22
授業開始のチャイムが鳴り響き、メルヴェルの特別講義が始まった。
て言うか…俺、マリアンローナに聞くまで知らなかったんだけど!?
俺はメルヴェルの顔を見ると、メルヴェルは微笑み返した。
そのメルヴェルの笑みに珍しさを感じた者も居るかも知れない。
まあ、兎にや角も特別講義は始まったのだ。
「私の敬愛する団長殿のオリジナル魔法について講義しに来た。とは言え、まだ学校の一年生。殆んどの魔法は使えないだろうが、有り難みと凄さをトコトン詰め込むぞ!」
「「はいっっ!!」」
メルヴェルの言葉に(俺以外の)生徒達一同は大きな返事を返した。
「なあ…ルデン」
「何?」
「オリジナル魔法を学んだからと言って、有り難み?と凄さ?って、学べるのか?」
「学べるよ、多分。まあ…アヴィルには解り得ない事だけどね」
俺自身に俺の有り難みと凄さなんて、解り得てたまるものか。俺が自意識過剰のヤバい奴になるだろうが。
「王太子殿下と言えど、私語は見逃せないなぁ?王太子は只の小僧にしか過ぎないからなぁァ??」
「あっ…」
俺とルデンの目の前までにメルヴェルが接近していた。ルデンは小刻みに震え、目は潤んでいた。
「ルデン…話し掛けて済まなかった」
「アヴィル!?」
目からは完全に涙が垂れているルデンは、俺の名を叫んだ。
俺はルデンに謝罪したつもりであったのだが、ルデンからにしたら、突き放されている様に感じ取ったのに違いない反応だった。
「講義を邪魔してしまっていたのなら、謝罪しよう」
メルヴェルに言った。
周りの生徒達は、まるで何か珍しいものを見た様な目で、俺の顔を見ている。
また、ルデンも生徒達と同じ様な目で見ている。
「何か珍しいものでも見付けたのか?」
「あっ、いや…アヴィルが謝罪するのって珍しいなぁ~って…」
「謝罪する時はするが?珍しい事でも無いだろう?」
「でも…メルヴェル殿に上から目線で謝罪は許して貰えないんじゃ…」
はて。許して貰えると思うが。
俺はメルヴェルの顔を見詰める。
徐々にメルヴェルの顔が赤くなっていく。
「ま、大丈夫だろう」
「そ、そうなのかな…?」
「謝罪を受け入れよう」
「ほらな」
「ほらな。…じゃないよ!?」
じゃあ、何だって言うんだよ?メルヴェルが良いって言ったんだから、良いんじゃないのか?
「別に良いだろ?と、言いたげな顔で見るのは止めて」
実際に思っていたが、そんなに解りやすい表情をしていたか?
「講義を再開する。私語は慎むように」
メルヴェルは教壇に戻り、講義を再開したのだった。
***
丸一日の実技教科は、メルヴェルの特別講義によって潰れた。
今、寮の部屋にてメルヴェルが俺の目の前で、許しを得ようと土下座をしていた。
「何で許しを得ようとしているんだ?」
「団長殿の目の前であんな無礼な事をしてしまったので」
特別講義の時の事か。
「あれは俺の方が悪かっただろう?」
「いいえ。団長殿の行動は全て正しいのです。それを否定など…許されざる行為をしてしまいました。申し訳こざいませんでした」
「ええと…先ずは普通に座れ」
「ですが…」
「良いから、座れ」
「判りました」
俺はメルヴェルを土下座から解放したのだった。
「今日の特別講義には驚いたが、別にメルヴェルは俺に無礼を働いたわけではない。よって、今日の事は不問とし、この話題を持ち掛ける事を禁ずる」
言っておかないと、永遠と謝罪する事だろう…。
やれやれ…。
「はい。私には勿体無い御言葉です…」
「それじゃあ、俺はルデンの魔法でも見に行ってやろうかな」
「それでは、夕食が出来次第、声を掛けますね」
「うむ」
少し離れた所で魔法を頑張って練習しているルデンの側に行った。
「光の精霊よ、我に力を!《回復》!」
うんうん、やってるね。
ルデンは飲み込みが早く、昨日に比べると魔力の放出する量も抑えられていて、大分良くなってきた。
「あ、いつから見てたの…どうかな?」
「途中からだ。《回復》は上達したようだな」
「まだまだだよ。スピードが遅すぎる」
「なら、自分がしっくり来るまでやれば良い。これから、無属性魔法の内一つ《魔法削除》をやろうと思っている」
「《魔法削除》?それくらいなら、僕にだって出来るよ?出来ない人の方が少ないんじゃ…」
比較的簡単な魔法だからな。俺にも出来る人が多い位は知っとるわ。
「出来る人が多いって事は、出来る中で争われる事になる。つまり、質が問われるって事だぞ」
「何か熱が入ってるね…」
「そのつもりは無いが…」
「あれ?まさか、《魔法削除》もアヴィルのオリジナル魔法?」
「違う」
俺に、そんなにも普及した魔法が創れるか、ってんだい。
自分で言ってて悲しくなるが、事実は事実。
「ハッキリと言うねぇ…」
「俺のオリジナルでもなんでもないぞ。因みに光属性魔法の《雷撃》も」
「嘘…」
ルデン??《雷撃》までも俺のオリジナル魔法だと思っていたのか?
「《雷撃》や《魔法削除》は、俺が生まれる前から有った魔法なんだがな」
「へぇー」
「まあ、取り敢えず、《魔法削除》の練習をするぞ」
「え?出来るからしなくても…?もっと別の魔法とかを」
「は?必ず魔法を消し去る事が可能だって、胸を張って言えるのか?」
「えっと…魔力に差があればある程、効かない?」
その差は仕方無いにしろ、俺が言いたいのはそう言う事じゃない。
「《魔法削除》と言う魔法も消し去る事が可能かと聞いている」
俺でさえ、やった事は無いんだがな。
多分、消し去った魔法が顕現すると思う。あくまで仮説でしか無いのだが。
「そんな事が出来るの…?」
「知らん」
「知らない事を聞いたの!?」
「まあ、出来ない事は無いと思うんだがな。魔法はイメージだって言ったろ」
ルデンは頷いた。
「《魔法削除》は魔法のイメージを消す、若しくは壊すイメージの魔法だ。そのイメージを消し去る事も理論上、可能な筈だ。所詮、魔法を消すのも魔法だからな」
「でも、僕には無理だよ」
「ああ、無理だな。相手が魔法を消したその上に消すんだからな。魔力量が足りなくなる」
「…先ず、その戦い方をする魔法師って居ないんじゃ…」
「やった事がある者ですら、存在しないからなー」
「…あのねぇ」
「まあ、本当にルデンが練習は必要ないと言うのであれば、別の魔法を考えてやっても良い」
「どう言う心変わり?」
「気分」
「気分って…」
「それで、どうする?」
俺はどっちでも良いからさ、正直なところ。
「必ずではなくとも、出来る事ぐらいは分かっている。出来る事をやったって、無駄な時間を過ごすだけだ」
「えっと…?」
「今、話しているこの時間も勿体無い。それに、最終的に選ぶのはルデンだ」
「じゃ、じゃあ《魔法削除》、少し練習しようかな」
ルデンに《魔法削除》の基本から応用まで事細かに丁寧に教えていった。
応用すると、魔法が身体に触れた時に消し去る事が可能となる。超近距離で魔法を発動された時に結構、便利だろう。または、剣士や騎士の《身体強化》を消す時に。
まあ、魔法師同士の戦闘は相手と自分に距離がある為に、そこまで有用されなかった。相手は自分と距離を取り、自分も相手と距離を取るから、双方との距離は結構あるのだ。
実際、この応用方法を教えた時にルデンは渋んでいた。
「夕食が出来上がりましたが、如何なさいますか?」
メルヴェルがタイミングを見計らってなのか、タイミングの良い時に話し掛けてきた。
俺はルデンの方向を見て言う。
「今日はここまでだな」
俺達はメルヴェルの作った料理を美味しく頂いた。
今、ルデンと俺は大浴場に向かう途中で、その道中にて、三年の首席のレイニアータが息を切らしながら、俺達の目の前に立ち塞がっていた。
何でも、俺を探し回っていた様だった。
「探したぞ、アヴィル。ずっと何処へ行ってた…ハアハア」
「ずっと寮の部屋に居たが?」
「放課後、ずっと部屋に閉じ籠って居たのか!?」
レイニアータは、放課後から今に至るまで、学校と寮内を探し回っていたらしい。
「ああ。で、何の用だ。手短に済ませ」
「俺、一応、先輩なんだがな…。まあ、良い、今は。取り敢えず、校長が呼んでるってだけ伝えられれば良いから。じゃ」
やりきった感を出して、過ぎ去って行った。レイニアータは、自分自身の寮の部屋に帰ったんだと思われる。
「…先に校長室、行く?」
ルデンが俺に問う。
校長――リダルンディに呼ばれた理由は、大体予想がつく。
「そうするか」
「わかった」
俺達はリダルンディの待っているであろう、校長室に出向いた。
「三十五文字以内に要約して話せ」
「流石に無理があるんじゃない…?」
「フレーディン先生との決闘、国王陛下が了承なさった」
「よし、ヴァールデンを絞めに行くか」
「「それだけはっ…!」」
見事にルデンとリダルンディが揃った。
「それで、何時なんだ?決闘の日時は」
「明後日、放課七時間後に実技訓練場にて行われる。国王陛下がご覧になられますぅ…」
「ふーん…それで、ヴァールデンの他に誰か観戦しにくるのか?」
「ご、護衛にフェージンが来ます」
フェージン・アリオルド――ルデンの世話係兼護衛であり、俺やリダルンディ、ヴァールデンの一つ学年が下の後輩。
「他には?」
「国王陛下とフェージンのみかと…」
「ああ、試合のルールについてなんだが」
「ビクッ!」
何でリダルンディがビクビクしているんだろうか?
「先ず、審判はメルヴェルに頼む。ルールは、どちらかが死ぬか気絶で戦闘不能と認められた場合か、又は、どちらかの敗退宣言で勝敗を決める。で良いな?」
「では、その様に国王陛下とフレーディン先生に伝えておく」
俺とルデンは校長室を後にした後、大浴場に寄って浸かり、部屋に戻ってきた。
メルヴェルにフレーディンとの決闘のルールを話し、審判を頼んだ。メルヴェルは嬉しそうにすんなりと頼みを聞いてくれた。
俺は念を押して「絶対に不正だけはするな」と言っておいた。俺に有利な状況を作り兼ねないからな。
そして、もう既に夜深く、就寝することにした。
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次の更新は2月23日です。




