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 トゥールムンとの会話が終わったのと、ほぼ同時刻に三時限目が終了した。


 「アヴィル、先生とずっと話してたよね?何を話してたの?」

 「いや、特にこれと言った感じのは話していない」

 「そうなの?結構、話し込んでいた様に見えてたけど」

 「そこまで気になるか?」

 「んー…何となく気になったってだけかな」

 「ふーん…まあ、俺のMr(魔法耐性)について聞かれた位か?」


 あーあ、俺の正体として魔法師団団長である事を隠す上で、Mrを絞っておくべきだったなぁ…と、今更ながらに思った。


 「それで何て答えたの?」

 「最低三つはあるとだけ」

 「最低三つは、って…それだけでも結構、凄いんだけどね?」

 「そうなんだー(棒)」

 「まあ、良いや…じゃあ、飛んでくるね。風の精霊よ、我に力を《飛行》」


 四時限目開始と同時に、ルデンは風属性魔法の《飛行》で飛んだ。

 実技教科ルーティンで、本日二時間目となる風属性である。


 「流石です、殿下!魔力を相当酷使され、相当な疲れが出ている筈です。それも、感じさせないとは!」


 そこまで魔力が減る様な程、魔法を放っている訳でも無いだろう?

 何を見誤っているんだ?

 ルデンの表情などから分析すれば、後二時間位は《飛行》で飛んでいられるだろう。言いたいのは、まだ魔力は十分に残っていると言う事だけだ。


 「何でそんなに褒め称える?」


 俺は歓喜の涙を流しながらルデンを褒めまくる教師にそう聞いた。


 「君も使えるようになれば、先生の気持ちと殿下の凄さが分かるようになるよ」


 教師は俺を憐れんだ表情で言った。


 「答えになってないが…」

 「質問の答えなら、聞くよりも、自分自身で身に感じられた方が分かる」

 「つまり、俺はちゃんと発動出来る様になるまで、この質問の答えはお預けだ、と言う事か」


 実際は発動出来るがな。

 こりゃ、半永久的に答えを知る時は無いようだ。


 「幸い、君以外の生徒達は自己練習中だ。それに、先生は手が空いている。君を付きっきりで見てあげよう」


 教師は手を腰に、浅めの溜息を吐きながら言った。

 俺を付きっきりで魔法を見るだと?余計なお世話だな、本当に。


 「取り敢えず、《微風》でもやってみようか。先生のを見様見真似で良いからね」


 風属性最下位の《微風》か。弱くそよそよした風を起こすだけで、誰にも危害を与えない魔法。


 「風の精霊よ、我に力を《微風》」


 教師は《微風》を発動した。

 危害は無いのを解っているのか、俺に向けて放った。

 俺の前髪が少し捲れ上がった。


 「さあ、やってごらん」


 俺が普通に《微風》をやれば、その風は台風並みの風となり、(たちま)ち、この場所は飛びさってしまう事だろう。

 そうなってしまえば不味い。

 ここも無理矢理、不発させるか…。


 「はあ…風の精霊よ、我に力を《微風》」


 溜息混じりで詠唱した。

 風は起こる事はなかった。


 「…」


 教師は黙り込んでしまった様だった。


 「それで、どうだ?俺の《微風》」

 「あ、ああ…そうだねぇ…君は発動させる気はあるかな?」

 「ある、多少は」


  更々無いです、と答えたい所だった。


 「多少…。強く発動したいと込める必要があるんだよ」

 「はあ」


 そんなこったぁ、知っとるわ。

 態とそうしてんだよ。


 「どうしたものか…《微風》は本来なら簡単過ぎて、世にも魔法陣は出回っていないんだよ…それくらい、出来て当たり前なんだよ」

 「当たり前は人其々なのを知ってるか?」


 俺に思い当たる節々が度々あったからなぁ…。


 「…どうして、この学校の編入試験を突破出来たのかを聞きたくなるよ、先生は」

 「俺も不思議だと思う」


 既に卒業済みの俺が編入出来たのか。まあ、王命あってこそなのだろうが…。

 改めて言っておくが、編入試験は受けてないし、受けていない事は教師達は知らない。


 「実技の試験があっただろうに…」

 「まあ、この際の悩みは全て校長にぶつければ良い」


 敢えてリダルンディを校長と呼んだ。話が滞るから。

 俺は聞くことは無いが、この教師が悩みを相談したいのなら、それで良いのではと思った。


 「あのねぇ…校長先生だって忙がしいんだよ?」

 「《飛行》の許可を取りに行ってただろう?」

 「あれは許される事だから良いんだよ」


 ルデンが《飛行》する上に当たっての許可を取りに行くのは許されるのか。


 「君は一ヶ月後に行われる選考大会に出るのかい?」

 「出るつもりはない」

 「うん、それが君の為だね。でも、魔法師団とかに興味は無いのかな?…興味無さそうだね」


 …興味以前にその魔法師団の団長なのだが?

 まあ、勝手に解釈して頂けて何より。


 「出るとしても、出る理由がない。無意味だ」

 「今年の合同特別魔法強化訓練に、行方不明だった筈の団長殿が来てくださるのに、興味無いって…」


 俺はどうせ、選考大会で選ばれようがされまいが、ある意味参加する事になるんだ。大会に出る必要が無い。


 「聞いても良いか?」

 「何だい?」

 「そんな訓練をして、効果はあったのか?」


 本来、こう言うことはメルヴェルに聞くべきなのだが、メルヴェル以外の者の意見を聞くとした。

 予想では、「合同特別魔法強化訓練をやる」と言い出したのはメルヴェルだろう。


 「そんな質問をする君は本当に残念だ。国家反逆と言う言葉を知ってるかな?先生は寛容だから良いけれど、大罪なんだよ?」


 自分から寛容って言った。て言うか、この質問をしただけで国家反逆か。


 「それで質問の答えは?」

 「効果はバツグンだよ。そりゃ、退役されたメルヴェル殿やガードラーレ殿が教官として、指導してくださる事なんて滅多に無いんだから」


 毎年やっているのなら、滅多に無いって事は無いんじゃないか?と思いながら、ひねりを入れ始め、多種多様な飛び方をし始めたルデンに目を移す。


 「弱き者は強き者を見て技を盗みて強き者に至り、強き者は更に強き者の技を盗みて更なる高みへと(いざな)われん――大昔の言葉だよ。君は知ってるかな?」

 「知らないな」

 「我がティナラータ王国初代国王陛下の御言葉だからね、覚えておこうか」


 ティナラータ王国は、今から約九百年前に誕生したとされている。大昔の範囲に入るかどうかは判らないが。

 弱き者は強き者の技を盗みて強き者に至り、強き者は更に強き者の技を盗みて更なる高みへと誘われん。

 聞くからに、初代国王よりも更に強い者が居たんだろうな…。


 「その言葉の意味は?」


 一応、聞いておく。参考までに。


 「修練も積めば、やがて己の身となって成果を成し、今よりも更に強い自分になれる。と言う、教え。つまり、君も練習を頑張れば、何れ魔法を発動させる事が出来る様になるよ。さあ、頑張ろうか」


 魔法発動を急かし始めた。


 「俺はその言葉の通りにはしないが」

 「先生はこの言葉を信じて生きてきた。そしたら、この学校の先生になったんだよ。この言葉は本物だよ」

 「だとしてもだ。仮に、自分自身が強き者だとしても、更に強き者が現れなかった場合、誰が更に強き者なんだ?自分自身の更なる高みは閉ざされるだろう?」

 「魔法師団団長殿が居る。無理なら、メルヴェル殿、ガードラーレ殿も居る。それだけじゃ、駄目かな?」


 俺が魔法師団団長だからな…。


 「その人達よりも強き者は?」

 「そうだね…神かな?あ、でも、団長殿の方が強いか」


 俺は神より強い前提なのか。

 メルヴェルも言うだろう。この教師と同じことを。


 「団長自身は誰の技を盗む?」

 「団長殿()ね。団長殿よりも更に強い者は誰かと聞きたいのかな?」


 俺は頷く。


 「この世界には居ないだろうね。先生は団長殿自身に聞いてみたいよ」

 「多分だが、弱き者と己自身が団長を更なる高みへと誘うんだろう」

 「何故、そう思うんだい?」

 「弱き者は護りながら戦う事になる。そして、自分自身その者が強き者であるのなら、強き者である己自身を超える事が更なる高みだろう」

 「成る程ね、一理はある気がするよ」


 ある気がするって…。


 「でもね、団長殿自身が言ったことではないから、本当とは限らないよね。仮に、偶々本当に団長殿が思ったことだったとしても」


 その団長自身が言った事だからな…。

 まあ、信じないだろうけどさ。別に良いさ。


 「それを言うのなら、初代国王がその意味でその言葉を言ったとは限らないだろう。人其々で其々に答えがある。答えが無いかも知れない答えは、全てが答えだ。そうは思わないか?」

 「そうだね。君は著名な思想家だったのかな?それとも、昔の人?」

 「は?」

 「いや、考え方がね。先生よりも歳上の人達の昔ながらの考え方にソックリだったからね」


 昔ながらの考え方…。

 実際に昔の人ですからねー。昔ながらの考え方ですみませんね。


 「それでどう思った?昔の人だと思ったか?」

 「いや、君は先生よりも若い、子供だよ」


 バレてなさそうで良かった。

 本当は、この教師よりも歳上の人達と同世代であることがバレてたら、何かと不味いからな。でも、「子供だよ」と言われて、何処かムカついている自分が居る気がする…。


 「あ、時間だね」


 教師がふと時計を見て、授業終了時刻を迎えた。


 「君がもし、ちゃんと魔法を発動させる事が出来る様になりたいと言うのなら、放課後でも始業前でも、いつでも先生の所へ来ると良いよ」

 「来る日は無いと思うがな」

 「ふふふ…それはどうかな?きっと、君は先生を頼って、先生の元へ来る時が来ると思うよ」


 絶対に行かないと思う。

 否、断固として行くものか。めんどくさい。

 取り敢えず、ルデンを回収して昼食としようか。

ここまで読んでくださり有り難うございます。

誤字脱字の指摘、感想、ブックマーク、評価、レビューをくれると幸いです。


***


余談(飛ばしても大丈夫です!)


 約九百年前、ティナラータ王国初代国王は負け知らずでした。


 ですが、アヴィルくんの様な別次元に強い同世代の人間が居り、一度も勝てなかったらしく、

 「弱き者は強き者の技を盗みて強き者に至り、強き者は更に強き者の技を盗みて更なる高みへと誘われん」と、

 言葉を遺して寿命を全うしていきました。


 常日頃からその者の技を盗み見ながら必ず雪辱を果すつもりでしたが、叶わなかったとも言います。


***


次の更新は2月12日です。

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