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 選考大会当日を迎えた。

 生徒、教師諸々は教室に集まらず、各学年で開催される場所に各自で集合する。

 一年から三年まで、それぞれ違う場所で行う。一年は学校の敷地内にある実技訓練場で行われ、二年、三年は別の場所で行われる。


 「たかだか選考大会に、こんなにも盛り上がるのな」


 身内だけで行われる選考大会で、始まる直前にも関わらず、異様な程に盛り上がっていた。


 「そりゃ、この大会に魔法師団の団員が見定めに来ているって噂もあるし」

 「何の為に」

 「未来の団員の見定め、かな?多分。大会の四位からは合同訓練で会えないし、それでも団員になる人も居るわけだからね」

 「初めて聞いたぞ」

 「あくまでも噂」


 あくまでも噂、か…。

 俺はこの一年生の大会会場に居た団員達をチラッと見た。


 「本当かは知らないけど。まあ、僕に未来の団員の見定めとかは、あまり関係無いと思うけどね」

 「俺も関係無いな」

 「まあ、確かにそうかも?」


 団員達が来ているのだとしたら、アレドラントとかも居るのかも知れない。鉢合わせたら何かと面倒だな…。


 『それでは初戦を開始します。まず、参加者は指示された番号の所へ言ってください』


 「えっと…“4”か」


 先日、生徒達に配布していた番号だな。俺は勿論、不参加であり、指示も何も無い。

 ルデンは指示された番号の書かれた紙を見て、進んでいく。

 俺はルデンを応援しに行く(てい)で付いていく。

 実技訓練場は結構広い。俺とフレーディンが決闘をしても余分な程に。高さがではなく、面積が。

 だからこそ、一年生の内の選考大会に参加している者を初戦で、ほぼ半分に削る事が可能なのだ。


 「応援してて」

 「ん」


 ルデンは息を整えている。多分、緊張しているのだろう。相手も緊張しているのが少し遠くでも見えていた。

 そして、選考大会初戦の開始合図が聞こえてきた。

***

 ルデンSide


 アヴィルに約一ヶ月間、魔法を見て貰った。

 準備は万端。絶対に勝つ。

 僕は息を整え、自分の両頬を少し強めに叩いた。気合い十分だ。


 『それでは初戦、開始してください』


 今大会の戦闘開始合図は、低い音が『ブー』と鳴り響く。

 僕は鳴り響いた直後に魔法を発動させた。


 「風の精霊よ、我に力を《飛行》!」

 「ひ、火の精霊よ、我に力を《火の槍》…!」


 相手はクラスメイトのレイヴン・アグーン。彼は陽気で明るく、結構人気はある方だと思う。

 今回、僕が飛んで驚いて慌てている様だった。

 火属性魔法の内一つ《火の槍》を一本出し、僕に飛ばしてきた。僕はそれを軽く避け、消すことにした。


 「全ての事象よ、消え去れ――《魔法削除》」

 「なっ…!?避けられた上に、消された…?」

 「光の精霊よ、我に力を《雷撃》!」


 レイヴンに審判を務めていた先生が駆け寄り、戦闘不能を確認した。


 「レイヴン・アグーンの戦闘不能を確認、殿下の勝利です!」


 僕は驚いている。

 先ずは初戦。それでも、息が上がらずに結構楽に勝ててしまった。

 僕は応援してくれている筈のアヴィルの元へ行った。

***


 「――レイヴン・アグーンの戦闘不能を確認、殿下の勝利です!」


 嬉しそうにルデンが、俺の元へ来た。


 「勝ったよ」

 「まだ初戦だがな」

 「そうだけどさ。何か、あっさりと勝てちゃったから…」

 「まあ、初戦は勝って貰わないと困る。それに、その気持ちはまだ早いと思うぞ?」

 「うっ…」


 言い過ぎたか?

 でもまあ、初戦如きに、はしゃぐのは早いと思う。


 「アヴィルの言う通りだよ。まだ、気を緩めちゃ駄目だ。うん、次の試合も頑張ってくる」

 「応援してる」


 他の試合では、次々に勝敗が決まっていっていた。


 『初戦勝利者は次の試合を行います。これより指示する場所へ移動してください―――1番にエイト=ツムルギ、フィーリア・サンダーレイン。2番にヴィールデンタータ殿下、ガイアス・リーグス。3番に――――――――』


 結構、直ぐに指示された様だ。

 凡そ百人位参加している選考大会の半分の五十人位の生徒の名前が次々に呼ばれていく。

 それに伴い、ルデンを含め大人数が移動する。

 …そう言えば、日本人っぽい名前があった様な気もするが、今は気にする様な事ではないだろう。


 そして、全員が移動し終わる。

***

 ルデンSide



 『第二回戦、開始してください』


 『ブー』


 相手はガイアス・リーグス。

 僕とは違うクラスだが、地属性魔法だけに適正があり、地属性のみを使うと聞いた事がある。

 それだけじゃない。地属性魔法の中でも《土人形(ゴーレム)》を最も得意としていると聞いた。

 どれ程のゴーレムが創れるのかは判らないが。


 「風の精霊よ、我に力を《飛行》」

 「初戦でもお使いになられて、今戦でもお使いになられると予測してました。ならば、こちらはそれを超えるサイズを創ればいい話―――地の精霊よ、我に力を《土人形》!」


 ガイアスの生成されたゴーレムの頭は、飛んでいる僕の頭を少しだけ超えている。

 …凄い。僕は天井のギリギリを飛んでいる筈なのに、更にギリギリ天井に付かない位の大きさだ。


 「どうです?殿下も驚かれたでしょう?」

 「ああ、驚いたよ―――全ての事象よ、消え去れ《魔法削除》」


 ゴーレムを消した。

 大きさだけは凄かった。だけど、注がれた魔力量には驚く程少なかった。

 このゴーレムなら、僕でもちゃんと跡形も無く消せると思った。

 それに、アヴィル作のゴーレムは消される前に魔法を放ったり、その場から忽然と消えて急に後ろから現れる。それと違って、目標を捉えやすかった…と言うのも、理由の一つかな。


 「消されたのなら、もう一度創れば良いだけです!地の精霊よ、我に力を《土人形》!」

 「全ての事象よ、消え去れ《魔法削除》!」


 新しいのを創られてしまう前に、ガイアスに攻撃を入れ、一発で決める!

 僕は軽めに呼吸を整える。


 「火の精霊よ、我に力を《火の槍》!」


 ガイアスの二体目のゴーレムを僕が消してから、殆んど間髪を入れずに放った。

 一本だけしか出なかったけど、追尾機能を付けた。

 今日を迎える一週間前に、アヴィルに習った。前日の時点で不安定な出来だった。

 今、《火の槍》を放ち、初めて成功した様に思えた。ちゃんと、ガイアスを狙って後を追っているのがよく判るから。

 逃げるガイアス。それを追う、火の槍。


 「っ…敗退宣言(リタイア)する!で、殿下ぁ!止めてくださァァッッいィィッッ…!!」


 逃げながら発した言葉。

 ガイアスの泣き声とともに聞こえてきた。


 「全ての事象よ、消え去れ《魔法削除》」


 追い続けるも、当たる事無く《火の槍》は消した。これ以上、続けてはならないから。


 「ガイアス・リーグスの敗退宣言により、殿下の勝利です!」




***

 数時間後。


 ルデンは第三回戦、第四回戦、第五回戦と順調に勝ち進んでいった。

 第六回戦――準決勝戦。

 この試合から、一試合ずつ行われる。同時に幾つかの対戦がある訳でもなくなる。


 『選考大会一年の部、準決勝戦第一試合を行います。ヴィールデンタータ殿下対モエル・ヴィリッツ!!』


 ルデンと、髪の毛が自身の耳を完全に隠している男――モエルが舞台へと上がった。

 ルデンを応援すべく、手前へ行った。


 「まさか、殿下と小手合わせ出来るなんて光栄です」

 「そんなこと無いよ、僕なんか全然さ」


 『準決勝戦第一試合、開始してください』

 『ブー』


 開始の音が鳴り、モエルがルデンより速く手と目の先にまで動いた。


 「殿下、攻撃しないんですか?まあ、してもしなくても、自分が勝ちますけどね――闇の精霊よ、我に力を《呪殺》」

 「ぐっ…!?」


 モエルが放った魔法、《呪殺》。

 苦しみを与え、死に至らす呪い。

 本来、この様な催しものの戦闘では使われる筈の無い、危険な魔法。


 「足りませんか?なら、もう一度。闇の精霊よ、我に力を《呪殺》」

 「…ぐぅわァァァあああッッッ!!??」


 ルデンは涙目だ。多分、この世で味わったことの無い、苦痛がきたのだろう。審判を務めている教師は為す術無しらしく、あたふたとしている。


 モエル・ヴィリッツ。お前、誰だか何者かは知らないが、ルデンを護るために倒さねばならない。モエルが殺気立てている以上は。


 「はぁ…こんな人の目がある場所で…」


 この場に居る者全ての記憶を、書き替えなければならないから嫌なんだが。これも、仕方無い。


 《瞬間移動》


 観戦席から、ルデンとモエルの間に移動した。


 「君…誰?オレは殿下と試合している途中なんだけど?」

 「どうも試合をしているだけには、到底見えないからな」


 《浄化》《超回復》


 モエルと話しつつ、ルデンを呪いから解放する。


 「はあはあ…」

 「大丈夫か?」

 「有り難う」

 「え…?」


 モエルは驚いた顔で俺を見詰めてた。


 「何故、呪いを解ける!?」

 「呪いは《魔法削除》では消すことが出来ないからか?」

 「――――を《毒矢》」


 俺の横を何本かの矢が通り過ぎるが、ルデンに到達する前に、俺が消す。


 《魔法削除》


 「あ、兄貴!」

 「モエル、邪魔者を早く殺さないと…」


 モエルに瓜二つで、兄貴と呼ばれた男が出てきた。《毒矢》も、その兄貴とやらの仕業で間違いないだろう。


 「だって、兄貴。《呪殺》を、アイツが解くから!」

 「アイツって…この間に編入してきた、魔法も録に発動出来ない奴じゃねーか。モエル、何でそんな奴に…」

 「なあ、ルデン。モエルが兄貴と呼ぶアイツは?」

 「ムエル・ヴィリッツ。モエルの双子の兄。僕達のクラスメイトだよ」

 「アヴィルだっけ?お前の名前」


 ムエルが近寄ってきた。


 「何だ?」

 「邪魔者を殺すその邪魔をするのであれば、お前も殺す」


 ムエルとモエル、魔族がルデンを邪魔者と称し、殺しに来るようにしてきた。

 なら、倒すしかない。ルデンを殺す目的がムエル達にある以上は。

ここまで読んでくださり有り難うございます。

誤字脱字の指摘、感想、ブックマーク、評価、レビューをくれると幸いです。


***


次の更新は3月9日の予定です。

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