これは、記憶を改変させてやる必要があるな。


 《広範囲・記憶操作》


 ムエル・ヴィリッツ、モエル・ヴィリッツの双子の兄弟は会場で大暴れした為、失格となり、準決勝戦第一試合勝者はルデンである――と言う記憶にした。

 俺はルデンに記憶の改変を行わなかったが、回復だけはしておいてやろう。


 《超回復》


 ルデンを起こし、目が覚めたのを確認してギャラリーの方へ戻った。


 『えー、モエル・ヴィリッツは失格となりましたので、準決勝戦第一試合はヴィールデンタータ殿下が勝利です!』


 この場に居る者の記憶が曖昧、どこか不自然で混乱を招いている様だった。


 『第二試合、マリアンローナ・アユハリローズ対ログレィン・フェーンリィ!』


 『ブー』


 ルデンは俺が観戦している席の横に来ていた。そして、準決勝戦の第二試合が始まった。


 「なあ」

 「何?」

 「マリアンローナと戦っている…えっと、何だっけ?」

 「ログレィン・フェーンリィだよ?クラス違うけど、学年三席でわりと有名だからね」

 「そのログレィンの家名がフェーンリィってリダルンディと同じだな」

 「彼は校長先生のお孫さんだよ」


 リダルンディにも孫が居たんだな。

 祖父孫揃って三席か。


 「確かにあの頃のリダルンディにそっくりだな」


 髪型は違うが、腰が低い所や構えの形などがそっくり。

 選考大会で上位三人を決める筈だから、準決勝戦で争う四人の内の三人が後の合同訓練に参加が決定する。が、その内一人であったエルモ――モエル・ヴィリッツが失格となった。

 今戦っている二人は合同訓練の参加が決定している。そして、ルデンも。


 「マリアンローナが優勢だな、この試合」

 「やっぱり、次戦うのって…」

 「マリアンローナだな」

 『準決勝戦第二試合、勝者はマリアンローナ・アユハリローズ!』


 ほぼ圧勝でマリアンローナが勝利した。


 「いよいよ決勝戦か…」

 「緊張してんのか?」

 「そりゃそうでしょ?」

 「いつも通りやれば、圧勝するだろう」

 「アヴィルが言うなら、それは信じても良いだろうけど、何が起こるか分からないから」

 「じゃあ、大丈夫だな」


 俺はルデンを送り出した。


 『選考大会一年の部決勝戦、ヴィールデンタータ殿下対マリアンローナ・アユハリローズ!両者共、相手を圧倒して決勝まで残った一年主席と次席。どちらが優勝するのか!見どころですねぇ、トゥールムン先生』

 『ええ、そうですね。どちらが勝つか見当も付きません』

 『そうですね。――それでは、いきましょう!始めっっ!!』


 『ブー』


 選考大会決勝戦が始まった。

 ルデンとマリアンローナは対面し、お互いに気を張り詰めている様だ。静まり返っている中、低い音がこの場に鳴り響いた。

ここまで読んでくださり有り難うございます。

誤字脱字の指摘、感想、ブックマーク、評価、レビューをくれると幸いです。


***


次の更新は3月12日の予定です。

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