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 翌日。

 今現在、ルデンと王都の街を歩いていた。

 今日は、ルデンとジュワライルの丘に行く予定であったからだ。なので、俺達各々で献花用の花を持っている。



 俺とルデンは道中、会話を弾ませていた。


 「メルヴェル殿ったら、お弁当をお作り致しますとか言って、重箱を用意しようとしていたよね」

 「ああ、そうだったな。流石に食べ切れない量を用意しようとしていたからな。止めるのに一苦労だった…」

 「そうだね…」


 行く前日、就寝前に遡る。

 メルヴェルは何処からか重箱を取り出して、今日のお昼を作り始めようとしていた。重箱はなんと、八段だ。全ての段に料理を敷き詰められたら…二人で食べ切れないと、メルヴェルを説得して、食べ切れない量の重箱を回避したのだ。

 とは言え、重箱は漆塗りがされた高級品だった。それに、この世界のではなく、日本の物…。何故?


 「もうすぐで着くよ。ここの曲がり角を曲がって直ぐ」

 「やっと着くのか」

 「体力無い?」

 「何とでも言っとけ。今の内に」

 「あはは、何それ?(笑)」


 かれこれ二時間位、歩き続けていたからな。体力があるか、無いか以前の問題である。

 俺とルデンは曲がり角を曲がり、とある屋敷の門前に来た。


 「俺達、ジュワライルの丘に来たんじゃなかったっけ?何で人の屋敷に…」

 「ジュワライルの丘を管理している、ジュワライル子爵に挨拶しに来たんだよ。王族がホイホイと知らぬ間に、自分の領地に来てたとなると、大問題だからね」

 「そう言うものなのか?」

 「そう言うものなんだよ」


 そう言うものなのか…。それにしても、王族ホイホイ。ウケる。


 「王太子殿下ですね?」


 門前で話していると、屋敷の中から一人の男性が出て来た。


 「ジュワライル子爵、急な訪問を許してくださいね」


 この男性がジュワライル子爵。


 「いえいえ、こちらこそ、御越し頂けて光栄な限りですよ。メルヴェル殿から聞いてはいますが、そちらの方は?」


 ジュワライル子爵の目は俺の顔に移す。

 取り敢えず、名乗っておくか。


 「俺はアヴィルだ」

 「…大人に対する礼儀はこれから覚えておくと良いよ…」


 ジュワライル子爵は苦笑いをしていた。

 何でだろうか、そんなに変な事を言っただろうか?俺は。


 「私も名乗っておかないとね。私はレインドトール・ジュワライル。現ジュワライル子爵家当主です。外で立ち話もアレなので、中へどうぞ」


 ジュワライル子爵は俺達を中へ入れた。

 屋敷の中は、色々な剣が壁に掛けられていた。


 「剣が気になるかい?」


 俺は剣を見ていると、ジュワライル子爵がそう言った。


 「いや、気になる訳ではないが…自棄に剣が多いな、と」

 「このジュワライル家は剣の名家だからね。世界中の剣がこの家に集まって来るのさ」

 「国宝級の剣もこちらに集まるんですよね?管理の為に」


 ルデンがジュワライル子爵にそう聞いた。


 「ええ、そうですよ。保管の難しい剣まで、集まって来ますね。王族の方からも、頼って頂いて本当に光栄な事ですよ」


 ジュワライル子爵は、自分自身に、自分の家に誇りを持って生きている様だ。


 「剣が全てなんだな」


 俺がそう言うと、ジュワライル子爵は浮かない顔をし出した。


 「そうも、いかないのが現状で、今やどの国行っても魔法がものを言う時代だからね…」


 そうでしたね。

 兎に角、この地に来た本題を。


 「それはそうと、ジュワライルの丘に行かせて貰うぞ?」


 俺は少し気不味い雰囲気になっていた、この空気に話を切り出した。…そう言うのって、結構、勇気が要るもんだな。


 「そうだった」


 おいおい…ルデン、ここに来た理由を忘れてたのかよ。


 「丘にですか…」

 「何か不味い事でもあるのか?」

 「元々、剣姫が死んだ軍人を埋め、弔ったのが丘なのですが…あまり、良い状態では無いのです。彼処には剣姫の魔力を彼らに供えているのですが、最近、剣姫が現れる事無く、彼らに魔力を供えられないのです。なので、今現在、少々、荒れ果ててしまって…」

 「他の方が代わりに供える事は出来ないのですか?」

 「私達も試みました。しかし、魔力の質が違い過ぎたのでしょう、彼らに受け入れて頂けませんでした」


 剣姫は俺の母親だった。死んでから魔族になり、ここに現れる事は無くなったんだろう。


 「魔力の質が似れば大丈夫なのか?」

 「魔力の質が似るのは、家族位ですよ?最も、兄弟姉妹か親子か」

 「どう言う事なの?アヴィル」

 「魔力の質は人各々だが、親から子へ受け継がれ、子は親と似た魔力になる」


 ジュワライル子爵の言う剣姫はこの地に二度と現れる事は無いだろう。しかし、だからと言って、剣姫の魔力が無くなった訳ではない。

 息子であった俺が要るのだから。


 「―ジュワライル子爵」

 「何かな?」

 「俺の魔力を死んだ軍人共に供えるのはどうだ?」

 「はい?」

 「何言ってるの?」

 「だから、俺の魔力を…」

 「言ったよね?魔力の質が違い過ぎて、彼らに受け入れて頂け無かったと」

 「案外、受け入れるかも知れないぞ」


 親子で魔力の質が違い過ぎる事は、そうそうに無いからな。


 「そうと決まれば、丘まで案内しろ」

 「…ジュワライル子爵、案内を宜しくお願いしますね」

 「…は、はい。決まった訳ではないと思いますがね…」




 俺達はジュワライルの丘と呼ばれる丘に向かった。そこには、一つの少し大きな石碑が建っているだけだったが、そこは一言で言うと荒れていた。

 ルデンも、記憶にあるジュワライルの丘と似付かない現状を目の当たりにし、若干、引いているのだとか。


 「もし、受け入れられなくても、何も咎めませんよ?但し、魔力を供え過ぎて倒れたとしても、何も責任は取れませんから、そこだけは理解しておいてね」


 魔力が足りなくなり過ぎる事は無いので、俺は。

 俺が魔力を供えると言ったものの…何で供えていたんだ?母親よ。

 魔力を丸めて放り込む?

 シンプルに《魔力譲渡》で送り込む?


 「光属性魔法の《浄化》?」

 「アヴィル君と言ったよね?《浄化》だけは避けようか?」

 「何でだ。ここに自力で天に上がれない亡者が集まるんだろう?」

 「集まるのは、全ての死者!集まると言うよりは、戻る!」


 ジュワライル子爵が声を張り上げながら、そう言った。


 「まあ、《浄化》と言うのは冗談だ」


 ジュワライル子爵はホッとしているご様子。


 「よし…《魔力譲渡》」


 俺はシンプルな方法を選んだ。

 もし、受け入れられずに還されたら、この辺一帯に居る俺以外の全ての者が、魔力酔いでぶっ倒れる事、間違いなし。それだけ、高濃度なのだ。


 ――曲ガリモノ、曲ガリモノ

 ――要ラヌ、要ラヌ


 俺の魔力を還そうとする、亡者共。


 「あ?俺の魔力が受け入れられないのか?」


 ――ヒッ…!?

 ――剣姫殿!?


 「俺は剣姫じゃないぞ?誰と間違えている」


 ――ヨク思エバ、コノ魔力、剣姫殿ノ魔力ニ似テイル…!?


 「受け取れよ?」『受け取りなさいよ?』


 ――ハ、ハイィィィッッッ!!

 ――有リ難ク、受ケ取ラセテ頂キマスゥゥッッ!!


 俺の魔力を有り難く受け取った亡者達。

 て言うか、完全に平伏していたよな…。剣姫で怯えていたような?何をしたんだ、母親。


 「丘が綺麗になっていく…?」

 「私でさえも出来なかったのに…」


 ルデンとジュワライル子爵がそう呟いた。


 「さてと…献花するとしようか」

 「あ、うん、そうだね」


 俺とルデンは各々、石碑に持って来ていた献花用の花を手向けた。

 ルデンはルデンの父親ヴィリアルンに。

 俺は戻っている筈の無い両親に。

 数秒の沈黙の時間が訪れる。


 …。


 俺は後ろを向いた。


 「済んだのかな?」

 「ああ」

 「良かったら、話してくれるかな?アヴィル君と剣姫の関係を」


 俺の魔力を受け入れたからな、一応。近しい関係じゃない限りは有り得ない光景でもあった訳だし。


 「ジュワライル子爵。これから話す事は、他言無用して貰う」

 「そんなに極秘な事なのかい?」

 「ああ」


 俺とジュワライル子爵が話していると、ルデンが顔を上げて、俺に聞いてきた。


 「アヴィル…話すの?」 

 「問題無いと判断したまでだ」

 「そっか」

 「私はずっと、試されていたんだ?」

 「そうかも知れないし、そうじゃないかも知れないな」


 俺は、はぐらかした。


 「…分かった、今から聞くことは絶対に他には漏らさないから安心してくれ」


 ジュワライル子爵の真剣な眼差しは、嘘ではないと俺は思った。


 「剣姫と俺の関係だが…俺は剣姫の息子だ」

 「えっ?ちょっと信じられないよ?剣姫は私の祖父の従姉だったんだから」

 「はい?」


 あれ?母親って、ジュワライル家の人間だったの?

 兎に角、ジュワライル子爵の話が本当だとすると、俺にとってジュワライル子爵は再従甥(はとこおい)と言う事になる?


 「どっち道、赤の他人な事には違いないし、気にする事は無い」


 結局は、遠過ぎて赤の他人になる。


 「気にするよ?取り敢えず…その服装は国立高等魔法学校のものかな?君は剣姫の息子で、魔法師な訳だ。とっくに、ジュワライルの家系には魔法師が誕生してたのか…」

 「とっくに?」

 「剣姫が産んだのは二人の双子の兄弟だけ。それも、五十年以上も前に」

 「何で、そこまで知ってるのに、その二人の双子の兄弟のJobを知らないんだよ」

 「剣姫自身が言わなかったからね。まさか、魔法師が二人も…」

 「俺が魔法師であって、もう一人が騎士だった筈だぞ?」


 今は魔王だったがな。

 もう、アイツの事は知らん。


 「…待って。双子の兄弟でJobが違うのは聞いたことが無いんだけど?まだ、双子じゃない兄弟姉妹間なら分かるけど」


 ルデンがそう言ってきた。


 「そう言うものなのか?俺にとっては普通な事だと…」


 何で、それを聞くんだろうか。


 「アヴィルにとっては、でしょ?ジュワライル子爵はどうお思いで?」


 ルデンはジュワライル子爵に話を振る。


 「私も聞いたことがありませんね」

 「ぐっ…」


 二人に言い寄られると、返しにくいな…こりゃ。

 でも、実際、それが普通に起こり得るものだと思っていたからな。


 「ほ、本当の事なんだからな?弟は地元の剣学校に通ったが、俺は魔法学校だったんだから」

 「それで、弟が騎士だと言うことは実証されないよ?」

 「でも、本当だ。これだけは嘘をつく理由が無い」


 俺は必死の思いでルデンを見詰める。何故、必死の思いになっていたかは、俺にも分からないが。


 「…本当なの?」

 「ああ」

 「分かった、信じてみる。アヴィルと一緒に居ると、普通って何だっけ?って、よくなるよ…もう」


 信じてみてくれるだけでも、俺は良かったと思えた。

 それで何故か、嬉しくなるなんてな。


 「お取り込み中、ご免なさいね?」


 ルデンでも無ければ、ジュワライルでも無く、俺では無い声が聞こえた。

 まあ、女性の声なので、俺達三人な訳が無いんだが。

 あまりにも突然過ぎて、俺達三人は声のする方へ振り向いた。


 何でここに居る…!?

 現れたのは、元母親であり、今は魔族のマドレアだった。

ここまで読んでくださり有り難うございます。

誤字脱字の指摘、感想、ブックマーク、評価、レビューをくれると幸いです。


***


次の更新は1月22日です。

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