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 授業開始のチャイムが鳴り響き、メルヴェルの特別講義が始まった。

 て言うか…俺、マリアンローナに聞くまで知らなかったんだけど!?

 俺はメルヴェルの顔を見ると、メルヴェルは微笑み返した。

 そのメルヴェルの笑みに珍しさを感じた者も居るかも知れない。

 まあ、兎にや角も特別講義は始まったのだ。


 「私の敬愛する団長殿のオリジナル魔法について講義しに来た。とは言え、まだ学校の一年生。殆んどの魔法は使えないだろうが、有り難みと凄さをトコトン詰め込むぞ!」

 「「はいっっ!!」」


 メルヴェルの言葉に(俺以外の)生徒達一同は大きな返事を返した。


 「なあ…ルデン」

 「何?」

 「オリジナル魔法を学んだからと言って、有り難み?と凄さ?って、学べるのか?」

 「学べるよ、多分。まあ…アヴィルには解り得ない事だけどね」


 俺自身に俺の有り難みと凄さなんて、解り得てたまるものか。俺が自意識過剰のヤバい奴になるだろうが。


 「王太子殿下と言えど、私語は見逃せないなぁ?王太子は只の小僧にしか過ぎないからなぁァ??」

 「あっ…」


 俺とルデンの目の前までにメルヴェルが接近していた。ルデンは小刻みに震え、目は潤んでいた。


 「ルデン…話し掛けて済まなかった」

 「アヴィル!?」


 目からは完全に涙が垂れているルデンは、俺の名を叫んだ。

 俺はルデンに謝罪したつもりであったのだが、ルデンからにしたら、突き放されている様に感じ取ったのに違いない反応だった。


 「講義を邪魔してしまっていたのなら、謝罪しよう」


 メルヴェルに言った。

 周りの生徒達は、まるで何か珍しいものを見た様な目で、俺の顔を見ている。

 また、ルデンも生徒達と同じ様な目で見ている。


 「何か珍しいものでも見付けたのか?」

 「あっ、いや…アヴィルが謝罪するのって珍しいなぁ~って…」

 「謝罪する時はするが?珍しい事でも無いだろう?」

 「でも…メルヴェル殿に上から目線で謝罪は許して貰えないんじゃ…」


 はて。許して貰えると思うが。

 俺はメルヴェルの顔を見詰める。

 徐々にメルヴェルの顔が赤くなっていく。


 「ま、大丈夫だろう」

 「そ、そうなのかな…?」

 「謝罪を受け入れよう」

 「ほらな」

 「ほらな。…じゃないよ!?」


 じゃあ、何だって言うんだよ?メルヴェルが良いって言ったんだから、良いんじゃないのか?


 「別に良いだろ?と、言いたげな顔で見るのは止めて」


 実際に思っていたが、そんなに解りやすい表情をしていたか?


 「講義を再開する。私語は慎むように」


 メルヴェルは教壇に戻り、講義を再開したのだった。


***


 丸一日の実技教科は、メルヴェルの特別講義によって潰れた。

 今、寮の部屋にてメルヴェルが俺の目の前で、許しを得ようと土下座をしていた。


 「何で許しを得ようとしているんだ?」

 「団長殿の目の前であんな無礼な事をしてしまったので」


 特別講義の時の事か。


 「あれは俺の方が悪かっただろう?」

 「いいえ。団長殿の行動は全て正しいのです。それを否定など…許されざる行為をしてしまいました。申し訳こざいませんでした」

 「ええと…先ずは普通に座れ」

 「ですが…」

 「良いから、座れ」

 「判りました」


 俺はメルヴェルを土下座から解放したのだった。


 「今日の特別講義には驚いたが、別にメルヴェルは俺に無礼を働いたわけではない。よって、今日の事は不問とし、この話題を持ち掛ける事を禁ずる」


 言っておかないと、永遠と謝罪する事だろう…。

 やれやれ…。


 「はい。私には勿体無い御言葉です…」

 「それじゃあ、俺はルデンの魔法でも見に行ってやろうかな」

 「それでは、夕食が出来次第、声を掛けますね」

 「うむ」



 少し離れた所で魔法を頑張って練習しているルデンの側に行った。


 「光の精霊よ、我に力を!《回復》!」


 うんうん、やってるね。

 ルデンは飲み込みが早く、昨日に比べると魔力の放出する量も抑えられていて、大分良くなってきた。


 「あ、いつから見てたの…どうかな?」

 「途中からだ。《回復》は上達したようだな」

 「まだまだだよ。スピードが遅すぎる」

 「なら、自分がしっくり来るまでやれば良い。これから、無属性魔法の内一つ《魔法削除》をやろうと思っている」

 「《魔法削除》?それくらいなら、僕にだって出来るよ?出来ない人の方が少ないんじゃ…」


 比較的簡単な魔法だからな。俺にも出来る人が多い位は知っとるわ。


 「出来る人が多いって事は、出来る中で争われる事になる。つまり、質が問われるって事だぞ」

 「何か熱が入ってるね…」

 「そのつもりは無いが…」

 「あれ?まさか、《魔法削除》もアヴィルのオリジナル魔法?」

 「違う」


 俺に、そんなにも普及した魔法が創れるか、ってんだい。

 自分で言ってて悲しくなるが、事実は事実。


 「ハッキリと言うねぇ…」

 「俺のオリジナルでもなんでもないぞ。因みに光属性魔法の《雷撃》も」

 「嘘…」


 ルデン??《雷撃》までも俺のオリジナル魔法だと思っていたのか?


 「《雷撃》や《魔法削除》は、俺が生まれる前から有った魔法なんだがな」

 「へぇー」

 「まあ、取り敢えず、《魔法削除》の練習をするぞ」

 「え?出来るからしなくても…?もっと別の魔法とかを」

 「は?必ず魔法を消し去る事が可能だって、胸を張って言えるのか?」

 「えっと…魔力に差があればある程、効かない?」


 その差は仕方無いにしろ、俺が言いたいのはそう言う事じゃない。


 「《魔法削除》と言う魔法も消し去る事が可能かと聞いている」


 俺でさえ、やった事は無いんだがな。

 多分、消し去った魔法が顕現すると思う。あくまで仮説でしか無いのだが。


 「そんな事が出来るの…?」

 「知らん」

 「知らない事を聞いたの!?」

 「まあ、出来ない事は無いと思うんだがな。魔法はイメージだって言ったろ」


 ルデンは頷いた。


 「《魔法削除》は魔法のイメージを消す、若しくは壊すイメージの魔法だ。そのイメージを消し去る事も理論上、可能な筈だ。所詮、魔法を消すのも魔法だからな」

 「でも、僕には無理だよ」

 「ああ、無理だな。相手が魔法を消したその上に消すんだからな。魔力量が足りなくなる」

 「…先ず、その戦い方をする魔法師って居ないんじゃ…」

 「やった事がある者ですら、存在しないからなー」

 「…あのねぇ」

 「まあ、本当にルデンが練習は必要ないと言うのであれば、別の魔法を考えてやっても良い」

 「どう言う心変わり?」

 「気分」

 「気分って…」

 「それで、どうする?」


 俺はどっちでも良いからさ、正直なところ。


 「必ずではなくとも、出来る事ぐらいは分かっている。出来る事をやったって、無駄な時間を過ごすだけだ」

 「えっと…?」

 「今、話しているこの時間も勿体無い。それに、最終的に選ぶのはルデンだ」

 「じゃ、じゃあ《魔法削除》、少し練習しようかな」



 ルデンに《魔法削除》の基本から応用まで事細かに丁寧に教えていった。

 応用すると、魔法が身体に触れた時に消し去る事が可能となる。超近距離で魔法を発動された時に結構、便利だろう。または、剣士や騎士の《身体強化》を消す時に。


 まあ、魔法師同士の戦闘は相手と自分に距離がある為に、そこまで有用されなかった。相手は自分と距離を取り、自分も相手と距離を取るから、双方との距離は結構あるのだ。

 実際、この応用方法を教えた時にルデンは渋んでいた。


 「夕食が出来上がりましたが、如何なさいますか?」


 メルヴェルがタイミングを見計らってなのか、タイミングの良い時に話し掛けてきた。

 俺はルデンの方向を見て言う。


 「今日はここまでだな」


 俺達はメルヴェルの作った料理を美味しく頂いた。



 今、ルデンと俺は大浴場に向かう途中で、その道中にて、三年の首席のレイニアータが息を切らしながら、俺達の目の前に立ち塞がっていた。

 何でも、俺を探し回っていた様だった。


 「探したぞ、アヴィル。ずっと何処へ行ってた…ハアハア」

 「ずっと寮の部屋に居たが?」

 「放課後、ずっと部屋に閉じ籠って居たのか!?」


 レイニアータは、放課後から今に至るまで、学校と寮内を探し回っていたらしい。


 「ああ。で、何の用だ。手短に済ませ」

 「俺、一応、先輩なんだがな…。まあ、良い、今は。取り敢えず、校長が呼んでるってだけ伝えられれば良いから。じゃ」


 やりきった感を出して、過ぎ去って行った。レイニアータは、自分自身の寮の部屋に帰ったんだと思われる。


 「…先に校長室、行く?」


 ルデンが俺に問う。

 校長――リダルンディに呼ばれた理由は、大体予想がつく。


 「そうするか」

 「わかった」



 俺達はリダルンディの待っているであろう、校長室に出向いた。


 「三十五文字以内に要約して話せ」

 「流石に無理があるんじゃない…?」

 「フレーディン先生との決闘、国王陛下が了承なさった」

 「よし、ヴァールデンを絞めに行くか」

 「「それだけはっ…!」」


 見事にルデンとリダルンディが揃った。


 「それで、何時(いつ)なんだ?決闘の日時は」

 「明後日、放課七時間後に実技訓練場にて行われる。国王陛下がご覧になられますぅ…」

 「ふーん…それで、ヴァールデンの他に誰か観戦しにくるのか?」

 「ご、護衛にフェージンが来ます」


 フェージン・アリオルド――ルデンの世話係兼護衛であり、俺やリダルンディ、ヴァールデンの一つ学年が下の後輩。


 「他には?」

 「国王陛下とフェージンのみかと…」

 「ああ、試合のルールについてなんだが」

 「ビクッ!」


 何でリダルンディがビクビクしているんだろうか?


 「先ず、審判はメルヴェルに頼む。ルールは、どちらかが死ぬか気絶で戦闘不能と認められた場合か、又は、どちらかの敗退宣言(リタイア)で勝敗を決める。で良いな?」

 「では、その様に国王陛下とフレーディン先生に伝えておく」




 俺とルデンは校長室を後にした後、大浴場に寄って浸かり、部屋に戻ってきた。

 メルヴェルにフレーディンとの決闘のルールを話し、審判を頼んだ。メルヴェルは嬉しそうにすんなりと頼みを聞いてくれた。

 俺は念を押して「絶対に不正だけはするな」と言っておいた。俺に有利な状況を作り兼ねないからな。

 そして、もう既に夜深く、就寝することにした。

ここまで読んでくださり有り難うございます。

誤字脱字の指摘、感想、ブックマーク、評価、レビューをくれると幸いです。


***


次の更新は2月23日です。

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