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 「若き日の剣姫…?」


 マドレアを前にジュワライル子爵が、そう呟いた。


 「ジュワライル子爵は逃げろ」

 「な、何を言っているんだい?」


 俺はジュワライル子爵を逃がそうとするが、逃げない。まあ、そりゃそうだよな。


 「アヴィル…まさか…」

 「魔族だよ。多分、ルデンを狙っている」

 「やっぱり…」

 「あら?私が来た理由も知ってるのね?話が早いわ。じゃあ、死んで貰うわよ、邪魔者」


 マドレアはルデンを狙って跳んできた。


 「《障壁》」


 俺はマドレアの攻撃をルデンから守る。


 「ど、どうして…剣姫が…」

 「ジュワライル子爵、アレはもう、剣姫なんかじゃない。唯の敵」

 「仮に親子だとしても、親子で殺し合いするのは…」

 「親じゃねぇよ」


 仮に親子だとしても、って何だよ?と、まあ、既に親子じゃないんだよ…。

 俺は魔族の親を持った記憶は無いんでね。


 「何を話しているのかしら?」


 マドレアはずっと剣でルデンを刺し殺そうと狙って来ていた。

 それを、俺の《障壁》で守っている状態。


 「ジュワライル子爵、逃げろ!」

 「わ、私だって!」


 ジュワライル子爵は剣を構えた。微力ながら、戦いたいのだろう。

 でも、ジュワライル子爵には無理だ。敵う筈がない。


 「レインドトール・ジュワライル。お前には無理だ。少しでも、生きたいと願うのならば、立ち去れ」


 少し、キツ過ぎただろうか。


 「私は騎士だ!誇りとプライドと言うものがある!死のうが構わない」

 「馬鹿か、お前は…」

 「じゃあ、手間だけれど、先に死んで貰うわよ」


 ルデンを狙い定めていたであろうマドレアは、ジュワライル子爵の居る方向へと、方向転換した。


 「ぐっ…」


 ジュワライル子爵は押されていた。一回のマドレアの攻撃だけで。


 「これだけかしら?」


 マドレアはもっと力を入れていっているのが、見てても判った。


 「助太刀しなくちゃ!」

 「待て。お前は動くな」

 「どうしてさ?」

 「護衛対象を簡単に敵に近付かせると思ったか?」


 あくまで、俺はジュワライル子爵を守るのではなく、ルデン一人を守るだけなのだ。


 「そうだけど…でも、このままじゃ…!」

 「確かにな。こりゃ、不味い」

 「だったら!」

 「騎士同士の剣の交えに手を出すのか?」

 「えっ…!?」


 騎士に誇りとプライドが高く持っている奴ほど、そう言った事には細かいと聞く。だが、今は誇りとプライドとかは全てズタボロに捨てる時だろう。


 「まあ、あのジュワライル子爵にも家族が居るだろうし、後方支援してやろう」

 「考えが真逆に変わった…?」

 「気が変わっただけだな。《雷撃》」


 俺はマドレアのみに向かって放った。もし、マドレアがジュワライル子爵を盾代りにしようが、マドレアのみに効果があるようにしたのだ。


 「!?誰?邪魔をしたのは…って貴方達しか居ないわよね」


 矛先は直ぐに俺達に戻った。


 「《魔光龍炎》」


 マドレアを締め上げるだけ。


 「無駄よ。私の剣は魔法も断ち切るのよ」


 敢えなく、俺の《魔光龍炎》は断ち切られ、消え去った。


 「貴方の魔法って、こんなにも弱かったかしら?」

 「アヴィルの魔法を弱いって…」

 「貴方は全然、本気と言うものを出してないわよね?」

 「…ああ。それを言うなら、お前もだろう?」

 「そうよ?生温い戦いは止めましょう。ここからは、本気で殺し合いをするの」

 「《魔束光環ディヴァファスシオリング》《物体強化》…!」


 俺はあの時、生け捕りにした方法で、一応捕まえる。


 「俺は生憎、今は殺し合いをするつもりは無いんでね」

 「貴方に殺し合いするつもりは無くても、私はその邪魔者を殺すわ」

 「邪魔者って…僕の事ですか?」

 「ええ、そうに決まってるじゃない。と言うよりかは、私自身が望んで殺す訳ではないのよ?あの御方の御命令ですもの」


 つまりは、アイツは生きてる…。

 兎に角、今はルデンを守る事だけに専念しよう。


 「どうして、僕を殺そうと…?」


 ルデンは恐る恐る、マドレアに問いた。


 「知らないわ。あの御方が何を考えているかなんて」


 聞いたって無駄と言ったのかの様に答えていた。俺はマドレアに詰め寄るようにして言った。


 「お前らは命令ならば、誰でも殺すのか?」

 「ええ、そうよ」

 「そう容易く人を殺すなんて、残虐なんだな、魔族とは」

 「そうかしら?それを言うのなら、貴方だってそうでしょう?身に覚えがある筈よ」


 俺が…魔族と同じ?身に覚え…?


 「あ、アヴィル…?」

 「貴方の表情は殺す事に馴れた顔をしているわよ。そう言う者ほど、戦いたくなるわね…」

 「…ああ、俺は人を殺す事に馴れているかもな」

 「アヴィル!?」


 ルデンは俺が何を言っているのかが分からないようだ。


 「だがな、お前ら魔族と一緒くたにするな。それに、五十年前は殺す事に馴れないと生きていけない時代だったからな…」

 「あっ…」

 「とは言え、無意味な殺人はしたことはない。例え、他国との戦時中であっても。この王都を守る為に魔法を放ったまで」

 「…」

 「ほぼ無意味な殺人をするお前らは…って、逃げたか…」


 話している内にマドレアは逃げてった。多分、《瞬間移動》とかそこら辺の魔法を使って。


 「追わなくても良いの?」

 「追えるなら追うが、今はお前の安全が第一なんでな。後、めんどくさい」

 「後者が本命だよね!?」

 「それがどうした?」

 「あのねぇ…」


 ルデンは一人、何か呆れてるようだ。

 取り敢えず俺は、腰が抜けて立てなくなっているジュワライル子爵の目の前へ立った。


 「あ、あ…」

 「あー、大丈夫か?ジュワライル子爵」

 「大丈夫…かな…?」

 「そうか」


 ジュワライル子爵は深呼吸を一回して、踏ん張りを付けながら立ち上がった。


 「さてと、じゃあ…俺達は帰るとするか」

 「そうだね…」

 「帰られるのでしたら、王宮へ御迎えを御呼びしましょうか…?」

 「それは要らない。大丈夫だ」

 「そうですか」


 きっと、道中に襲われないか心配をしているのだろうが、関係無い。

 俺はルデンに手を差し出し、繋がせた。


 「《瞬間移動》」


 俺とルデンは《瞬間移動》で、学校の寮の部屋に移動した。だから、道中の心配は要らないのだ。




 部屋には着いたが、まだ、昼過ぎである為、部屋にはメルヴェルは居ない。魔族出現を伝えておきたかったが。

 因みに、カロサはメルヴェルの仕事を手伝っていると聞く。なので、カロサも部屋には居なかった。


 「…」

 「ルデン?」


 ルデンは部屋に戻ってから、ずっと黙りだった。


 「僕は…邪魔なんだね」

 「どうした?」

 「今日の魔族や、この間の魔族は僕の事を邪魔者だと言った。そして、僕を殺しに掛かった」

 「魔族共の言う事は信じなくても良いんだぞ?」


 忘れてたが、ルデンはまだ十二歳の子供だ。今日や最近の出来事はルデンにとっては酷なのかも知れない。


 「でも…」

 「信じる必要は無い」

 「アヴィルには、邪魔者と言われた僕の気持ちなんか、分からないよね」

 「分かるわけが無いだろう、そんなもの。お前は今、一人でそれを抱え込んで何になる?」

 「何を言っているの?」

 「お前は一人じゃないって、誰かから言われなかったか?」


 何事にも一人で抱え込む必要は無いんだよ。…って、俺が言っても説得力が無いと思うが。


 「確か…僕が王太子任命された時に国王陛下が言ってた」

 「一人じゃない。だから、困った時は周りを頼れ」

 「あはは…まさか、アヴィルに言われるなんて、思ってもみなかったよ」


 ルデンの目から一粒一粒と、涙が零れ溢れていく。


 「お前は邪魔者なんかじゃない。お前にはちゃんと心配してくれる家族がまだ居るだろう?」

 「…?」

 「家族達はお前を一回でも邪魔者扱いにしたか?特にヴァールデンとか」


 ルデンは首を横に振った。


 「既に溢れ落ちているが、ルデン。本当はお前、泣き叫びたい程、辛いんだろう?お前の父親、ヴィリアルンが殺されてから、ずっと」

 「うっ、うっ…」

 「泣いた方が良い時はある。それが、今だ」

 「うわぁぁぁっっっ!!」


 王族の一人として、次に王国を担う次期国王として。それが、泣く隙を与えなかったのだろう。本当は泣きたいのに泣けなかったのだ。

 俺はルデンが落ち着くまで、介抱していた。




 漸く、ルデンが落ち着いた頃。


 「落ち着いたか?」

 「うん…」

 「取り敢えず、顔を洗ってこい」

 「そうする」


 ルデンの顔はぐしゃぐしゃになっていた。目尻は完璧に赤く腫れ上がっている。なので、顔を洗いに行かせた。

 ルデンが顔を洗いに行ったのと同時に、メルヴェルとカロサが部屋に戻ってきた。


 「お帰り、メルヴェル、カロサ」

 「はい、只今帰りました」

 「ただいま」

 「…何かあったのですか?」


 メルヴェルが立ち止まって、俺に聞いてきた。


 「何でそう思った?」

 「只の勘ですね」

 「何れにせよ、言っておくべき事が起こった訳だからな」

 「メルヴェル殿とカロサ様、お帰りになられてたんですね」


 顔を洗い終えたルデンが戻ってきた。多少、目尻が赤かったが。


 「…それで何が起きたんですか?」

 「先ずは魔族が出現した事だな」

 「また、ですか」

 「ああ」

 「ちょっと良いかしら?」


 カロサが手を挙げて発言をしようとしている。


 「何だ?」

 「関係あるか判らないけれど、最近、新しい神が誕生したのよね」

 「今はその話をする場合じゃ…」

 「一応、聞く。何の神だ、その新しい神は」

 「確か…魔神だったような?」


 魔神が新たに誕生した?

 そう言えば、実家に帰省する道中の村のパワレント村で、そこに祀られている神のパワレントにこう言うことを言われた記憶がある。

 「魔神の加護がある」と言うような事を。

 勝手に加護したその魔神は、今はもう居ない?=加護は無くなったのか?


 「カロサ、俺に加護してみろ」


 一応、神であるカロサが加護を付与出来なかったのなら、魔神の加護は消えていない事になる。取り敢えずの確認と言う事だ。


 「何よ、いきなり?加護してみろって…ああ、二つ目の願い事ね」

 「出来たらそれでも良いが、出来なかったら願い事は破棄で」

 「出来ない事がある訳無いわよ!?」


 お前と同業者であるパワレントは失敗してたがな。


 「まあ、アヴィルくんの力になりたいとは思っていたのよ?…それじゃあ、加護するわよ」


 カロサは俺の額に手を(かざ)した。


 「…何で?」

 「出来なかったのか?」

 「加護が失敗するなんてこと…」

 「何が起きているのですか?」


 俺とカロサのやり取りを静かに見ていたメルヴェルが聞いてきた。


 「一応、神だろ?カロサは」

 「そうですね」

 「一応って何よ!?」

 「神の加護が失敗するなんて事は滅多に起こる事は無いんだよ。…こりゃ、まだ俺に魔神の加護が付与されっぱなしだな」

 「そうね。この魔神の加護のせいで私は加護を付与出来ないわ」


 この先に多分、新たな魔神誕生は関連してくる。俺の勘がそう言ってきているのだった。

ここまで読んでくださり有り難うございます。

誤字脱字の指摘、感想、ブックマーク、評価、レビューをくれると幸いです。

***

余談(飛ばしても大丈夫です!)


二つ目の願いにはなりませんでした。

たとえ、カロサの加護付与が成功しようとも、願いにはならないでしょう。多分。


***

次の更新は1月26日です。

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